「死体の指にダイヤ(和久峻三著)」
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「死体の指にダイヤ(和久峻三著)」

2018-04-02 19:00


    ・一般には赤カブ検事のシリーズが知られていると思う和久峻三氏。それ以外も多くのシリーズを持ち、多くの作品が二時間ドラマとかで映像化されている。
     現役の弁護士と作家の二足のわらじを履いた人とのことだが、これだけ作品が多いと弁護士としての活動に支障をきたしたのではないかと気になってしまう。

     この作品は「京都殺人案内シリーズ」というものの1作目らしく、同じ刑事が登場するシリーズ作品がたくさんあって、藤田まことさん主演で32本、二時間ドラマになっているらしい。

     1977年に書かれた著者としては比較的初期の作品で、執筆時点ではそんなに長いシリーズになるとは思っていなかったんではないかというような展開がある。

     京都で(京都新聞に連載されたらしい)若い女性が全裸で殺される、という事件が続けて発生する。共通点はどちらも婚約中の女性であること。外傷はなく水死らしいこと。苦悶の表情がなく、笑みを浮かべた幸福そうな死に顔であること。
     一人目は自分のアパートに金沢から発送された荷物の中から、二人目は婚約者の車のトランクの中から発見される。どちらも婚約者が人間的にちょっと残念な人でもあり、疑われるが決め手となる証拠も動機も見当たらない。

     そんなことをしてるうちに三人目の被害者が出る。これは人妻。調べていくと、三人の被害者の交友関係が微妙に重なっていることがわかってくる。

     初老のベテラン刑事が、若手刑事とコンビを組んで捜査に当たることになる。彼は所長にも一目おかれるベテランで年上の部下だが、ちょっと扱いにくいところも感じているようで、時に捜査方針で対立することもある。署長もカミソリというあだ名のある切れ者である。

    こいつが怪しいな、という容疑者が縛られてくる。彼は三人目の被害者の元夫だが、1年で理由不明で離婚している。その後妻は再婚。男はある老舗婦人服地専門商社の三代目社長で、地元の名士である。妻の再婚相手は彼の元部下だったが、その後独立して商売をはじめており、最初の数年は順調だったようだが今は倒産し、元妻の生活は苦しかったらしい。

     第一、第二の被害者とも商売の関係上、接触する機会があったと推察されるが、面識があるという決定的な証拠は出ない。

    そんなことを調べているうちに、容疑者は旅行に出かけ、行方をくらませてしまう。さらに、時期を同じくしてベテラン刑事の年頃の娘も北海道旅行に出かけるが、連絡が途絶えてしまう。どうも男と一緒に出かけたらしいのだが。
     刑事の自宅には、娘の命が惜しければ捜査に手心を加えろ、あと5日間は何もするな、と脅迫電話がかかる。

     娘は琵琶湖湖畔の容疑者の別荘に監禁されていて、LSDみたいな薬を飲まされて殺されそうになるがなぜか助かる。そこには容疑者の他に使用人みたいな男女がいるのだが、娘は結構男勝りで、隙をみて男の使用人をストッキングで首を絞めて殺してしまう。娘はさらに別荘に放火してだ脱出する。
     火事や遺棄された使用人の死体が発見されたことなどから警察の網にかかり、いろいろあるけどようやく容疑者は逮捕され、娘も救助される。
     だが容疑者はしたたかで、娘の誘拐監禁は認めたものの、他の殺人事件については一切否認する。

     文庫で600ページ近いボリュームなのだが、容疑者逮捕までで全体の半分くらい。後半は、この容疑者のアリバイ崩しと、犯人の一人を殺してしまった刑事の娘に、正当防衛が成立するかどうか、というところがメインになる。
     既に3人が殺されており、さらわれた4人目が反撃しても正当防衛のような気がするのだが、容疑者が3人の殺人は否定し、完璧なアリバイを主張する。殺人が行われた日はいずれも海外にいたというのだ。パスポートには出入国印があり、偽造ではない。
     警察はこのアリバイを崩せず、すると娘の正当防衛も、誰も殺していない単なる誘拐犯を殺したので過剰防衛となってしまう。
     このあたりは弁護士らしくいろいろな論点や判断基準が示される。

     そんなわけで、この娘もテレビシリーズではレギュラーだったらしいのだが、そんな殺人の前科は無かった事になっていたみたい。
    ベテラン刑事はコンビを組む若手刑事を気に入っていて、娘が彼と一緒になってくれれば・・・みたいに思っているみたいだけど娘には全くその気がない。この若手刑事もテレビではほとんど出なかったみたい。

     ミステリ的な推理要素はあまり感じられないのだけど、二時間ドラマの原作としてはうってつけと思う。京都を端から端まで動き回るような内容になっている。
     
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