「第五惑星から来た4人(マレー・ラインスター著)」メモ(ネタバレ)
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「第五惑星から来た4人(マレー・ラインスター著)」メモ(ネタバレ)

2017-06-19 19:00



     1959年発表の古典なのでネタバレします。原題が「FOUR FROM PLANET5」。
    ・ギッセル湾にあるアメリカの南極基地。ほとんど雪に埋もれたメイン・ビルディングの脇にドーム型の大流星観測所があり、ここで導波レーダーを使って流星を観測している男がいる。
     退屈で単調な仕事で給料も安いが彼は満足していた。これまでは。
     陸軍婦人部隊の広報官に連れられて、通信社から婦人記者がやってくるまでは。彼女は彼の地味な研究に、おざなりとは思えない興味を示し、彼が観測している流星の軌道がわかるとどうなるんですか?と質問をしてくる。彼がデータが揃えば第五惑星がいつ爆発したのかわかるかもしれません、と話すとさらに彼女は興味を示す。彼は彼女に心ひかれはじめており、これまでは気にならなかった自分の境遇や給料が気になりはじめている。
     そんな時新たに流星が観測網にかかるが、レーダーが通常とは異なる反応を示す。その流星は不連続に存在しているようなのだ。さらに世界中の機械を狂わせるような電気的ノイズが発生する。その物体は宇宙から来たのではなく、突然空中に出現してマッハ3のスピードで移動している。やがて物体は空中で静止し、墜落する。
     彼はヘリコプターの操縦士も兼ねていたので翌朝別の任務のふりをして墜落地点を調査に行く事にする。広報官も同意し、婦人記者が同行する。
     地球物理学者は観測された振動は爆発ではなく爆縮のような、内側へ向う爆発からはじまっているようだ、と首をかしげる。
    そして調査に出た彼らは、宇宙船の残骸と男2人、女2人、全部で4人の子供を発見する。外見は人間と変わらない彼ら、彼女らは言葉が通じず、主人公には何だか見当もつかない道具で宇宙船を修理しようとしている。さらに何らかの装置の効果で、宇宙船の周辺では防寒着が不要なほど暖かい。

     子供たちは何か通信機のようなものを組み立てている。助けを呼ぼうとしているらしい。主人公は彼らが地球よりはるかに文明が進んだ星?から来たのだと直感し、助けを呼ばせてはいけないような気がして通信機を焼いてしまう。
     それまではことらをあまり気にしていなかったような子供たちの顔色が変わり、主人公に怒りのような表情を向けるが、やがて絶望がそれに変わる。さらにヘリコプターがやってくると、子供たちはわずかな手荷物をまとめると宇宙船を跡形もなく焼いてしまう。

     基地に連れてこられた子供たちはおとなしくしている。彼らの携行品はいろいろ信じられない性能を持っているが、原理はさっぱりわからない。燃料なしに料理を作れる鍋。気温制御装置。常温で超伝導状態のケーブルもある。
     陸軍婦人部隊の広報官は頭のかたい人物で、この作品が書かれたのは冷戦時代なので最初は彼らをソ連の手先と思い、次に彼らの秘密をソ連に渡してはならない、といきりたってしまう。だが女性記者は彼らに暖かく接し、言葉と文字を教える。
     主人公は彼らの存在が東西の軍事バランスを崩す事になるだろう、と直感しているが、子供に危害を加えようとは思っていない。彼らの先行きを案じ、できるだけ力になってやろうと決心している。ふと思いついて基地にいる犬を彼らに見せてみる。もともと人なつこい犬で、彼らは犬を気に入るが、彼らのふるまいを見て主人公はますます彼らが犬というものがいない、地球とは別の世界から来たのだと確信を持つ。
     婦人記者は自分が報道の現場にいるだけに、彼らのことがマスコミにばれればどれだけ興味本位で無責任な報道がされることになるかわかり、案じている。軍人の広報官は口止めをして本国に報告に出向く。

     この基地は軍のものではなく、科学調査基地なので、隊長は常に世界中の科学者と交信している。科学者同士の気安さから、彼は4人のことを他国の人間に話してしまう。その結果、宇宙人が侵略に来た、みたいなセンセーショナルな記事が新聞にたくさん出てしまう。
     ソ連は彼らはアメリカでなくわが国に来るべきだ、などとアメリカを非難する。世界中が正しい情報もないまま好き勝手をいう。
     婦人記者は根気よく彼らに言葉を教え、彼らの名前を呼ぶようになる。
     各国はアメリカの基地を理由をつけて訪問しようとし、ついにソ連は実力行使に出る。故障した、という建前で軍用機がアメリカの基地に向っている。基地に武器はない。

     主人公は子供たちを避難させようと準備をし、ちょうど戻ってきた広報官の飛行機で脱出する。子供たちは、Aという子に何かを教えると残りのB、C、Dもそのことを知っている、というふうでテレパシー能力のようなものがあるのかもしれない。

     ここで考えの道筋は全く示されずに主人公は彼らは過去の第5惑星から来たのだ、と悟る。
    高い文明を持った彼らは第5惑星が滅びるにあたり、未来の地球を避難先に選んだのだと。そして彼らは先遣隊で、主人公が焼いてしまった通信機は彼らが後続隊に無事を知らせるものだったのだ。この推論がトートツに出て来るのがラインスターらしいというか。

     だが子供たちを乗せた飛行機は結局上からの命令で、とある基地に着陸させられる。軍人や科学者が子供たちや道具を調べるが何もわからない。
     主人公は子供たちがもし通信を送って彼らの世界の大人たちが次々にやって来れば、地球の科学力では絶対に太刀打ちできないだろうとわかっている。だから通信機を破壊したのだが、その結果子供たちを孤立させてしまったことは申しわけないとも思っている。

     ソ連は基地にスパイを送り込んで宇宙船の写真を入手。これを国連で発表し、アメリカが宇宙人を拉致していると訴える。主人公と婦人記者は反論のレポートを協力して書き、子供たちを世界が受け入れてくれるように努力する。

     子供たちの会話は複雑な話をできるレベルまで上達しないが、絵を描くことによって故郷の様子がわかってくる。そして子供たちは第5惑星から来たのではなく、第5惑星が爆発する際の被害から免れるために、当時の地球から未来へタイムトラベルしてきたのだとわかる。
     子供たちが婦人記者と主人公によくなついたので、軍も彼らを引き離さずに顧問として軍属に加える。

     いろいろあって子供たちがテレビに出演してインタビューを受ける事になる。主人公と婦人記者も一緒だ。だが子供たちを怪物よばわりする群集が押しかけ、生放送のスタジオに乱入する。司会者のネックレスと、子供の一人のベルトを奪って逃げる。実はこのベルトをつけたものは視覚と聴覚を他人と共有できるのだった。主人公は犯人を追って盗まれたものを取り返す。だがネックレスを取り返してもらった女性司会者がこの説明をはしょり、子供たちがテレパシーで泥棒の心を読んだみたいに伝えてしまう。
     テレビでこれを見ていた視聴者は、子供たちをバケモノのように思い、忌み嫌ってしまう。さらにアメリカ以外の国は、アメリカが子供たちを使って彼らの秘密を何でも知ることができるようになったと恐怖する。
     テレビ放送は裏目に出て、子供たちは人類の敵みたいになってしまう。

     子供たちの周囲からは、心を読まれてはたまらんと(誤解なのだが)軍人が消えてしまい、遠隔監視されるようになる。子供たちに接する大人は主人公と婦人記者のみ。このころにはもう二人は愛し合っているが、子供たちをなんとかしてやりたいと今はそれどころではない。

     子供たちは持っていた装置を取り上げられる。男の子一人は監視の目を盗んで姿をくらませる。子供たちはまだ何か主人公が知らない方法でいなくなった一人と連絡を取っている気配がある。そしていなくなった一人は、なんとしても他の仲間と連絡を取るために何かをしようとしている。おそらくは材料を手に入れて通信機を作ろうとしているのだ。
     主人公は子供たちがまだ隠していた小型感覚共有装置とでもいうものを渡される。これで逃げた子供と感覚の共有ができる。だが軍に取り上げられた分は常に誰かがつけて監視している。主人公は逃げている子供に見張られているぞ、とメッセージを送る。
     子供の居場所は軍もほぼつかんでいるらしく、一度などもう少しで撃ち殺されるところだったらしい。

     少年は発電所に忍びこみ、何かをしようとして失敗する。おそらく通信を試みようとしたのだろう。通信には大電力がいる。だが少年があり合わせの材料で組み立てたらしい通信機は壊れてしまう。その結果少年は負傷し、広範囲の停電が起きる。主人公は感覚共有装置のおかげで少年を見つけ、助け出す。だがこれを国は少年の地球征服計画と受け取ってしまう。

     アメリカは少年を恐れ、アメリカ以外の国はアメリカを疑う、という感じで世界がきな臭くなっていく。アメリカは宇宙人の技術を手に入れて、自分の国を攻撃する準備をしているんだ、と思い込んだ国はどんどん戦争に傾いていく。

     少年を助けた主人公はしばらく二人で釣りをして過ごす。二人の距離が少し縮まる。

     婦人記者は残った三人の子供と過ごしていたが、彼らと親しくなってある事実を知る。その事実は主人公を少年たちの味方にしてくれるものだった。
     主人公は少年たちの仲間の大人が大勢やってくれば、地球の文明は滅ぼされてしまう、と思って通信機を壊したりした。だが、仲間はわずか2000人しかいないというのだ。

     一方、主人公に協力する科学者たちは少年たちの技術を見て、新たに発想を得てある武器を作る。それは飛行中のミサイルを核弾頭ごともれなく溶かしてしまう技術。アメリカはこの防御専用兵器を自国と全ての同盟国のために使うと宣言する。
     これによって核戦争の危機は去る。

     婦人記者はこれを少年たちの装置で主人公に伝える。少年が仲間を呼んでも、現在の地球人が滅ぼされる事は無いと確信した主人公は少年と力を合わせて、仲間を呼び寄せる装置を作る。

     少年の仲間がやってくる。主人公は彼らと協力して星の世界へ旅立つ人類の未来を思う。

     ある程度のセリフがある人物が、主人公と婦人記者、広報担当の女性軍人、やって来た少年のうちの逃走する一人しかいない。非常に登場人物の少ない小説という印象。第5惑星から来た4人も名前はあるもののあまり個性を感じるような描写はされていない。

     主眼は新たなテクノロジーがもたらされるとアメリカは、世界は、どう反応するか、というところに置かれているようで、今よくあるSFみたいに圧倒的な科学力でとてもかなわない、という宇宙人じゃなくて、この作品みたいに地球人よりちょっとだけ進んだテクノロジーを持っているけど遭難したとかで地球をどうこうする力はない、みたいな異星人が来たらこんな感じかもっとヒドイことになってしまいそう。なので古典だけど今読むと妙にタイムリーな気がした。

     アステロイド・ベルトは第5惑星の成れの果て、というよくある設定。
     でもはやぶさが持ってきたイトカワの岩石は一度も惑星にならず熱の洗礼を受けていない、太陽系が出来たときの記憶を持ったものだ、ということになると第5惑星は無かったことになるのかな?はやぶさ2の帰還がそんな意味でも待ち遠しい。

     題名に偽りありで、4人は過去の地球から来たというオチ。彼らの時代の文明の後は第5惑星から飛んできた隕石で跡形も無く消し去られたという一応辻褄があっているようなそれでいいのか、というような。

     ギッセル湾という南極の地名が出て来るが、これは同じ著者の「地の果てから来た怪物」にも登場する。実在の地名なのか、著者の創作なのか、発音とかが違って存在するのかよくわからない。

     ラインスターという人は解説によればいい意味の通俗作家で、独創的なアイデアや強烈な個性はない代わりに、傑作を書こうと力まずに読者の動向と好みを尊重して作品を作るサービス型の作家だという。中短編合わせて1000編以上、SF以外の娯楽小説やテレビの脚本(「タイムトンネル」「巨人の惑星」など)もたくさん書いているが代表作はこれといって無い、みたいな人みたい。アメリカのSFの第一世代みたいな人で、長く活躍してSF界の長老みたいに呼ばれたりもしたらしい。日本で例えると多作で活動期間が長く、どんな分野でもこなすというところで辻真先さんみたいな感じかなあ。

     子供向けのSFシリーズにはこの人の作品がよく入っていて、「怪獣惑星SOS」「宇宙からのSOS」「ゆれる宇宙」「わすれられた惑星」なんかは読んだ。なのでどこか懐かしい名前。
     でも今現在買えるこの人の作品はほとんど無いな。
     
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