「銭形平次捕物控傑作選(野村胡堂著)」⑧迷子札
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「銭形平次捕物控傑作選(野村胡堂著)」⑧迷子札

2018-11-23 19:00




    ・左官の親方をしている伊之助という男の娘、お北が八五郎に付き添われて平次を訪ねてくる。お北の年頃は18か19。彼女には五つになる乙松という弟がいるのだが、この弟が行方不知(ゆくえしれず)になったという。もう七日になるという。そして昨日、台所の勝手口に乙松の幽霊らしい姿が見えたというのだ。芝居に出て来るような綺麗な着物を着て家の中を覗き込んでいたという。
     よくよく話を聞けば乙松は本当の弟ではなく、捨て子だったのだという。伊之助はもう60歳、お北の母親は昨年亡くなっているが59歳。お北も遅い子供だが、乙松はさすがに小さすぎる。だが年の差があることもあって弟というより実の子供のようにかわいがっていたらしい。乙松には軽い知恵おくれもあるという。
     伊之助はお北が話を持ちかけても熱心に探そうとせず、心配する様子も見せず酒ばかり飲んでいるという。

     平次はこれを聞いて、乙松の本当の親が名乗りでるか見つかるかしてお北には内緒で伊之助が親元に帰し、礼をもらって酒を買ったんだろうと見当をつける。これは半分当たっている。ガラッ八で十分だろう、と彼を伊之助のもとにやって話を聞き出させようとするが口がかたい。平次はそういう事情なら探しても戻らない、お北にはかわいそうだが放っておくしかあるまいよ、と八五郎を諭すが八はお北がかわいそうでしかたがない。

     そんなことをしているうちに伊之助が殺される。それも斬られて。斬った相手は相当の手だれと思われるが、斬ってわざわざ死体を伊之助の家まで運んで来て放り込んでいったらしい。辻斬りにしてはちょっと変だ。そして伊之助の財布には乙松の迷子札が入っている。これはお北が伊之助に出すように言われて渡したもので、これを持って出かけていったのだという。
     迷子札は江戸の子供が外出する時に身につけていたものらしく、これが残っていたということは乙松は外出中に行方不知になったのではなく、伊之助がどこかに連れて行ったのだろう。

     平次は乙松を拾ったというのも嘘で、おそらく出入りの武家からわけありの子供を預かって礼をもらったのだろう。伊之助は悪人ではないが酒好きで仕事が嫌いなちょっとだらしない男。乙松を返して金をもらったのに味をしめて、残った迷子札でもうひと稼ぎと強請にいって面倒だ、と斬られ、相手も育ててもらった恩があるので死体を返したのだろうと見当をつける。

     お北から聞き出した出入りの武家の中に該当する家がある。平次はここに乗り込んで荒ッぽい談判をし、真相を突き止める。
     乙松には双子の兄がいたのだが、当時は双子は忌み嫌われていたので出入りの職人であった伊之助に乙松を渡し、縁の無いものとして育てさせた。だがこの家の病気がちな主君に愚かな弟がいて、この子が死ねばお家は自分のものだと乙松の兄を毒殺してしまう。このままではこの弟に家督がうつってしまうのでこれを防ごうと思った忠義の家臣たちが乙松を呼び戻して代理とした。だが乙松にはまだ武家の子供としてのふるまいが身についていないので病気という事にしてある。お北を恋しがって泣くので一度顔を見せに行ったときに幽霊と思われた。
     そこで伊之助が強請に来たので頑固で忠義者の家臣が独断で斬ったのだった。一徹な彼はお北に討たれてかまわぬ、だが自分はお家を守らねばならぬ、愚かな弟に詰め腹を切らし家中を整えるまで待ってくれ、と謝罪する。平次はお北を乙松の世話役として奉公させるように頼んで屋敷を後にする。

      これは51作目の作品。作品集にはよく収録されているみたい。ガラッ八はなにかというと平次に金を借りに来て、そのたびにお静の着物とかが質屋に行くらしい。
    傑作選の1巻に収録されている小説はこれで最後だが、エッセイみたいな平次身の上話というのがもう一編入っている。
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