「明日は日曜日(源氏鶏太著)」
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「明日は日曜日(源氏鶏太著)」

2019-05-05 19:00




    ・東京の大学を卒業して大阪の二流会社に就職した総務課勤務の男性サラリーマンと、隣席の同期の女性社員を中心にした、サラリーマン群像みたいな連作短編集。今で言えばラブコメみたいな?
     入社三年目の男性サラリーマンは好人物で今は死語に近いけど快男児といったところ。曲がったことは嫌いで人情に厚く、こまった人がいれば我が事と思って解決しようとする。でも基本だらしないところがあって抜けたところもある。スモーカーで金銭にもルーズ。
     女性社員はそんな男性社員を憎からず思っていてちょっとフォローする。毎月給料日前になると借用証と引き換えに男性社員に金を貸したり、二日酔いで出社した時は薬を渡したり。自他共に認める世話焼き傾向にあって「女史」と呼ばれている。
     二人は社内や周囲の男女のトラブルや恋愛問題を一緒に解決しているうちに、自分たちの今後にも思いをはせるようになっていく、みたいな話。

     今の人が聞いたらその設定だけでありえない、と感じるかもだけど昭和はこういう設定が当たり前に受け入れられる時代だった。発表は昭和27年で、女性社員の月給は7000円。給料は現金で手渡しされ、土曜日も会社は休みでなくて午前中だけ勤務。今は死語になったいわゆる半ドン。会社に電話がかかってきたらまず交換手が出て、そこから担当に回して来る。そんな時代。

    ・エレベーターガールの恋
     今は一部のデパートくらいにしかいないエレベーターガールも主人公の会社にはいるようで、社内の様々な噂を聞く立場にある彼女はひそかに主人公に好意を持っている。だがそんなことに全く気付かない主人公は同期入社の男から彼女との恋の仲立ちを頼まれて引き受けてしまう。

    ・夫のヘソクリ
     主人公の上司の課長代理はおしどり夫婦で社内でも有名だったが奥さんとこじれてしまって傍目にも元気が無い。原因はこれまでずっと給料明細を書きかえてヘソクリを確保していたのがばれたためとのこと。4万円あったボーナスを3万円とごまかして、1万円をポケットに入れていたらしい。奥さんは実家に帰ってしまうが、課長代理は男の沽券にかかわるとかで迎えに行かないし謝りもしない。主人公たちがその二人の間に立って和解のきっかけを与えることになる。

    ・好きになったりなられたり
     女性社員は同僚の女性と繁華街へ行き、そこで主人公の男性社員がおでん屋の美人女性店員を口説いているのを目撃してしまう。もうお金なんて貸してあげないわ、となるのだが実はこれには理由があった。

    ・恋人と残業
     主人公の同僚にいつも残業している男がいる。昼間は社内をぶらぶらしてタバコをふかしてばかりいるのだが、退社時刻が近づくと忙しそうにしだして今日も残業しないと、と言い出す。実は彼は残業代目当てで忙しいふりをしているのである。そのお金は身だしなみに使っているようで、身分に不相応な背広を仕立て、ネクタイもオシャレな柄を何本も揃えている。
     だがそんな彼に恋人ができる。彼はデートすると残業ができない、残業するとデートできない、とどうでもいいことで悩んで主人公に泣き付いてくる。
     

    ・手ごろな恋人
     主役の男女二人は何となく意地を張り合うところがあって、相手に見せ付けるようにお見合いをしたりしている。先に女性がお見合いし、男性はその結果を気にしているが自分からは聞けないでいる。かと思うと自分が見合いをすることになる。
     そんなことをしているうちに、会社の中から彼女に求愛する者が現われる。いろいろあって、その彼女への求婚者と若い女性社員の間を二人で取り持つことになる。

    ・看板娘の恋
     主人公の会社があるビルの1階は商店街で、タバコ屋には25歳の美人の看板娘がいる。彼女がひったくりにあったのを助けた男がいて、若い二人は惹かれあう。だが彼女には頑固親父がいて、そうはさせじと邪魔をする。男は主人公の会社の同僚であり、主人公はこの店でよくタバコを買っている。ということで主人公男女がこの恋が実るべく協力する。

    ・コロッケさんとキャベツ君
     コロッケさんというあだ名の女性社員がいて、彼女に好意を持つ男性社員が親しみを感じるという意味でそう呼んだのだが彼女は顔の輪郭が似ていることもあり安物扱いされた気もして気にいらない。当時コロッケは1個5円だったらしい。彼女は男性社員が髪の毛にウェーブをかけていたことからあんたなんてキャベツ君よ、と言い返す。
     これでなんとなく二人は仲が悪くなってしまうのだが、そういうことが無ければお似合いでもあった。というわけで主人公が間を取り持つことに。

    ・あすは晴れるだろう 
     退職した女性が同僚を訪ねてきて、相手を呼び出してくれというので主人公は気軽に引き受ける。そういえばこの二人は付き合っていたんだったな、いよいよ結婚か、みたいに思って。だが既に二人は別れていたのだった。男の方は結婚の約束をしておいて相手を先に退職させ、そこでもっと美人に目移りしたのだが元の彼女にはそれをはっきり言わずにもうちょっと待ってくれ、なんてごまかし続けていたのだった。主人公のおかげで退職した女性はようやく男に会えたが、すぐに逃げてしまったらしい。それでももう一度会いたいの、と頼み込まれて骨を折るのだが、この男は現在の恋人も昔の彼女も単なる遊び相手で、結婚はいいとこのお嬢さんとするつもりらしい。

    ・新入社員への戒め
     新年会で新入社員から折り入ってご相談が、と言われて主人公は引き受ける。なんと女史のことを好きになったので間を取り持ってくれないか、という。これはあっと言う間に女史が肘鉄を食らわして終わるのだが、新入社員は翌月また相談を持ちかけてくる。28歳の女性社員に結婚を迫られている、なんとかしてください、彼女のお腹には僕の子供がいるんですけどそこを何とか、というムシのいい話。一方で相手の女性からはどうしても結婚したいので何とかして、と頼まれてしまう。

    ・恋の審判
     この小説では参事というのは年齢的に平社員というわけにはいかないが、ちょっと重役にもできない、という能力はあるが性格に難のある社員のための閑職ということになっている。現在二人の参事がいて仲が悪く、電話がかかってきてもお前出ろ、と言い争っているうちに切れてしまう。実は二人は小料理屋の女性を争って現在冷戦中なのであった。主人公はちょっとしたきっかけで、二人の審判をつとめるみたいなはめになってしまう。二人とも奥さんを亡くしていて境遇も似ている。だが、もちろん小料理屋の女性にはそんな気はなかった。

    ・恋とスリル
     総務課の主人公の同僚に、社内恋愛を堂々とやっている男がいて、結婚も間近だろうと噂になっている。だがどちらも一人っ子のために両家の親が譲らないということになって二人は心中を考えるほど思いつめてしまう。なんとかしてくれと頼まれて安請あいした主人公は困ってしまうが、女史のアイデアで切り抜ける。だが、晴れて結婚の障害がなくなった、というところで結婚間近の二人は大喧嘩をしてしまう。

    ・夫の抵抗
     主人公の下宿に今晩泊めてくれ、と会社の先輩がやってくる。なんでも奥さんと音楽会に出かけて眠ってしまい、イビキまでかいたとのことで責められて家出してきたのだという。それから先輩は主人公の下宿に居座ってしまう。一方先輩の奥さんの方は女史に相談を持ち込む。ということで先輩夫婦の争いに主人公たちが巻き込まれた格好になってしまう。

    ・いよいよ日曜日
     最近主人公の様子がおかしい。げっそりした感じで、昼食中に居眠りしたりする。原因はアパートの両隣の男がどちらも結婚し、おかげで夜眠れないとのこと。お前も結婚すればいいんだよ、みたいに周囲にからかわれる主人公を見て女史もいろいろ思う。
     その後ちょっといろいろあって、ついに二人は結婚を決意する。先に申し込んだ方が結婚後立場が弱くなる、みたいに思ってずっと互いにタイミングをはかっていたのだったがついに男の方が折れたのだ。明日日曜日は一緒に女性の両親に挨拶に行く。
     だが既に結婚後の夫の小遣いの金額で戦いがはじまっている。

     以上で終わり。古き良き昭和というか。今はそこかしこにケシカラン、と文句をつけられちゃいそうだが昔はこれで良かった。
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