「人・ひんと・ヒット(上前淳一郎著)」 ④ライバルが握手した日(ソニー・ボーズ)
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「人・ひんと・ヒット(上前淳一郎著)」 ④ライバルが握手した日(ソニー・ボーズ)

2019-04-14 19:00


    ・私はオーディオの方はさっぱりだけど、スピーカーといえばボーズ、という人気ブランドがあって、インド系アメリカ人のアマー・ボーズ博士というMITの教授でもある人が創業者で社長だったらしい。もどもと電子工学が専門でオーディオの趣味もあり、だからこそもっといい音が出ないのか、と既製品の音響機器に不満があってだったら自分で作っちゃおうということになった様子。
     普通のスピーカーは一方向にしか音が出ない。でも本物の音は球状に広がる。だったら球状に音が広がるスピーカーを作ったらいいのでは、という発想だったらしい。実際には球は難しいので八分の一の球にあちこちを向いたスピーカーをつけてこれを蜂の巣状に組み合わせるみたいな商品になる。一方でスピーカーの音質は常識としてコーン紙という震えるところと、音を反響させるキャビネットが大きいほど良くなるのだったが原理的にこのタイプのスピーカー一個一個は大きくできなかったのでその代わりにコーン紙の振動回数を増やすことでこれを解決する。

     ここまでは個人研究だったが正式に大学に研究テーマとして認められ、学生にも手伝ってもらえることになって、さらに大学の出資もうけてMIT学内にボース社が発足する。
     このへん日本の大学とかなり違うところ。日本の大学は産学協同研究=(企業=悪に協力、戦争への協力)=悪みたいな発想をする人が多かったのかこういう方面ではかなり遅れたらしい。今は何とか大発ベンチャーみたいにけっこう聞くけど昔はタブーだった。今はそれがタブーだったという記事が逆にタブーみたいに人目にふれなくなっているかも。

     それはともかく、ボーズ社のスピーカーはアメリカでは評価されてシェアNo.1とかになったけど日本では全然売れなかったらしい。ちょっとお高めだったのとかもあるみたいだけど、日本は当時まだオーディオ黎明期で、機能よりデザイン、見た目の高級感が売れ行きを左右していたみたいに著者は書いている。
     だがオーディオ不況と言われる時代が来て、転機となる。当時音響メーカーは日本の住宅事情を無視して4チャンネルステレオ、なんてものを売り込もうとしていたけどデカイスピーカーを部屋の四隅における人なんてのはよっぽど親に恵まれた人だけだったので行き詰まり。小さなスピーカーでも音さえよければということになって、さらに生で音楽を聴く機会が増えるとステレオの音って本物に比べると全然ダメじゃん、みたいになってったみたい。
     ボーズは床置きではなくて、小ささをいかして天井から吊るしたり机の横に鉄棒をつけて宙に浮かべるように取り付けたり、というのを推奨したこともあって場所をとらないイメージもでき、売上げが伸びる。

     ちょっと前後してソニーがウォークマンを発売し、若者の音に対する感覚が変わる。音楽が持ち運べるものになり、より身近になった。それでも音質を追求する需要があって、当時の最高級品は6万円したという。で、このウォークマンを自宅でスピーカーにつなぎかえて使う人たちがいたらしい。ボーズの日本法人はここに目をつけて、ソニーにウォークマンとボーズのスピーカーのセット販売を呼びかける。ソニーも自社ブランドのスピーカーを作っているわけだから、呼びかけるほうも呼びかけるほうだがいいですよ、と受け入れる方も受け入れる方でこの製品は相乗効果でよく売れたらしい。当時日本では無名に近かったボーズの宣伝にもなったという。

     ソニーはしばらくして持ち歩きタイプのCDプレーヤー、ディスクマンを作り、CBSソニーと連携してCDソフトも充実させたためこれもヒットする。すると今度はソニーの方からボーズにいって、おたくのスピーカー、セットにしたいからゆずってくださいよ、と申し入れたという。
     スムーズにいったのはボーズ博士とソニーの盛田会長が旧知の間柄だったということもあるみたいだけど、ソニーは掌で機械を持った時の感覚、ボーズは人間の耳に聞こえる音、と五感に心を配って機械を設計したところも共通していたみたいな話になっている。

     今調べるとボーズ博士はその後ボーズ社の会長となり、MITの名誉教授ともなって2013年に死去。会社の業績とか評判とかはよくわからないけど今も健在な様子。
    https://www.bose.co.jp/ja_jp/index.html

     ソニーはその後いろいろあって落ち込んだけど最近は復活しつつあるようにも聞く。まだまだがんばってほしい。
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