「ペローむかしばなし(シャルル・ペロー著)」を今ごろ読む
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「ペローむかしばなし(シャルル・ペロー著)」を今ごろ読む

2016-10-06 19:00
    ・子供の頃「グリム童話」は家にあって何度も読んだが「ペロー童話」というのはなかった。だがこれらはもともとヨーローッパの各地方に言い伝えられていた話を収集したもので、
    「グリム」にも「ペロー」にも同じような話が入っていて、展開や結末が違ったりする。
     有名なのは、どちらにも「赤ずきん」が入っていて、結末が違うというもの。
     グリム童話ではオオカミに食べられた赤ずきんとおばあさんは猟師に助け出されるが、
     ペロー童話では食べられたところでオシマイ。その手の子供に読ませるにはちょっと、というラストになっちゃう話も多いので、子供向きには「グリム童話」で十分、ということになったのかもしれない。

     その文庫版を自宅で発見したので読んでみた。
     収録作品は以下の8編。誰でもアニメとかで知っているような有名作品と、これどんな話だっけ?と見当のつかないものが混じっている感じ。

    1.赤ずきん
    2.青ひげ
    3.長ぐつをはいたネコ
    4.仙女
    5.サンドリヨン
    6.まき毛のリケ
    7.おやゆび小僧
    8.眠りの森の王女

    「赤ずきん」は先に書いたようにバッドエンド。単独での映像化はあまり記憶に無いけど、
    狼男の出てくるホラー映画にした「赤ずきん」(アマンダ・セイフライドとかゲーリー・オールドマンとか出てる)は観て、悪く無かった。でも赤ずきん映画じゃなくて、狼男映画の亜種、という印象が強い。アマンダ・セイフライドはキレイな女優さんだな、と思った。

    「青ひげ」はこの原作よりも、これをオペラにした「青ひげ公の城」という作品の方が有名で、これをもとに寺山修二氏が戯曲にしたりもしてるらしい。クロード・シャブロルという
    高名らしい映画監督も「青髭」という映画を撮っているらしいがこれらは未見。
     私が青ひげを認識したのは 諸星大二郎さんの「青ひげおじさん」を読んだから。
     この作品、単行本未収録らしい。あれ?じゃあどこで読んだんだろう?リアルタイムで本誌で読んだんだったっけ?「風が吹くと棺桶屋が儲かる」みたいなセリフは覚えている。

    ここにざっと紹介がある。
    http://niccisacci.blog.fc2.com/blog-entry-246.html

     「長ぐつをはいたネコ」はペローを知らない人でも、石川進さんが声を担当した東映動画の
    「長靴をはいた猫」(これは本当に面白かった。続編2本はさほどでもなかった)でご存知かもしれない。ネコの名前はペロで、原作者にちなんでいたのかな?子供向けの本としても、「赤ずきん」共々単品でいろんな出版社から出ていたと思う。「シュレック」の脇役にも長ぐつをはいた猫がいたりして、キャラそのものが認知されている様子だが、原作をきちんと読んだ人は少ないのかもしれない。これもペロー版ではハッピーエンドだけど、ネコが主人に愛想をつかして出て行ってしまうバッドエンド版や、主人公は王女との結婚に失敗し、ネコが自分の首を切れ、というのでそうするとネコにかけられた魔法がとけて本来の領主の美しい姫に代わる、なんていうバージョンもあるらしい。

     東映60周年記念とかで、「長靴をはいた猫」などが東映公式チャンネルで期間限定で
    無料で視聴できるらしい。これは次の休みに見よう。
    https://www.youtube.com/watch?v=ld4SHkSD1j4

    「仙女」これまでの作品に比べてぐっと知名度が落ちる。夫に先立たれた母親がおり、彼女には二人の娘がいる。姉は母親そっくりで性格が悪く、妹は父親似で心優しいが、母親は自分に似た姉ばかりをかわいがり、妹の方は邪険に扱う。
     妹は水汲みに行った際に老婆に出会い、彼女が水を飲むのを手助けする。するとこの老婆が実は仙女で、お礼にと妹が話すたびにきれいな花や宝石が口から出てくるようにする。
     母親はこれを聞いて、姉も同じようにしてやろうと水汲みに行かせるが、妹と違って水汲みが自分の役目だと思ったことのない姉は不満たらたらで出かけ、仙女は今度は貴婦人の姿で現われるが姉はさんざん憎まれ口を叩いた上に水なんか自分で飲め、みたいに言って、話すたびに蛇とヒキガエルが口から出るようにされてしまう。
     母親はこれを知って妹を虐待しようとするが妹は逃げ、逃げた先で王子に見初められて結婚する。残った姉は結局母親にも嫌われて追い出され、野垂れ死にする。
     「花咲かじいさん」を思わせるような話の枠組みだが、一番悪いのは母親のような気がするけど、母親には特に利益も無いけど報いも無い。妹が王妃になったならそれなりにおこぼれもあったろう。一番哀れなのは姉のような気もするし、優しいという妹が結局この姉のためには手を差し伸べなかったんだろう、とも思うと妹の暗黒面も見える。

     「サンドリヨン」はいわゆる「シンデレラ」と同じ話。フランス語だとサンドリヨンになるらしい。「シンデレラ」って何か美しいもののような印象を持っているけど、「灰かぶり姫」なんていう訳も昔はあったみたいで、英語の「シンダー(cinder)」は
    (石炭などの)燃え殻、消し炭、灰、石炭殻、(溶鉱炉から出る)スラグ、(火山から噴出した)噴石
    みたいな意味で、これに由来するらしい。シンデレラは母を亡くし父親が再婚したため、義母と二人の義姉にいじめられ、暖炉の隅の灰の上が指定席みたいになってそう呼ばれるようになったというので一種の蔑称でもある。差別用語と言われてもしかたないかもしれない。
     建築現場で使う「シンダーコンクリート」という用語は、元来コンクリートにフライアッシュとも呼ばれる石炭殻を混ぜると普通のコンクリートより軽くなるので、かさ上げが必要な所に使っていたのを、今は石炭殻など使わなくなってもそう呼んでいるものらしい。
     電信線など通っていなくても電信柱という呼び方が無くならないような感じかな。

     「まき毛のリケ」も知名度はイマイチ。私は知らなかった。ある国に醜い王子がうまれるが、仙女がやってきてこの子はとても知恵のある人に育つ、と予言する。
     また彼女はこの王子に「自分のいちばん好きな人に自分と同じくらいの知恵を贈ることができる」力を与えてくれる。
     この王子が生まれつき頭のてっぺんにひとふさのまき毛を持っており、通称「まき毛のリケ」。リケは家名らしい。
     隣国にも7、8年後に二人の王女が誕生。姉は美しいが知恵がなく、妹は醜いが知恵がある。こちらにも同じ仙女がやって来て、姉に「自分のいちばん好きな人に自分と同じくらいの美しさを贈ることができる」力をくれる。
     年頃になった王女たちは、姉は美しいが馬鹿で、妹は醜いが賢いと評判になり、知恵者の妹の方が人気者だった。姉は人と会話も満足にできず、何かをしようとすれば必ず壊したりこぼしたりしてしまう。
     姉は知恵は無いけど感情はあり、そんな自分をできそこないと思い、死んでしまいたいと思いつめる。その彼女がリケと出会って互いにひかれあい、一年後に結婚する、と約束すると、王女は自分を認めてくれた人がはじめて現われたためか自信がつき、知恵のあるふるまいができるようになる。
     だが美しい王女が知恵も持つと求婚者が次々に現われ、容姿も知恵も武勇も優れた強国の王子が求婚してくると、王女の心もゆらいでしまう。
     約束の1年がせまり、王女は自分の心を決められないまま正直にリケに迷いを打ち明ける。
     二人は話すうちに、相手に否定的な感情は全く持っていないことを確認し、互いの力を使いあってリケは美しく、王女は賢くなり、結婚する。
      
     結婚後リケを美しいと思っていたのは王女だけだったような描写があり、王女はリケに賢くなる力をもらう前から自信がついて賢くなったようにも読めるので、実際にはそんな力はなく、愛が王女を変えたようにも解釈できる。
     妹の方がなんだか気の毒で、姉が賢くなると誰からも相手にされなくなってしまう。姉が隣国に嫁に行って、いなくなったのならばまた違うかもしれないが、結婚が決まったところで話は終わるのでどうなったかはわからない。

    「おやゆび小僧」は明確に読んだ記憶は無いが、話は知っている気がする。木こりの夫婦がいて、七人の子供がいて、その末っ子が身体が小さくておやゆび小僧と呼ばれる。
     貧しい夫婦はもう養っていけないと子供たちを森に捨てるが、おやゆび小僧が石を使って道しるべを作っていたため、子供たちは帰ってくる。臨時収入があったこともあってしばらくは平和な生活が続くが、また困窮して同じことに。今度は急だったのでおやゆび小僧も石を準備できず、パンを使うが鳥に食べられて失敗。森の中の家に泊めてもらうが、これが人食い男の家で、捕まって食べられそうになってしまう。だがここでもおやゆび小僧が機転をきかせて、人食い男の七人の娘と入れ替わり、人食い男は自分の娘を間違って殺してしまう。
     最終的には人食い男の財産も奪って両親のもとに帰り、財産ができたので一家はその後は平穏に暮らす。

     後日談がいく通りも書かれており、なんとなくきちんと完結していない印象。人食い男も
    追いかけてきた途中で寝込んでしまい、とあるだけでその後がわからない。
     人食い男の奥さんは優しい人で、子供たちを助けようとするのだが、結局助けようとした子供たちに自分の娘を殺され、夫の財産も盗られてしまうという気の毒としか言えない役回り。
     ペロー童話は、この奥さんやリケの妻の妹みたいに救われない脇役が目立つ気がする。
    石やパンで道しるべを作る話は、他にもあった気がする。ヘンゼルとグレーテルだったか。
    口減らしのために子供を森に捨てる、というのはこの時代のヨーロッパでは珍しくない話だったらしい。日本もつい数百年前はそうだったが、最近はそんな時代に逆戻りしている気もする。

     「眠りの森の王女」は「シンデレラ」と同様に、ディズニー映画の印象が強い。ディズニー版では王子がドラゴンを退治したりするのだけど、ペロー版ではそんなことはなく、アニメでは無かった後日談のような部分もある。

     ながらく子が無かった王と王妃がついに子供を授かり、洗礼式に国中の七人の仙女を招待したが、そこに50年人前から姿を隠し、連絡も取れずもう死んだと思われていたもう一人の仙女がやってくる。王は彼女ももてなすが、突然だったので食器などが他の仙女に出したものと異なり、彼女はそれで自分が馬鹿にされたと思い、生まれたばかりの王女に呪いをかける。糸巻き棒で手をつついて死ぬだろうと。
     だがまだ贈り物をしていなかった七番目の一番若い仙女が進み出て、この手を刺された王女は100年眠り、王子の来訪と共に目覚めると、呪いを打ち消せないまでも弱めることに成功する。
     王はそれでも国から糸巻きを追放するなどして娘を守ろうとするが、田舎の世間に関心が無い老婆の部屋を王女が訪れて結局予言どおりになってしまう。
     王と王妃は城を娘が100年を過ごせるように整備して去るが、召使や料理人などはあの仙女がやってきて王女と一緒に100年を一緒に眠るようにし、いばらで城を覆う。

     100年の後、王家も別の血筋に代わって、その王子が城を訪れる。特に妨害も冒険も無く、王子が王女の部屋を訪ねるとちょうど彼女も目覚め、二人は愛し合うようになり、二人の子供もできる。だが王子はこれを両親には話していない。そのわけは王子の母親は人食いの血筋で、王子はこの母を恐れていたためとある。だが王が亡くなり、王位を継承するにあたってようやく妻と子を城に連れてきて、母親にも紹介する。
     隣国と戦争が起こり、王は戦いに出かけると、王の母は王妃と二人の子供を食べようとする。料理人頭に、まず娘を、次いで息子を、最後に王妃を料理するように言いつける。
     料理人頭はどうしても子供たちを殺す事ができず、子羊や鹿を料理してごまかし、自分の家で王妃たちを匿うが結局バレて、人食いの王母は毒虫を入れた桶に王妃と王妃の子供たちや料理人頭を投げ込んで殺そうとする。
     そこにちょうど王様が帰って来て、人食い女は毒虫の桶に身を投げて死に、王はそれでも実の母だから悲しむが、王妃と子供たちの存在が悲しみを癒したという。

     ディズニーアニメだと呪いをかけた仙女がマレフィセントという名前で、王女に針を刺すのも彼女で、王子を邪魔しようとドラゴンになって結局退治されたりするらしいが、ペロー版では呪いをかけたあとは出てこない。善良な仙女もアニメでは3人だがこちらは七人。
     アニメでは王子と結ばれる姫がオーロラ姫だが、ペロー版では姫の娘がオロール(あけぼのという意味らしい)、もう一人の子供がジュール(日とか昼間みたいな意味らしい)。人食いである王子の母は、ネットの解説では義母と書いてあるのもあるが、私の持ってる版では特にそうした記述はなく、死を悲しむので実母みたいにも読める。
     ということは子供にもその血は流れている事になる。

     王女と一緒に100年間眠らされた召使たちが気の毒な気もする。その後どうなったかも書いてないが、これで目覚めてほどなく解雇されていたらあんまりな気も。

    と全体を読み終わると、「仙女」「人食い」という存在の登場頻度が多いのが目に付く。一方で「魔女」は出てこない。シンデレラにかぼちゃの馬車を与えるのも仙女になっている。翻訳の問題なのかもしれないが、伝承の中で、魔女よりもそうした存在の方が強く伝えられていたのだろうか、などと考えると興味深い。ただ、同時代のペローではない人の本では人食いなど出てこないような記述もあり、本人の趣味なのかよくわからない。

     映像化に伴ってカバーを変えたりするのは今は当たり前だが、この本は昭和40年発行だがディズニーアニメのカバーになっている。タイトルも「眠れる森の美女」だ。
     当時からこうしたことをやっていたんだな、とこちらも興味深い。




     

     
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