「本朝無双格闘家列伝(夢枕獏著)」メモ
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「本朝無双格闘家列伝(夢枕獏著)」メモ

2017-03-06 19:00
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・夢枕獏さんは、初期のものはほぼリアルタイムで読んでいたのだが、非常に刊行点数が多く、また新シリーズが次々に増えていくので途中で時間的、経済的についていけなくなってしまった。「魔獣狩り」「闇狩り師」「キマイラ」「陰陽師」「餓狼伝」「獅子の門」「大帝の剣」いずれも途中下車してしまって、その後どうなったか知らない。しばらく続刊が出なかったタイミングなどで離れてしまったと思う。聞くところによるとそれらのいくつかは既に完結、あるいは完結が近いところまでこぎつけているらしいが、今最初から読み直す元気も財力もない。
 でも単発で出る短編集や、数冊で完結するものなどは、リアイア後も手にとることがある。

 これもそんな感じの一冊で、格闘技好きの夢枕さんが主に日本の古典から格闘技の記述を拾い出して、時に執筆当時の格闘技界の裏話などに脱線しながらそこに記された人物や戦いについて解説を試みたもの。
 一部例外をのぞいて、ほとんど一般人が知らないような人が次々に登場し、そこに書かれた文章は、おそらく本当に戦いがなければとても書けないようなものである、と解説してくれる。

 章立てとか関係無く、登場する古典の中の人々を箇条書きにしていく。

・当麻蹶速(たいまのけはや):日本書紀
・野見宿禰(のみのすくね):日本書記
・建御雷神(たけみかづちのかみ):古事記
・建御名方神(たけみなかたのかみ):古事記
・美濃狐(みののきつね):今昔物語
・尾張の女(おわりのおんな):今昔物語
・大井光遠妹(おほゐみつとおのいもうと):今昔物語
・在原業平(ありわらのなりひら):大鏡
・海恒(常)世(あまのつねよ):今昔物語
・実因僧都(じついんそうづ):今昔物語
・寛朝僧正(くわんてうそうじょう):今昔物語
・真髪成村(まかみのなりむら):今昔物語
・私市宗平(きさいちむねひら):今昔物語・古今著聞集
・時弘(ときひろ):古今著聞集
・久光(ひさみつ):記載なし
・小熊権守伊遠(おぐまごんのかみこれとお):記載なし
・佐伯氏長(さえきのうじなが):古今著聞集
・高島大井子(たかしまのおほゐこ):古今著聞集
・中納言伊実(ちゅうなごんこれざね):記載なし
・畠山重忠(はたけやましげただ):記載なし
・長居(ながゐ):記載なし
・金:記載なし
・伊成(これなり):古今著聞集
・弘光:古今著聞集
・滝口太郎:曾我物語
・滝口三郎:曾我物語
・合沢弥五郎(あいざわのやごろう):曾我物語
・合沢弥七:曾我物語
・合沢弥六:曾我物語
・柳下小六郎(やぎしたのころくろう):曾我物語
・俣野五郎(またののごろう):曾我物語
・河津三郎祐泰(かわづのさぶろうすけやす):曾我物語

 登場する格闘技は全て相撲であり、相撲人(すまびと)という職業的に相撲をとる人々が平安時代くらいからいたらしい。現代の相撲とは異なり、打撃技や間接技もある様子だが、古典の中に、格闘技の試合記録や技術書みたいな記述が出て来るのが面白い。著者はそうしたところはほぼもれなく引用しているのだと思う。

”二人相対て立つ。各足を挙げて相蹶む。則ち当麻蹶速が脇骨を蹶み折く。
亦其の腰を蹈み折きて殺しつ。”

”恒世が頸を懸て小脇をすけり。成村は前の俗衣と喬の俗衣のかはとを取りて、
恒世が胸を差して只絡に絡ば、恒世、密に、
「物に狂い給か。此は何かにし給ぞ」
と云へども、成村聞きも不入して、強く絡て引き寄て、外懸に懸るを待て、内がらみにからみて、引覆て仰様に棄つれば、成村仰様に倒ぬ。其の上に恒世は横様に倒掛りたりける。”

”則ち立つままに、時弘をかきだきて地になげ伏したりければ、時弘しばしはうごかざりけり”

”河津が手合をよく見れば、御分にみぎわまさりの力なり。かれ体の相撲をば、左右の手をあげ、爪先をたてて、上手にかけてまち給へ。敵も上手に目をかけて、のさのさとよる所を、小臂をうちあげ、ちがひさまによついをとり、足をぬきてはねまされ。大力も、はねられて、足のたてどのうく所を、すてゝ足をとりて見よ。くみてはかなふまじきぞ。もし又、くまでかなはずは、うちがらみに、しはとかけて、髻をおちをはかせ、一はねはねて、しととうて。”

 などと引用されている。言葉がいろいろわからないが、なんとなく雰囲気はわかる。くわしい現代語訳は著者が非常にわかりやすく記している。こういう文章を中学高校の古文教科書に載せてもいいんじゃないかな。

 この本の最初と締めくくりには、ちょっと悪役の乱暴者っぽい印象が強い、当麻蹶速の言葉が繰りかえし引用されている。

”四方に求めむに、豈我が力に並ぶ者有らむや。何にして強力者に遇ひて、死生を期はずして、頓に争力せむ。”

 この言葉をもって、著者は当麻蹶速こそ、「人は何故戦うのか」という根源的な問いに答えたどころか、そんな答えを吹きとばしてしまうほど激しく叫んだ人物として記し、自分が望んだ試合の中で死んでいった蹶速の方が、戦いに勝って唯一の理解者を失い、年老いて旅先で病死した野見宿禰よりも幸せであったのではないか、と記している。

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「獅子の門」は、一昨年(だったか?)完結しましたね。一応全部読んでます。「キマイラ」シリーズはもう諦めました(~_~;)。他のシリーズは完結不要な感じもします。。。2000年以降に出てきたシリーズはほとんど知りませんが(~_~;)。
33ヶ月前
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 bassedance様、コメントありがとうございます。
 「獅子の門」全部読まれたんですか。私はもう
登場人物名も覚えてません。もう一気読みできる
ボリュームも超えちゃってるでしょうね。
 読めばそれなりに面白いんでしょうけど、もう
いろいろ気力がありません。
 キマイラ諦めたのは賢明かもしれませんw
33ヶ月前
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「獅子の門」は5~7巻くらいじゃないでしょうか。実は手元に残っているのは最新(最終)巻だけ。今読みたいのは、九十九乱造が出てくる作品です。
33ヶ月前
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bassedance様、どうもです。
「獅子の門」、ウィキペディアで確認してみましたが、私が読んでいたのは
板垣恵介さんのイラストがまだ無かった頃ですね。3巻あたりまでだろうと思います。

 闇狩り師は、SFアドベンチャーでリアルタイムで読んでました。
長編よりも短編連作時代の方が好きでした。
33ヶ月前
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