「アリーテ姫」
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「アリーテ姫」

2018-03-02 19:00


    ・存在は知っていて、何度も見る機会があったのだけど見逃し続けていた作品。片渕須直監督の小特集みたいのでようやく見ることができた。



    https://info.cinemacity.co.jp/ccnews/d_katabuchi_works/
     内容は全く知らなくて、スチールを何枚か見ただけ。なんだけどどこか気になる作品だった。



     イザ見て見ると、ちょっと評価がむずかしい。絵は素晴らしい。キャラクターデザインも、ありそうで他にあまり無い、シンプルだけど個性的なもので好感が持てる。よく動くし色彩もよい。音楽も合っている。でもストーリーがむずかしい。

     書を捨てよ、街に出よう、あなたの人生はあなたの心の持ち方しだい、みたいなことをテーマにしてるんだろうな、とは思うけど、部品はそれぞれきちんと作ってあるのだけどうまくかみ合っていない気がする。なので主人公の悟りみたいのが段階を踏んでのものではなくて、唐突に感じる。

     主人公のアリーテ姫は、母である女王は早く亡くなったらしく、王宮の塔の一番高いところに、父である王によって世俗の穢れに触れないように隔離されている。なんだけど、彼女は本が好きで世界中のことをよく知っている。また抜け穴を見つけていてたびたびこっそり抜け出して、街の中を歩きまわっている。
     一方でお年頃なので、これも王のふれにより、求婚者候補が募集されている。われと思わん者は、世界中のめずらしいもの、特に昔は栄えていたが今は継承者も絶えた、魔法というもので作られた道具や器具を集めてくるように命じられて、かぐや姫みたいに世界へ散り、そして何かを持って帰って来る。だが、それらの品々は、王の知らないところで、大臣たちが外国に売って私腹を肥やすために使われてしまっている様子。
     アリーテ姫は眉も太く、鼻も低くドングリ眼で決して美人ではない。これを本人がどの程度認識しているのかよくわからないが、あまり求婚者を迎えることに熱心ではない。塔の警備はけっこうガバガバで、求婚者の何人かは塔をよじ登って来て姫に愛の言葉をささやいて抜け駆けしようとしたりもするのだけど、姫はあまり関心を示さない。求婚者たちも姫の容姿も性格もあまり気にしていない様子で、地位が目当てなんです、というのを姫に隠さない。

     なんだけどこの求婚者のエピソードは唐突に終わる。一人の年老いた魔法使いがやってきて、姫を嫁によこせという。ここらへんよくわからなかったのだけど、魔法で作られた道具は本来魔法使いのもので、それを渡せと言われると逆らえないのか、それらを返すよりも娘を差し出したほうがよかったのかあまり王様の心のうちがよくわからなかったのだけどとにかくあまり抵抗らしい抵抗もせずに姫を魔法使いに渡してしまう。姫も特に逆らわない。で魔法使いの乗り物(上の絵の真ん中あたりにある、らせん状のローター?がついたヘリコプターみたいの)に乗せられて魔法使いの住処に連れて行かれる。この時姫は魔法で、子供子供した容姿から大人びてきれいな顔立ちの女性に変えられる。
     輿入れの準備できれいに着飾る彼女に、もう一人の魔女が話しかける。この魔女はしばらく前に城に忍び込んできたのだが、魔法の源である水晶みたいのを失って、もう魔法が使えなくなり、魔法使いは本来無限に近い命を持つのだけど今後は人と同様に年をとって死ぬのだという。そうやって生きることにしたよ、と魔女は姫にささやきかけるが、姫の心は流されるままであらがおうとはしない。魔女は姫に指輪を与え、3回だけ願いが叶うからそれをうまく使いな、と言い残して去る。

     魔法使いの城に着くと、姫は地下牢に監禁される。このへんで魔法使いの目的がよくわからない。姫をただ地下牢に幽閉するだけで、なぐさみものにするわけでもなく、何かをさせるわけでもなく。城には魔法使いが人間に変えた蛙の下男がおり、たいていのことは彼がやる。あと、村の女が一人、食事を作りにやってくる。もともと貧しい村の水源が枯れ、困っていた村人たちに水が沸くようにしてやるから食事の面倒をみろ、みたいに取り引きをして魔法使いはここに居つくようになったらしい。食事を作る女も二代目らしい。

     姫は無気力に、魔法の指輪の力を二度使って、一度めは部屋の汚れをきれいにして居心地をよくするのに、二度めは暇つぶしの刺繍道具をたくさん出すのに浪費してしまう。そしていつも刺繍をして過ごす。

     姫は世界を考え、そこにいる人々を考え、自分もまたそうした人の一人であることを考える。自分は人々の織り成す物語を眺めている存在であるように思っていたのが、自分も世界の一部で、世界を外側から眺めているのでなく、世界の内側にいる一人の登場人物であり、自分の心の持ちようにより世界は変わるみたいに気付く。自分の思いで世界が変わらない、なんてことあるわけないじゃない、と姫が口に出したとたんに大人びた姿から最初の活発な少女の姿に戻る。

     一方で魔法使いの方は姫に飽きたのか、鍵をあけて、お前の求婚者がやったように世界の果てに行ってこれこれを探して来い、みたいにいいつけて、もし戻ってきたら雷に打たれるように指輪に3つ目の願い事をしろ、みたいに誓わされる。姫が出て行くと、魔法使いはせいせいした、みたいなことを言うんだけど、じゃあ何でわざわざ嫁にもらいうけてきたのかよくわからない。ちらっと姫が自分にとって害をなすという予言があったから、みたいのを言ったようにも思うけど、そうだとしても何か扱いが中途半端な気がする。

     何というか、姫も魔法使いも、とりたてて目的がなくて、何かやってはみるのだけど特に実りある結果は生まないようなことばかりやっっていて、首尾が一貫していない印象がある。

     魔法使いは自分の力で魔法を使っているわけではなく、魔法道具の使い方を知っているだけ。道具が調子悪くなっても修理できないし、壊れたら直せない。魔法の源になっている水晶玉はスマホのようでもある。

     というわけで、周囲に流されて、箱庭の中で生きて来て、自分の意志も望みもなんとなくしか持たなくて、自分のやりたいこととかを実現させたいと真剣に考えたこともそのために勉強とか努力したことのない姫と、魔法の道具の使い方は知っているけどそれを修理も作り直すこともできない魔法使いがどちらも現代人みたいで、漠然と本や他の人のやることを観客みたいに見て暮らすんじゃなくて、自分自身のやりたいことを見つけてそのための行動を起こしなさいよ、みたいのがテーマだと思うんだけど、あまり力強くそのことを訴えている感じでもないのでそうなのかな~?とちょっと自信がない。

     姫はわりと活発な印象で、抜け出して街をうろうろしたりしているわりには何をしたい、みたいな強い思いはいまひとつ感じない。静から動へ、鮮やかに切り替わるんじゃなくて、最初から動を持っていて、何か悟ってからも静を残しているというか。
     魔法使いは永遠に続く今に満足して同時に飽いているのかな。

     すごくよくできた話か、というと全然そんなことなくて、未完成な、うまく組み合わさっていない印象をものすごく感じて、途中全然変化や動きがなくて眠気を感じたりもするのだけど、何か捨てがたい、無視できない、忘れられない、興味深い作品だな、といろいろ思うところが、なんかよくわからないけど心に残るところのある作品でした。
     こういうのは子供の時に見て若い時に見て、またしばらくして見ると全然違う感想を持つんだろうな。

     なんか原作があるみたい。今は絶版で復刻運動みたいのがあるみたい。

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