「桃太郎侍(山手樹一郎著)」メモ
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「桃太郎侍(山手樹一郎著)」メモ

2017-11-12 19:00


    ・一時期高橋英樹さん主演でテレビシリーズになっていたので、著者の作品の中では最も知名度が高い作品と思われるけど、原作とテレビは全然内容が違う。テレビは時代劇チャンネルの番組紹介を引用すると
    徳川十一代将軍家斉の御落胤で、松平備前守新之助(高橋英樹・二役)の双子の弟である松平鶴二郎(高橋英樹)は、乳母の死をきっかけに浪人・桃太郎となる。スリの少年・仙太(雷門ケン坊)を助けたことで、娘軽業師の玉川つばめ(野川由美子)や、もと盗賊の担ぎ呉服屋・猿の伊之助(植木等)と知り合った桃太郎は、浅草お化け長屋屋敷に暮らすことになる  
    「桃太郎侍」といえばこの作品と言えるほど、高橋英樹の代表作となった。「一つ、人の世生き血をすすり、二つ、不埒な悪行三昧、三つ、醜い浮世の鬼を、退治てくれよう、桃太郎」(第27話から登場)という決め台詞、派手な衣裳での豪快な立ち回り、弱きを助け悪を斬る、笑いあり、涙ありでおくる一話完結の勧善懲悪時代劇の金字塔!

     みたいに紹介されている。決め台詞には「桃から生まれた 桃太郎!」なんてのもあった。
     私は人間関係とかはよくわからないまま見ていたが、庶民が殺されて主人公が決め台詞を言って般若の面をかぶって登場して悪人を成敗するというワンパターン時代劇と思っていた。

    オリジナルのものが見つからないのでミクさんの歌だけど、こんな主題歌でした。


     結構人が死んでいる話で今調べたらレギュラーや準レギュラーが主人公の双子の兄まで含めてクライマックスでバタバタ死んでいくかなりハードな締めくくりだったみたいだけど、どこかのどかな雰囲気があったように記憶している。人がほとんど死なない時代劇として有名な
    同じ高橋さん主演の「ぶらり信兵衛-道場破り-」と印象が混ざってしまったのかもしれない。これも「見た」という記憶だけあって、内容までは覚えていない。

     庶民が暮らす長屋に子供に読み書きを教えている浪人がいて、隠しているけど実は剣の達人で、困ったことがあると相談にのってくれる、みたいな印象になっている。

     何かの折に原作を読んだら、そういうのとは全然違って、長屋なんか出て来るのは最初の方だけで、目的地に向って旅をする、みたいなタイプの話だったけど面白くて一気に読んでしまった。もう二十年くらい経っているので原作も記憶がおぼろだが、久々に読みかえすことに。

     元盗賊の担ぎ呉服屋が、懐が暖かいらしい若い浪人を見つけて元盗人の習性のような感じでなんとなく後をつけてしまう。すると女掏摸が同じように浪人をつけていることに気付く。こちらはあきらかにカモとして狙っているらしい。呉服屋は対抗心が出て来て様子を見ていると、女掏摸の方が以前胴巻きを抜いたらしい二人連れの侍に見つかって絞め殺されそうになり、見かねた若い浪人が間に入って助けてやる、という展開になる。
     この時に浪人は名を聞かれてとっさに桃太郎と名乗る。彼には本名をあまり名乗りたくない事情もあった。

     これをきっかけに浪人は呉服屋が住む浅草聖天裏のお化長屋で暮らすようになり、女掏摸も浪人のもとに出入りするようになる。
     呉服屋は浪人にほれ込んで家来のような感じになり、女掏摸も浪人に心惹かれてゆく。
     さっそく浪人は長屋の隣に住む母子が高利貸に責めたてられているのを助けてやる。これは騙されて借金をしたことにされてしまい、返せないなら身体で返せ、と難癖をつけられていたもの。この処理があざやかで長屋中の人間が彼を慕うようになり、隣家の子供がなつき、結局長屋の子を集めて手習いを教えるようになる。隣の母親は主人の生死がわからないという状態だが、事実上は情のない夫に捨てられた格好であり、この母親も浪人に好感を持つが控えめな人でそれ以上の行動には出ない。私にできることなら何でもしてさしあげよう、という感じで世話をやく。

     浪人桃太郎が本名を名乗りたくなかったのは、母一人子一人で25年暮らし、その母を亡くしたばかりであり、その死に際に母が言い残したことにショックを受けていたこともある。
     母は実の母ではなく乳母で、自分はさる大名の落とし種であること。双子の兄がいること。双子を忌む風習のため、乳母が彼を育てることになったこと。これらを母と思っていた人の死ぬ時に聞かされのだ。
     母思いで、学問に剣に励んで母を喜ばせるような人間になろう、と日々暮らしていた彼にとっては、人生の目標を失ったような、これからどうしたものか、と思っていたニュートラルな状態でもあったのだ。

     思わぬ縁でお化長屋の住人となり、寺子屋に行けぬ長屋の子たちに手習いを教えるのもよいか、などと思いはじめたところで数奇な運命に巻き込まれることになる。

     女掏摸は表向きは踊りの師匠をしていて、交際が広い。彼女がいつまでも無職でぶらぶらというわけにもいかないだろう、と桃太郎に仕官の話を持ってくる。
     ある藩で跡継ぎ問題があり、江戸家老派と国家老派で誰を跡継ぎとして押すかで意見が別れ、争っているという。彼女によれば江戸家老が悪人で、自分の娘を使って馬鹿な若様を操らせて権力を握ろうと暗躍しており、彼女は国家老が江戸に送り込んできた腹心の知り合いであり、国許の聡明な跡継ぎ候補を守るために働いてもらえないかと誘われている、ついては自分の護衛役として一緒に来てくれないかという。

     桃太郎は自分の出自もあって、大名家の勢力争いに干渉しようとは思わない。育ての母の願いもあって、市井の人として貧しくとも清く正しく生きようと思っている。もちろん生家にいまさら近付こうとも思わない。だが師匠の好意はありがたく思う。
     一方で、この話を反対側から見れば、江戸の若様は長男で正妻の子であり、既に公儀への届けもすませた立派な跡継ぎ。国許の跡継ぎ候補は実は国家老の妹に殿さまの手がついて生まれたものであり、聡明なのかどうかは国家老一派がそう言っているだけ。しかも藩主は国家老に幽閉されているらしく、主君と連絡が取れなくなった江戸家老が案じ、若様が父親の様子を見 に行きたいというのも当然の話。
     江戸家老派と国家老派、どちらの言い分が正しいのかははっきりとはわからない。

     桃太郎は師匠の話を受けるつもりはなかったが、暴漢に襲われていたある姫を助けた事から、その姫が江戸家老の娘で、江戸家老側からも同じような依頼を受けることになる。

     そして、渦中の藩は自分の故郷であり、幽閉されている藩主は自分の父だとわかる。馬鹿な若君と言われているのは自分の兄なのだ。
     
     みたいな設定。兄は毒を盛られて人事不省となり、桃太郎は兄の身代わりとして国許に乗り込み、悪人と対決することになるが、偽者とばれれば自分の方が罰せられてしまう。
     
     長屋のお隣に住む人妻は、桃太郎を襲撃に来た侍どもに斬り殺されてしまい、心ならずも敵方の陣営となってしまった女掏りで踊りの師匠は、主人公にかわいさあまって憎さ100倍、みたいな感じで対立したり、相手を裏切って助けてくれたりするが、結局主人公を火の海から脱出させて自分は身代わりに焼け死んでしまう、などと痛ましい犠牲者も出る。桃太郎侍をアニメにしたら絶対この師匠は人気出ると思う。
     男装して主人公に同行する藩重役の姫が、最終的に身分を捨てて、庶民として主人公と添うことになる。

     原作に忠実な筋立てで、市川雷蔵さん主演で映画になっているらしい。これは機会あれば見てみたい。
    ギャオの無料予告編
    https://gyao.yahoo.co.jp/player/00998/v00211/v0000000000000000685/?auto=1&rep=2&ap_cnt=2&second=0


     主要登場人物を自分の備忘録として。

    桃太郎
     母を亡くし、天涯孤独となった浪人。実は若木讃岐守の息子で本名は新二郎。
    ふたごの弟として生まれたために忌み子として江戸で乳母の手で育てられたが、彼女が亡くなるまで実の母と信じ、立派な侍になって母を喜ばそうとばかり思って成人した。学問も十分にやり、小野派の剣はかなり使う。
     図らずも自分が生まれた讃岐藩の跡継ぎをめぐる戦いに、毒で倒れた兄の身代わりとして立ち向かうこととなる。

    伊之助
     元々は猿之助とも呼ばれた盗賊だったが、今は足を洗って担ぎの呉服屋をしている。道で行きあった桃太郎の人間性に惚れこみ、彼を自分も暮らすお化長屋に住まわせ、何かと世話をやく。その身軽さと健脚で陰で桃太郎を助けることとなる。

    坂東小鈴
     踊りの師匠をしているというふれこみだが、本業は女スリ。桃太郎の懐を狙って近付くが、そこを以前胴巻きを抜いた侍に見つけられてあやうく絞め殺されそうになる。それを桃太郎に助けられ、次第に心を引かれてゆく。

    お俊
     お化長屋で伊之助の隣に住む。夫に捨てられ、針仕事で息子仙吉を育てる。

    田上仙吉
     お俊の息子。桃太郎になつく。

    百合
     讃岐藩江戸家老、神島伊織の娘。武芸の心得もあり、男装して桃太郎と一緒に悪人と戦う
    ことになる。

    神島伊織
     百合の父親で讃岐藩江戸家老。桃太郎を双子の兄の身代わりとする計画を立てる。

    伊賀半九郎 
     讃岐藩国家老、鷲塚主膳の腹心。江戸に潜入して暗躍している。小鈴を騙して陰謀の駒として働かせようとしている。

    新之助
     讃岐藩の世継ぎで桃太郎の双子の兄。伊賀半九郎のために毒を飲まされ、床についている。国許の父、若木讃岐守も同様の状態にあると見られ、国家老たちは彼の廃嫡をたくらんでいる。桃太郎は兄に代わって本国へ乗り込むこととなる。

    万之助
     新之助の腹違いの弟で、母親は国家老の妹。実は伊賀半九郎の子で藩主の血はひいていない。

    神島百合之助
     百合姫が男装した姿。小姓として若君になりすました桃太郎に同行する。

     以下は桃太郎を若君新之助と信じて江戸から讃岐まで護衛する忠義の部下たち。
    だが中に裏切り者がいる。

    杉田助之進 小達磨に似てせっかち。小太りで童顔。
    大西虎之助 長身で心形刀流の達人。
    上島新兵衛 とりたてて特徴はないが真面目で落ち着いた人物。
    橋本五郎太 小鈴を締め落とそうとしたことがある。無骨者。
    新藤儀十郎 小鈴に密書を掏られたことがある。

    北野善兵衛
     讃岐藩江戸下屋敷の門番で鍵の管理をしている。伊賀半九郎に懐柔されている。

    森助
     讃岐藩江戸下屋敷の中間。伊賀半九郎に懐柔されている。

    慈海和尚
     誓願寺の住職。新之助の治療をする。

    右田下記
     国許の城代家老。江戸家老と気脈を通じている。

    萩原忠左衛門
     国許の名家で番頭役。

    大滝鉄心斎
     今井田流の道場を構える剣客。道場ごと伊賀半九郎の一味になっている。

    木村勝次郎
     大滝道場の腕利き。南部浪人。
    林田治助
     大滝道場の腕利き。中国浪人。お俊を斬った。
    川合芳之助
     大滝道場の腕利き。越後浪人。
    古田
     大滝道場の配下。

    高垣勘兵衛
     伊賀半九郎の盟友。鉄砲と火薬の扱いに優れる。

    田上仙左衛門
     お俊の父。篠崎一刀流の道場を開いていた。

    伊藤新十郎
     お俊の夫で剣客。田上仙左衛門の弟子だったが、師の死後勝手に道場を売り、お俊も捨てて行くえ知れずになった。

    上州屋亀八
     浅草の顔役。お俊に針仕事を回す一方で親切ごかしに金を貸し、それに後から膨大な利子をつけて囲おうとした。







     

     
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