「十八面の骰子(さいころ)(森福都著)」②松籟青(しょうらいせい)の鉢
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「十八面の骰子(さいころ)(森福都著)」②松籟青(しょうらいせい)の鉢

2018-07-25 19:00

    ・「十八面の骰子」の第2話。熊泉という土地に現われた趙希舜、傳伯淵、賈由育の三人はごろつきに襲われていた娘・高阿栴(こうあせん)を助ける。彼女はこの地に高窯という窯を開いた一族の末裔だという。この土地では許という一族が力を持っているのだが、その許一族が二つに分かれて争い、持っている土地から、松林を持つ翠緑(すいりょく)の許家と梨畑を持つ灰白(かいはく)の許家と呼ばれている。両家は子供や親を殺しあう泥沼状態に陥り、そのために大勢のごろつきを雇い入れて治安はよくない。

     第一作では明確でなかった希舜の出自が示されており、宋朝の第二代皇帝太宗の第八王子の息子である、と明かされている。父親の名は趙元儼(ちょうげんげん)で実在の人物らしい。現在も健在で、甥である今上帝からも頼りとされる朝廷の重臣とある。とすると第三代皇帝の真宗は太宗の息子で元儼の兄みたいだから、現在の帝は第四代の仁宗なのかもしれない。
     希舜は皇室に連なる身分であるわけだが、母親は医師の一族で皇帝の気まぐれで手がついたみたいでつまり庶子である。自分が皇室の血を引いているとも知らずに成人したが、その後そのことを知り、世の中に役に立ちたいとい思い皇帝に実子として名乗りをあげた。実年齢24なのに何故か15歳にしか見えないという成長の遅さも災いしてなかなか自分の子だと趙元儼は認めなかったが、ある証拠でこれが明らかになると一転して希舜の父親として庇護を与えるようになったという。第1作では謎の武芸者だった賈由育は父親がひそかにつけてよこした希舜の護衛だったが、希舜に雇われているわけではなく、アブナイことを辞めれば自分が護衛する必要も無くなる、というので口が悪い。
     現在彼は父の配慮もあって天子の代理人・巡按御史をつとめているが、通常は同行している伯淵が巡按御史を名乗る。その間に希舜がいろいろな証拠を集めるのが役割分担である。少年のような見かけは、このような時に意外に役に立つ。
     伯淵の出自は謎で、少しずつ明らかになっていくのだが、希舜の祖父に命を救われたことは既に明らかになっていて、その恩返しとして希舜に仕えているという。

     高阿栴を助けた縁で彼女の家に滞在する一行だが、彼女には周威明(しゅういめい)というおじがおり、現在の窯はこのおじが守っている。阿栴の祖父が一度だけ成功した松籟青という青磁の色合いをなんとか再現しようと工夫を続けているという。

     希舜たちがこの地を訪れたのはもちろん巡按御史としての任務のためで、何人も死人が出るような二つの許家の争いについて積極的な手を何も打っていないのではないか、という上奏文が天子の目に触れたため。あまりもに無能であるなら県知事をクビにしなくては、というのが今回の調査目的。
      希舜と伯淵は焼き物好きである知事に周のお供をして目通りし、二つの勢力の争いをやめさせるある献策をするが知事の反応はかんばしくない。周と知事は焼き物談義でウマが合う親友でもあるらしい。知事は周の焼き物がこの地の名産となれば人々が潤う、と期待しているようだが名人気質の周はいくら努力してもいいものができない、と悲観的である。
     そんなことをしているうちにまたしても殺人が続き、どちらの許家も跡継ぎの息子を失ってしまう。そしてその片方の息子の死に阿栴が関わっているという疑いが出て、彼女も召還されてしまう。彼女の名を騙って息子を呼び出したものがいるらしいのだ。そもそもこの不毛な殺し合いは、一方の土地の評判もよかった息子が殺されたことからはじまっているのだが、それを誰が殺したのかは未だにわかっていない。
     新たな殺人が発生したせいか、知事は人が変わったように職務に精を出し、許家の争いもやめさせようと本気で取り組んでいる様子である。過去の職務怠慢は免れないが、情状酌量の余地はありそうだ。
     希舜と伯淵は最初の殺人にこそもつれを解くカギがありそうだとこれを調べてまわると、意外な容疑者が浮かび上がる。

     松籟(しょうらい)というのは中国でしか使われない漢字かと思ったら日本にもそういう地名があるらしい。東京にも松籟公園というのがあったり、お店の名前などにも使われている様子。
     松に吹く風の音という意味があるそうだ。


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