「国貞えがく(泉鏡花著)」
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「国貞えがく(泉鏡花著)」

2018-03-29 19:00

    ・ある男性が、故郷を訪ねる。正確には故郷に住む昔の知人を訪ねる。この知人が、彼の家に伝わってきた錦絵を持っている。
     この錦絵は母親が嫁入りの時に持ってきたものなのか、母の形見だったのだが、男性がまだ子どものとき、小学校か中学校かわからないが、学校の教科書が買えないというので古本屋に売ってしまった。錦絵は国貞のものが二百余枚。絵柄は姉様のものが大部分らしい。
     別に教科書が絶対無ければならないというものではなく、書き写せばそれで済んだのだが、その労をいとったというよりは、周囲のみんなが持っているものを自分も持ちたい、という動機が強かったみたい。ことに物理の教科書は、母親が何処にいるかを知るには物理を勉強するのがよい、と先生に言われたとかで欲しがった。

     まだ健在だった祖母と父親は相談の上、母の形見を手放すと決める。祖母が古本屋と本屋を兼ねたような店に行くが、足元を見られて新品ではなく古本の教科書と取り替えて来る。
     向いに住む男がそれを聞いて、男気から教科書の金は俺が出す、返すのはいつでもいいから、というのでまた本屋に取り戻しに行くが、もう老いぼれババア、帰れという感じで話をきいてくれない。結局男が古本屋に乗り込んで居直って取り返して来てくれた。
     だが男性の家には錦絵を買い戻す金は無く、男の好意に甘えた感じで長い月日が過ぎる。次第に錦絵は値上がりし、当時の200倍の値になってしまう。
     こうなると男も当初の金で返すのが惜しくなり、返却を願ってもはぐらかすようになってしまう。恩義もあるが、無体でもあるややこしいことに。
     一方息子は東京に出て、15年ほどぶりに帰ってきた。祖母はとうにおらず、父も亡くなった。男は男性を歓待しつつもやはり今は手元にないの、預けてあるの、預け先とちょっと仲たがいして取りにいけないのと理由をあげて話をそらすが、男性は激しく「金子でつく話はつけよう」と男に迫る。

     おそらく男性は東京で成功し、法外な値であっても母の形見をこんどこそ買い戻すつもりで来たのだろう。そして買い戻したらもうこの男との縁も絶ち、故郷へも戻らないつもりなんだろう。みたいに感じたけど違うかも。

     この作品は鏡花の実体験に基づく私小説のようなものらしく、鏡花の実母は29で亡くなっているらしい。

     国貞という絵師は初代、二代目、三代目と3人いて、初代はのちに歌川豊国に改名したらしい。この作品にでてくるのは初代なのかな。
     国芳という人とライバルだったらしく、2016年に国芳・国貞展みたいのがあったらしい。
    http://www.nagoya-boston.or.jp/sp/exhibition/kuniyoshi-201609/
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