講演会「深海を切り開く」
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講演会「深海を切り開く」

2017-10-29 19:00


    ・しんかい6500のパイロットだった、吉梅剛さんという方の講演会に行ってきました。
    著書もある模様。

     しんかい6500そのものはニュースで知っているものの、それを支える運用体制や運用状況についてはよく知らないので参考になりました。
    講演会の 公式ページが消えちゃってるので紹介できない・・・

     JAMSTECの「しんかい6500」紹介ページ。
    http://www.jamstec.go.jp/shinkai6500/

     

     現在深海探査機としては3種類があり、略語としてはROV、AUV、HOVと呼ばれている。これらをアニメ的に例えると、ROVは空気を送ってぴょんぴょんするカエルのおもちゃ、AUVはラピュタに出て来るロボット、HOVは未来少年コナンでダイス船長が乗ってたやつ(ロボノイド)、みたいになるという。

     つまりROVは有線操作タイプのロボット。AUVは自律的に動くロボット。
    HOVは人間が乗り込むもので、しんかい6500はこれに該当する。

     深海探査上の使い分けは、AUVがどんどん海底の地図を自動的に作って行き、何か気になる部分が見つかったらROVまたはHOVで詳しく調査をするというもの。
     人間を深海に送り込むのはコストがかかるし万一何かあったら、ということもあり、ROVの開発が昔より安くできるようになってきたこともあって、わざわざ有人の深海調査などしなくてもいいじゃないか、という流れもあるみたいだが、そこに行きたい、というのは人間の業でもある。
     ROVそのものの開発は割安になってきても、ROVと母船をつなぐケーブルは何度も使用しているうちにねじれを生じ、思いのほか使用できなくなるまでの期間が短いらしく、7000メートルとか長いので、作り直せばコストは有人のHOVとトントンになったりもするらしい。また、今のところ1万メートルのケーブルはまだ作れないらしい。

     これらの海底探査機を運用するには、支援する母船とかが必要となる。JEMSTECには現在7隻の船がある。かいめい、かいれい、ちきゅう、みらい、よこすか、白鳳丸、新青丸。しんかい6500の支援を行っているのは「よこすか」で、通常60名ほどの人間が乗り組んでいるという。
     よこすかは、潜るべき海域にしんかい6500を運び、格納庫内で整備を行い、潜水中は音波で母船~しんかい6500間の連絡をとる。

     しんかい6500のエネルギー源はリチウムイオン蓄電池で、一般家庭に換算すると9日間使用できるくらいの容量を持っているらしい。以前は銀亜鉛電池というものを使っていて電池寿命は1年、電解液を足すなどのメンテも必要で、その分年間に運用できる時間も削られていたが現在は電池寿命3年で日常的なメンテは不要となり運用時間も増えたとのこと。

     潜水艇の大部分はシンタクティックフォームという材料でできており、これは微小な中空ガラス球を樹脂で固めたもので、潜水艇に浮力を与える。しんかい6500の場合、本体重量は26トンくらいあるらしいが、600kgに相当する浮力を持っているという。さらにいわゆるバラストという錘を積んで、沈む力を1200kgにして、錘の力で潜水する。沈むために動力を使うと電池がすぐに無くなってしまうので、自重で沈めるように、そして海底でバラストを捨てて浮かんでこれるように、この重量バランスは大切みたい。
     
     活動は一日で終わるのが基本で、海底で一泊したりはしない。ハッチを閉めてからまたハッチを開けるまでが9時間くらい、海の中にいるのは8時間くらい、水深6500mに到達するまで2時間半かかり、戻って来るのにまた2時間半かかるので、海底で活動できるのは3時間程度だという。パイロット、副パイロット、お客さん(研究者や中川翔子さん)の3名が定員。
     パイロットは艇の操縦をしながらマジックハンドで研究者がそれ採って、あれも採って、というリクエストに答えて石やら水やら生物やらいろいろ採集しないといけないので海底にいる間は休む暇もないらしい。副パイロットは計器やモニターの監視をしているとのこと。
     テレビカメラは2台あって、1台は固定でもう1台は可動だったみたい。可動カメラは研究者がコントロールするが、興奮してあちこち動かしたりするのでこのカメラを見ると酔うので、パイロットは固定カメラかのぞき窓の方を見るらしい。

     自重で沈んでいって(この時空気が入っているバラストタンクに水を入れていく)、海底まで100mくらいになったらバラストを半分落とす。しんかい6500の場合はバラストを4つ、サイコロの4の目のような配置で積んでいて、対角線上の2個を落とす。すると浮力と沈む力が拮抗し、スラスタを使って上下左右前後に移動できるようになる。そうなるようにバラストの重量を100g単位で調整してあるのだが、この設定値は搭載機器や人間により異なるので毎回違う。ご飯を食べたりトイレに行っても違ってしまうことはあり得るので、女性研究者が正確な体重を何故か教えてくれなかったりすると微妙に拮抗が崩れて、高さ調整に燃料を無駄に使ってしまう場合もあるという。また、うまく止まれなくて海底に接触してしまうということはわりとあるらしい。うまく拮抗した状態を中正浮力(状態)みたいに言うらしい。

     観測が終わったらバラストを全て捨てて浮かんで来る。艇内は1気圧に保たれており、潜水病みたいなものとは無縁だが、潜ると周りの海水は冷たいので艇内も冷え、保温のよいパイロットスーツを着ているが、イベントなどで地上でこのスーツを着ると暑すぎるみたい。艇内は結露もし、水滴で機器が損傷することもありえるので、結露をせっせと布で拭き取るのもパイロットの大切な仕事だという。最後に艇から出る時も、ハッチを開ける前に水を防ぐように布を広げておいて受け止めねばならない。

     母船に回収されたあとは、研究者はすぐ標本が新鮮なうちにしかできない調査や保存処置に手一杯となりしばらくは眠れないという。パイロットたちは別の点検チームに引渡して艇を出る。たいてい翌日も潜るので、点検チームは外壁を外して点検したりして、終了は夜中近くなることもあるという。

     しんかい6500が潜るときは、格納庫から出されてクレーンで吊り下げられ、けっこう揺れながら海上に着水したところでスイマーと呼ばれるダイバーたちが艇にとりついて、手で牽引ロープのフックを外す。この作業はたいてい波が荒れている中で、不安定な艇に取り付いて行うことになるので危険であり、なんと特別手当が400円も出るという。戻る時(揚収:ようしゅう と呼ぶらしい)は反対にフックの取り付け作業をすることになる。1日400円なのか行き、帰りで400円ずつなのか聞かなかった。

     艇内の人が乗る耐圧カプセル部分には酸素ボンベや炭酸ガス吸収装置があり、艇内の空気は循環して炭酸ガスを取り除かれ、酸素濃度一定に保たれているが 研究者が興奮したりするとすぐに二酸化炭素濃度が上がるため、ボンベから酸素を供給しなければならない。こうした環境系の管理もパイロットの仕事だという。
     炭酸ガス吸着剤や酸素ボンベの予備、ミネラルウォーターや携帯食料や簡易トイレなども積み込まれていて、万一何かあっても3名が5日間過ごせるだけの量はあるという。基本的に機械が壊れてもバラストさえ捨てれば浮いて来るようになっており、今のところ人命に係る事故はないという。

     しんかい6500は1989年に完成し、1990年より運用開始。現在までに1509回の潜水調査を行っているということで、もうアラサーである。製造時の技術者もほとんどが退職されていて、部品も製造中止になるなど修理に困る場面も出ているということで、後継機の完成が待たれるが、次に製造するなら1万メートル以上潜れないと駄目だとか、のぞき窓をもっと大きくしたいとか、バラストを海底に捨てて来るのはエコじゃないので水をバラストに使った方式にすべきだとかいろいろ設計がまとまらないところもあり、海洋調査予算はどんどん減らされているらしく、以前はパイロット養成中に10回潜れたのが1、2回しか潜れないとか厳しいらしい。まだいつごろ完成、と予定を出せる状態ではないみたい。

     インド洋の調査などは25日かけて調査地点に行き、2週間程度の調査が終わったらまた25日かけて戻って来なければならないなど、往復時間にしんかい6500が遊んでしまう、ということなどもあり、日本近海の調査しかできないような雰囲気になりつつあるとも。

     しんかい6500と同等の潜水深度を持つ潜水艇はしんかい6500を含めて世界に7隻あるが、そのほとんどが予算的には厳しいみたいで、1年以上調査のために潜っていない例などもあるらしい。世界に7隻だけなんて、鉄腕アトムの史上最大のロボットみたいだな。

     宇宙の方も厳しいと聞くが、はやぶさやあかつき、ISSの日本人宇宙飛行士たちのおかげでJAXAには一定の人気も知名度もある。海のJEMSTECの方は知名度がJAXAに比べれば全然低く、しんかい6500をのぞけば船や潜水艇もあまり知られていない。

     やはり海底少年マリンのリメイクみたいのを、所属機関がJAMSTECという設定で架空の船や潜水艇と実在のものをうまく混ぜてNHKとかで作るべきでは。
     今作ると某国と海洋覇権を競う、みたいになっちゃいそうだけど、そこはもっと夢のある方向で。

     あるいは新海誠監督に、秒速5センチメートルで種子島を舞台にしたみたいに高知コア研究所あたりをモデルに短編を作ってもらうとか、しんかいつながりで安易な発想を。


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