「おたから蜜姫(米村圭伍著)」メモ
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「おたから蜜姫(米村圭伍著)」メモ

2016-11-27 19:00



      先日読んだ「おんみつ蜜姫」の続編。「おんみつ」終了直後から話が続いている。
      「おんみつ」ではまだお姫さま扱いされていた感じだったが、続編のこちらでは姫とは
     名ばかりのかなりぞんざいな扱いを作者に受けるようになっている気がする。

     前作ではトイレに困ったことが一度あるが、おおむね衣食住については困らなかった。
     だが今回はろくにご飯も食べさせてもらえなかったり、洗濯もろくにできずにうす汚れた
    着物で旅をさせられたり、とあまり優雅ではない。

     キャラクター的にも、一応主人公ではあるのだけれど、知力を使うところがあんまり無くて、ひたすら力で押すところだけまかされて便利に使われている印象。
     誰が便利に使っているかというと、姫の母親。書物を読んで、和歌を詠んでいれば幸せ、という感じの姫の母親は、その古典文学に関する知識を買われてある謎を解くことになり、そのために確認が必要になると姫が現地に行って調べて来る、という趣向。前作は出発点と終着点があるロードムービーみたいな感じだったが、今回は母親がいる江戸を中心に、姫が熊野に行ったり甲斐に行ったり陸奥の国に行ったり、という安楽椅子探偵とその助手、みたいな。
     主役を母親に奪われて、その小間使いに格下げされたような印象がある(作品内で自分でもそんな意味の事を言っている)。

     で、その調べる謎というのは竹取物語。このなかに秘密があるという。これを解くと莫大なお宝が手に入るかもしれない、ということで第一作に続いて将軍吉宗に今度は第5代仙台藩主、伊達吉村とその配下の忍者軍団、自分をかぐや姫の生まれ変わりと信じる仙台藩のお姫さま、実在の大学者で地誌編纂者、並河誠所(なみかわせいしょ)などがからんで、さらに大久保長安、松平忠輝などの歴史上の人物もかかわってくる。

     「竹取物語」は帝があまりいい役どころではなく、かぐや姫に振られたり、天帝の兵士に帝の兵がなすすべもなく敗北したりとさんざんなのに、平気で宮中で読まれていたのは何故だろう、というあたりからはじまって、作者不詳のこの話を書いたのはこのような立場の人だったのではないか、そしてこの書が書かれたのはこのような意図だったのではないか、と推理が進み、姫の5人の求婚者と、彼らが探すように言われた宝物が実在したものを遠まわしに暗示しているのではないか、彼らは誰で、その宝は実際には何だったのか、という結論に至る。そして姫はその宝を探しに出かけ、そこの断崖の上じゃないけどでサスペンス劇場みたいに敵味方が全員集う、というあらまし。

     竹取物語の解釈は、なるほど、そういう考え方もあるのか、といかにもこれが本当ではないか、と思える。ジブリの「かぐや姫」の物語、こっちの解釈でやればよかったのに、とか思う。「もののけ姫」的な要素も入っている。

     姫はこういう話のヒロインにしては妙にドライなところもあり、彼女を守る忍び猫がいるのだが、この猫は姫に懐いているわけではなく姫の母親に懐いている。なので姫のことは母親のついでで仕方なく、という感じで守っている。この猫を相手に剣の稽古をしたりするのだが、
    「間違って斬ってしまったら・・・その時はその時だわ。母に知られないよう、手厚く葬ってやればいいわ」
     みたいに割り切りがヒドイ。
     
     また将軍吉宗に対する態度も第一作の因縁もあるのだが、全然恐れ入る事は無くお互いに
    顔を合わせれば牽制しあう間柄。

     「嫌ならよいのだぞ。外様の暴れ姫に(中略)教えてやる義理はないのだからな」
     「行きます行きます。感謝感激雨あられでございます」

     みたいな感じで、宿敵というほどでもないが和気合い合いでもない。
     嫌い合っているのではなく、かといって仲がいいわけでもなく、互いに信頼できる利用相手で、その信頼をいつ裏切ってもいいという暗黙の了解があるような関係にある。
     姫は吉宗に会うたびに合力を願い出る(つまり、お金をくださいな、とねだる)し、平気で吉宗を騙す。

     
     姫は家来に平然と死を命ずる吉宗の権力が嫌いなのだが、姫自身も大勢の敵を斬っている。
    結果的に吉宗のために、斬りたくない相手を斬るはめになってしまう。

     そういう姫なので、色っぽい話は全く無い。美青年の忍者が姫を守っているのだが、姫なので感謝の気持ちは無く、それが当然と思っており、人使いが荒い。まして恋愛感情も全く無い。だが彼が困っている時には積極的に手を貸したりもする。あくまでも自分が面白ければ。

     第一作の最初から十歳以上年上の小大名の後添えに嫁に行かねばならないことになっているのだが、姫とはそういうものだと思っているので嫌がってもおらず、かといってどこに嫁入っても奥座敷にじっとしているつもりも無い。

     という面白いキャラクターなので、ラノベじゃないんだけどラノベ原作のアニメみたいに映像化したら、若い人にも受けるかもしれないな、なんて思っている。第一作ではまだ凛々しい男装の女剣士、というおもむきがあったんだけど二作目では愛すべきお馬鹿、という親しみやすさが増している。

     姫なので全然恥じらいもなく、男の前でも平気で服を脱いだりもするので、今どきのアニメには向いている気もする。

     と書くと軽い印象だけど、時代考証や古文書の調べはものすごくやっている感じ。

     作者の近況がわからず、新作もここしばらく無いようだが、続きが書かれることはあるだろうか。
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