「赤い唇(諸星大二郎著)」妖怪ハンター(2)
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「赤い唇(諸星大二郎著)」妖怪ハンター(2)

2018-09-20 19:00
    ・具体的な地名は書かれていないが、市立中学校があるたぶん地方都市が舞台。
     3年B組には月島令子という生徒がいて、目立たずおとなしい性格だが勉強はできる。顔立ちも整っている。だがそれが気にいらない同級生の女子グループからはいじめの対象にされている。彼女と3年間同じクラスにいる山本という男子生徒は彼女を気にかけていて、彼女も山本を嫌ってはいない様子で、笑顔も見せる。

     ある日のテストで彼女だけが満点を取ったのが気にいらないと、令子が女子2人に静光寺というところに連れて行かれたと聞いた山本は助けに駆けつけたが誰もおらず、月島家に電話をすると令子は帰宅しているという。ほっとした山本だが本当の事件はその翌日起きる。

     登校して来た月島令子は、昨日までのおさげ髪ではなくパーマをかけたのかウェーブのかかった髪で、真っ赤な口紅をつけて登校する。教師が注意するが、彼女が黙りなさい、と言うとたじたじと退散してしまう。生徒会長やサッカー部長などの男子生徒が、彼女にかしずくように周囲に集まってくる。

     同じ頃静光寺で死体が見つかる。昨日令子を寺に連れ込んだ女生徒の1人で、顔を動物かなにかに食い破られている。もう一人の女生徒は家で寝込んでいたが、そこに電話がかかってくる。電話からは言う通りにするのよ、と令子の声が聞こえる。電話を切った後、女生徒は自室で首を吊って自殺する。

     殺人事件の調査に刑事が学校にやってくるが、生徒会長が刑事を殺し、自分も自殺してしまう。月島令子をいじめていた女生徒グループは他校の男子生徒を連れてきて令子を襲わせるが、令子が殴る相手が違うと呟くと女生徒たちを殴り倒す。
     令子がもういいわ、と言うと男子生徒はフラフラと去ってしまう。グループの頭だった女生徒は、令子に交通事故にでもあって死んでしまいなさい、と言われて車に飛び込んでしまう。

     山本はこれを目撃し、令子は山本のところにもやってくる。令子は、自分の中に潜んでいた別の人格(ペルソナ)をあるモノが表に出してくれたのよ、今の私には魔力があって、この赤い唇に言われたことに誰も逆らえない、死ねと言われれば死ぬのよ、あなたには危害をくわえたくなかったけど、知られたからには仕方ないわ、と山本にも自殺するように指示を与え、ちょっと悲しそうにさようなら、と言い残して去って行く。

     自殺しようとした山本は、静光寺を訪ねてこの地にやってきた稗田礼二郎に救われる。稗田の目的は静光寺にある朱唇観音の調査。だが二人が寺を訪れると観音像は左右にまっぷたつに割れており、住職は殺されている。観音像の胸の部分には空洞があり、何か赤いものが入っていた形跡がある。

     月島令子が現われてふたたび山本を殺そうとするが 稗田が観音像の右手を突きつけると恐れおののいて後ずさりし 崖から落ちてしまう。

     この寺に伝わる朱唇観世音縁起によれば 昔国の守の娘が鬼に襲われ、供のものは食い殺されたが一人だけ無事に戻ってきた。だがその後人格が変わり、子供を食べたという。
     行脚の高僧がこの鬼女と対決し、姫に取り付いた魔性のものを観音像に閉じ込めたが相討ちの形で僧も死に、その右手を観音像に塗りこめて封印としていたという。僧の右手のミイラが観音像の右手に入っており、魔性のものはこれを恐れたのだった。

     赤い唇は死んだ令子の顔から別の生き物のようにずるずると剥がれて動き出すもののやがて力尽きたのか煙をあげて熔けてゆく。消える直前にニヤリと笑ったように見える。

     この唇が剥がれるシーンは最初に読んだ当時けっこう怖かった。

     諸星さん本人は河出書房の文藝別冊で、「黒い探求者」と「赤い唇」はほぼ思うとおりに描けた、とインタビューで語っていて、唇が剥がれるラストシーンも編集者にダメ出しされたけど、うまくスルーして自分の案を通したとのこと。

     月島令子は映画「妖怪ハンター ヒルコ」にも登場するが、ヒルコに取り付かれることになっていて、赤い唇の魔性のものや観音像は出て来ない。山本少年も出て来なくて八部まさお少年と稗田がヒルコ空間から脱出する時に、令子が他のヒルコにされた人たちの中心となって追いかけて来るヒルコを防ぎ、逃がしてくれる。なので唇は赤いんだけど、これが顔から剥がれるシーンは無い。
     
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