「隣の女(向田邦子著)」メモ
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

「隣の女(向田邦子著)」メモ

2017-09-03 19:00


    ・短編5本が収録されている。

    ・隣の女
     隣の音が筒抜けになるような安アパートでつましく暮らす夫婦がいる。妻は専業主婦だが子供はいない。昼間は自室でミシンを使い、内職をしている。隣のスナックママの部屋にはしばしば男が訪ねてきて、大声で喧嘩したり大声で仲良くしたりするので落ち着かない。男は二人いるらしい。
     妻は、隣の女が男の一人とガスで心中を図ったのに気付き、ベランダからガラスを割って飛込こんで助ける。これをきっかけに夫婦と隣の女、そして心中を図らなかった方の男とが関わりを持つことになる。

     これは以前桃井かおりさん主演で映像化されたことがあるらしい。浅丘ルリ子、根津甚八、林隆三という顔合わせだったらしい。今調べたら寺島しのぶさん主演でも映像化されているらしい。どちらも見た事はない。

    桃井さんバージョンはニューヨークロケまでやった2時間単発ドラマで、当時は話題になって名作と評価されているらしい。でも気軽に見れる仕組みがないと、どんどん埋もれて忘れられてしまう。向田さんほどの人の作品であっても。

    ・幸福
     洋裁店のお針子をして働く20代後半の女性。美容師になりたかったのだが、ワキガのため諦めた。町工場で旋盤工として働く恋人がいる。彼はいつも油臭く、自分の臭いを気にしなくてよい。彼女には水商売をしている姉がいる。生真面目で堅い、楷書のような妹に対してさばけて物柔らかな草書のような姉である。
     だが堅い妹は結婚寸前であり、社交的な姉は独り身である。姉には結婚を考えた相手がいたのだが、突然一方的に振られたのだという。実は、その相手というのが今妹が付き合っている男の兄なのだという。だが姉は水商売をやっているだけあって、ほかにもいろいろわけありらしい。
     姉はある人物にスカウトされて、別の店の雇われママからその人物が新しく開くママとなる。だが開店の日、突然入ってきた客に腹を刺されてしまう・・・

    ・胡桃の部屋
     堅物で通っていた父親が突然蒸発してしまった女性。父の会社はひと月前に倒産していた。残された母親と浪人生の弟、中学生の妹を支えるべく、彼女は父親代わりになって三年間頑張ってきた。恋をする余裕など無く、20代が終わろうとしている。
     もと父の部下だった男に、父は無事に生きていること、父は若い女と一緒に暮らしていると聞く。もう妻や子供と会う気はないらしい。
     相談を繰り返すうちに、父の元部下に思慕を抱くようになる。だが彼には妻子がいる。彼を好きになることは、父の行為を認めることになる・・・

     これは娘が松下奈緒さん、父親が蟹江敬三さんで映像化されていたのを見た記憶がある。
    映像版では登場人物もエピソードも増えている様子。
    http://www.nhk.or.jp/drama10/kurumi/


    ・下駄
     主人公は出版社勤務の男性。いつも出前を頼む店の従業員から、自分の弟だと知らされる。父親がよそに作った女の子供だったのだ。言われてみれば顔の形が二人とも下駄のように四角く、よく似ている。
     だが、困った事に彼は次第になれなれしくなってくる。他の社員の手前、それは困る。だんだん出前を頼むことも苦痛になってくる・・・

    ・春が来た
     目立たないタイプのOL。浮いた話のないまま27になってしまったが、取引先の男性と口をきくようになる。美男子でもなく切れるタイプでもないが、育ちがいい印象。
     ついつい彼女は見栄を張ってしまう。父親は広告業の共同経営者(スーパーのチラシを細々と作っている)、母はお茶とお花をたしなむ(昔羽振りが良かった頃の話)、妹は詩を投稿して5万円もらった(実は1万円)、家は戸建て(壊れかけている)、etc
     だが彼女がタクシーのドアに足首を挟まれたため、彼はどうしても、と彼女を家まで送ってきてしまう。父も母も妹も家も、彼女が見栄を張った話とは違うのは一目瞭然。もう終わりだ、と彼女は覚悟する。
     だが彼はそれから週末ごとにやってきて、彼女の家に上がりこみ、家族の一員のように過ごしていくようになる。人生に負けて自堕落にささくれていた彼女の家族が、彼にエネルギーをもらうように元気に明るく変わっていく・・・

     「下駄」をのぞいて主人公は20代後半の女性。既婚も未婚もいるが、どこか今までの人生にこれでいいのかな?というような思いがある。そこに自分を変える出来事、具体的には男性が現われる。自分の変化とともに、父や母も男であり、女であったとあらためて気付く、みたいな話。向田さんのファンは女性に限ったわけではなかったわけだけど、やはりこういう話は女性に受けたんだろうか。
    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。