はやぶさ2トークライブVol.8
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はやぶさ2トークライブVol.8

2017-04-23 19:00



     8回目のはやぶさ2トークライブ。個人の記憶と自分でもあまり読めないメモを頼りに記事を書いておりますので細部の表現とか事実とかに誤解や誤りがあるかと思いますのでそのつもりで。
     今回のメインテーマはDCAM3。
     「D」はdeploy(展開する、配置する)という単語由来だそうで、「分離する」みたいな意味もあるので使ったらしいがあまり
    わかってもらえなかったらしく、separate(離す、切り離す、引き離す)にしてSCAMにしておけばよかった、今からでも可能であれば名前をつけなおしたい、と開発者の方は言っていた。
     そのまま日本語にすると「分離カメラ」。なぜ3がついているかというと、1、2は既に開発済で「IKAROS」に搭載され、ソーラー電力セイルがきちんと展開したか、ということを本体からちょっと離れた所から撮影するのに使用されたということ。


     今回はこのDCAMの担当をされた方お二人がゲスト。工学系の方と理学系の方。澤田弘崇(ひろたか)さん(JAXA はやぶさ2プロジェクト 主任研究開発員)、小川和律(かずのり)さん(神戸大学大学院 理学研究科 惑星学専攻 技術職員)。
    http://sagamiharacitymuseum.jp/blog/event/%EF%BC%94%E6%9C%88%E3%81%AE%E3%80%8C%E3%81%95%E3%81%8C%E3%81%BF%E3%81%AF%E3%82%89%E5%AE%87%E5%AE%99%E3%81%AE%E6%97%A5%E3%80%8D%E3%81%AF%E3%80%8C%E3%81%AF%E3%82%84%E3%81%B6%E3%81%95%EF%BC%92%E3%80%8D/

     今回はいつものH田さんはイオンエンジン運用中のせいか仕事でご多忙とのことで、つくばのタケイさんという方が司会。吉川先生からはやぶさ2の近況報告があり、「順調です」1行で終了。だが決して何もしていないわけではなく、現在はイオンエンジンの長期運用中でこれがもうすぐ終了のタイミング。また回転座標系という図で見ると今は比較的地球に接近している時期らしく、L5、いわゆるラグランジュ5にどのような物体あるいは天体が存在するかを観測するとのこと。さらに地上では、小惑星リュウグウ到着後に何をするかさせるか、ということについて血で血を洗うような科学者・技術者間のせめぎあいが繰り広げられているとのこと。

     分離カメラって何でしたっけ、というところを簡単に復習すると、はやぶさ2に搭載されているスペースキャノンで竜宮表面を爆破して深い部分のサンプルを回収するのが今回の最重要ミッションなわけだけど、せっかくそういうことをするならその爆破の瞬間を見たいよね、ということになって、はやぶさ2本体で観測すると破片が飛んできてあぶないから本体が逃げた後にそのへんに残って撮影する何かが必要だ、それならイカロスで使った分離カメラでいいじゃない、そうだそうしよう、ということになったみたい。

     まず工学系の澤田さんのお話から。もともとイカロスでの分離カメラを担当されていたとのことで、はやぶさ2にも同じような分離カメラを載せたいみたいなオファーがあったので同じようなものでいいんだろう、と軽い気持ちで引き受けたところ
    ①前回のカメラはせいぜい15分位バッテリーが持てばよかったのだが、今回は最低1時間、
     もしくはもっと長く持たないとけない。
    ②前回はアナログの低解像度カメラでよかったが、今回はある人の圧力により高解像度の
     デジタルカメラを搭載しなければならなくなった。
    ③前回はカメラの回転軸は探査機の進行方向と同一だったが、今回は進行方向と直角の回転軸
     にしなければならない。

     ということでカメラはどんどん当初の予定よりも巨大なものに。前回は直経6cm×長さ6cm(だったかな?)で重さ280g程度だったのが最終的には直経8cm×長さ8cmで重さ600gと重量比で倍以上になったという。また、予定よりカメラが大きくなりそうだ、と聞きつけるとそれならこういう機能も追加できるよね、と言い出す人もいて
    機能が多くなる→図体が大きくなる→じゃあもっと機能を増やせるよね→もっと図体が大きくなる→じゃあもっともっと機能を増やせるよね→もっともっと図体が大きくなる→じゃあもっともっと・・・
     みたいな無限ループってコワイよね現象が発生してしまって、もうえーかげんにせい、といういろいろがあったらしい。

     結果的にアナログとデジタル2系統のカメラを積み込むことになり、それぞれDCAM3A、DCAM3Dみたいに呼ばれていてこれはアナログの低解像度だがリアルタイムの映像も、デジタルの高解像度(だがリアルタイムでは送れない)映像もどちらも観測のためには必要だ、ということになったからだそうで、両方の電波を比較するとアナログは東京タワーから送っていたテレビ電波、デジタルはスカイツリーから送っているテレビ電波、とほぼ同じようなものだという。

     アナログカメラでの設計がかなりすすんだところでドウシテモデジタルカメラを積むんだ、ということになってかなり苦労されたことが、ここで言わないでいつ言うんだ!という感じでほとばしっていました。

     カメラが安定して同じ方向を撮影し続けるためにはカメラ本体を回転させることが必要で、カメラは缶ビールの缶みたいな格好なのだけど前回は缶ビールの缶を立てて回転させながら送り出したのを、今回ははやぶさ2がまず横に逃げてそれから下に逃げてリュウグウの陰に回りこむわけなので、ビール缶をベッドの上に寝かせておいて、まずベッドごと放り出して、回転させながらさらにベッドから放り出すみたいになるんだと思う。

     アナログカメラはカラーだけど、意外な気がするけど高解像度のデジタルカメラは白黒とも。これは後半に話をする小川さんとのすり合わせで、何を観測したいかを明確にした結果らしい。

     一番の気がかりな点としては、カメラがきちんと動作するか、というチェックを本番まで
    行うことができない(外部電源を持っていない)というところで一発勝負。そういう意味では今回はスペースキャノン(とあんまり言うとお叱りを受けそうだが)ことSCI(Small Carryon Impactor)も一発勝負だし、担当された方々へのプレッシャーは大きかったように思う。人事を尽くして天命を待つ心境だと思うので本番を無事終えて3日間くらいパーティーをできる日が来ますように。

     今後もこの分離カメラを発展させていって、着陸船の周囲にこのカメラをバラまいて着陸の様子をどの方向からも再現できるようになるといいな、みたいなことをおっしゃっていた。

     このへんでパネルディスカッションが入ったと思うが、澤田さんはサンプラホーンなども担当されていたが一番てこずったのはこの分離カメラで、吉川先生に「たいへんでした?」と聞かれると「たいへんでした」と答えていた。小川さんの方は一番苦労した点は?と聞かれると「澤田さんの説得でした」と答えていた。
     はやぶさ2はいろいろあって開発が超突貫工事になったわけだが、分離カメラにもそうしたしわよせがかなり来ていた印象でした。

     続いて小川さんのお話。小川さんは分離カメラで得られたデータを分析する立場の方で、以前はかぐや=セレーネ、実現はしなかったがセレーネ2などのプロジェクトに参加されていたとのこと。

     こんなことを確認したいからこんな写真がほしい、だからこんなカメラがほしい、というような三段逆スライド方式で今回の分離カメラに対する顧客要求事項を説明された。

     まず眠くなる話として、地球型惑星や木製型惑星、ガス惑星や氷惑星などの話をして、そうしたものがどのようにできたのか、ということは現在観測できないミッシングリングがあって推測の域を出ない、という話をされて、実験を繰り返してどんなものがどのくらいのスピードで衝突するとどのくらいの大きさのクレーターができる、なんていう計算式を導き出したりする。こうしたアプローチで天体の構造やでき方を推測したりできるらしい。

     この時変数になるのは例えば衝突する何かの入射角であったり、衝突された天体表面から飛び散る物質が作る、イジェクターカーテンという水面に水滴が落ちた時にできるミルククラウンみたいなものの外周が地面に対して作る角度であったり、その直径だったりするらしいが、その計算式は地球上の重力からは逃れられない環境下で、ごく小規模の実験の結果として導き出されたもので、それが本当に宇宙空間で大規模な衝突の場合でも成り立つのか、という確証はない。そこにハヤブサ2はサンプル回収のために小惑星に弾丸を撃ち込むらしいよ、なんて話が聞こえてくれば、当然その様子は観測しないといけないよね、観測対象が状態の変化みたいなものならアナログカメラでもいいけど、イジェクターカーテンがどのくらいのサイズの粒子でどんな感じに分布して発生するのか、なんてのは高解像度のデジタルカメラで当然撮るべきだよね、と三段逆スライド的結論になってその開発のお願いにJAXAに出向いたらすごく不機嫌な人がいて、その人と一緒に分離カメラの開発をすることになったという。

     はやぶさ2の開発には多くの困った要素があって、うろ覚えだけど
    ・コンセプトがなかなか確立しなかった
    ・多機能のものを求められた
    ・短期間での開発を強いられた
    ・環境試験の項目がものすごくたくさんあった
    ・お金が無かった

     みたいなことが最初から最後までつきまとい、人手不足でもあったので多くの環境試験は不機嫌な人と自分の二人だけで行うこととなり、試験のために機器を釣り糸で吊ったり、回転時の通信機能を試験するために電動ロクロ(専用の試験装置があるらしいんだけど高価で買えず、「電動ロクロってのがあるみたいだよ」「ふーん」という会話をした翌日には実験室にあった、とのこと。回転が速くなりすぎるとカメラが吹っ飛んでしまうので、一定以上速度が上がらないように速度調節レバーにストッパーをつけるなど改造したそうです)を見つけてきたり、みたいなことをたくさんして、お願いだからあと300ミクロン大きくして、と土下座して頼んだりしたりもしたらしい。
     不機嫌な人はキツイことを言いつつも、工学チームの人の中で一番理学チームの希望をなんとか実現させてやろうと真剣に考え続けていてくれた人でもあった、とも大人のフォロー。
     最終的な分離カメラのはやぶさ2への組み付けも2人でやったということで、その時に並んで撮影した笑顔の写真も紹介されていた。

     写真のデータ形式はJPEGで、LS?とかいう記号がつく可逆のもの、つまり元のデータに復元可能な圧縮方式のものだという。アナログカメラの搭載にこだわったのは、デジタル画像はデータが大きいので1枚伝送するのに例えば5秒かかり、4秒時点で破片に当たるなどすればデータはゼロ、何も得られないが、アナログだとほぼリアルタイムに伝送されるので4秒分のデータは得られる、というようなことも考え合わせた結果だとも。
     また得られたデータを高解像モード(2000ピクセル×2000ピクセル)として伝送する場合と低解像モード(400ピクセル×400ピクセル)で伝送する場合とがあるらしく、物の形状を見たい時は前者、明るさを見たい時は後者などと使い分けるとも。

     実際にカメラに写る映像はこんな条件だとこんな感じになるでしょう、みたいなCGを司会のタケイさんが制作されたという事で、それも紹介されていた。カメラはおそらく最終的には小惑星の重力に引かれて落下するだろうとのこと。ミネルバみたいに小惑星間物体にはたぶんならない模様。

     今後はDCAM4はとある事情で欠番だが、DCAM5を火星の衛星フォボスに送り込むべくいろいろとせめぎあいをしている最中だという。

     こうした写真撮影が成功して、それらが大きく報道されれば宇宙開発への関心や予算も大きくなっていくだろうから、うまくいってほしいです。いい写真が撮れればサイエンスの表紙を飾るのは間違いないだろうとも。2019年度には早ければその結果が見られるそうで、特にアナログ系に関しては出来る限り早く公開できるようがんばりたいとのこと。

     今回はそんな感じでした。毎回質疑なども含めると時間オーバーになって、博物館の人がじりじりしているのがわかるんだけど今回はほぼ時間ピッタリに終わりました。
    最初のうちだけ取材のテレビカメラが入っていて、テレビ神奈川だそうです。
    http://www.tvk-yokohama.com/bangumi/index_3.php
     4月26日12時からの「東大卒の太田裕二がJAXAに挑戦」というコーナーみたいですね。そういえば赤いツナギみたいな服を着た人がうろうろしてましたが、すぐいなくなってしまいました。
     後ろの方にちょっと幼い子供さんを連れて来ている方が数人いらっしゃいましたが、お子さんはぐったりしていた様子。退屈なのか大声を出している子もいて、今回はそんなに難解な内容ではなかったと思いますが子供が見て面白いかというとビミョーなところで、子供がもたないので途中でお帰りになった人もいらしたようです。お子さんの一時預かり施設なんかがあればお父さんお母さんがもっと来れるのかな。

     5月3日には小中学生向けの無料イベントが相模女子大学グリーンホールで開催予定。
     http://www.isas.jaxa.jp/outreach/events/000909.html
    5月14、14日には相模原市立博物館でプラネタリウムこども無料デーだそうです。
    http://sagamiharacitymuseum.jp/blog/event/%e3%83%97%e3%83%a9%e3%83%8d%e3%82%bf%e3%83%aa%e3%82%a6%e3%83%a0%e3%81%93%e3%81%a9%e3%82%82%e7%84%a1%e6%96%99%e3%83%87%e3%83%bc%ef%bc%885%e6%9c%88%e3%81%ae%e3%81%95%e3%81%8c%e3%81%bf%e3%81%af%e3%82%89/?instance_id=33918

     お父さん、お母さん、無料ですよ。


     トークライブVol.9は6月17日ともう決まっているそうです。私は法事があるんだけど。
    法事は翌日なので土曜のうちに移動するわけなので無理すれば行けるのだが。




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