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「人形の家(イプセン著)」
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「人形の家(イプセン著)」

2018-04-02 19:00




    ・ノラという女性主人公の名とともに、とても有名な作品だが具体的にどんな話かは知らなかったので読んでみた。

     著名で裕福な弁護士の妻であるノラは、妻としても三人の子供の母としても申し分のない女性で、穏やかな生活をしている。夫は善人で、妻も子も愛しているし悪癖もない。
     夫は、引退するある銀行の頭取にのぞまれて、彼の後継者となるように依頼されており、今そのために様々な準備に忙しくしている。ノラは友人が未亡人となって苦労しているのを知っていたので、彼女を銀行で雇ってくれるよう夫に頼む。夫は快く承知してくれる。
     友人はノラに貴方は苦労などなくてうらやましい、みたいなことを言うが、実は秘密だけど、夫は以前命の危険がある病気をしていて、その治療のために転地療法を行ったことがある、でもそのお金を作るのには苦労したのよ、と打ち明ける。
     夫は彼女の父がその金を出してくれたと思い、素直に受けたのだが実は当時父は重病でそんな話ができる状態ではなかった。そこで彼女は夫の幼なじみに金を借りたのだが、その保証人を父とした。だがそのサインは彼女がした。さらにサインの日付はやがて世を去った父が存命だった日に遡ってしたものだった。つまり彼女は文書を偽造したのだ。もちろん未亡人にはそこまでは語らない。夫を救うためのお金を自分が作った、と説明しただけ。
     夫は変なところに潔癖で、借金をするのをよしとしなかった。義父が出してくれるならOKだったらしいが。
     だがそのために夫は助かり、今の地位を築いた。その借金は今も夫には内緒で返し続けている。だがその相手はその後おちぶれて夫との仲も疎遠になり、素行に問題もあって、めぐりめぐって今度夫が頭取となる銀行に勤めている。そして夫は彼をクビにするつもりである。
     ノラは文書偽造はバレていないつもりだったが相手は気付いていて、もし私がクビになるようだったら、奥さん、いいですね?と脅しにくる。

     そのあといろいろせめぎあいがあって、未亡人はノラを脅している男にちょっと影響力があったりするのでなんとかしてやろうとするのだが、結局ノラが夫を助けるために文書偽造をしたことは夫に知れてしまう。

     だがそれを知った夫は命を救ってくれてありがとうと感謝などせず、苦労したなと労りもせず、ノラを今まで俺を騙していたのか、おろかな女め、とののしり、子どもの教育権も取り上げる。一方で事件をもみ消し、世間体をとりつくろうことばかりを考える。

     だが、未亡人の力で相手の男は改心し、証拠となる借用証書も返してよこす。夫は救われた!と喜ぶが、ノラの夫に対する愛情は冷めている。

     彼女は夫が彼女と一緒に助け合い、世間に恥をさらしても彼女が罪を償う手助けをしてくれると期待していたのだが、夫のふるまいはひたすら世間体を気にするだけだった。
    (と私は思ったんだけど、ノラは夫の性格から見て破滅するだろう、破滅するに違いない、破滅してはじめて夫を人間と認める、みたいに読む人もいるみたい)

     そもそもここに至ったのも、夫と一度も人間同士として話をしたことがなかったからで、彼女は夫が気を悪くするような話題はいつも避けてきたし、夫も彼女が何を考えているか、ということは一度も考えた事がなかった。
     自分も愚かだったが、夫も自分を人形のように扱っただけで、共に人間として高めあっていくことはできない人だ、と今確信を持った。自分は人間になるためにこの家を出ます、と夫と子どもを捨てて、今後は他人同士です、と言い置いて出てゆく。

     発表当時は女性が夫と子どもを見捨てて家を出て行く、という結末が衝撃だったらしいが、今はそういう話は理由はともかくこれっぽっちも珍しくない、むしろ当たり前の世の中になっている。夫も醜態だけどノラもかたくな過ぎる気もしてしまう。西原理恵子さんが女はポイントカード制、と言っていたのがよくあてはまっている気もする。

     今はむしろ妻が気を悪くするような話題を避けている夫も多いのかもしれない。

     これで置いていかれた子どもはどのように成長し、母親にどういう気持ちを持って成長し、年頃になって母親の行為をトラウマに持つのか持たないのかわからないけど、どのような恋愛をする、あるいはしないのだろうか、とか気になる。
     ノラは夫を完全拒否して出て行くけど、将来成長した子供が訪ねてきても拒否するんだろうか。憎しみや殺意を持たれた場合、どう対応するんだろうか。そういう少女マンガとかありそうだが。検索したら人形の家というホラーマンガはあるみたい。手塚治虫さんの奇子にも今は人形の家っていう副題がついてるのか。たしかにそういうテーマとも言えるか。
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