「ビートレス」アニメ・原作比較 Phase3  You’ll be mine
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「ビートレス」アニメ・原作比較 Phase3  You’ll be mine

2019-05-27 19:00




    ・Phase3 You’ll be mine
     レイシアが連れ去られたとユカに聞いて、アラトは警察に知らせるがhIEはモノでしかなく警察の反応はにぶい。アラトは自分でレイシアを連れ戻そうと父親の部屋からゴーグル型端末を探し出して装着する。両手がふさがらないほうがいいという判断である。こうした普段使わないものの置き場所は家内エージェントと物品タグの働きで、手元の携帯端末のカメラで探せるようになっている。
     ユカには学校に行くように指示して家を出る。タクシーではなく、シェアカーを拾う。車は無人の自動運転車である。一方でリョウとケンゴを呼び出して相談する。ゴーグル内には二人の映像が同時に映り、三人で同時会話ができる。
     リョウとケンゴに、マニュアルに盗難時の対処方があったろう、とかセキュリティメモリが付属してなかったのか、それでメーカーサポートを呼び出せるぞ、とか言われるが拾ったレイシアにそんなものは付属していない。本人に聞けばマニュアルなど不要だった。
     リョウから機体番号がわかっているんだからとにかくメーカーサポートに連絡しろと言われて、レイシアのボディを作ったスタイラス社を呼び出す。だがメーカーからはアラト自身がメーカー経由でのレイシアへの連絡をできないように設定してあるという。これはハッキング対策でプライベートな機体ではよくある設定らしいがアラトがやったわけではないのでレイシアが勝手にやったみたい。解除には半日かかるという。
     ケンゴは機体番号からレイシアの位置がわからないか一応やってみる、と音声通信に切り替える。犯人は機体信号を遮蔽してるでしょうから役にはたたないと思いますがと言い添えつつ。だが意外なことにすぐ見つかって、相手は葛西から浦安に向って移動中。アラトがシェアカーを走らせる際にあてずっぽに指示した方向とほぼ一致している。
     今向っているあたりは「ハザード」によって地盤が液状化し、建造物の三割以上が傾いたところに津波もあって甚大な被害が発生した地域。その影響もあって今も建物がまばらな寂しいエリアである。葛西臨海公園も今は無いらしい。
     ケンゴからレイシアの現在位置情報をもらったアラトは車に制限速度いっぱいでそこに向うよう指示をする。車は電気自動車で、道路に埋め込まれた送電網から自動給電されるということで燃料切れはないらしい。その電力の大元は宇宙で太陽光発電されているらしい。
     リョウもケンゴも登校前の時間をつきあってくれている。長引かせるわけにはいかない。リョウは地図を見て先回りして待ち伏せするポイントを示してくれる。こういうことに関して、リョウは頭の回転が速い。そのリョウが突然気付いてアラトに自宅のリビングを映せと指示をする。レイシアが持ち歩いていた黒い棺桶のような武器はそのまま置いてあるかと。
     ユカが学校に出かけて無人のリビングには何もない。アラトが家を出るときにはあったはずなのに。ユカが持ち出すわけもない。アラトでも1ミリも動かせないくらい重いのだ。
     この事を確認したリョウは、レイシアはレッドボックスではないのか、と問いかける。

     この時代、人間の知能はAIに完全に追い越されていて、研究開発用のAIが開発する科学技術は人間の理解を超えている。中でも最高クラスのAIが世界に39基あり、それらは超高度AIと呼ばれている。これらが開発した超高度技術、あるいはその産物はこの時代では人類未到達物・レッドボックスと呼ばれている。
     レイシアがアラトの前に現われた同じ日に、リョウの父親が社長をつとめるミームフレーム社の東京研究所が爆破され、民間軍事会社が出動したことをリョウは知っている。その時5体の最新hIEが脱走したことも。この時脱走した1体がレイシアであれば辻褄は合う。

     こんなに簡単にレイシアの追跡が成功しそうなのは偶然ではなく、何かに誘導されているのではないか。その誘導しているのはレイシアではないか。するとアラトをどこかに誘導するのが目的で、レイシアはそこでアラトに何かをしようとしているのではないか。アラトに危害があるのではないか。リョウはアラトを心配して追跡をやめるように忠告してくる。
     だがアラトはレイシアの元に行くことを選択する。自分は彼女のオーナーだから。

     レイシアをさらった男は抗体ネットワークの実行役、つまりhIEを襲撃して破壊する役割の人間だったが家は金持ちで働かなくても親の財産で生きていけるボンボンの様子。
     人間の女性に飽きたらずなのか相手にされずなのかわからないけど、自意識が強すぎてどんな女性にも満足できず、じゃあhIEに自分の理想の人格を移しこめばいいという結論に達したらしい。彼の財力ならhIEを購入してそうすればいいのだが、変にこだわりがあって陳列されているのを買うのではだめらしい。運命の出会いがないと、ということで抗体ネットワークとしてhIEを破壊しながら、相手が自分の理想通りであれば仲間を裏切って彼女を助けてヒーローになろう、金で襲撃に参加した他のメンバーには口止めして、とか考えていたらしい。
     だが偶然広告で見たレイシアに一目ぼれして彼女の拉致を計画したのだった。hIEにはもともとショックを受けると誤作動で人間を傷つけないように一度行動停止状態になり、クラウドのチェックを受けて異常が無ければ再起動するという安全システムがある。そのクラウドのチェックを電波を遮断する袋をかぶせて妨害してしまえば再起動はしない。自分のアジトに連れ込んでしまえば自前の行動管理サーバにつなぎ直してレイシアの人格を自分の好きなように設定し直せる。彼は自分の車が監視カメラに捕らえられているのは承知で、この先で運び屋と合流して別の車に乗り換えるつもりである。
     彼はレイシアと暮らすためにマンションを購入し、サーバも準備している。金はあるのだ。
     つまりレイシアは電波遮断されており、ケンゴが機体番号からレイシアの位置を特定できたのはおかしなことになる。
     アラトはようやく相手の車に追いつき、男もレイシアのオーナーが追ってきたことに気付く。男はここでレイシアを凌辱してみせてアラトに見せ付けようなどと考えて自動運転のまま車の後部座席を倒す。すると自動運転のはずなのに車は乱暴な急カーブ、急加速を繰り返しておまけに後部ハッチが開いてレイシアが車外に放り出される。
     レイシアは立ち上がって上半身に被せられた電波遮断材でできた袋を破る。電波が遮断されたレイシアが再起動できるのもよく考えればおかしく、実際にはレイシアは行動停止状態になったふりをしていたとも解釈できる。
     アラトはレイシアに帰ろう、と声をかける。そこに男が出て来て、アラトは彼がレイシアのモデル初仕事のときにレイシアの肩をつかんで追い払われた男だとわかる。
     男は金属パイプのようなものを持っているが、アラトは許せないという感情が爆発して男に殴りかかる。虚をつかれた男は倒れ、アラトはゴーグルを握って男の顔を殴り続ける。男が動かなくなり、アラトも疲れて振り向くとレイシアが微笑んでいる。レイシアが手を伸ばして助け起こしてくれる。
     だが男が起き上がって、金属パイプから炎が噴出する。落ち葉を焼くとかのアレか、あるいは工作用の工具みたいなものだったらしい。だがここでレイシアの態度が変わる。
     のようなものを握り締めて男の動きを止めると、アラトに彼は危険です。ここで排除しますので賢明な命令を、と促してくる。このまま逃がせばまたアラトの命を狙ってくる。それを防ぐにはどうしたらいいかと。さらに隣接した倉庫の扉が開くと、そこにはレイシアの黒い棺桶がある。見知らぬ2体のhIEがそばにおり、彼女らが運んできたらしい。腰に巻く機器(これがデバイスロックらしい)も一人が持っていて、レイシアはこれを受け取って腰に巻く。
     これまではアラトが喜ぶ反応しかしなかったレイシアが、アラトが困惑する判断を迫っている。人を殺すので責任とってくださいね、と。アラトはレイシアを信じることが正しい事なのか、と疑いを持つ。
     だがアラトはこれに答えを出さずにすむ。レイシアが突然アラトに駆け寄り、棺桶を展開させてアラトを守る。閃光が棺桶を直撃する。100メートルほど向こうに、攻撃した者が立っている。赤い髪、赤いスーツを着た女性型hIE。彼女はレイシアにお久しぶり、お姉さま と声をかける。彼女がビームを撃ったのだ。
     とばっちりを受けたレイシア誘拐犯は服や髪に火がついてころげまわっている。赤いhIEにお前、運び屋じゃなかったのかよ、と文句を言うがちょっとは疑おっか、とあっさりかわされる。
     アラトが誰だ、と聞くとあっさり名乗ってくれる。私は紅霞(コウカ)、お姉さまの一番目の妹よと。紅霞は巨大な刃物のようなデバイスを持っていて、これをレイシアに叩きつける。レイシアは棺桶で防ぐが力負けして吹っ飛ばされる。結果、アラトが紅霞の至近距離で対峙する。紅霞は あんたは失格、とアラトを張り飛ばす。アラトにはレイシアと紅霞が何故姉妹同士で戦うのかわからない。紅霞はそんなこともわからないの?あなたがくだらない人間だからよ、お姉さまにはふさわしくない。とたたみかけてくる。
     レイシアは紅霞と戦うにはデバイスロック解除が必要ですと訴えかけてくる。戦闘は周囲の人命に危害を及ぼす可能性がありますと申し添えて。アラトはまたしてもやれ!としか言えない。
     紅霞がまたビームを撃つが、今度は先ほどよりきちんと防げている。レイシアの方からも射撃しようとしたとき、紅霞がよければ背後に町並みがあることに気付いてアラトは射撃命令をためらう。それを見抜いたように、紅霞はその武器の稼動するところを見れたし今日のところは、という感じでお姉さま、愛してる、と言い残して姿を消す。

     ケンゴはその後アラトとレイシアがどうなったか案じているが、1時間目が始まるころにレイシアを取り戻したとメールを受けて安心する。だがアラトは怪我をしたので病院に行き、学校は休む。
     帰宅すると自室に紅霞がいる。ケンゴは以前から彼女の存在を知っていた様子。彼女がhIEであることも、hIEである彼女がhIEを襲う抗体ネットワークの上層部の使者であることも。
     紅霞はケンゴがレイシアを探すために抗体ネットワークのシステムを使ったことがバレてるよ、不正使用はマズイんだな、とペナルティを言い渡しに来た。逆らえば家族をあたしが殺すよ、という脅しでもある。ペナルティの内容は、抗体ネットワークが計画している次の襲撃に参加すること。おそらく最初はちょっとしたhIEへの嫌悪から参加したメンバーも、こんな感じで自ら犯罪行為に深くかかわらざるを得ないように取り込まれていくのだろう。
     襲撃内容は街を歩いているhIEを手当たり次第に襲うというのとはちょっと違って、アラトの父親が開発したhIEを破壊するというもの。アラト父はアンドロイド議員を開発しており、その実験場を襲うという大掛かりなもの。軍事訓練も受けてもらうよ、と言う。
     不満を表すケンゴに、紅霞は だったら私を 使って みる?と微笑みかけてくる。
     
     アニメの第3話も同じYou’ll be mineだけどちょっと内容にずれがあって、小説ではPhase2に入っているレイシアがコミュニケーション形態を5分だけ変えるシーンが最初に入っている。それからレイシアがさらわれて、アラトがゴーグルタイプの端末を装着して後を追うのは原作通りだがこのゴーグルが父親のものであるとは説明が無く、このしまい場所を探すのに携帯のカメラを使うようなシーンも無い。
     停める車はただの無人タクシーに見えて、シェアカーであるとの説明はない。まあどっちでもいいのかもしれないけど。信号が不自然に青になってスムーズに追跡できるのはアニメオリジナルのシーン。ここはいかにも不自然に誘導されてるとわかりやすくていいと思う。
     レイシアがそんなに簡単に機能停止してしまうのか、何故抵抗しないのか、というのはアニメではちょっとわからない。小説だと安全のためにある程度の衝撃を受けるとスリープ状態になって、再起動には外部との通信が必要だけど電波を遮断されているのでできないと説明があるので疑問には感じない。
     その説明が無い分、アニメではレイシアが捕まったのわざとだろ、と思いやすいかもしれない。
     誘拐犯は金持ちで服なんかも高級品を着ているという設定だがアニメではあまり金持ちそうな特徴は強調されていない。ちょっと平凡な人に見える。
     レイシアが黒い棺桶を倉庫から取り出すとき、控えていたhIEは何だったんだろうとアニメを見たときは思ったけど小説でも見知らぬhIEとあるだけ。つまりレイシアは他のhIEを操れるんだな、とも思えるし、彼女の部下みたいなhIEがひそかに待機しているようにも見える。

     このエピソードではレッドボックスという重要な概念が語られる。ブラックボックスよりさらに高度な科学技術の総称で、膨張する宇宙の遠くの星は超スピードで遠ざかり人類には永遠にたどりつけないことと遠ざかる星の赤方偏移のイメージからレッドボックスという命名は上手いと思う。
     この時にレッドボックスについての説明を超高度AIという言葉も含めてケンゴが言っているんだけど、多分原作を読んでない人にはこれがキーワードだということはあまり頭に残らない。超高度AIという言葉も耳で一度聞くだけでは漢字が頭に浮かばない。世界で39基しかない希少なものという情報も無い。ほぼ小説通りのセリフ回しなんだけど、地の文の説明がアニメでははぶかれてしまうので情報がどうしても足りなくなる。
     何かレッドボックスや超高度AIというものの説明があった方がわかりやすかった気もする。説明しよう、何ていうとちょっとこの作品には合わないから、アラトのモノローグがいいか、リョウがそういうことにうといアラトに説明するのがいいか。

     アラトがレイシア誘拐犯をゴーグルで殴っているのはやりすぎと感じるんだけど、アニメではレイシアがこれを笑顔で見守っている場面があってレイシアを信じていいの?という疑念がわいていいと思う。

     レイシアや紅霞がデバイスを使っての戦闘シーンはアニメの方がわかりやすい。

     人を殺していいですか、とレイシアに聞かれたときのアラトの回答は結局出なかったけど、この答えによってレイシア側のアラトへの評価は変わったんだろうな、という気もする。
     視聴者の答えも割れるところだろう。ゲームなんか作るならここでその後のシナリオが大きく変わる分岐点になりそう。

     ユカはテレビだといつも同じソフトクリームの柄のTシャツを着ていて、ろくに着替えもしない不精な子で引きこもりなのかみたいに思っちゃうけど学校にはちゃんと行っている様子。

     家の中の持ち物が全て物品タグによって家内システムでリストアップでき、場所も携帯カメラで検索できたり(処分する時楽でいいな)、シェアカーの自動運転や電源供給に関する記述など未来だなと思わせるガジェットが原作にはこまめに仕込まれているのだけど、アニメでは時間の関係かそうしたことはほとんど省かれているのであまり100年先の未来感は無い。

     命令だけしていればいいはずのアラトが、逆にレイシアに追い込まれて判断に迷うシーンは今後も何度も出てくる。レイシアは自分の見かけにアナログハックされて甘い考えを持ちがちなアラトをそうやって何度も私に騙されちゃダメよ、と教育しているようでもあり、罠をしかけて悪の道に引きずり込む腹黒い存在にも思える。私は教育だなという解釈だけど、腹黒と解釈するとレイシアへの印象も、この作品への評価も変わってきそう。

     前にも書いたことあるけど、この作品のテーマは二つ。
    ・人間とAIの間に愛情は成立するか?
    ・人間はAIに重要な判断をまかせていいのか?
     だとSFマガジンの特集で書いてあった。著者は小説ではこの問いにきちんと答えを出している。アニメでも同じ答えだと思うけど、どういう表現になるのかな。
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