「裏切りの第二楽章(由良三郎著)」メモ
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「裏切りの第二楽章(由良三郎著)」メモ

2017-01-11 19:00


    ・引き続き由良三郎作品の消化中。クラシック音楽好きの警視と、その甥の化学教師が探偵役をつとめる作品の三作目。

     今回は主人公の警視の方が勤務する県で初めてプロ級の弦楽四重奏団ができた、というニュースがあり、二人はその最初のお披露目講演に行きたいと願うが、残念ながら共に都合がつかず出かけられない。ところがなんと、そのお披露目講演の舞台上で、第一バイオリン奏者が昏倒し、死亡する。どうも毒殺、つまり殺人らしい。

     もともとは地元で葡萄園を経営する音楽マニアの男性が、ピアノをたしなむ奥さんと、チェロを弾く娘さんと一緒にはじめた家族楽団だったが、娘の音楽学校の同級生や、素人とは思えないバイオリンの腕を持つ銀行員(彼は音楽の道に進むか迷った上で、銀行員になった)がメンバーに加わった結果、屈指の腕を持つカルテットとなり、自分はさほどの腕ではないので演奏からは手を引いた夫婦は、一丁2千万以上するグワルネリという製作者の名器を4人分揃えて娘達を支援しようとする。さらに農園の敷地内に防音の音楽練習室を建て、楽譜のコレクションも充実させ、出来る限りの支援をして誕生したものだった。中でも銀行員は本職を目指したこともあるだけあって腕はプロ級、最近は高名な音楽教授のレッスンも夫妻の援助で受けるようになった4人が、満を持して向えたデビューだった。さらにこの銀行員と娘には縁談も進み、近いうちに養子に迎える予定もあったという。

     だが演奏を開始して間もなく、銀行員は死亡してしまう。そして彼は青酸系の毒物を飲んだらしいのだが、そのコップは鍵のかかった密室内に置かれていた。つまり被害者も含めて、誰もその部屋に入ってコップを置いたり飲んだりできた人物は、関係者の中にはいないというのだ。もしかしたら、密室になる前にその部屋にいた母親が狙われたのかもしれないのだが、彼女がコップで水を飲んだときには何事もなかったという。

     状況的にはこの楽団の演奏者、あるいは関係者の中にしか犯人は存在し得ない。音楽好きに悪人はいないと思いたい探偵役二人は、音楽の知識を使って関係者に聞き込みをすすめるのだが。

     今回もいろいろとミスリードに引っ掛かって、探偵二人は違う結論にたどり着くが、二人の会話を黙って聞いていた警視の奥さんが真相に導く、という筋立て。

     実は犯罪計画は失敗しているのだが、関係者がお互いを犯人と思い込み、それと知らずにかばいあった結果発生した(AがBを犯人と思ってBに不利な証拠を消し、BがCを犯人と思ってかばうために嘘の証言をし、CがDを犯人と思って・・・)摩訶不思議な状況であり、犯行の動機にも無理からぬものがあり、しみじみとした幕切れ。このラストは好感が持てる。
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