「取引(真保裕一著)」
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「取引(真保裕一著)」

2018-03-19 19:00




    ・これは面白かった。文庫で700ページ近いぶ厚いボリュームだけど途中でやめられず、一日で読んでしまった。

     公正取引委員会に勤める若手官僚が、ある米軍と建設会社と建設省のからんだ談合事件の証拠を握り、これを徹底調査しようとして上司と衝突し、左遷される。どうも上司自身が不正にからんでいる気配もあるが、上司は実力者で若手一人が何をしてもゆるがない。この上司とぶつかったことで出世の望みは断たれてしまう。
    さらに銀行口座に見知らぬ人物から300万もの入金があり、彼がそれを知る前から突然やってきた女性記者に不正をしているだろう、と決めつけた取材を受ける。他にもいろいろ彼を不正を働いた人物だ、と捏造された証拠がたくさん出て来て、彼はいくら説明しても無駄だ、と辞表を出す。

     誰が自分を落とし入れたのか、無駄でも調べてみようと動いてみるが、何もわからない。だが、自分が衝突したのとは別の、もっと偉い上司の参事官から、君を落とし入れたのは我々だ、と告げられる。

     フィリピンでのODA、政府開発援助の事前調査をJICAが中心となって行っている。だが強大な金が動くプロジェクトであり、政治家やゼネコンが暗躍しているらしい。調べたいが海外の事でもあり、公取委は動けないし、人を送ればすぐ警戒されてしまう。だから、公取をクビになった人間としてフィリピンへ行き、そこで現地のコンサルタント会社にアドバイザーとして就職して内側から捜査をしてほしい・・・この上司はもともと東京地検から公取委に来た人間であり、背後には地検の意向もあるみたい。そして調査対象となっているゼネコンには、若手官僚の高校時代の同級生がいる。彼が選ばれたのはそのへんもあるらしい。

     彼はそうしたやり方に反発を感じつつも、調査そのものには魅力を感じ、引き受ける。一週間でODAに関する知識を叩きこみ、マニラに発つ。


     マニラでは日本大使館の人間が出迎える。これは参事官が個人的な弱みを握っていて働かされているものらしい。現地のコンサルタント会社にもすぐ迎え入れられるが、これも参事官の圧力によるものらしく必ずしも歓迎されていない。だが実力を見せれば違って来るだろう。
     彼は偶然を装って高校の同級生と接触しようと、相手が泊まる予定のホテルで待ち構えるが、そのホテルに優秀なコンシェルジェがいて、なんと彼女が同級生の現地妻だったため警戒されてしまう。だが同級生と彼女の間に生まれた娘は彼を気に入ってくれたみたいで、一緒にサッカーをするとなついてくれる。

     JICAの調査団長がメンバーを連れて来比する。彼はこの調査団長を見張ろうとするが、例の女性記者が彼をマークするかのように現われる。また、彼の車が尾行されており、これをなんとかまいて逆に尾行すると、フィリピン警察軍の人間だったことがわかる。何故警察軍に目をつけられたのかわからない。女性記者との関連は不明。女性記者は彼を悪人と決め付けている様子で、ことごとく邪魔をしようとする。もっとも真相を話すわけにもいかない。

     そこで急展開がある。調査団団長がホテルで誘拐され、彼の部屋で同級生の妻だったコンシェルジェの死体が発見され、娘が行方不明になる。一緒に誘拐されたのかもしれない。だがコンシェルジェは誘拐団側の人間で、娼婦だったが仲間割れで殺されたみたいに報道されてしまう。何か陰謀がある様子。さらに彼も犯人と疑われてフィリピン警察軍に逮捕される。逮捕したのは、彼を尾行していた男だった。

     参事官と大使館員が手を回した様子で、彼は日本政府のエージェントということになって犯人との疑いはとける。彼を尾行していたのはCISと呼ばれる警察軍の捜査官だったが、これは組織としての尾行ではなく、個人的に自分の夫に接近してきた怪しい男がいる、とコンシェルジェに相談を受けてのことだった。彼は殺された彼女のいとこだという。

     というような流れで、彼は一方でODAに関する汚職事件を調査する一方、旧友の妻を殺した相手と何故殺されたのかという真相を、警察軍のいとこと同級生と一緒に探すことになる。その流れで現地の児童保護施設や人身売買組織とかかわりを持つようになっていく。

     フィリピンでの裕福な外国人を誘拐するビジネスや、人身売買、臓器密輸、幼児愛好者のための売春斡旋など、この国の暗部を見る事になっていく。敵対していた女性記者も、彼と連携して動いてくれるようになっていく。

     やがて、汚職事件と誘拐事件とは互いに関連があることがわかってくる・・・

     みたいな話。ある程度話が見えたかな、と思うと思っていなかった方向にころがったりして全然退屈しなかった。海外でビジネスをしている人たちの苦労が思われる。

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