「上ゲ哥(あげうた)前編(木原敏江著)」
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「上ゲ哥(あげうた)前編(木原敏江著)」

2018-12-16 19:00


    ・これも「雪紅皇子」の番外編で、二の宮が寺に預けられていたころの話。
     側近とも引き離されて一人で慈訓和尚の下で学僧になるための修行の毎日。自分の将来に希望が持てない日々を送っていたまだ少年の二の宮は、ある日山姥に出会う。
     歳のせいか足を滑らせて木から落ちた山姥を二の宮は彼女の隠れ家に連れ帰ってやる。この作品での山姥は霊視や占いをなりわいにして全国を巡る一族とのことでサンカとか山の民とか呼ばれる人たちかもしれないが、そういう呼び名は使っていない。そこには若い娘・歩鳥(ほとり)がいる。二の宮は10歳、歩鳥は14歳。彼女は山姥の地のつながった孫とかではなく、仲間を失ったはぐれ忍びだった。
     歩鳥は二の宮に剣を教える。まず強くなって自分の将来を切り開けと。
     山姥は慈訓の元を訪れ、二の宮が三日に一度歩鳥に剣を習いに通う事を認めさせる。実は山姥は若き日の慈訓の命を救った恩人でもあった。慈訓も山姥をこの国最高の霊能者と認め、畏怖の念も持っている。
     一年ほどそんな修行の日々が続き、二の宮の剣の腕も時に歩鳥をしのぐほどに上達する。二人は姉と弟のような師弟のような恋人同士のような、強い結びつきを感じる間柄になる。
     ある日、北朝の刺客が二人を襲う。人のよさそうな商人に化けた刺客に、二の宮は黒い影が重なっているのを見るが意味はよくわからない。だが歩鳥が斬られ、黒い影は殺意・悪意が目に見えたものだったと知る。これは彼が山姥と同じ一族だった母親から受けついだ「見る」力だった。
     腕の立つ刺客に実戦経験を持たない二の宮は苦戦するが、歩鳥の叱咤激励を背に強敵を倒す。勝ったものの人を斬ったことにショックを受ける二の宮に、歩鳥はそなたの罪・贖罪は全て私が引き受け背負ってやる、と力付ける。

     やがて異母兄の一の宮が自分には隠されていた弟の存在を知り、振矢を迎えによこす。これは山姥が二の宮の将来を占った通りだった。
     二の宮は振矢に歩鳥を紹介し、年下の夫でもよければ必ず迎えに来る、と約束して兄の待つ隠れ里へ行く。
     歩鳥はひそかに隠れ里に様子を見に行き、一の宮の人となりも見てこれなら大丈夫、と安心して帰る。すると山姥は寿命を迎え、死にかけている。
     山姥は歩鳥に二の宮の母親は自分の孫娘であること、二の宮は長く生きないであろうことを伝えこれまで一緒にいてくれた礼に砂金を渡して事切れる。そしてもうひとつ予言があった。。

     一の宮の許しを得て歩二の宮が歩鳥を迎えに来た時は、小屋には誰もおらず、山姥が死んだことを伝え、自分も出発するからお前も前に進め、との歩鳥の置手紙があった。

     成人して、謡曲「山姥」を舞う二の宮の姿がある。都を南朝の手に取り戻すことを誓って。
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