ユーザーブロマガは2021年10月7日(予定)をもちましてサービスを終了します

「幽霊宿の主人(あるじ)波津彬子著」前半
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

「幽霊宿の主人(あるじ)波津彬子著」前半

2019-04-22 19:00




    読むのがきつくなった漫画文庫の読み収め。

    ・タイトルは幽霊宿の主人だが、幽霊宿が出て来るのは第一話だけ。一応 冥境青譚抄 という副題がついているけど全然目立たない。
     時代は多少前後するが、江戸幕府が瓦解して、西洋の文物がどっと日本に入り、日本古来の様々なものが薄れて消えてゆく頃。登場人物の衣装も建築物も和洋混在している時代。人ならざるものが見える主人公がいろいろする話。 

    ・幽霊宿の主人
     死んだ人と会えるという噂の宿屋があり、幽霊宿と呼ばれている。会えるのは一度だけ。声もかけてはいけない。近づいてもいけない。遠くから姿を見るだけ。宣伝などしないが口コミで客は絶えない。だがそれは嘘で法外な料金を取っているんだろう、もしかしたら幽霊は隠れ蓑で売春宿なんだろうと官憲からは疑われている。
     実はこの宿の従業員は旅役者の一家で、老若男女揃っている。どんな客でも一家の誰かが化けて、霧のむこうから姿を見せれば勝手に死んだ人と思ってくれる。
     主人は若い和服の男。忠義な禿頭の使用人がいる。ある日二組の客を迎える。一人は若い女性で、結婚したが一度会っただけで身まかった夫ともう一度、というもの。相手はもともと病弱で明日をも知れぬ身だったが彼女を見初め、資産家の家族は息子の夢をかなえたいと少なからぬ支度金と一緒に縁談を持ち込んだもの。娘の家族は金で買われるようで不愉快だ、と反対するのだが、娘はそこまで慕ってくださったなら、と承知して、一度会えば彼を忘れられない。
     もう一人は男性で、流行り病で死んだ婚約者と会いたいという。だがこれは官憲の囮捜査で、婚約者に扮した役者一家の娘の手をねじり挙げて連行しようとするが主人が止める。正式な令状をお持ちなさい、と相手を追い返しておいて、忠義な使用人に幽霊宿を今限り閉じると命じる。旅役者一家は報酬をもらっていとまを告げるが、金で雇われていただけではなく恩義があった様子。
     もう一人の女客はその騒ぎを聞いて、やっぱり嘘だったんだ、と立ち去ろうとするが使用人が強引にそれを止めて主人の元へ連れてくる。踏み込んできた警官を軽くあしらった主人は、娘に本物の夫の霊を呼び出し、一夜の契りを結ばせる。
     主人にはそういう力が本当にあるのだが、冥界の気を生きている人に当てるのはよくないとのことで、面影を見れば満足できる程度の客には旅役者たちに幽霊を演じてもらい、彼女のように深い覚悟のある人物にだけ本当に霊と会わせていた模様。
     この幽霊宿もいろいろわけありっぽい主人の道楽のようなものだったらしく、使用人となかなか楽しかったね、などと話している。

    ・夢と知りせば
     とある「会」が開催される。主催者は幽霊宿をたたんだあの人物。忠義な使用人も一緒である。和装洋装取り混ぜて、裕福な家の紳士淑女が会場となった洋館に集う。
     主人が口上を述べ、一人ずつ怪談を語ってロウソクの火を消していく要領を説明する。江戸の百物語と同じです、数は足りませんがね、と。客の一人がこちらの会では全部の話が終わったあとに怪異が起きるそうですね、と質問すると 主人は さあ とかわす。
     話はすすみ、残るは二人。梁田という郷士あがりの名家の男が二人残っている。まず分家の者らしい一人が本家で学生の頃に見た血まみれの幽霊の話をし、正体はわからないというが、もう一人の本家の男がそれは自分が好きあっていた農家の娘で、売られることになった彼女を救う力が彼にはなく、二人で剃刀で首を切って池に入るという心中をはかったものの彼女だけが死に、自分は冷たい水につかったために高熱を出して一月以上寝こみ、前後の記憶を無くしたままだったこと、彼女のことも忘れてしまっていたこと、ここ一年ほど夜になると自宅に女の気配を感じるようになり、それがきっかけで記憶が戻ったことを告白する。
     本家の男はもし怪異が起きて彼女が現われてくれるなら、と思いこの会に参加したのです、と話すがその瞬間明かりが消える。
     何か物音がして再び明かりがつくと、主人が一人の男を捕まえている。男の手には鋭いガラス。彼は金をもらって人を殺す商売の男。これは借金を抱えた分家の男が本家の男が死ねば自分に財産が来ると考えて、心中の生き残りが後追い自殺をしたと見せかけようと仕組んで依頼したものだった。分家の男は逃げ出し、殺し屋は警察へ。
     無粋な終わりで申し訳ない、と主人は客を送り出すが本家の男だけは残ってもらって、一つの話をする。この洋館は私が半年前に買ったのですが、もとは娼館でした。そしてここに一人の娼婦の幽霊が出ます。首筋に傷のある。貴方に会わないと成仏できないようです、と本家の男を二階に案内する。女も心中では死なず、そのまま娼婦にされて一年前に死んだ様子。それから男は女の気配を感じるようになった。
     女は男に抱かれ、願いがかなったと消えていく。
     主人は百物語ももう飽きてきたねえ、と使用人に話している。
     
    ・春のかぎり
     前二作より少し時間が遡っている。白川伯爵という貴族の屋敷の庭で、着流しで長髪の若い男が桜を眺めている。彼の周囲には老人や五つ六つと見える女の子、もう少し年のいった少女とはもうすぐ呼べなくなるくらいの若い女性も寄ってきて、言葉を交わしては去って行く。若い女性はおばさまについてきたらはぐれてしまって、みたいなことを言う。
     彼の名は青之介。世が世なら秋月藩十万石の若様だが、瓦解した今の世では華族と呼ばれる身の上。姉が白川伯爵夫人という事で時流にはうまく乗っている様子だが、青之介は未だに和装を通すなど、今の世にいまひとつ合わせたくない様子も見える。腹違いの姉弟のようだが、姉は子供の頃からこの弟が少し不思議。彼はこの世にあらざるものが見えるというのだ。
     姉の友人である島田家の貴久子という女性が姉を音楽界に誘いに来ている。青之介もこの女性とは懇意だが、病院に寄ってきたのだという。そこには姪が入院しているとのこと。桜の木の下で会った女性はこの姪とわかる。彼女が既に死んだ魂たちと同じように浮遊しているのは、まともな治療を受けていないということ。
     青之介は貴久子について病院に行き、姪に毒を処方していた医者をこらしめる。本家の彼女が死ねば、分家の誰かが助かるのだった。
     故郷に墓参りに行っていた使用人が戻って来る。藤言という名だが、青之介はお前の娘に桜の木の下で会ったぞ、お前がいなくて残念だった、と話しかける。最初に登場した五つ六つの女童が藤言の幼くして死んだ娘なのだろう。

    ・秋の寺
     萩寺と呼ばれる寺にわけありの女性といけないことをしにやって来た青之介は美少年の霊を見る。霊は自分の片袖を千切って青之介に渡す。帰宅すると片袖は萩の花びらに変わっている。気になって寺を再訪すると、突然若い僧に殴りかかられるがなんなく制する。
     住職が詫びも兼ねて事情を説明する。この寺では時々若い僧が突然暴れだすことがあるのだという。暴れたあとは何も覚えていないらしい。僧は寿々若、と人の名前のようなものを叫んで暴れていた。
     青之介はあの美少年が寿々若で、何かを訴えようとしているのだが僧たちはそれを受けとめきれずに暴れているのだろうと見当をつけ、自分が美少年の霊と話してみることにする。
     寿々若はここの寺小姓だったが、青之介とよく似た若侍に恋心を抱き、それを先輩の僧にとがめられ、黙っていてほしくば俺のものになれ、みたいなのを拒んで殺されたのだった。
     それ以来、その僧と年恰好が似た僧が来ると思わず殺された時の恐怖が甦り、その恐怖を感じた僧もおかしくなっていたのだった。
     白い萩の根元を掘ると、まだ生きているような美少年の死体がある。彼の思い人に似ている青之介が抱き起こすと、ようやく私を見つけてくださった、と少年の身体は萩の花びらに変じ、着物と骨が残るばかり。

     というところで半分。残りはそのうち。
     
    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。