「ビートレス」アニメ・原作比較 Phase8 Slumber of Human
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「ビートレス」アニメ・原作比較 Phase8 Slumber of Human

2019-07-14 19:00



    ・アラトは渡来銀河殺人事件の参考人として警察に事情を聞かれている。それを別室から坂巻一馬警部と姫山竜二警部補が監視している。所属は警察庁警備局電算二課。人工知能の監視が主な任務になる。
     この時代、犯罪者には身体を機械化した者が多く、これに対する警察官も機械化しているものが多い。二人とも口を開かなくても思考リンク型通信機で情報を交換でき、人工網膜に支援AI・メイトリクスから送られた情報を映し出すこともできる様子。姫山は機動隊出身で筋肉や骨格も強化されている。
     アラトが渡来殺害犯とまでは疑われていない様子だが、レイシアがメトーデと戦った事をアラトは隠している。スノードロップがそこにいたことも。自分は妹をさらわれて、自分のhIEと交換するように強要されて現場に連れていかれた。サーバールームの壁の(レイシアが開けた)大穴や、焼け焦げた(メトーデが焼いた)床、バラバラになった54体ものhIEなどは何者がやったのか、アラトは一切見ていないという。カメラにアラトと渡来の会話は残っているが、途中から音声が消えていて何を喋っていたかわからない。レイシアの仕業かもしれない。サーバルームにはカメラが無かったみたい。警官は絶対何か隠していると疑っているが、アラトは主犯ではなく末端と思っている。
     警察はこれをAI同士の抗争と見ている。この時代、犯罪組織にAIが(もしくはAIに犯罪組織が)使われる例も少なくない。AIがからんだ犯罪はたいてい証拠になるようなものがきれいに消去され、警察の捜査が徒労に終わる事例も多い。だがこれまでAI同士が抗争した事例は無い。今回の証拠処理の甘さは、AIが単独で計画したのであればありえないことで、大井産業振興センターでレポーター2名が死亡した事件に関わった花びらのようなものを残したAIと、別のAIが抗争したものと思われる。
     AI同士の抗争というのは予測された悪夢であって、これが超高度AI同士で発生することを人類は恐れている。国際人工知能機関・IAIAに所属する超高度AI・アストライアはその日が近いことを予測している。
     だから世界中の超高度AIはネットワークに繋がれることなく隔離されている。電算二課はそのような悪夢が起こらないか監視するために設立された部署なのだ。そしてAI同士の抗争は、その予兆と受け止められる。
     アラトの父親・遠藤幸造は電算課から見れば有名な監視対象だ。彼の研究が進めば人間の警察官が大量にお払い箱になるということもあるが、彼は10年前にミームフレーム社で行われた公開実験でhIEを爆破されて以来、警察に非協力を貫いている。その時も今回も彼の息子が現場にいる。
     アラトが最初から犯罪者扱いされず、レイシアを取り上げられないですんでいるのもコウゾウの影響力が関係しているみたい。今回警察は遠藤コウゾウと環境実験都市がこの犯罪に一枚噛んでいるのか、巻き込まれただけなのか慎重に見極めようとしている。電算二課長の神木セロ警視正はかなりの切れ者だ。

     姫山はちょっとアラトのタフさに感心している。死体を目撃し、取調べを受けているだけで普通の人間は消耗する。だがアラトは人懐っこいバカ犬が、犬嫌いな人間にも甘えるように刑事がちょっと圧力を緩めると表情がゆるむ。ストレスの発散がそれでできてしまうのだ。
     アラトは中部国際空港でも目撃されていて、大井産業振興センターを襲撃した「赤い女」とも関わりがあるのでは、と疑われている。だが警察はアラトは犯罪を行うAIにアナログハックされて、道具に使われたのだろうという見解の様子。

     一方リョウの方は24時間だけ拘束されたもののうまくバックレたらしく、行動の自由を確保している。アラトといろいろ口裏合わせをやったらしい。つまりレイシアとメトーデとも。だがそんなこと関係ないスノウドロップは思い切り物証を残していて、彼女の花びらは警察に回収されている。
     メトーデのオーナーとなったことで、これまで渡来が社内に張り巡らしていたいろいろなものの後継者みたいに見なされてしまい、メトーデを秘書として渡来の代わりに社内AI派の重要人物みたいになってしまっている。だがメトーデは全情報をリョウに開示しない。結果的にリョウがメトーデに使われているようでもある。
     残した花びらからスノウドロップの本体がミームフレーム社から逃げたことも警察に話さざるを得なかった。渡来は爆発で5体全て失われたと警察に嘘をついていたのだが。すると当然警察は残り4体もどこかにいるんだろうと疑っている。
     リョウは自分を守り、会社を守るために渡来がこれまでやってきたことをメトーデに聞きながら少しずつ引継ぎ、彼の継承者にならざるを得なくなっている。そうしないと会社が危ないのだ。そんなこと全然やりたくないのだが。今は警察に圧力をかける方法を学びながら、捜査が会社に及ばぬように手を打っている。

     リョウは渡来が残した痕跡を見て、その有能さを認めざるを得ない。環境実験都市にスノウドロップが出現するとわかった時点でスノウドロップの回収に動き、応じなければメトーデに破壊させる予定だったらしい。そこにレイシアが現れたのでレイシアも、ということになったわけだがリョウさえ裏切らなければ渡来は勝っていた。

     リョウはメトーデのオーナーになったわけだが、メトーデはいつでもリョウを見切れば殺すだろうというプレッシャーもある。生前の渡来が上手くやっていたおかげで警察が寄って来ず、助かってもいる。だがリョウはその後を継いで処理に忙殺され、ほとんど学校に行けなくなった。
     今日はその多忙な時間を割いて紫織の見舞いに来ている。お茶の水の病院に彼女が入院して二週間になる。現地で応急処置してすぐこちらに来たのか、ある程度容態が落ち着くまで現地の病院に入院してから転院したのかはよくわからない。病院にはhIEの医師と看護師ばかり。リョウは社用車をhIEの運転手兼護衛に運転させている。メトーデはさすがに同行せず、車で待っている。
     紫織はまだ何本ものチューブに繋がれた状態だがベッドで上半身を起こして待っている。そしてリョウに問う。メトーデを手に入れるためにアラトと同行ししたのかみたいなことを。
     リョウは今の紫織が、かつての自分のように誰も信じられない状態だと察するが、メトーデとの契約により紫織に話せないことがたくさんできてしまっている。
     真実を話すことは俺の手に余る とだけ伝える。これが言える限界だ。ここで話したことは看護hIEを通じてあちこちに筒抜けになる。
     紫織はでは一つだけ答えて、と問う。私を殺そうとしたのは誰?
     リョウは渡来が紫織もアラトも殺そうとしていたことを知っている。つまり渡来とメトーデは共に紫織殺害の意志を持っていた。メトーデに意志はないはずだが、紫織が自分の唯一のオーナーとなって封印されることは許容しない。
     つまり紫織の命は風前の灯状態にあった。アラトがいなければ紫織は確実に死んでいた。そしてリョウはメトーデとの契約により、自分がメトーデのオーナーを辞める時は紫織の命を奪うという条件も飲まさせられている。紫織は今もメトーデのオーナーであるらしい。
     そして今もメトーデは紫織を排除する機会があれば容赦しないはず。今彼女が目こぼしされているのはアラトとの関係が利用価値あり、とメトーデが判断しているからだ。
     リョウは妹にもうメトーデと関わるな、命令もするな、手を引け、と言う。
     だが紫織はリョウを信頼していない。
     今の二人の関係でそのもつれをほどくこともできない。
     お前は何も考えずにアラトの側にいろ というのが唯一リョウの言えたことだった。
     アラトの話題が出ると、二人は少しだけ和む。子供の頃のように。だがリョウはアラトが妹が成長していることに気付かないことに思いをはせる。
     紫織は意識を取り戻すとすぐにアラトが不利にならないように証言をした。アラトが警察から早めに解放されたのはそのおかげでもある。
     「自分の気持ちぐらい、自分で面倒を見られるわ。私はプライドの高い女なの」
     と紫織は答える。妹がレイシアとアラトの関係をどう思っているのかリョウは知らないが、これが答えのようでもある。

     車の前で待っていたメトーデが、リョウにこんな招待状を貰ったの、と封筒を渡す。蝋で封緘までされている。今受け取ったのではなく、リョウに渡すタイミングを計っていたのだろう。
     今どきこういうことに封筒を使う人間などいない。エリカ・バロウズを除いて。

     取調べから帰宅したアラトも封筒を受け取っている。アラトは拘留されているわけではなく取り調べに自宅から通う身だ。封筒の内容はエリカからのパーティの招待状だ。期日は明後日。あて先はアラトとレイシア連名になっている。エリカはレイシアをモノ扱いしていないことになる。
     ユカは殴られた頭も幸いにたいしたことはなく、学校にも休まず通っている。だがアラトはあれ以来妹とあまり話せていない。意を決して妹に迷惑をかけたと謝るが、ユカは真っ赤になる。ユカはこう思っている。あの時アラトはレイシアに告白をした。レイシアは拒否しないでそれを受け入れた。だから二人は両思い。ラブラブの二人と一緒に住んでいる自分としてはなにかと気まずい。新婚家庭に混じったお邪魔虫みたいだ。イチャイチャしているところに居合せちゃったらどうしよう。前膝枕してもらってるの邪魔しちゃったし。だからアラトにどう接したものか迷ってあまり話しかけてこなくなったのだった。

     アラトが謝ったのは自分とレイシアのせいでユカが命を狙われるようになってしまったことをだったのだが、ユカはそんなこと想像もしていない。アラトは妹の頭の悪さに感謝する。
     ユカがそうした感じでアラトとレイシアのイチャイチャのことを話す度に、レイシアが顔を赤らめている。アラトさんはそのようなことをお命じにはなりませんから、とはにかみながらユカに答える。だから安心してこれまで通りでいてくださいと。
     ユカはお兄ちゃんがガマンできるわけないよ!とがんばるのでレイシアは ではユカさまの目につかないところでいたします、と変な答えをする。ユカはどこまでしたの?なんて聞いてくるのでアラトは思わずしてねーよ!と叫ぶ。
     レイシアは18歳未満では提供できませんのでいたしません、203日後のアラトさんの誕生日までは。などとまた微妙なことを言う。ユカはもう!という感じ。アラトはこんな穏やかな時間がとてもありがたく思う。

     ケンゴも招待状を受け取っているが、彼宛ではない。紅霞宛だ。だが彼は連絡をためらう。抗体ネットワークとしての活動はあれ以来休んでいる。一緒に行ったメンバーが何人も捕まっている。ケンゴも警察に監視されていると思われる。さらに紅霞は空港爆破犯として指名手配されている。ただ、その名前はケンゴの知らないものである。霞崎(カスミザキ)カレアとかいう。この身分はレイシアに空港で協力する見返りとして紅霞が手に入れたもの。他にも警察にばれていないものがいくつかあるという。
     でも部屋に入るとその紅霞がいる。今も盗聴されているがごまかしているから大丈夫、と彼女は言う。

     紅霞はもう自分が活動できる残り時間はわずかだと知っている。レイシア級で一番最初に製造された彼女は、人間の手で組み立て可能な機体として設計された。だから姉妹で最も性能が低く防御力も弱い。レイシアやスノウドロップのように外部の機器に干渉する能力も無い。他の姉妹は材料や組み立てに人間では作れない技術が使われている。だから一番最後に作られたレイシアは一番性能が高いのだ。レイシア級の姉妹たちはレイシアを完成させるために作られた試作品であり製造装置のようなもの。だがネットワーク干渉能力を除いた単機の能力としてはメトーデの戦闘力がレイシアをしのぐ。
     現在の紅霞のオーナーは抗体ネットワークという組織である。本当はもっと別のオーナーが欲しかった。だがその候補のケンゴには拒否されてしまった。
     抗体ネットワークの命令に従い続ければ、いずれは人間社会全体と対決することになる。
     紅霞の戦闘力では、警察くらいなら相手にできるが軍が出てくればその物量と組織力には勝てない。彼女はオーナーから勝てないゲームを強いられている。

     紅霞から見ればケンゴの境遇は自分に似ている。リョウに能力で劣り、アラトに受容力で劣るケンゴは、メトーデに戦闘力で劣り電子戦能力でレイシアに劣る紅霞とどこか重なる。
     もっと時間があればこの能力差を埋める手立てを見出せるかもしれない。
     ケンゴに関心を持つのも彼がこの問題を克服すればその方法が自分の参考になるかもしれないと判断してのもの。

     今紅霞は空港爆破の責任をメトーデとミームフレーム社からなすりつけられて警察に追われている。アラトを取り調べたのと同じ電算二課に。彼女の能力ではレイシアのように防犯カメラの監視からハッキングによって逃れることはできない。従ってレイシアとの協力関係が切れればすぐに詰んでしまう。紅霞は自分の敗北を予感しつつも、限りある時間をできる限り充実させようと試行錯誤を繰り返している。

     アラトにも警察のマークがついている。レイシアが教えてくれる。今アラトはエリカ・バロウズ邸のパーティーに車で向かっている。最寄り駅は滝の口という駅で(千葉県にそういう地名がある様子)ここから全自動車を借りて10分くらい。目的地に着くと、その門が自動で開閉するタイプでなく、傍らに立ったhIEが手で開けることに驚く。レイシアが眠り姫であるエリカは自分が生まれた21世紀初頭の文化を出来る限り取り入れて暮らしていることを教える。彼女が受け入れている現代技術はhIEくらいだという。敷地内の照明も蛍光灯らしい。
     駐車場の位置もデータを送ることなく、hIEが案内してくれる。屋敷に入ればコンセントが見える。今は無線給電が普通でこんなもの使っているのはケンゴの家くらいだ。
     エリカが大階段を降りてきてようこそ、と出迎えてくれる。クラシックな黒のドレスを身につけている。彼女の身体は細くどこか不健康な印象があるが姿勢はよく気迫がある。
     彼女は二体のhIEを従えている。一体は以前レイシアと共演したことのあるファビオンMGのhIEトップモデル・ユリー。もう一体はアラトは知らない肉感的なモデル。
     ここは1989年に建てられた屋敷で、エリカは7歳のときにイギリスからこの家に移ってきたらしい。つまり彼女の実家なのだ。アラトは素直に家を褒め、エリカさんのご先祖は金持ちなんですね、などと感心する。エリカはレイシアがアラトに自分に関する情報をほとんど与えていない事を察して、あなたたちってとても面白いわ と笑う。アラトは何を言われているかわかっていない。
     エリカは自分で説明することにしたらしく、ここは私のお父さまが80年前に買ったのよ、ご先祖と言ったらかわいそうだわ、と言ってアラトの反応をうかがう。自分と同じ年くらいに見えるエリカの父親が80年前に買った?とアラトは思ったとおりいぶかる。
     エリカは自分が冷凍睡眠で過去から来た人間であることをアラトに説明する。信じる?と。
    アラトは彼女の背負った人生の重さを想像しながら、信じるよ と答える。
     エリカは あなたはやさしい人ね と答えて食堂にアラトを案内する。アラトは小声でレイシアにあることを尋ねる。レイシアは2011年生まれの御年94歳であらせられます、と答える。アラトは絶句する。

     会場には先にリョウが来ている。メトーデも。アラトはぎこちなくリョウと挨拶をする。リョウはあらためてメトーデを紹介する。アラトはメトーデの声をはじめて聞く。
     リョウとアラトはいつものようにレイシアをめぐって口論になりかける。リョウはメトーデにアラトとレイシアは敵だ、と言い放ち、やれ!と命令するがメトーデが高速移動に入り姿が消えた瞬間に紅霞が割って入る。メトーデが高速移動をやめて姿を現す。
     4体のhIEが入ってきてスクリーンを広げ、上映をはじめる。それはメトーデが乱入したフェビアンMGのショウ映像。リハーサル映像のデータを元に執念で完成させたらしい。アラトが見たことのないシーンも多い。この映像の中で到達点として扱われているレイシアは、モノとしては扱われていないことをアラトは感じる。エリカの意図をつかみきれないのだが、この映像を見れば抗体ネットワークのようにエリカやファビオンMCを攻撃する者が現れそうな気もするが、彼女は意に介していないらしい。近々この映像を発表すると言う。
     アラトはエリカが自分とレイシアを戦場に押し出そうとしているように感じて反発する。レイシアの映っているショウ映像の一般公開許可を出した覚えはないぞ、と。
     エリカはアラトに あなたはレイシアとこの映像みたいな生活をしたかったのではなくて?と問いかける。新しい世界で生き直すこと、自分が本当に大事なものを守ること。やってみればたいしたことないわ と。
     リョウが割って入る。人間社会はようやく変わり始めたばかりだ、エリカのやろうとしていることは時期尚早だ、みたいな。エリカは私が冷凍睡眠に入る前から変化ははじまっていたのではないかしら、と動じない。

     hIEが人間と区別できない状態のまま人間社会に入ってきていい、と考えるところはエリカとアラトの方向性は一致している。アラトは実験都市で子供のhIEを人間の子と同じように助けた。だがそれがアラトとリョウを決定的に決裂させた。
     リョウはそれを危険なことと考え、hIEはモノとしてあくまでも人間とは区別して扱わないといけないと思っている。お前たちは危険すぎる、たった5体のhIEで世の中が変わると思っているのか!とリョウが叫ぶとメトーデの姿が再び消える。だが吹き飛ばされたのはメトーデの方だった。エリカをかばうように立つのは、先ほどエリカの後ろに控えていた、ユリーじゃないほうのhIE。
     メトーデが「サトゥルヌス!」と叫ぶ。

     「今はマリアージュと申します」、と彼女は優雅に挨拶する。会場の全hIEに爆発物が仕替けてありますの、と警告する。いつの間にかパーティーの給仕をしていたhIEは動きを止め、爆風が最も効果的に流れるような配置を作っている模様。
     紅霞がイチ抜けた!と両手を上げる。爆発物反応はないけど、あんたならそういうのも作れるんだよね?と。マリアージュは肯定するように微笑む。
     メトーデが面白い、あんたと私とどちらが完成度が高いか興味があったのよと進み出る。マリアージュがメトーデの挑発をていねいな言葉で受け流す。翻訳するならどこからでもかかってこい、みたいなことみたい。
     エリカがアラト君はどうするの?一緒に暴れる?みたいに聞いてくる。アラトはたった今までファビオンMCのパーティだと思っていた様子で、ようやくレイシア級hIEとオーナーのヤバイ集まりだったと気付いたところ。
     アラトはいろいろと出遅れながら、エリカさんはどうしたいんだ?と問いかける。彼女がパーティーを開いた目的は何なんだ、と。アラトはエリカを理解しようと手を伸ばしたことになる。エリカはアラトの態度にちょっと満足した様子で、あなた、思ったより面白い人ね、とのどを鳴らす。
     スクリーンに別の映像が出る。スノウドロップがどうやら変電所をこれから襲おうとしている様子。この時代都市部は電線は地中に埋設されているが、変電所周辺では架空配線が錯綜している。リョウがこいつはどこにいるんだ、と聞くが エリカはどうせ間に合わないでしょ、帰りにこの子の位置データはあげますよ なんて話しているうちにスノードロップが何かやったらしく、変電所周辺が真っ暗になる。
     エリカが笑う。私はたった5体のhIEが世界を変える方に賭けるわよ、と。他人事のように。彼女はレイシア級の存在を世間に明かそうとしている。先ほどのショウ映像の最後に彼女たちを紹介するかたちで。
     彼女たちは未来につながるチケットよ。影でこそこそしないで、堂々と使って望む未来に入場しましょう、とエリカは言う。
     アラトはここが何かの爆心地のように感じている。今日を境に世界は変わる。レイシアは何も言わず、アラトの手を握っている。温かい手で。
     
     
     アニメ12話タイトルはPhase8と同じ Slumber of Human 。直訳すると「人間の眠り」みたいだけど、人類がAIに覇権を渡して眠りにつく、みたいな感じなのかな。
     
     警察でのアラトの取調べシーンからはじまるが、原作のように刑事が身体を機械化している様子はなく、電算二課という特殊なセクションという言及もない。普通の刑事が普通に殺人事件に居合せた少年に事情を聞いていて、ああこの子はAIに利用されたんだろうな、と思っているような。
     うちの実家で飼っていた犬を思い出すうんぬんは原作では姫山のセリフ。アニメでもこのセリフを言う刑事がいる。
     原作にあるようなアラトの父が要注意人物であるような情報は無く、幼いアラトがhIEが爆破される現場に立ち会ったことにも触れられていない。
     原作ではアラトの父すなわち環境実験都市そのものが今回の事件を仕組んだのか被害者なのかも警察は見極めかねているが、アニメでは環境実験都市は単なる犯行現場にすぎない印象。

     帰宅したアラトがあれ以来ちょっと気まずくなったユカに巻き込んですまなかったと謝罪するけどユカの方は自分が新婚家庭のお邪魔虫になってしまったということを悩んでいたのはほぼ原作通りの流れだが、ユカが18歳になったらするのか、と質問するとレイシアがその時は(します という意味だろう)、と答えてアラトが赤面するところは原作には無い。まだ提供できませんと言うだけ。
     レイシアがリビングに置いていたブラックモノリスは今は無い。警察に目をつけられたことからレイシアがどこか別の場所に置くようにした模様。
     大井産業振興センターに行ったときにこれがエレベーターに入らない、みたいな描写があったけど、アラト宅の玄関を通るのか非常に疑問を感じる。窓から出し入れしているのかもだけど。

     刑事たちがアラトの取調べ結果についてあれこれ検討するシーンはちょっと原作と違う印象で、原作の坂巻と姫山を一人の刑事が兼ねているような。
     でもこの事件をAI同士の衝突事例と見当をつけているのは原作と同じ。

     リョウが好むと好まざるとに関わらず自分と会社を守るため渡来のしていたことを継承するはめになったのも原作と同じ。やはりスノードロップが遠慮なく物証を残したことがリョウを苦労させている。リョウがトイレに行くシーンは原作には無い。

     エリカ邸で彼女とマリアージュが工作ラインうんぬんについて語るシーン、エリカが渡来の残した映像を見るシーンは原作には無い(後で出てきたかもしれないけどこのタイミングではない)。
     レイシアはアニメではメトーデや渡来から出来損ないとしばしば言われているが、原作では出来損ないという言及は無い(と思う)。
     渡来のビデオで語られるhIE マツリやイライザについては原作ではここまでの間では特に言及されていない。マツリという名前だけはミコトと関連してどこかに出ていたような気もする。リョウとアラトを巻き込んだ火災はアニメのようにhIEの爆破事件とは描写されていないので、イライザというhIEがいたという描写も無い(Phase8ではじめてhIEが爆破されたらしいことがアラトの父親が警察に協力しない理由の中でチラっと語られる)。

     レイシア級の製造された順番と、姉妹を製造する度に製造技術が進歩していった様子は原作では地の文で説明されているが、アニメでは映像の中の渡来のセリフに置き換わっている。
     アニメでは人間が製造技術を獲得していったみたいな印象だけど、原作ではもう人間には手を出せない領域のものを紅霞が作った材料やスノードロップが人工神経で制御することによってクリアしたみたいな書き方になっている。つまりレイシア級無しでは人間は紅霞以外の姉妹は造れない。極端に言えば人間が紅霞を造り、紅霞がスノウドロップを造り、スノウドロップがサトゥルヌスを造り・・・みたいな。
     レイシア級というネーミングにヒギンズがこだわった様子は原作には無い。
     マリアージュ(サトゥルヌス)が私の評価低すぎ?なんていうシーンがあるけど、原作ではメトーデにも一目置かれる優秀な機体という扱い。彼女が持つ能力には謎が多く、他の姉妹も把握していない様子。肉弾戦でもメトーデの攻撃を凌いで跳ね返し、エリカを守りきる自信を示す。全力で戦ったらどちらが勝つかはわからない。紅霞とレイシアは1対1ではメトーデに戦闘力でおよばないみたいな描写があるがマリアージュは拮抗している様子。

     紅霞が自分はもう行き詰まっていて活動時間も残りわずかだろうみたいに自己判断している描写もアニメには無い。霞崎レイカという名前もアニメでは呼ばれない。紅霞が本当はケンゴをオーナーに欲しかったんだろうという描写も弱い。
     紅霞は最初のオーナーから抗体ネットワークという組織をオーナーにするよう命じられたことになっているが、その最初のオーナーはどんな人物か不明。彼女は人間を勝たせるための道具と自分のことを呼んでいるが、テロリスト集団がオーナーでは何をやっても勝ち目はない。
     原作ではケンゴが抱えている程度の身の丈にあった問題なら、自分はもっと役に立って、ケンゴを勝たせてやれたのに、みたいに彼女は思っているみたいな。

     渡来がレイシア級の本当の力を見たくて社会に出した、ということは原作ではそこまではっきり語られていない(今のところ)。
     原作ではミームフレーム東京研究所の爆破は渡来の命令でメトーデがやったと語られている。

     リョウの見舞いを受けた紫織はアニメではかなり怒りを爆発させて喧嘩腰だが原作の印象はもっと静か。
     まだ多くの管に繋がれてやつれている様子だけど、冷ややかにリョウを拒絶する。リョウは自分同様に命を狙われた紫織が、かつての自分と同じように誰も信じられない状態だろうとわかるのだが、自分もその信じられない人間に入っているとも知っている。
     アニメでは出なかったけどメトーデとの契約には紫織を場合によっては殺さなければならないことも含まれていて真実は話せない。だから妹を救えるのはアラトだけだと思う。
     だがアラトはレイシアに夢中だ。海内兄妹はレイシアに大切な人を奪われたという共通点がある。リョウは妹がアラトに惹かれていることも知っていて、アラトが妹を女として見ていないことも残念に思っている。でも妹は自分で言うように、それを知っていて自分の気持ちくらい自分で面倒見られると言っているのだろう。

     ここは演出の問題だけど、アニメの紫織は怒りをリョウにぶつけて叫ぶけど原作では怒りを自分の心の中でゆっくり消化して、表面的には冷静にふるまっている印象。

     このシーンのあとにリョウとメトーデの契約に至る回想が入る。リョウとメトーデの契約関係はいろいろあぶなっかしい感じ。アニメでは紫織もいまだにメトーデのオーナーで、命令もできることに触れられてない。

     レイシア級のオーナーの解除は、他のオーナーと契約すると前のオーナーとの契約は上書きされて自動的に破棄される印象だが、複数のオーナーを持てるメトーデだけは相手のオーナーが死なないと破棄されないみたいな印象を受ける。メトーデはリョウとの契約では自分のほうから一方的に契約を破棄できる、その時はリョウも紫織も殺す(リョウが命令したということになる)という条項を入れている。
     メトーデは直接人を殺せるような言動を時々見せるが、空港で紫織を殺そうとした時は直接はできないみたいな感じだった。

     エリカからの招待状がレイシア、紅霞、メトーデに届くが、原作ではアラトとレイシア宛でレイシアを人間扱いした招待状になっている。紅霞宛の招待状にも紅霞と書いてある様子。これをオーリガが誰からか書いてないけどお兄ちゃんに渡して、と手渡されたらしい。
     アニメではどのような宛名になっているかわからない。
     メトーデ宛の招待状は原作ではメトーデが受け取っており宛名がどうなっていたかはわからない。アニメではリョウ宛でメトーデの名前は無く、hIEを同伴の事みたいに書かれている。エリカの住所も原作の滝の口駅とかの描写は無く、川崎市新高津区溝口となっている。
     レイシアがアラトを膝枕する様子をユカが目撃するけど、原作ではこれは昔の話になっている。

     エリカ宅のパーティはリョウの招待状には19:30開始と書いてあるけど青空をバックに屋敷が映り、昼間に開催されている様子なのでちょっと合わない。原作では時間はわからないけど街灯が点灯している描写がある。作画パワー的に省略されているようだが原作では大勢のhIEが支度や給仕をしている様子。アニメではガラーンとしている。
     原作ではエリカはマリアージュの他に以前レイシアと一緒にビデオを取ったトップhIEモデル・ユリーも連れていて、アラトは彼女の給仕を受けるが以前のようなモデルとしてのカリスマ性を感じない。つまり給仕としての行動パターンしか使わなければユリー本体にはモデルのカリスマ性は無いのだな、とアラトは思う。彼女の人格みたいなものはクラウドの向こうにしか無いのだと。
     マリアージュの外観に関する描写はあまり無くて、亜麻色の髪、大柄、肉感的程度。初登場時は髪が長かったらしい。アニメの彼女はあまり大柄でも肉感的でもない印象。

     レイシアは普段のボディスーツを前の事件と書いてあるからつくばで損傷して、瞳の色と同じ薄青のドレスを着ていることになっているけどアニメのドレスの印象はちょっと違う。
     アラトの服装には言及が無いので普段着で来たのではと思ったがアニメではちゃんとそれっぽい格好をしている。エリカは黒いドレス姿と書いてある。細い身体で不健康な印象とあるがアニメの彼女は細くもなく健康そうである。

     アラトはエリカ自らの案内を受けて、彼女の境遇などをいろいろ聞くがアニメではこのへん省略。この会話でエリカがアラトにさらに好印象を持った様子がある。

     リョウはデザイナースーツ姿だがメトーデはビジネススーツ姿となっている。アニメではドレス姿。メトーデの足は機械剥き出しで、明らかにhIEとわかる描写が原作には度々あるがアニメでは人間と同じような足の様子。
     紅霞もいつものボディスーツではなくてドレスアップしてきている描写が原作にある。彼女は空港では西部劇スタイルだったし意外と着道楽なのかも。

     リョウとアラトの関係はアラトが子供hIEを人間同様に扱って手を引いて逃げたつくばで決裂していて、あれ以降アラトが何度メールを送ってもリョウは返事をしていないことになっていて、今日が久々の話をする機会になっている。だがリョウはアラトがレイシアと一緒に行動する限り、もう敵だと認定している様子でメトーデをけしかける。アニメではここで紅霞が割って入って一度は収まった格好になる。

     原作ではエリカがレイシア級の存在を世間に明かす映像を披露し、アラトはこれを危惧してエリカと対立するシーンがあるがアニメでは省略。
     その映像を巡ってリョウもエリカと対立し、一度収まっていたメトーデが動き出すが、これをマリアージュが完璧に防いでエリカを守る。ここもアニメでは省略。
     原作ではパーティー会場で動き回っている大勢のhIEが全て爆弾でもあるという宣言でメトーデの動きを止めるが、アニメでは単に爆弾を仕掛けてある宣言。
     マリアージュはその爆弾が全て爆発してもエリカを守れる能力があるということになる。

     原作ではエリカへの攻撃を防がれたメトーデがそこではじめてサトゥルヌスの存在に気付いて名前を呼び、今はマリアージュです、と彼女が応じるがアニメでは紅霞が彼女に気付く。
     また、検知されない爆弾を彼女なら作れるということは原作では紅霞のセリフだがアニメではレイシアがこれを言っている。
     
     アニメではエリカが渡来の代わりに未来の変化を見届けたい、みたいな感じだが原作では積極的にレイシアたちの存在を世間に明かして未来を作っていこうという感じ。
     レイシアと一緒にいられる未来はアラトの希望と一部重なるが、エリカのやる事はかえって抗体ネットワークのような人間側の強い反発を生み、危険を生むのではないかと危惧を覚える。それにエリカの作った映像はレイシアにそうした人々の悪意が集中する恐れもある。
     アラトはエリカが何か自分と全然価値観の異なる魔女のような存在に思える。
     現在の社会が絶対的な基準と考えるアラトと、百年前から来て変化の結果が今の社会と考えるエリカは今の社会を大切に思う気持ちが全然違う。アラトには大切な社会基盤がエリカにはいくらでもいじくりまわして変化させてもいい途中経過にしかすぎない。
     リョウもアラトとは違う観点からエリカに反発する。エリカの目指すようなレイシア級の存在暴露は、ミームフレーム社が危険なhIEを世に放って隠してきたことを暴露するのと同じであり、会社の存続にも関わるし人間とhIEが区別されず共存してしまう社会のはじまりでもある。

     アニメはそんな感じでエリカがリョウやアラトがどんな未来を作って変化させていくのか見てみたいわ、という観測者みたいな立ち位置だけど原作では彼女も未来を変えていくプレイヤーの一人。ここは大きく違うような気がする。

     アニメでは既にエリカがアラトやリョウのクラスメートになっていて面識があるが、原作ではその順番が入れ替わっているのでリョウははじめてエリカに会ったことになる。

     原作ではパーティーはもう少し続いて、映像にどこかの変電所を襲うスノードロップの様子が映し出される。アニメではエンドロール後にスノウドロップが映る。
     リョウはやめさせろ、と叫びアラトも恐怖するが、エリカは動じない。彼女にとって今の社会は自分の世界ではなく、この世界で何が起こっても他人事なのだろう。
     はっきり書いてないけどエリカはスノウドロップの所在も把握しているので何らかの形で招待状は送ったけど拒否されたのだろう。エリカのセリフとしてスノウドロップは人間のオーナーを必要としない方向に進化した、みたいなことが語られている。

     原作のアラトは自分にとっての日常の終わりが始まったような恐怖を感じているが、アニメではエリカが傍観者に徹して自分で動いているわけではない分マイルドに感じる。
     

     

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