「二重葉脈(松本清張著)」
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「二重葉脈(松本清張著)」

2018-02-18 19:00


    ・昭和41年から42年にかけて読売新聞に連載された作品とのこと。
     杉並公会堂から話が 始まる。そこでは、ある電器メーカーの債権者集会が開かれている。
     この会社はワンマン社長の指揮のもとで急速に業績を伸ばし、2000人を超える社員を抱え、資本金28億円に対し半期250億の売り上げを記録したのをピークに折からの弱電不況の波をかぶって下り坂となり、それでも社長が強気の姿勢を改めなかったこともあって立て直せず会社更生法の適用となった。
     銀行は60億の債務を抱えており、会社更生法適用に伴って役員を派遣。技術系役員二名を例外に、残る重役は社長以下全員社を去った。
     だが200を超える債権者の大部分は町工場のような中小零細企業。彼らはこの会社だけに頼っていたところも多く、一刻も早い債権回収を訴えるが、会社更生法は彼らを保護するものではなく、集会で債権者代表として窮状を訴えた5社のうち1社は既に倒産。別の1社は経理をみていた社長の妻が借金に悩んで自殺。残る3社も一家心中寸前の悲惨な状況にある。親会社からの度重なる値下げ要求や納期短縮、支払いの繰り延べなどに耐え続けての仕打ちである。
     彼らの中には壇上で社長を殺してやりたい、と口走る者もおり、社長宅の周囲をうろうろして逮捕されたものもいる。
     彼らがそう思うのも無理はなく、粉飾決算を命じて取引先を騙し続けた社長には、3億近い金額をどさくさまぎれに横領したという根強い噂があり、にもかかわらず退陣後はもう関係ない、とばかりに自宅も私財も取り上げられることなくのんびり過ごしており、しばしば温泉旅行にも出かけている。奥さんとの仲はあまり良くないがそれは女道楽のためで、今も若い愛人がいるらしい。
     社長と一緒に辞めた経理担当重役、業務担当重役も似たものようなもので、この3人が計画的に横領したと考えるものもいる。
     だが、その経理担当重役が旅行に出かけ、さらに社長ともう一人の重役も旅行に出てしまう。 
     粉飾決算を疑う捜査2課はなかなか彼らから事情を聞けずやきもきしていたが、経理担当重役の妻が夫が予定を過ぎても戻らず連絡もない、と捜索願いを出し、殺されている疑いもある、ということになって捜査1課も動くことになる。
     推理小説なので誰が殺されますとか、犯人は誰とかは書かないけど、当時実際にあった大型倒産で似たような悲惨な下請け業者がたくさんあったみたい。
     会社を潰してものんびり旅行ばかりしている重役たちと、毎日懸命に生きている下請けの人たちの境遇の差という不条理が事件以上に心に残る。。

     オリンピック後に不況が来るのであれば、この作品に書かれているようなことがまた繰り返されるのかも。法律はどれだけ整備されているのかどうか。
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