「オリオンラジオの夜(諸星大二郎著)」(オリオン・ラジオシリーズ分)
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

「オリオンラジオの夜(諸星大二郎著)」(オリオン・ラジオシリーズ分)

2019-05-12 19:00




    ・夜中、特定の場所でないと受信できないという オリオン・ラジオ という放送局がある。
    そのラジオ局では心地よい音楽が流れ、それを聴いた人間は自分の人生に関わるメッセージを受け取ったように思う、みたいな連作。著者あとがきによれば最初は短編のつもりだったがアイデアが出たので連作としたみたい。

    ・サウンド・オブ・サイレンス
     ちょっとお調子者で考えなし、というタイプの友人に空飛ぶ円盤を探そうぜ、と誘われて夜中に野原みたいなところにやってきた中学生くらいの主人公。ラジオみたいな音楽が聞こえるのでそちらに行くとちょっと暗い感じのクラスメートがいる。
     彼は夜中にこのあたりでないと入らない放送局があるんだ、とよくさ迷っているらしい。知らないが心地良い音楽が流れるその放送局のことは、二年前に失踪した兄に教わったという。ラジオも兄が残したものらしい。今日はその放送局が入っているらしく、音楽が続いたあとにオリオンラジオにようこそ、とメッセージが流れ、彼の兄らしい人物から弟へ、というリクエスト曲がかかる。その曲がサウンド・オブ・サイレンス。権利関係が厳しいらしく、漫画内で歌詞を使う許可が出なかったらしい。


    ・ホテル・カリフォルニア
     学生運動をしているらしい先輩後輩。公安に目をつけられた先輩が消息を絶ち、先輩からオリオンラジオが聴けるラジオを託された男が主人公。ラジオが受信できる時間帯と場所がUFOを目撃できる場所、みたいに有名になってしまい行かなくなるが、そこで出会ったちょっと超能力マニアっぽい女性と付き合うようになる。ラジオはいつの間にか無くなってしまうが、先輩からの手紙にラジオ返してもらったよ、なんて書いてあったことがある。
     彼女は妊娠し、二人は結婚。結婚後、妻がラジオで聞いていた新曲は先輩がよくオリオンラジオで聴いていた曲・ホテル・カリフォルニアだった。その頃はまだ発表されていなかったはずなのだが。


    ・悲しき天使
     もう夕暮れの森の中で小さな女の子が ラララ・・・ という歌を歌っているところに男の子がやってくる。女の子はもうすぐお父さんが迎えに来るので、お父さんが自分を見つけられるように歌っているのだという。ラジオで覚えたもので、ラララ以外の歌詞はわからないという。夜にここに来ればラジオで聴かせてあげる、というので物好きに付き合うが、英語らしくて聞き分けられない。実の兄じゃないみたいだけど兄ちゃんと呼んでいる中学生にも聴いてもらうが曲名はわからない。
     中学生によると少女の父親は失踪し、母親はいないらしく今は叔母さんの家にいるが虐待されているらしい。施設に入れられそうになった女の子が逃げ出したと聞き、あの場所に行くと少女はいて、中学生が書き取ってくれた歌詞を歌っている。少年も一緒に歌う。そして少女は消える。
     半年ほどしてラジオでよくかかるようになった「悲しき天使」という歌が少女が歌っていたものだった(もともとはロシアの曲らしい)。


    ・西暦2525年
     2121年。自宅にいるだけでたいていの仕事はすんでしまい、外出するとしても自動運転者におまかせ。ホームコンピューターにスケジュール管理をまかせている未来の男。夜のお相手もコンピューターが仲介してくれる。
     ある日のお相手の家に泊まると彼女は夜中にとあるラジオ局を聴いている。彼女によれば聴いたこともないような古い曲ばかりが流れるのだという。彼女の最近のお気に入りは150年前に流行ったという 西暦2525年という曲。その歌詞で歌われている未来予測のようなものは、すでに大部分実現している。そんな話をしているうちに、男は悪夢にとらわれていく。
     権利関係が厳しくなく、作品内で歌詞を、と言ったらどうぞどうぞ、という感じで許可が出たらしい。


    ・赤い橋
     何もないような、遠方が霧にかすむ世界。いつの間にかここをさ迷っていた少年は、同じようにさ迷っていた少女と出会う。二人とも赤い橋を渡ってここに来たような記憶がある。
     そこにやってきた黒いスーツに蝶ネクタイ、杖をついた男。 ゆうぐれに あおぎみる かがやく あおぞら なんて歌を歌いながら。男は俺を知らないのか?などと言いいつつ、男の子には お前はここにいちゃいけない、帰れ、と言う。
     少年は母親が持っていたのと同じラジオを拾って小脇に抱えていたが、突然ラジオから音楽が流れ出す。ふしぎな はしが このまちに ある この歌も母親が聴いていたと少年は思い、音が大きくなる方へ歩いてゆく。少女は反対方向に行こうと言うのだが、彼は少女を振りきって赤い橋の反対側、元来た方へ。

     赤い橋はニコニコになかった。
    https://www.youtube.com/watch?v=TUBrQqDvaHw



    ・朝日のあたる家
     施設で育った三人の青年がいる。だが一人は先日死んでしまった。死体発見者は残りの二人。二人は死んだ彼から「朝日のあたる家」で会おうとハガキをもらったのだが、その朝日のあたる家というのがどこかわからず、というか思い当たる場所が三つあって本人に連絡もとれないので二人で落ち合って心当たりの所で手分けして待ったが会えず、合流して最後の場所に行って死体を見つけたのだった。
     青年の一人はイラストレーター、もう一人は作家として独立しているが今一歩売れないでいる。作家の方は芥川賞を逃がしたばかり。死んだもう一人は工場などを転々として働いていたが、実は絵も文章も一番才能があるのは彼だった。
     二人は施設を脱走して、道々ラジオを聴きながら歩いたことを思い出しながら死んだ彼の思い出を語る。そして。

    (この曲はいろいろな人のバージョンがあるそうだけど)



     本には毛色の違う話があと2つほど収められているけど、オリオン・ラジオシリーズはここまで。著者あとがきによれば深夜放送をBGMに仕事をしていた頃に聞き覚えた曲でちょっと短編を、みたいな思いつきで産まれた作品群で、著者は音楽にはうといそうですぐ行き詰まってこれしか描けなかったとのこと。
     私は著者よりももっと音楽にうといので、これらの作品に出て来る曲で知っていたのは最初のサウンド・オブ・サイレンスだけで、他はこの漫画ではじめて知った(メロディだけ知っていたのはあったけど曲名も歌手も知らなかった)のがほとんど。

     西暦2525年なんて、ニコニコ動画にぴったりの曲のような。動画のリンクを張るときに「オリオンラジオから」というコメントを見つけてニヤっとしました。
    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。