「ギリシア神話を知っていますか(阿刀田高著)」⑦アリアドネの糸
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「ギリシア神話を知っていますか(阿刀田高著)」⑦アリアドネの糸

2019-03-26 19:00



     
     クレタ島のミノス王の娘、アリアドネはアテネの王子・テセウスに一目惚れするのだが、テセウスは人質の身分だった。先だってクレタとアテネの間で戦闘があり、戦勝国となったクレタがアテネから人身御供として毎年少年少女7名を送るようにとなっっており、テセウスもその一人だったから。

     なんのための人身御供かといえばクレタ島の外れにミノタウロスという怪物が棲んでいて、そのご機嫌をとるために。ミノタウロスはグルメなので若い人間の肉しか食べないらしい。牛頭で人間の体を持つというのだが、牛の頭で肉食というのはよく考えると変な気もする。とにかく人身御供を出せば一年はおとなしくしているというので仕方ないらしく、戦勝してアテネの子供をもらえることになったのでそれならちょうどいいということになったみたい。あるいは子供の人身御供を献上させるために戦争したのかもしれない。その戦力をミノタウロス退治に使うべきだったようにも思うのだが。
     
     クレタはそれでいいけどアテネはたまったものではないので、なんとかその怪物を倒せないか、ということになって、王子テセウスが俺が行って倒してやろう、と名乗りをあげたので王子が人質になっていたわけである。テセウスは本当にアテネの王族の血を引いているのか疑われる立場にあったらしく、海神ポセイドンの子ではとも噂されていたらしい。その方がすごい気もするが、国家を救うような手柄をたてないといけない事情もあった様子。
     
     ミノタウロスは迷宮に棲んでいる。この迷宮はダイダロスがミノタウロスを閉じ込めるために作ったもので、一度中に入ると出てこれない。なので人身御供たちは中で迷っているうちにミノタウロスと出くわしてエジキになってしまうという。出てこれないなら人身御供を出さなくてもいいじゃんかとも思うが暴れると迷宮を破壊して出てきてしまうのかも。

     テセウスはあまり計画性のある方ではなかったのか、ミノタウロスは倒せても迷宮からどう脱出するかなんどは考えてなかったらしく、アリアドネはテセウスの身を案じて、迷路を作ったダイダロスがまだ生きていたので相談に行く。ダイダロスは設計図は王様の命令で焼き捨ててしまい、自分も老いて出口を教えることはかないませぬ、と言いつつもある知恵を授けてくれる。

     アリアドネはひそかにテセウスの牢をたずねてダイダロスの策を教える。テセウスは感謝しつつ何故このようなことをしてくださるのか、とアリアドネに問う。彼女はここで愛を告白し、テセウスの方もそれを受け入れて、ミノタウロスを倒したら二人でこの国から逃げましょうと話がまとまる。ダイダロスの策というのは糸球を持って迷宮に入り、その一端を扉に結び付けておくというものである。

     テセウスはミノタウロスを瞬殺し、他の人質の子供たちも連れて迷宮を脱出。待っていたアリアドネと合流し、彼女の手配した船で国外へ脱出する。これを知ったミノス王は、娘に入れ知恵をしたとしてダイダロスを捕まえ、息子のイカロスともどもその迷宮に監禁してしまう。

     船の二人はナクソス島というところにたどりついて、ここは酒と収穫の神、バッコスもしくはディォニソスの支配地である。この神様は好色の神様でもあって、最初は二人を快く迎えてくれるが、宴で二人を酒に酔わせ、アリアドネを何度も何度も一晩中凌辱して自分の女にしてしまう。テセウスとはどう話をつけたのかわからないが、テセウスも出会って日も浅いアリアドネにさほど未練がなかったのか、神様と争っても無駄と思ったのかディォニソスが以降守護神としてテセウスの後ろ盾になることになってアリアドネを置いて島を出てゆく。アリアドネのその後は伝わっていないらしい。
     テセウスは故郷に帰ってアテネ王になったという。

     ダイダロスとイカロスは翼を作って迷宮を脱出するが(塔の窓から脱出したようなイメージがあるが、この本では迷宮から飛び上がったみたいに書いてある)、太陽に近付きすぎたイカロスが墜死するのはよく知られた話。イカロスはその後も太陽惑星イカロスとか太陽ヨットのイカロスくんとかイカルス星人とか(イカロスのラテン語読みがイカルスらしい)、科学やSFの世界ではけっこう聞く名前になっている。親の方も核爆発で宇宙船を飛ばす、みたいなダイダロス計画とか、同じ名前の下町ロケットの計画とかいろんなところで名前を使われている様子。

     迷宮は伝説ではなく実際に発掘されて、クノッソスの王宮として観光地になったとのこと。4階建ての部分もあったらしく、ダイダロス親子はここから飛んだのかも。

     著者はアリアドネのように、英雄を献身的に愛して報われなかった無名の女性はいつの時代にも大勢いるだろう、と締めくくっている。
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