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「幽霊宿の主人(あるじ)波津彬子著」後半
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「幽霊宿の主人(あるじ)波津彬子著」後半

2019-05-03 19:00


    ・水の中の月
     さらに時代が遡って主人公青之介が少年時代、幕府瓦解から間もない頃。青之介の姉、煌子(あきらこ)もまだ嫁入り前の話。秋月藩主の家に生まれた煌子も時代の波に洗われているが、家は華族として残り婚約者もおりなんとか乗り切っている様子。腹違いの弟、青之介は道で倒れていた月緒(つきお)という美しく気品ある女性を、かなり前に正妻を亡くして独りだった煌子の父が助けてやがて妻としてもうけた子供だった。月緒には記憶がないというが身分の高さがうかがえた。もた、この世のものであらざる雰囲気を持った女性であった。そして青之介を産んでまもなく、この子をお願いします、みたいなことを言った翌日に姿を消したのだった。
     青之介はカラスと話し、天狗のところに遊びに行った、などと煌子に言う。彼女はこの弟もいつかふっといなくなってしまうのではないか、という恐れを持っている。
     実際青之介は霊力があって、河童や天狗、狐女(きつねじょ)という美人妖怪と子供の頃からよく遊んでいたのだが、最近なかなか会えなくなったと思っている。また死んだ人間の霊も見える様子。だが悪霊などには会った事ない。狐女に言わせると、若様は守りがしっかりしている、とのこと。
     屋敷には藤言という忠義なもと侍がいて、若様付きみたいになっている。青之介は近所の子供と気さくに遊ぶが、その子供の中に犯罪グループに入ってしまった兄がいて、華族の若様なら誘拐して金になるだろう、優男だし手間はかかるまい、みたいに狙われるが妖怪たちの助けでこれを倒す。何人も人を殺しているごろつきばかりだが、少年の兄はまだそこまで手を染めてはいないようだ。
     やがて狐女がいとまを告げにやってくる。この国はどんどん変わっていって、わたくしたちのような闇のものが棲む場所がなくなってきました。なので今のうちに遠くにところ替えいたします。そちらに行ってしまえばもうお会いできません。もし若様がお望みなら、一緒にお連れいたしますが、と彼女は誘うが、こちらの世にも大切なものがある、と青之介は行かない。
     狐女は影だけは残してゆきます、水に映る月影をみたら思い出してくださいまし、と去って行く。

    ・花の形見
     結婚して白川伯爵夫人となった主人公の姉は、独り身の義弟・青之介を気にして若い女性と知り合う機会を作ろうと何かと理由をつけてダンスなど社交の場に誘い出そうとする。その度に騙された、と帰るのだが、今回は気になる女性がいる。彼女は登貴子という名前のはずなのに、沙衣子と名乗って彼の目の前で倒れたのだった。ダンスの稽古に来ていた若い女性たちに聞くと、沙衣子というのは登貴子と姉妹のように育った幼なじみでとても仲が良かったのだが先月病気であっけなく世を去ったのだという。
     目覚めた登貴子はダンスに行ったことを覚えていない。彼女は沙衣子の死にショックを受けていて、以来ずっと気分がすぐれず屋敷を出なかったのだが。
     登貴子には縁談もあるのだが、ずっとそんな感じで話はすすまなくなっており、さらに時々別人のようになってしまう。ということで彼女の母親は白川伯爵夫人に相談をする。

     この手の話のお約束だけど登貴子は沙衣子が自分だけ生きて楽しくすることを恨んでいる、と感じている。日に日に彼女のことを忘れていく自分に罪悪感も持っている。
     一方で沙衣子の霊はもっともっといろいろなことをしたかった、と未練があって、その結果登貴子の身体に入って生前出られなかった舞踏会に出たいと思っている。

     青之介は沙衣子の霊を夜会に招待する。客になるのは今は影となった闇の世界の住人たち。そこで沙衣子は青之介を相手に最初で最後のダンスを踊り、満足して消えていく。好きだった薔薇の花をその場に残して。

     青之介はこちらも初めて夜会に出る登貴子を呼び止めて、薔薇の花を渡し、髪にさすように伝える。登貴子はこれは沙衣子様ね、彼女の分まで踊ってきます、と会場に向う。

    ・夜の聲
     青之介は相変わらず義姉の命には逆らえないようで夜会に出ているが、ある日そこで島崎子爵という人が倒れる。夫の異変を聞いて駆けつけた島崎夫人は文明開化の時代でも洋装を拒んで和服で通す古風な女性だったが青之介はちょっと違和感を感じる。

     島崎子爵はそのまま亡くなるが、夫人の他に女がいてほとんど夫人のもとには帰らなかったらしい。古風な女性である夫人はそれでも文句一つ言わずに耐えていたとのこと。子爵の死後、夫人の様子がちょっとおかしいらしい。
     
     青之介には誰かが助けを求めている声が聞こえ、夫人のもとに現われる。実は夫人は既に夫の心が自分にないことを苦に自害しており、今は夫人の身体に何か別のものが入っているのだった。その何かは、人が望めばその願いをかなえようとする本来は形の無いもの。夫人が自害した時に血がその何かにかかり、こうなったらしい。
     これまでは夫人の望む姿で庭にあったのだが、夫人の魂と入れ替わるように自覚のないまま身体に入ってしまったらしい。自分が死ねない身体であることに気付くが意識は夫人の心のまま。どうすればわからなくなって夜会で見かけた青之介なら助けてくれるはず、と呼びかけていたのだった。

     そのものが夫人の願いに従って子爵を衰弱させて殺してしまい、今は子爵を殺してしまったことを悔いている。だが夫人の身体から出てゆけない。青之介は彼女に夜の聲を聞いて、それに自分をゆだねるように言い聞かせる。

     翌朝、庭で自害していた夫人が発見される。そのかたわらに白百合が咲いている。新聞は彼女が貞女の鑑である、と誉めたたえる。

     
    ・夕暮れの花
     これが時系列的には一番最後の話。第一作の幽霊宿で従業員兼幽霊役をしていた旅役者たちが興行に出ているということで幽霊宿の主人だった男は彼らを訪れる。お悠という娘が嬉しそうにこれを出迎える。ここに隣の小屋の手妻一座の子供が二人やってくる。子供の一人が、きくかさんが入っていったよ、と奥を示す。お悠が菊香姐さんは先月亡くなったのよ、と答えると奥から突然女性が飛び出してくる。刀を持っている。これは菊香の朋輩のお染姐さん。どうも、亡くなった菊香の霊がお染の身体に乗りうつって、自分をだまして有り金一切奪って消えた男を殺しに行こうとしたらしい。主人公はお染を抱きとめて、中の菊香にやめるようにいいきかせるとお染は気を失う。
     つまり手妻の子供にも霊が見えたということ。千ちゃんというらしいその子供は視力が弱く、明暗がわかる程度らしい。中国服を着て女性と見まごう美形だが男の子とのこと。
     手妻の親方には虐待されているらしく、お悠は出来る限りかばってやっているらしいが来月になるとここを去らねばならず、その後を思って心を痛めている。
     千の後ろには姉がいる。姉は取り立てて美人とはいえず、着ている和服も地味。姉は翌日主人公に前に姿を現して話しかける。姉はあんたはあたしが話しかけるとちゃんと返事をするんだね、菊香姐さんの霊を送ってやったのもあんただね、あんたはそんなことができるんだね、などと言う。
     主人公は思いを残してこの世をさ迷うのはあまりいことではないからね、と答えると、姉は駆け去ってしまう。

     手妻の親方が千を虐待すると、この姉が抵抗して守ってきた様子。千は姉に、あの人のことはよく見えたんだ、もう一度あの人に会ってみたい、と相談するが姉はだめよ、と止める。姉はあんたが大人になるまであたしが守るから、と弟に言い聞かせる。

     主人はそっと千の様子をうかがいに手妻を見学に行く。すると千も主人が見ているのに気付く。その舞台の客で千を見初めた金持ちがいて、千を高く買うがどうだ、と親方に持ちかける。つまりそういう趣味の客らしい。

     主人公はまた姉に会う。こんどは彼女とゆっくり話をし、彼女が夕花という名前であること、両親が流行り病で死んだ時に弟も目を悪くして、この世のものではないものも見えるようになったこと、ずっとそばにいて守ってきたことを伝えるが、主人公はいつまでもできることではないよ、と諭す。

     夕花はその説得に反発するが、突然千があぶない、と叫んで駆け出していく。客に売る前に味見だ、みたいなことをいって人買いの男が千を襲っている。
     かけつけた夕花は戸を弾き飛ばし、荷物を崩して千を救い、人買いと親方に手妻の剣を何本も投げつける。

     そこにやって来た主人公が、人を殺すと悪霊になってしまう、やめなさい、と夕花を止める。彼女も流行り病で死んでいて、霊となって目が不自由な弟を守って来ていたのだった。

     主人公は実家の名前を出して、あの子はこちらで引き取りますよ、貴方も後ろぐらいところがおありでしょう、みたいなことを言って千を連れ帰る。

     夕花は千にもう一緒にいられないと別れを告げ、弟を頼みます と主人公にお願いをして消えてゆく。

     主人公は屋敷に千を連れ帰り、藤言にうちで引き取ることにした、この子の姉と約束したんだ、と説明する。

     以上で全編終わり。ちょっと構成が変わっていて、第一話、第二話以降はずっと過去の話になって最終話がようやく二話の後の話になる。つまり過去の話の方が多い。それなら時系列順に描けばいいのにとか思うけど、アイデアは必ずしもそういう順番にわくとは限らないのだろう。いつ続きが描かれてもいい感じなので、もう少しこの後の話も描きたしてくれると全体のバランスもよくなるのに、と思ったりする。
     

     

     
     
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