「琥珀枕(森福都著)」②飢渇(きかつ)
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「琥珀枕(森福都著)」②飢渇(きかつ)

2018-08-11 19:00


    ・「琥珀枕」に収録されている二つ目の話。主人公というには何もしないのでちょっとためらいを感じる趙昭之(ちょうしょうし)少年は、スッポンの徐康(じょこう)先生が地元の二人の医者について語るのを聞いている。
     一人は御典医の白史雲先生。患者が門前に列をなしている。もう一人は張応昌先生。こちらの診療所は閑古鳥が鳴く。張医師は腕はたいしたことないが、白医師が来るまでは一番繁盛していたらしい。先生は技量に見合った繁盛のしかたで結構なことだと言いつつも、白先生は腕が良すぎて命を縮めることになるかもしれないと呟く。それはどういうことですか、と少年が尋ねても答えてはくれない。ただ、先生は助かる手立てがないでもない、と市場の方へ視線を向ける。
     市場には大賢(たいけん)という名物男がある。彼は地元の大金持ちの跡継ぎで、美男子でもあり人気者だったのだが、二十歳の時に奇病にかかる。食べることに異様に情熱を燃やすようになり、山海の珍味をその経済力で求めるようになる。やがて質だけでなく量も求めるようになり、金が尽きていくにしたがって美食はできなくなっていくが大食は残る。これに彼の両親は心痛のあまり死んでしまい、若くして娶った妻は子供を連れて実家に帰り、財産を全て食いつぶした彼は今は乞食として市場の残飯を食べ歩く毎日。だが彼はいくら食べても餓鬼のように痩せており、常に腹をすかせている。
     白医師は姪の段文淑(だんぶんしゅく)と二人で診療所をやっている。彼は腕を買われて帝の後宮に呼ばれ、楊夫人という帝一番のお気に入りの女の命を救うために腹を裂いて死んだ胎児を取り出したことがあった。だが楊夫人は白医師が子供を殺したと逆恨みしている。実は白医師は楊夫人のライバルの秦姫(しんき)という女性に頼まれて、侍女を堕胎させたいというので堕胎薬を調合したことがあった。だがその薬が楊夫人に使われたらしい。白医師は知らぬこととはいえ、間接的には責任を感じている。そして白医師を恨んだ楊夫人は白医師を殺そうとしている。ある日とうとう刺客が押し入って来て、白医師は夢中でこれに立ちむかい、相手を倒す。倒したものの、その死体の始末に困る。楊夫人に命を狙われています、などと役人に言えたものではないので届け出るわけにいかず、この死体をうまく処分しなければならない。そこに大賢が呼ばれることになる。文淑は顔に疱瘡の跡があり、嫁の貰い手がないのだが聡明で料理の腕も一流な娘である。

     ちょっとグロテスクなところのある話。腕が良いために後宮の女たちのえげつない争いに巻き込まれてしまった医師が、どうやって窮地を脱するか、という。白医師と段文淑は叔父姪の間柄だが、男と女として惹かれあっている模様。
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