「十八面の骰子(さいころ)(森福都著)」⑤白磚塔(はくせんとう)の幻影
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「十八面の骰子(さいころ)(森福都著)」⑤白磚塔(はくせんとう)の幻影

2018-08-07 19:00


    ・山東半島の北端にある登州というところが舞台。この地名は実在みたいだけど現在は蓬莱市というところが該当するらしい。ここには鼓楼とよばれる三層の優雅な楼閣があり、日の出と日の入りを告げる鼓がここで打たれるらしい。趙希舜、傳伯淵、賈由育の三人がこれを見上げてちょうどはじまった暁鼓を聞いていると、鼓楼の上で爆発が起き、血と肉片が降ってくる。

     18歳の娘が哀れにも屋上で火薬で爆殺されたとわかり、その娘は知事の三人目の妻だという。今回三人はこの知事の行状を調査に来た。この地では蛟竜党(こうりゅうとう)という海賊が暴れており、知事は二年間この海賊と戦い続けているのだがはかばかしい成果がない。知事と海賊は裏で通じており、なれあっているのではないか、ということで希舜たちの出番となったのだった。

    知事の妻が殺されたということは、知事が潔白ということなのか、それとも狂言か。三人は別々に調査することとし、希舜は知事の館に潜りこみ、残る二人は海賊退治の兵として雇われる。希舜の仕事はなんと知事邸で飼われている蛇の世話だった。子供の胴まわりほどの太さがあり、大人三人分の長さを持つ大蛇である。この大蛇は、日和見と呼ばれる一種の天気予報のために必要で飼われているのだという。大蛇の餌として大量の鳩が飼われており、鳩小屋もある。

    一方伯淵と由育は人虎軍という海賊と戦う軍に兵士として採用される。二人が知り合いである事は周囲には隠している。そもそもこの二人はあまりそりが合わない。海賊は潮呼群島というところの浪華島という所を根城にしているらしいが、このあたりは海の難所で島の場所もはっきりせず、そのためこちらから攻撃をしかけることができないという。だが人虎軍の錬度は高く、海賊を倒してやるぞ、という士気も高い。特に19号という船は出撃するたびに敵の首を何人も取ってきて一目置かれているという。
     海賊から奪われた品物が都で出回っているということもわかっており、すると海賊はどこかで荷揚げもしていることになる。こんなことは取り締まる側と結託しなければわかるはずもなく、そのあたりが知事が疑われる原因にもなっている。希舜は雇い主である知事と直接話す機会を得るが、無骨な武人タイプでそんな悪事に手を染めそうにも思われない。だが殺された第三夫人にはあまり優しくしてなかったらしく、第三夫人には別に愛人がいたらしい。女心をつかむのは苦手なのかもしれない。希舜は医術の心得があるので、第三夫人は爆発で死んだのではなく、死んだ後に爆破されたことを知っている。また、第三夫人は妊娠していた。知事の子ではないらしいが相手はわからない。
     知事は生まれ故郷の女性を妻としていて、彼女と一緒に赴任してきたのだが、彼女に子供ができないため地元の女性を第二、第三夫人として迎えた経緯がある。なので知事の愛情の対象はあくまでも正妻に対してで、他の夫人にはあまり目が行き届かないらしい。夫人同士の仲は良好だったという。
     知事の従弟にあたる気象学者が屋敷にいる。天候を読む力があり、重宝されて知事が連れてきた。希舜が世話をしている大蛇の飼い主もこの人である。そして、第三夫人ももともとは大蛇の世話係として雇われていたのが知事の目にとまったらしく、気象学者も第三夫人とは顔なじみだったらしい。
     希舜は気象学者と一緒に海市、いわゆる蜃気楼を見る。海上に楼閣が立ち並び、白いひときわ目立つ塔がある。気象学者は蜃気楼が自然現象である事を知っており、あれは海の向こうの景色だろうと希舜に話す。
     そのあといろいろあって、希舜は海賊の本拠地・浪華島に潜入する機会を得る。ここで白い塔を目撃した彼は、蜃気楼で見えているのはこの島の風景だと気付く。白い塔は鳩小屋になっていて、そこには桃花(とうか)という娘がいて、鳩の世話をしている。希舜は彼女に鳩の精だと思われ、彼女の助けで島を脱出する。彼女は船の事故で両親を失ってこの島に流れ着き、鳩の世話をすることで生きることを許されている気の毒な身の上だが明るく生きている。希舜は彼女を助け出してやりたいと思う。
     希舜は何故海賊が簡単に捕まらないかというカラクリを暴き、知事は無実であると確信する。巡按御史としての仕事はこれで終わりなのだが、海賊の本拠を叩き、桃花を助け出すまではこの地を去らないつもりである。前の話で登場した茅燕児も再登場して希舜の手助けをする。彼女は惚れッぽい性質で、色男の傳伯淵を追ってきたのだが、彼女のおかげでいろいろと真相や黒幕がわかってくる。
     

    という感じでこの本は終わるんだけど、希舜と伯淵が知り合って、現在のような関係に落ち着いたいきさつ、というのがいまひとつ説明されていない。解説には続編が雑誌に載ります、と書いてあるけど、その後シリーズが書き継がれて単行本にまとまってはいないような。

     
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