キョウコ
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キョウコ

2017-11-06 19:00
    ・「キョウコ」が登場する「BOX」を読んだので、

    著者のキョウコシリーズの小説3篇を読み直してみた。

    ・狂犬

     某県の事務系職員であるらしい主人公。突然上司からちょっとわけありの施設に行くように指示される。そこは言ってみれば農業試験場なのだが、今は新たな施設ができて主要業務はそちらに移管され、閉鎖されてもいいはずだがわずかな職員だけ残って寂れた状態で運営されているという。

     定年間近の人がその施設との連絡員のようなことをしていたのだが、身体を悪くしてしばらく出て来れないらしいということで、彼が代わりをつとめてほしいということらしい。書類とサンプルを届けるだけの簡単な仕事ではあったが、ちょっと嫌な感じだな、と思いつつ彼は業務をこなす。

     だが不備があったらしく、翌日もう一度サンプルを届けることになる。上司は施設側のミスだろう、と言いつつお前のせいだ、と思っているようでもある。彼は釈然としないまま再度その旧試験場に向う。

     すると昨日はたくさん止まっていたタクシーが1台もいない。彼は仕方なくバスに乗る。すると、奇妙な女が話しかけてくる・・・

    「ねえ、どこまで行くの?」

     どんどん踏み込んで来るように話かけてくる女で、彼は彼女と話をしているうちに昨日あった奇妙な事、それを自分が忘れていた事、本日これからどんな事が待っているか、を思い出し、考えるようになる。そして彼女は一緒についてくると言う。

    彼女はキョウコと名乗る。字は凶子だという。

     彼女のおかげでバスを乗り過ごし、通常の門からではなく裏口から試験場に入る事になった主人公は、奇妙なものを続けざまに見る事になる・・・


    ・秘仏

     主人公は、親しい友人とその彼女との3人で、とある田舎の寺を訪れる、山門は古くてなかなかのものだが、寺の建物は比較的最近建てられたらしく、特に面白みはない。だがこの寺では年1回、御開帳という名の非公開の儀式が行われるという。友人はそうした情報に詳しく、主人公は暇つぶしに付き合うことにしたらしい。

     はじめて見る友人の彼女は痩せぎすの美人だが、見かけに似合わず子供っぽい奔放な言動が目立つ。彼女はキョウコと名乗る。字は恐子だという。

     山門が閉まり、関係者以外は追い出されるが彼らは墓地に隠れてやりすごす。すると境内にある手水台のような大き目の水槽のようなものの周囲に黒い人影が集まって来る。儀式がはじまるらしい。

     小学生くらいの女の子が現われ、「よければどうぞ」とパンフレットのようなものをくれる。関係者の子供がお手伝いをしているらしい。

     突然、本堂の扉が内側から開かれ、大勢の僧が何かを抱えて走り出て来る。黒い人影がどよめく。主人公はこの儀式に魅せられ、巻き込まれていく・・・

     

    ・獏

     先の2作とはちょっと違っていて、主人公はキョウコの恋人?みたいな男性。彼はキョウコのアパートをしばしば訪れてベッドで共に過ごす間柄だが、彼女のくわしい生い立ちや過去は何にも知らない。彼女には戸籍も住民票も健康保険証もないらしいのだが。

     かといって将来一緒になろうとか、深く愛し合っているというわけでもなく、気まぐれな彼女がたまたま彼のところに居ついている、という印象。もし別れ話を彼の方から持ち出しでもすれば、あっさり去るような印象もある。彼は彼女の変わったところが気に入っていて、そこが面白くて別れようと思ったことはない。

     彼女は自分が突然思い立つと、彼がどう思おうと自分の思い通りにする。彼もそれがわかっているので好きにさせたり、彼女の行動に付き合ったりする。
     今日も突然、「獏を見に行かない?」と彼女が言い出したので、市民公園の片隅にあるミニ動物園まで一緒に来ている。

     そこにはマレーバクがおり、彼女はその獏とにらめっこを始める。彼が動物園をひと回りしてもまだやっている。そんなに獏が好きなのか、と思うと大嫌いだという。それどころか石を投げつける。殺してしまいたい、とさえ口走る。
     人前であっても奇矯な発言や行動をするのは彼女の特徴だが、この獏に対してはちょっと度を越している。
     それからしばらくして、彼女が疲れた顔でやってくる。「獏がいなくなった」という。彼女は獏の前足を切り落として食べる夢を見るという。その夢を見るととても気持ちがいいと言う。
     彼女はその後も獏の行方を探し回ったらしく、ついに突き止めたと行ってくる。そこはある金持ちが作った私設「珍獣博物館」とでもいう施設らしい。
     彼はキョウコと一緒にこの施設を訪ね、恐ろしいような、奇抜なような、奇妙な夢のような経験をすることになる。
     この作品のキョウコは、狂子である。彼女の私生活が垣間見える。仕事もしているらしいのがちょっと意外でもある。

     どの作品でも、描写は似ていて、ちょっと痩せぎすの美人。パンツが見えても気にせずに足を組んだりもする。子供のようなふるまいも目立ち、ハンドバッグをぐるぐる振り回して歩く。人目を気にせず思いついた事を大声で発言するが、時に主人公の裾を引いて、あぶないところから救い出してくれたりもする。

     だが頼りになるか、というとそうでもなく、突然どこかに行ってしまったり、質問をしてもさあ?という感じだったり、あくまでも本人の興味のままに行動しているだけで、たまたま方向が一緒になっただけ手を貸してくれることもある、という感じ。
     なので小説内での印象はあまり強くない。

     

     BOX第1巻の著者あとがきにキョウコさんのことと、小説版のあらすじが書いてあり、諸星さん本人の解説によれば、様々な漢字を与えられている「キョウコ」は同一人物が名前を使い分けているのか、それとも別人なのか、はっきり設定しておらず、名前と性格が微妙に異なるキャラクターも面白いか、と思った、と書いてある。
     「BOX」にはキョウコ(興子)さんが登場するが、漫画であるせいか小説版の凶子、恐子、狂子に比べると一番親しみやすい感じがする。そしてBOXのラストから見て、他のキョウコさんが絶対やらないようなことまでして助けてくれた、一番親切なキョウコさんでもあったような。
     BOXに登場する魔少女が、「秘仏」に登場する少女と同一人物(人ではないが)であるらしいことも書かれている。「よければどうぞ」というセリフも一緒である。興子さんは魔少女にあの時はよくも、と言われて 記憶にない、それは別のキョウコ(恐子)のことじゃない?と答えている。
     凶子、恐子、狂子は現実にはいないだろうけど、興子さんは実在する名前。作品中には京子、今日子、教子などが名前の漢字当てをするときなどに登場するが、今後も違うキョウコさんが描かれるかもしれない。著者の他の作品(妖怪ハンターや栞と紙魚子)に混ざっても違和感なさそうなキャラクターでもあるので、共演があっても面白い気がする。


     強子とか胸子とか饗子とか、字を考えると話のイメージも浮かんでくるような。


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