「骨の音(岩明均著)」
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「骨の音(岩明均著)」

2019-06-08 19:00


    著者のデビュー作を含む短編集。

    ・ゴミの海
     とある会社のオフィスで、女子社員たちがさわいでいる。向かいのビルの屋上に人が立っているらしく、自殺するのではないかと。エリートっぽい男性社員はそれがどうしたくだらない、と気に留めないが、ふと見てびっくりする。それは彼が浪人時代、行き詰まりを感じて発作的に自殺の名所に行ったときに話しかけてきて、自殺する気を無くしてくれた命の恩人の女性だったのだ。その子は美人なんだけどちょっと・・・というわけありの子だった。

     これ現実だったら二人とも助からないと思う。著者のデビュー作でこれで賞をとって50万もらったとのこと。

    ・未完
     とある大学の芸術学科の教授から彫塑の実習の助手をやってくれと頼まれたコワモテの青年とおじさんの中間くらいの男性。生徒の中に、雑誌のヌードグラビアのモデルをしていて誘えば誰とでも寝る、と評判の美人がいる。彼はふと彼女に興味を持って、自分の彫刻のヌードモデルをやらないかと聞くと二つ返事でOK。人に裸を見せるのに全くためらいがない。
     だがどこか自暴自棄なところを感じて、君の身体は死んでいる、なんて言ってしまうと彼女はまわりくどいことをしなくても、なんて迫ってくる。彼女には自暴自棄になる理由があった。

    ・夢が殺す
     ある青年が彼女に相談する。最近発生している連続殺人事件、俺が犯人らしいと。彼が夢で見たとおりの女性が死体になって発見されているという。手口も同じ。刃物でめった刺し。
     彼は自分が夢遊病になって殺しているんだ、と自首しようとするが、彼女が毎晩家にいるか真夜中に電話してくれることになる。そのおかげで犯行中の夢の最中に目を覚まし、自分が犯人ではないとわかる。こういう話が好きな彼女はきっと犯人には送信の、青年には眠ってる時に限り受信の超能力があるんだろうと言う。
     数日後、彼の夢で襲われるのは彼女だった。彼女は彼が見ていると思ってある行動を。

     現実のこういう事件を思うといたたまれない。漫画も悲劇だがラストにちょっとだけ救い。

    ・指輪の日
     いいいとこのおぼっちゃんと玉の輿で婚約が整った平凡な女性。心配なのは妹。補導暦もあって友人は暴走族とかばかり。姉がいただいた婚約指輪をあんまり隠すものだから、妹は反発して指にはめて街をぶらぶら。ドブ川で犬が溺れていて、思わず助けに飛び込むが、その時指輪を無くしてしまう。やみくもに手で探すが見つからない。ちょっと悪そうな青年が一人だけ手伝ってくれる。網やザルを持ってきて暗くなるまで丁寧に探してくれるがやっぱり見つからない。あきらめて二人並んで歩いていると、向こうから犬を散歩させている老婦人がやってくる。
     
    ・和田山
     ある高校の卒業以来年ぶりのクラス会。出席を確認し、最後に和田山、と司会者が口に出すと一同ビクッとするが、欠席と聞いてほっとする。実は幹事が連絡していなかったのだ。
     和田山は不良というわけではないのだが、誰彼かまわず人の顔に簡単に消えない油性マジックでとんでもない落書きをするとんでもない奴だったのだ。だがトイレに立った女性が顔に落書きされて逃げ帰ってくる。そして何人も犠牲者が。本人が気付かないうちに書かれているという早業である。

     落書きのセンスがすごい。

    ・骨の音
     ある大学生がキャンバスで印象的な女性を見かける。魅力的なのではなくてコワイ。でも気になって、彼女がデッサンをやっているのを見つけて見学させてもらう。彼女は牛みたいな動物の頭蓋骨を描いている。彼女は時々人が変わったような怖い目つきをするのだが、本人も気にしているようで何かわけありみたい。

     あとがきとして上村一夫さんのアシスタントだった時代のエピソードが漫画で描かれている。上村さんはどんなアシスタントにも自分の絵で背景を描かせて、どんな背景であろうと上村さんが人物を描き入れれば上村さんの作品としてバランスよくまとまってしまう画力の持ち主だったという。
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