「加持祈祷うけたまわり〼(佐野絵里子著)」表題作以外
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

「加持祈祷うけたまわり〼(佐野絵里子著)」表題作以外

2019-01-11 19:00




    ・上記の本に収録された、表題作以外の作品。

    ・鎌倉猫迷路
     変わり者で友人がいない少年。鎌倉の親戚に預けられている。毎日やってくる野良猫と仲良くなり、この猫が唯一の友だちみたいになるが、猫の様子から自分以外にもこの猫を大事にしている人がいると察する。
     鎌倉から去る日がやってきて、彼は猫を連れて行こうともう一人の猫の主人を探しに猫の後について行く。この猫を譲ってくれと頼むために。
     その人は奥さんを亡くし、独り暮らしの老人で作家だった。老人は自分は猫の主人ではなく友人に過ぎません、だからあげることはできないのですよ、と少年に言い聞かせる。
     少年の人生はじめての人間の友人になったのは、この作家の老人だった。

    ・水底の宴
     耳無し芳一の話だが、視点がちょっと違って安徳天皇を慈しむ芳一が、一緒に行きましょうという約束を破ったことに罪悪感を持つような感じの話になっている。

    ・退屈な午後に
     ちょっとレトロな感じのヨコハマが舞台。叔父が経営する喫茶店に舞子という姪がやって来る。彼女はミステリ好きで読んだばかりの作品がすごいの、みたいな話をするが、居合せた客で彼女より年上の京介という青年は駄作と酷評する。姪は初対面だったが彼は叔父とは知り合いで元町の古本屋の息子だという。姪は失礼な奴、とムっとする。
     
     舞子がここにかかっていた絵はどこに行ったの?と指摘すると叔父さんは慌てる。そこには店の常連で偉い画家が好意で寄贈してくれたものだった。これを無くしたとなれば、画家だけでなく画家と懇意にしている横浜中の文化人に総攻撃を受けるかもしれない。

     舞子は叔父にいつまで絵があったのか、どんな客が来たかを確認すると、朝その画家がいつも通りやってきた時には確かにあったがその後店が混みはじめて定かでない。その間、一番怪しいのは京介じゃないか、という話になる。舞子は京介が犯人と決めつけて抗議に行くが京介はもちろん犯人ではない。真犯人を見つけに行こう、と京介は電話を1本かけたあと舞子を誘うが、なんだか二人でデートしているみたいに横浜の名所をグルグル。
     何してんのよ、とじれる舞子にそろそろかな、と京介は叔父さんの店に戻る。もう閉店しているが、京介はもうすぐ真犯人が絵を持ってくるという。
     やがて現われたのは画家だった。画家は朝自分の絵を見てふと修正したくなり、持ち帰って直していたのだった。すぐ返すつもりだったがなかなか絵の具が乾かず遅くなったのだった。

     京介はもちろん舞子の話を聞いてすぐそれと察し、画家に電話していたのだった。横浜をうろうろしていたうちに二人はすっかり親しくなっていて、退屈な午後を面白く過ごせたわ、と舞子は京介の腕をとる。

    ・お天気いい日
     天気のいい日の午後。退屈だわと京介の古本屋を訪ねた舞子。京介は暇そうにラジオを聴いており、ニュースでは麻薬密売組織が横浜で暗躍していると伝えている。
     舞子は彼の推理力を見込んで調べてほしいことがあると彼を連れ出す。案内したのは港の倉庫街。子供の落書きのような人間の絵がある。舞子は同じような落書きが何箇所かにあり、子供が書いたにしては場所が高すぎるという。
     ホームズの踊る人形みたいな暗号ではと疑った彼女は、暗号なら京介に解けるのでは、と誘いに来たのだ。京介は博物館の塀など3箇所の同じような落書きを見て、描かれた人数が何番目の角かを示し顔の向きが曲がるべき方向を示している道案内暗号であろうと見当をつけ、その通りたどって見ることにする。
     実はこれは舞子が仕組んだもので、最終的には京介の店に戻るいたずらなのだった。だがたどって行くと行き止まり。舞子が作ったものがいつの間にか描きかえられているらしい。誰かに悪用されたのかと舞子は心配し、そういえばさっき密売組織がなんとかってニュースがと思い当たる。京介は店に戻って調べることがある、と彼女を残して帰ってしまう。
     舞子は自分の落書きが犯罪に使われては、と密売組織のアジトを突き止めようとさっきのとは別の落書きの示す順路をたどる。
     描きかえは毛の数が曲がり角、手に持った旗が曲がる方向を示すらしい。伊勢崎町から山手、港に中華街と横浜中を歩き回ってたどりついたのはこじゃれたパーラーで、京介が待っていた。彼女の意図を悟った彼が先回りしていたのだった。ラジオも録音で、彼女に密売組織を意識させるための仕掛けだった。そういえば天気予報は雨だと言っていた。今日はこんなにいい天気だったのに。最初からヒントが示されていたのだった。
     二人は笑って一緒にお茶をする。

     最後の二つの舞子と京介みたいな連作は、ふんわりした絵柄と雰囲気が合っている。耳無し芳一の話はまた怪奇な話に合う異なった絵柄。猫はその中間くらい。いろいろな絵が描ける人の様子。加持祈祷よりこちらの方が完成度は高い気がする。

     これらは商業誌に発表されていて、お天気いい日は毎日小学生新聞に掲載されたデビュー作とある。どんな伝手があったんだろう。退屈な午後にの方が描かれたのは後で、これは漫画賞かなにかに応募して佳作入選した未発表作らしい。

     作品数は少なくて、別に本業をお持ちなんだと思うけどツイッターがあって現在も活動中みたい。好きなものをマイペースで描いているということかな。
    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。