「皆勤の徒(酉島伝法著)」メモ
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「皆勤の徒(酉島伝法著)」メモ

2016-12-14 19:00


    ※著者名を「西島伝法」と誤記していました。正しくは「酉島伝法(とりしまでんぽう)」でした。
    ・だいぶ前に買ったんだが、最初の数ページでお手上げ、という感じでずっと読めないでいた。帯には「現代SFの到達点」なんて書いてあって、SF大賞も取ったらしくそれにちょっとつられたりしたのだが、失敗した~みたいに思っていた。4つの中篇が収められていて、最初が表題作の「皆勤の徒」。あとは「洞の街」「泥海の浮き城」「百々似隊商」となっている。あとは各作品の間に1ページの何というのか、語りみたいなものがあり、そちらに実は多くの情報が示されたりしているが、全部読んでからじゃないとさっぱりわからない。読んだからわかるというわけでもないのだが。
     洞は「うつお」、泥海は「なずみ」、百々似は「ももんじ」とルビがふられている。
     ものすごく読みにくいんだけど、あるラインを超えると一気に読めるようになった。だが読み終わった今も、何が書いてあったのかよくわからない。
     解説のちょっとネタバレっぽい説明を読んでも、なかなかすんなりと納得できない。私のレベルだと、おぼろげにしか全貌がつかめない。
     ネタバレ無しに説明するのは至難の業だし、ネタバレ全開で紹介してもわかってもらえる気がしない。
     巻頭の表題作が一番難解らしく、最後の「百々似隊商」がいちばんとっつきやすいそうなので、解説でも読みにくい人は最後のモモンジから読むのがいいですよ、と書いてある。それぞれ関連はあるが独立した作品なのでそれでかまわないらしい。

     どんなにわかりにくいかをわかってもらうために、冒頭をちょっと引用させていただく。
    ()はルビだと思ってください。

     書き出しはどの一日からでもかまわない。寝覚めから始るのも説話上の都合にすぎない。ただ、今日は少しばかり普段より遅れていた。 
     海上から百米(メートル)の位置にある錆びた甲板(かんぱん)の縁に、涙滴(るいてき)形の閨胞(けいぼう)が並んでへばりついていた。閨胞からは萎えて節(ふし)くれだった下肢(かし)がぶらさがっている。 殆(ほとん)どが干涸(ひから)びていたが、並びの右端にある閨胞だけは熟れた無花果(いちじく)の膨らみを保っていた。 
     その頂(いただき)に隆起した筋肉質の搾門(さくもん)から、従業者のやや間延びした頭が芽吹(めぶ)きだした。内膜に繁る繊舌(せんぜつ)に送り出され、痩せた裸身が分泌液の糸を引いて、搾門の輪からづるりと甲板上に吐き出される。
     従業者の名は、グョヴレゥゥンンといった。彼自身はそう呼ばれていることを知らなかったが、職場には自立歩行できる隷重類(れいちょうるい)が他にいないので、困ることはなかった。

     海上にそそり立つ石油採掘プラットホームみたいな構造物の上のほうに甲板があり、その上には建物がある。主人公の従業員は毎晩(夜なのかはよくわからないが)甲板周囲のよくわからない閨胞という生きている寝袋みたいなものの中で眠り、目覚めるとすぐに徒歩10歩のところにある鉄扉を開けて建物に入り、「出勤」する。
     職場には社長がいて、わけのわからない指示を出し続け、主人公は疲労困憊しながらよくわからない作業を続ける。社長は時々従業員の努力を台無しにするような破壊行為も行うが、その後始末も従業員が行わねばならない。主人公は人間みたいな気もするのだが、人間とも言い切れない。社長は明らかに人間では無い。
     そんな感じの毎日がひたすら過ぎていく。主人公には眠る以外に自由な時間は無い。食事(食餌と書かれている)時間はあるが、ちょっと口に合わないものを食べねばならない苦痛を伴う作業になってしまっている。何故ここにいるのか、いつまでここになければならないかも主人公にはわからない。そんなこと考えている暇もないし、記憶もはっきりしない。ルーチンワークの他に顧客も出入り業者も来るし監査役も来る。それらの対応も主人公がこなさねばならない。さらに外回りと呼ばれる敵対勢力が営業という名の攻撃をしかけてきて、これにヘッドハンティングされてしまうと、文字通り首を持ち去られてしまう。

     と、ストーリーを書いてもそんな内容にしかならないのだが、その表現は見慣れない言葉で埋まっている。上記引用にも隷重類(れいちょうるい)という言葉が出てきたが、他にも
    製臓物(せいぞうぶつ)とか整経(せいけい)、仮粧(けしょう)、馳聘船(ちへいせん)、羹拓(かんたく)など、ルビを見ると知っているような気がするが漢字を見るとわからない言葉や、大塵禍(だいじんか)や棄層(きそう)などルビを見ても何のことかさっぱり見当のつかない言葉が次々と出てくる。この作者の特徴のひとつはこの造語力で、基本的にふりがながあるので読めるのだが、イメージがなかなかつかめない。用語によっては説明されているのだが、その説明の中にまた別の造語があるのでやっぱりわからない。
     でも描写は的確で、よくわからないのはほとんど固有名詞であり、何かが何かと何とかして何かが生じたみたいなのはわかる。何か、普通に言えば当たり前のことを、わざと別の言葉で言いかえているのかなとも思うのだが、描写されている世界の仕組みは、知っているものとはかなり異なるらしい。

     そんな感じで「皆勤の徒」はサラリーマン?、「洞の街」は学生?、「泥海の浮き城」は探偵?、「百々似隊商」は旅人?の話であるらしい。
     「百々似隊商」ではこの世界がどのようなものであるかのヒントが比較的多く入っている気がするが、説明は全て作者がつくったこの世界の用語で行われるので、やっぱり理解しきれない。

     解説に入っている構想のようなものを読んでようやくわかる。じゃあその構想だけ読めばいいかというとそんなことはなくて、それではこの作品の表現の面白さはわからない。

     面白さって書いちゃったけど、面白いのかどうかもわからない。でも表題作の第一章がなかなか読めなくて何度も跳ね返されたんだけど、一章を突破してからはわりとぐいぐい読めた。

     でも好き好んでこういうのを読む人は少ないと思うので、あまり誰にでもオススメできるものではない。ハマル人には大傑作なんだろうと思う。

     解説でも、著者の読書暦にも出てくるけど、山尾悠子さんとか好きな人にはいいかも。
     私はグレッグ・ベアの「ブラッド・ミュージック」とか連想したんだけど、特に書いてなかった。

     これっぽっちも参考になる自信が無いけど、参考になれば。

     

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