「黒いカーテン(ウィリアム・アイリッシュ著)」
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「黒いカーテン(ウィリアム・アイリッシュ著)」

2019-03-09 19:00




    ・ミステリーの古典的名作の一つ。著者はいくつかの名義で小説を発表していて、これは本名のコーネル・ウールリッチ名義で発表されたらしいけど、日本では別の名前で発表された作品もアイリッシュ名義で発行されることが多いらしい。

     ある男性が事故に遭い、頭を強く打つ。幸い大事には至らず、早く家に帰って妻に会おうとする。だが自分が身につけているシガレットケースは見覚えのない高級品だし、帽子のイニシャルも別人のもの。帰ってみれば今朝出かけた我が家は古びていて様子がおかしい。妻はそこにおらず、離れた場所に転居したという。彼は三年半の間の記憶を失っていたのだ。

     妻が会社には病気療養と届けていたため復職がかない、新たな生活を開始する。やがて彼を見つめている男に気付く。瑪瑙のような灰色の眼をした男が彼をはっとしたように彼を見つめ、あとをつけてくる。その場ではなんとかまいたもののその後も彼の通勤経路にたびたび現われて、次第に彼の勤務先のそばに出没するようになる。勤務先を突き止められるのも遠くないだろう。
     一度など地下鉄にとび乗ってようやく振り切ったが、窓ガラス越しに目があった時に男は拳銃を取り出した。彼の命を狙っているのだ。
     勤務先が知られた可能性が高くなり彼は妻に内緒で会社を辞め、別の仕事を探すことにする。だがやがて男は彼の自宅のそばにも現われる。もはや猶予はならない。彼は事情のわからないまま妻を連れて逃げ出すことにする。あやういところでアパートには扉を叩き破って何人もの男が押しいってくるが、間一髪で逃げ延びる。
     男は妻を実家に帰すと、自分の失われた三年半の記憶に追われる原因があると考えて事故にあった街に出向き、近くの安ホテルを拠点に自分の足跡を探すことにする。毎日が徒労に終わり、手持ちの金がつきそうになるころ、一人の女が現われる。
     「こんなところで何をしているの!隠れていないとダメじゃないの!」みたいなことを言う彼女を手掛かりに、彼は過去の自分を知ることになる。彼は殺人事件の容疑者だったのだ。

     みたいな感じではじまって、男が自分の過去と立ち向かう話。
     
     あとからよく考えると、記憶喪失になって三年半も違う人間として生活することになった原因については何も説明はなく、手掛かりとなった女とは記憶がないままとはいえ男女の関係になっており、妻に対しては不貞となる。この女性と妻とのことをどう清算するのか、などとも思うのだが何だか都合よく解決したりする。

     でも、男が少しずつ瑪瑙の眼をした男とその仲間に追い詰められていく過程や、自分の過去を調査して何があったのかを突き止めていく過程などには臨場感があって、どうなるんだろう、と面白さを感じる。ページ数も200ページに満たずあっという間に読み終わってしまう。通勤の行き帰りにちょうどいい感じ。
     著者の作風は別にトリックとかがあるわけではなく怪奇現象が起きるわけでもなく、ミステリーともスリラーとも呼べない独特な作風で推理小説ではないとも呼ばれ、次第にその雰囲気を残したまま推理小説ではないジャンルを書くようにもなったと解説に書いてある。
     日本人には人気のある作家で「幻の女」「夜は千の目を持つ」が特に有名な感じ。ヒチコックの「裏窓」の原作もこの人らしい。
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