「黒い探求者(諸星大二郎著)」妖怪ハンター(1)
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「黒い探求者(諸星大二郎著)」妖怪ハンター(1)

2018-09-13 19:00


    ・妖怪ハンター読み直しの一冊目。
     巻末に記された収録作品と発表年代は以下の通り。

    海竜祭の夜    1982
    ヒトニグサ    1982
    黒い探求者    1974
    赤い唇      1974
    生命の木     1976
    幻の木      1987
    花咲爺論序説   1985
    闇の中の仮面の顔 1978
    肉色の誕生    1974

     一冊の本の中での作品執筆年代が1974年から1987年と足かけ15年にわたっている。そのため、著者もあとがきに書いているけど、主人公稗田礼二郎(この名前は、古事記の暗誦者・稗田阿礼からとった、とジャンプスーパーコミックスのカバー折り返しに書かれている)の顔もずいぶん変わっている。

     紹介は収録順ではなく一応発表順に。


    ・黒い探求者
     「生物都市」で手塚賞をとり、「侵食惑星」という短編を描いたあとに週刊少年ジャンプで連載がはじまり、その第一作。連載当時と1978年に出たコミックスでは作者らしき人物が道端で奇妙な動物を見た体験談などが導入部に描かれていたが、この版では入っていない。代わりに冒頭に稗田の来歴などが語られるページが書き足され、本編の最初2ページ程度も切り張りしたのかコマの配置やセリフが一部変わっている。
     この単行本の中では先に「海竜祭の夜」「ヒトニグサ」と時系列的には後の作品が収録されているので、稗田が何故妖怪ハンターと呼ばれるに至ったのか、それを知ってもらうために古いノートから古い事件を紹介する、という流れになっている。「黒い探求者」は最初の事件とある。

     九州の小さな村を、稗田は訪れる。目的は九州に多い、装飾古墳という物の調査。
     論文集「古墳の呪術的文様」を出版したところ、読者から興味深い古墳があると手紙が届き、その送り主を訪ねてきたのだ。
     だがその送り主はなんと少年で、名前は八部まさお。論文は子供が読むようなものではなかったので稗田は意外に思うが、彼の父親は郷土史家ということでその影響もあるらしい。

     彼の父親は最近首なし死体で発見されており、その発見場所が装飾古墳である、比留子古墳だったという。この古墳には不思議な人間とも動物とも判然としないものの姿が描かれており、そこに文様を描き足した跡もあるらしい。それをやったのは八部少年の父親らしいという。八部家は過去地頭を代々務めたこの土地の旧家である。

     筑後国風土記には、「日良の郷に土蜘蛛あり 住人 比留子と呼ぶ 」
    (「筑後国風土記」という書は実在したらしいが書名が伝えられるのみで内容は不明らしいが、死んだ郷土史家の本棚にはこの本があり、この記述があった)
    大友家覚書には「文永年間 地中より 比留子 無数にいでて 住人おおくをくらう 地頭 八部某 三角の冠にて これをしずむ」と書かれている。
    (この本は多分著者の創作だと思う)

     そして八部少年の祖母も、幼い頃に文永年間と同じようなことがあり、自分の父親が冠をかぶってそれを沈めたことを目撃していた。だが、息子、つまり八部少年の父親が古墳に出入りするのを気に入らなかったらしく、家に伝わる冠を渡さなかった。それがあれば父親は死なずにすんだかもしれない、と祖母は八部少年に父親がかぶっていた青銅製の冠を譲る。冠には三つの角がついていた。

     少年の父が残した記録から、稗田は推理する。比留子はおそらく水蛭子のことで、古事記に出て来るイザナミが最初に生んだ神のこと。ちゃんとした子ではなかったので、葦舟に乗せて流されたとある。そしてヒルコを封じ込め、あるいは呼び出す文様と呪文を、少年の父は突き止めていた。

    稗田と少年は、父親がやったのと同じように文様と呪文を使って、古墳の中の異界への扉を開く。そこには虚無から生まれ虚無へ帰る、地上の生命とは異なる系統の陰の擬似生命体、ヒルコがいた。ここは開けてはいけない、禁断の場所だったのだ。

    ヒルコに追われて危ういところを、ヒルコと同化した姿で生きていた父親と、三角の冠の力で、イザナギの黄泉の国からの逃走のように逃げ延びた二人は、なんとか扉を塞ぐ。
     父親は死に、冠もバラバラに砕け散った。

     ヒルコは古代人がなんとか方法を見つけて異界に封じたもののようだが、今度地上に現われたら、冠も失われており 再度の封じ込めがかなうだろうか。

     ラストもコミックス版では 稗田が日本考古学会を追放され、人からは妖怪ハンターと呼ばれている、と締めくくられるが、A5版では追放されたとまでは書かれておらず、古いノートの記録はここで終わる、みたいになっている。

     この話は第二話の「赤い唇」と合わせて映画になった。稗田役は沢田研二さんで、妻と死別した設定になっていた。


     ヒルコは原作ではこんな感じのデザインだけど(まさかこんなガチャガチャがあるとは)


     映画では蜘蛛の背中に人間の顔が張り付いた、みたいなデザインになっていた。
     原作ではまさお少年の父親はヒルコと事故で偶然同化してしまうのだけど、映画では人間の首を奪って意識を持ったまま自分の背中に貼り付ける、デビルマンのジンメンみたいな怪物になっていた。
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