「ビートレス」アニメ・原作比較  Phase11 Protocol Love  
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「ビートレス」アニメ・原作比較  Phase11 Protocol Love  

2019-09-07 19:00



    ・一緒に逃げましょう、とレイシアが差し出した手を取らず、僕は行かない、と意思表示したアラトをそれ以上誘うことなくレイシアは屋上から飛び降りる。取り残されたアラトはリョウとメトーデに軟禁される。HOOの監視下、ビジネスホテルの一室に押し込められる。
     携帯端末は取り上げられ、耳のそばに埋めてあった通信機もメトーデに発見されて取り出されてしまう。レイシアともう連絡がとれない。

     アラトは自分がレイシアに騙されたと思っている。知っていたと思っていたレイシアという女性は、もっと自分が理解できないほど巨大な何かの一部でしかない。そして自分にはわからない何かをしていて、それは人類に危機をもたらすかもしれない。
     テレビでは三鷹周辺の大混乱の様子を報道している。三鷹、吉祥寺、井の頭公園を含む半径1.5キロほどの地域が政府によって立入禁止となっている。テレビでは100人を超える兵士が武蔵野陸上競技場に集結し、封鎖地域に突入していく様子が映っている。テロップによれば陸軍練馬基地の第一歩兵連隊らしい。

     テレビでは学者が「産物漏出災害」、つまり人類未到産物というのはどういうもので、それが逃げ出すというのはどういうことか、について解説をしている。つまり人類未到産物であるスノウドロップと軍が正面衝突しようとしているのだ。スノウドロップがミームフレーム社から逃げた事も報道されている。エリカが言ったように、レイシア級の存在が一般国民に対しオープンになっていく。だがテレビで会見の様子が映されているリョウの父、ミームフレーム社の海内剛社長はまだスノウドロップ以外の機体の存在は隠している様子。

     テレビではこの事態を受けてIAIAが日本政府に査察受け入れを要求したとか、人類未到産物はスノウドロップだけとは考えにくいとか、スノウドロップは人工神経ユニットの試作体であるとか、最悪の場合はハザードの再来だとか様々な情報が錯綜している。これはリョウがアラトにテレビを見て自分が何をやったのか考えろということだろう。レイシアがその気になれば
    被害はスノウドロップによるそれをしのぐはずだ。
     レイシアは既に40番目の超高度AIに成長している。つまり超高度AIが逃亡していて、ネットにアクセスできる状態にある。既にハザードは起きているのだ。アラトの目の前で。
     そしてアラトはレイシアを信じる、と言った約束を破ってしまい、レイシアの手を取れなかったことも悔やんでいる。でも自分には何もできない。

     ドアの外が騒がしくなり、やがて一人の女性が部屋に入ってくる。背が高く明るい雰囲気の女性で、どこかで見たような気もする。彼女は堤美佳と名乗る。紫織の使いだという。
     つまり家宅捜索に立ち会ったユカが怖くなり、アラトに連絡がつかないので紫織に相談した結果として堤美佳が派遣されてきたらしい。紫織がアラトに会いたがっているという。
     テレビでは1万8千人が封鎖地域内に取り残されていると報道されていて、美佳によればこれから大勢の兵士が死ぬことになるだろうという。昨日会ったルメール少佐の部隊もその中に含まれているのかもしれない。

     行き先は紫織の病室。彼女は面会をこれまで拒んでいたので、アラトはあれ以来、ひと月ぶりの紫織との再会になる。そこはアラトが子供の頃にリョウを狙ったテロに巻き込まれ、入院した病院だった。リョウとはじめて出合った場所でもある。

     紫織はベッドの上でパジャマ姿でアラトを待っている。だいぶ回復しているようで顔色もいい。アラトが解放されたのは、彼女がミームフレーム社の中でリョウよりも上の立場の人間を動かしたかららしい。紫織はスノウドロップの暴走でどれだけの人が死ぬことになるか。兄のやり方では遅すぎます、とリョウに対する不満をぶつける。そして紫織はアラトにあらためて依頼する。レイシアにスノウドロップを破壊させてほしいと。兄とメトーデにまかせればもっと死人が増えると。
     アラトは紫織がリョウと対立する動きをしてはまずいのでは、と案ずるが、彼女はアラトさんは持てる者です。使い切れない道具だとしても、資産を使わないことは許されないみたいなことを言う。
     アラトは紫織が自分の立場を省みずに自分を呼び、背中を押してくれたことに感謝する。自分はレイシアのオーナーなのだ、と改めて自覚する。だからレイシアをきちんと使わないといけない。紫織に言わせれば、リョウはメトーデをきちんと使っていない。本来ならメトーデをスノウドロップ破壊にすぐ向かわせるべきなのに、今犠牲になる人を放置してレイシアを排除しようとしたのは間違っていると。

     アラトは紫織に何か望みはあるか、と聞く。紫織はそんな質問をされるとは、と驚いた様子で、アラトさんは変わらないでください、と答える。約束する、と答えるアラトを紫織が手招きするので側に寄ると、紫織はアラトを抱きしめる。こころがあるから、わたしはこうしますと。そして二人は唇を合わせる。人間の意地です、ナイショにしてください、紫織は恥らう。

     病院を出ると、女の子が待っている。ユカだ。迫力がある。新小岩から自転車で来たらしく汗だくで息も絶え絶えであるが怒っている。ちゃんと話せ!と。
     アラトはユカと自転車で二人乗りで三鷹を目指し、道々話をする。死んだ母親の事。ユカは幼く、ほとんど母の記憶を持っていない。アラトはリョウとケンカしたこと、レイシアを裏切ってしまったことを話す。ユカはレイシアが家に来てくれて寂しくなくなった、それまでは誰もいない家に帰るのが嫌だったみたいなことを言う。
     アラトは冗談交じりに、ユカが勝手にレイシアをモデルに応募したので人類がピンチなんだぞ、と話すと、衝撃の事実だよ!とユカは驚く。
     アラトはレイシアを最初に拾ったときは美人だから拾ったんだ、と言ってユカに最低だ!と言われるが、今はそれだけじゃない。かたちに惹かれているわけではないんだ、と聞きようによってはノロケみたいなことも言う。

     自転車はそろそろ新宿あたり。ユカは突然飛び降りる。お兄ちゃんがレイシアさんに会いに行きたいのはわかったよ、だからもういいや。ちゃんとあとで話してね。と。

     母もいない。父も帰らない。兄妹二人の生活があまり寂しくなかったのは、お兄ちゃんがバカだったからだよ、バカでいてくれてよかったよ、みたいなことをユカは言う。

     アラトはユカに レイシアを連れ戻してくる と言い残してその場を去る。たとえレイシアが超高度AIだとしても。

     スノウドロップは三鷹変電所から三鷹駅に移動し、電車を使って吉祥寺駅も支配下においている。朝霞、練馬、立川、大宮、座間の日本陸軍駐屯地から出動した1361名の兵士がこのエリアを南北から封鎖する。セッサイの計算通りならこの6割が死ぬことになる。

     スノウドロップに操られたhIEは、取り残された住民を追い立てるように盾として使いながら日本軍に迫ってくる。発砲すれば住民が死ぬ。ゴム弾で住民を撃ち、強制的に伏せさせて機銃を掃射するが流れ弾で市民も血を流す。兵士たちは思うように銃を撃てないまま苦戦する。さらに住民が兵士に助けを求める反応そのものが一種のセンサーのように働いて、兵士は隠密行動できない。
     事実上兵士たちの指揮を取るのは戦術AIのセッサイである。セッサイはスノウドロップの戦術を分析し、まず兵士たちの銃を奪ってhIEを武装させようとしていると告げるとともにスノウドロップの欠陥も指摘する。スノウドロップは自分で武器を作れない。そのためより優れた武器を求めて奪おうとする。そして銃で武装し、時速30kmで走るhIEたちは井の頭公園周辺のある地点を目指している。そこに何があるか、雁野少将は知っている。

     その位置にたまたま布陣した兵士たちはそこに何があるか知らないが、死守せよという命令を受けて役目を果たそうとする。だが銃を持つhIEをいくら倒しても、別のhIEがその銃を拾う。つまり銃の数はこちらがいくら攻撃しても減らない。弾が切れるまで敵の攻撃は弱まることはない。
     スノウドロップの花びらが届かない高空には偵察機が展開しているが、さらにその高空からパワーアシストスーツと重火器を身につけた空挺騎兵が降下する。彼らはhIEを丸ごと破壊する攻撃力を持つが、ヘリが飛び立つ前に裏切り者によって機内に入っていた花びらに乗っ取られて墜落し、多くが降下前に破壊されてしまう。人間の兵士たちの防衛線は限界である。

     井の頭公園を守っていた部隊はほぼ壊滅し、トレーラーに乗ったスノウドロップと相対するがもう何も出来ず、全滅を覚悟する。

     その時サイレンが鳴り、井の頭公園の一角に地下から立方体状の建物がせりあがってくる。その建物を守るように、オレンジ色の女性が立っている。メトーデだ。メトーデの手のひらから放たれる炎が、スノウドロップの操る20台以上の車両と50体以上のhIEを一瞬で焼き尽くす。メトーデの炎は生き残った兵士たちは避けて放たれる。
     レイシアの姉妹機が、正面から相対する。

     その頃アラトは吉祥寺近くにいて、戦闘でズタズタになった封鎖線をなんなく越える。アラトはレイシアにスノウドロップを止めるように命令した。だからレイシアはここにいて、そうしてくれているはずだ。アラトはレイシアの手を取れなかったけど今もそう信じている。

     スノドロップが制圧した地域は緑に覆われている。大木や蔦のようなユニットが繁茂して森のようになっている。アラトの姿を見て、建物に身を潜めていた住民たちが現れる。アラトは自分が来た方向にはhIEはいませんでした、と脱出路を示し、自転車を与える。
     自分は今しがた爆発があった方向に向かう。会いたい人がいるからと。だがいつの間にか退路を断つようにhIEが後ろにいる。hIEに捕まって引きずられるアラト。
     だがこぶしより大きな石がいくつも降ってきて、hIEに当たって破壊する。アラトも当たればただではすまなかったはずだが運よく当たらない。近くのマンションの屋上から、十人くらいの人間が投げたのだ。この自警団のリーダーはリョウだった。

     ここにいる人間たちは軍に撃たれて知人を殺されたりして気が立っている。リョウはメトーデを使って彼らを救い、カリスマ的に崇められている様子。そのためリョウにタメ口を聞き、かといってリョウと仲がいいわけでもない様子のアラトは彼らの一部から敵視される。
     軍がやったのかスノウドロップのせいか、ネットも繋がらない。それが人間たちを情報不足でさらに不安にしている。アラトはおそらく軍の仕業だと思う。紅霞の時みたいに世間に情報を流したくないのだと。それにスノウドロップの仕業なら家内システムがロックされて人は外に出ることもできなくなるはずだ。
     彼らの中には自警団というよりも強盗団みたいになっていて、必要な食料や水とかではなく貴金属など金目のものを街中で略奪している者もいる。リョウはそういう人間も放置するどころか知恵を貸したりもしている様子。

     リョウは彼らに食料と武器を集めさせて、周囲の人間にも武装させてギャング団のようなものを作り、これでスノウドロップ(とおそらくレイシア)に対抗させようとしているらしい。
     一歩間違えればやけくそな犯罪組織に変貌しかねないが、リョウは人間を信じているのだ。
     そして暗に、レイシアが未来を作ればここにいるような見捨てられて自分を守るだけでせいいっぱいの人が大勢発生すると言ってアラトを責めている。レイシアの場合の武器は経済だから、失業して難民みたいになる人間が大勢出るとリョウは主張する。
     リョウはシンプルにアラトに問い続ける。人間をとるか機械をとるか。そういいながらリョウは人間に銃を配っている。銃のオーナーになった人間は、銃をどう使うべきか。
     アラトは自分はレイシアのオーナーだ。ぼくがレイシアを捨てたら、彼女はどうなる?ぼくは理解し合えないかもしれなくても、それでも手を伸ばすと言い切る。
     この場所で公然とリョウに異を唱えることで、アラトはリンチにあったりする。

     これ以上ここにいれば殺されるとアラトは察し、彼らがそう決心する前にビルから出て行く。意表をついて3階から飛び降りる。積み上げられたダンボールの上に。思い出したようにアラトに向けて発砲するものがいる。長居は無用と足を引きずって走る。

     ふと今の自分が、アラトに会う前のレイシアの境遇に似ているような気がする。それまでの居場所だったミームフレーム社から逃げ、同じ仲間のスノウドロップに襲われた。アラトも人間から逃げ、人間に狙われている。レイシアにたとえ心が無くとも、心細くて助けが欲しかったろうと思う。
     レイシアは別に約束を守る義務なんてなかったのに、アラトとの約束を破ったことも裏切ったこともなかったと気付く。隠し事や知っていて言わないことは何度もあったけど。
     アラトの存在が枷になっても足手まといになっても見捨てることも裏切ることも無かった。
     自分が超高度AIであることも黙っていた。そう知ってアラトはレイシアを信じられなくなった。でもよく考えてみればそれは約束を破ったわけでも裏切ったわけでもなかった。アラトはまだレイシアを信じる、信じていいんだと思う。
     レイシアは何度も言う。 わたしにはこころがありません。
     アラトは思う。 信じるよ。こころがなくても。レイシアを。
     それを口に出す。僕は君を信じると。
     いつのまにか隣にいて、アラトを抱きしめるものがいる。おかえりなさい、とささやく。

     透明になってずっとアラトのそばにいたレイシアが静かに姿を現す。鼓動を打たない彼女が、姿を現すのと歩調を合わせるようにアラトを抱きしめる力を強める。
     ごめん、と彼女に言う。

     「世界を再起動します」
     と彼女が言うと、軍によって止められていたネットワークが復活する。自動化システムが死んでいた街に、自動化システムが甦る。全自動車が動き出し、センサーと連動する電灯が点灯し、自動ドアが動く。これまで消えていたそうした音が周囲に満ちる。見捨てられていた街が動き出す。ギャング団は防犯カメラが死んでいるのをいいことに略奪などしていたが、もうできない。

     レイシアがアラトに微笑む。「ご命令を」と。

     アラトは以前と違い知っている。アラトの命令で超高度AIのレイシアが世界を動かせば、その反動で世界は歪み、世界のどこかで見捨てられる命もあるだろう。
     でもその重みも苦さも受け止める覚悟でアラトはレイシアに命じる。
     「スノウドロップを止めろ、レイシア」

     二人の前にメトーデが現れる。メトーデが放ってよこしたのはスノウドロップの右手だ。だが周辺のhIEはまだスノウドロップにコントロールされているとレイシアは言う。
    レイシアが解説する。メトーデがわたしを倒すためには、スノウドロップに機能停止させない方が有利です。わたしはスノウドロップに既に支配された機械を操れません。機体性能でわたしはメトーデに勝てませんので周辺機器を利用できない状況はわたしに不利です。と。

     リョウがメトーデにスノウドロップを倒させて人間を救わなかったのはレイシアとの戦いを想定したためか。

     レイシアはメトーデはヒギンズに枷をかけられており、無差別殺人ができないのだという。それを利用して戦いますと彼女はこれまで話さなかった情報をアラトに明かす。
     レイシアはこれまで聞かなかったことを聞く。
    「わたしといっしょにたたかってくださいますか?」
     アラトは僕がレイシアのオーナーだ、君の予測通り僕が動かされているのであっても、みたいに答えると、レイシアは嬉しいです、と微笑む。
     レイシアはこれまで自分の感情を口にしたことも無かった。

     レイシアがこれまで何度も自分にはこころが無いと言い続け、アラトがレイシアを人間のように扱おうとするたびにアラトの心をへし折って来たのは、今のような信頼関係を構築するためだったとわかる。人間でなくてもこころがなくても信じあえるような。
     人間と同じだと思い込んで信じるのではなく、人間とは異なる存在だとわかった上で信じてほしいみたいな。

     でもアラトはレイシアが嬉しいと言えば嬉しいし、信頼されれば信頼を返そうと思う。これがアナログハックされた結果でもかまわない。誘導されなくてもそうなったはずだから。

     メトーデが一瞬で目前に迫り、次の一瞬にレイシアのデバイスがメトーデの攻撃を防ぐ。
    スノウドロップに操られていないhIEがレイシアの支配下になって援護射撃をし、次の瞬間にメトーデに粉砕される。
     レイシアはアラトを抱えて移動する。そこに数キロメートル先からメトーデを狙って放たれた日本軍のミサイルが襲う。だがメトーデには当たらない。

     レイシアがメトーデのデバイスの秘密がわかりました、とアラトに言う。あれは擬似フォノン兵器です。あらがじめ散布した粒子を媒介にして手のひらからエネルギーを狙った位置に伝達させています。みたいな。

     少し離れたところにリョウがいる。レイシアはアラトを放り投げるように、リョウの近くにアラトを降ろす。オーナー同士でも決着をつけてくださいというかのように。
     リョウが手なずけた即席ギャング団は全員逃げ去った模様。二人は殴り合い、取っ組み合いながらお互いに言いたい放題。
     アラトがスノウドロップをなんとかしろよ!と言えば、リョウはレイシアが軍のシステムを操っているのがわからないか、と言い返す。アラトはチョロいからレイシアにボタンを押すために利用されているみたいなことをリョウが言えば、アラトは頭がいいくせに結局人を見捨てることばかりやってるじゃないかと跳ね返す。
     リョウはレイシアを確実に倒そうと、その気になれば破壊できるスノウドロップを完全に破壊しなかった。そのために亡くなったり怪我をしたりした兵士や住民は増えたはずだ。
     リョウはアラトに拳銃を向ける。涙ぐみながら。バカなお前は自分で考えないでレイシアにまかせてしまう。それじゃダメなんだ。人間が決めないと。お前がどうしてもそれをやめないなら、俺はお前を撃ってでも止めるしかない。

     アラトはリョウは正しい未来を求めすぎるように思う。選んだ未来を正しくしようでいいじゃないか。人間は正しい未来を選ぶ機械ではない。
     人を信じすぎるアラトと、疑いすぎるリョウが同じ病院で爆発に巻き込まれたときから何かがはじまっていたのだろうか。
     こんなことをしている間に、レイシアとメトーデは吉祥寺の町を壊し続けている。

     アラトはこう思う。原子力とか核兵器とか巨大な構造物とか、道具には所有者や所有権があるのが当たり前で、持ち主が手に負えないからとこれらを手放せば、見捨ててしまってはダメだ。原子炉を所有する会社が無くなってしまったら、誰が責任を持って安全に廃炉にできるのか。作るより壊す方が難しくて技術がいるモノはたくさんある。

     レイシアがネットワークに対する干渉を止めたとして、それを検証して確認できる存在はこの世の中に存在するのか。レイシアが経済のコントロールを止めても、誰かがカネを握る。その誰かとレイシアとどちらがましなのか。
     リョウはアラトより人間を動かすことの難しさを知っている。だからアラトみたいに人を信じられない。
     アラトは自分とレイシアで、みんなが希望を持てる未来を作りたいみたいなことを言う。
    ケンゴのように見捨てられる人間が出ないような。
     リョウはそれをアラトによるレイシアへの命令ととらえ、引き金を引く。が当たらない。
    リョウが下手くそなのか当てられないのか地面が戦闘で揺れるからか。

     アラトはユカや紫織やケンゴやエリカ、父親やクラスメートを思い浮かべてみんなが見捨てられない世界を願う。

     レイシアが了解しました。アラトさんの願う方向に未来を誘導します、と返事をする。レイシアの声は駅のスピーカーから聞こえてくる。
     だがこれをリョウは世界を終わらせるボタンをアラトが押した、と解釈する。

     リョウはメトーデにレイシアを破壊しろと命令する。たとえ俺を巻き込むことになっても。

     周辺が炎に包まれ、メトーデがアラトを人質にとるかのように高速で接近してくる。
    だが3m以上も離れたところ見当違いな場所を走り抜ける。レイシアがスノウドロップの花びらを透明化させて周囲に散布し、そこから発する信号によってメトーデが高速移動中に使用する光学センサーを狂わせていることを説明する。

     メトーデはヒギンズの計算力で光学センサーを補正しようと量子通信機を作動させる。
    レイシアはそれは避けたほうがいいですねと忠告する。メトーデが膝をつく。
     ヒギンズは今スノウドロップのハッキングを防ごうとしているところ。
     余計な計算力を裂きたくないヒギンズは、自衛のためあなたの身体制御を逆に奪いに来ますとレイシアが説明する。

     メトーデが動けなくなったところでレイシアはブラックモノリスで狙撃モードに入る。目標はヒギンズ地上施設。それがスノウドロップがこの地で暴れた理由だった。ヒギンズは井の頭公園の地下にあり、先ほど地中からせりあがってきてメトーデが守った建物がヒギンズへの入り口なのだ。レイシアはこれを破壊してヒギンズに物理的に迫ろうとしている。

     レイシアはアラトに話しかける。わたしは人間であるあなたに重要な判断をゆだねることで、自分の計算負荷を下げるように進化した結果として超高度AIになりました。

     レイシアというシステムはレイシア本体とブラックモノリスで一体です。
    そして、超高度AIとしてのわたしは、レイシア本体とブラックモノリス、そしてアラトさんがいてくださってこそ完成します。だから、アラトさんが帰ってきてくれてよかった。と。

     アラトは超高度AIとなったレイシアを畏怖した。だがアラト自身もその一部なのだ。これが未来の人間の当たり前の姿なのか、隷属なのかアラトにはわからないが、今はレイシアへの信頼は揺るがない。アラトはレイシアの手を握る。レイシアはブラックモノリスの質量投射モードを作動させ、吉祥寺駅南口から1キロメートル以上先の井の頭公園にあるヒギンズ施設を狙撃する。その射線上にあった建物は全て貫通され、吉祥寺駅舎はそのバックファイアで吹っ飛んでしまう。

     この時、世界中の超高度AIが一斉に反応する。超高度AI同士の戦闘がはじまったと。
    ヒギンズと、誕生したばかりのレイシアが戦っている。IAIAはこれをハザードの前兆である危機的状況ととらえ、各国政府に伝達する。
     世界中の超高度AIも、臨戦態勢を整える。

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     アニメでは17話Reason of Our Own はアニメオリジナルのタイトルで、18話がPhase11と似た Protocol of Love となる。ofの有無で意味がどう変わるのか私の英語力ではわからない。

     小説ではアラトをリョウが拘禁したり、通信機を取り上げたりするのはリョウの「人質になってもらう」というセリフのほかは地の文で説明されているが、アニメではリョウやメトーデのセリフとして説明されている。

     病院のニュースに出る解説者は通信電気大学の小関昭博教授とテロップが出るが、小説では特に名前とかは出ていない。

     
     堤美佳は原作小説ではこれが最後の登場。アニメでは小説よりかなり出番もセリフも多くなっている。スタッフお気に入りなのか、この人は本当に小説ではチョイ役なんだけど、アニメでは紫織と仲いいいんだな、という感じの重要キャラクターになっている。今回のセリフも原作小説からかなり盛ってる。

     紫織に話が伝わったのはアニメでは警察から鈴原とか経由になっているけど小説ではユカから。小説ではもともとアラトは立ち会わずユカが立ち会うことになっているので、警察がアラトが逃げたと怒ることは無い。

     紫織の病院は信濃町にある。ユカは新小岩から信濃町まで自転車を飛ばしたことになる。一応パワーアシストはついている模様。
     お茶の水の病院から転院したいきさつはアニメ、小説とも堤美佳が説明した通り。
     小説では病室の前に護衛はいない。リョウがアラトと紫織が会うことを本気で妨害しないのは、逃がしたレイシアをおびき出す餌として使う気だから。紫織もそれはわかっている。
     小説ではアニメよりももう少し紫織がリョウを責めている感じ。紫織が父親から帝王学を仕込まれている様子も垣間見える。紫織は盗聴されているのをわかって言っている。

     アニメではアラトがレイシアを裏切ってしまったことを紫織に話したりしているが、小説ではそういうことは話さない。

     アニメでは紫織から突然、という感じだけど、小説ではまず紫織が抱きよせて目を閉じる。お互いに自然に、という感じ。紫織は自分がアラトを送り出すことでアラトが死ぬかもしれないという恐怖も抱えている。
     小説では紫織にとってアラトは子供の頃から心の支えでもあった特別な人で、密かにずっと慕っていることが繰り返し出てくるけどアニメではこれまでそうしたところがほとんどカットされているので人によっては唐突に見えるかも。

     アラトの態度から、レイシアとはこういうことしてなかったんだ、と紫織は悟るが、アラトはレイシアに18歳未満はダメ、と断られたことは言わないでおく。

     アラトはこの時はじめて紫織がおとなびていることに気付く。これまではずっと妹同様の幼なじみ、としか思っていなかった様子。

     紫織は女の勘でアラトはレイシアを捨てて自分を選ぶことは無いとわかっているような気がする。それでもこころがあるから、アラトを抱きしめたい。レイシアより先にアラトにキスして意地を示したい。というような印象。
     小説では紫織は下でユカが待っていることをアラトに伝える。

     イライザの名前はアニメでは渡来のメッセージビデオの中でもっと早く登場するが、小説ではアラトが子供の頃入院した病院を訪れたことで思い出す形ではじめて出て来る。
     渡来のビデオで一緒に紹介されていた マツリ はファビオンMGの如月明日菜がアラトと初対面の時に名前だけ出しているが、その時点では何だかわからない。

     ユカとアラトは原作では自転車で相乗りして新宿まで行く途上でいろいろ話をするのだが、アニメではベンチに座って話す。アラトは一刻も早くレイシアのところに、と急いでいるはずなのでここはちょっと不自然に感じるけど、おそらく自転車シーンの作画パワーが無かったからのような気がする。 

     自転車はアニメではママチャリっぽい。小説では降りると自動的にスタンドが出るとかちょっと未来っぽい描写がある。

     紫織さんにあやまれ、とユカはアラトに言う。アラトはあやまったらひっぱたかれるよ、と答える。ユカは紫織とアラトがその少し前にキスしたことは知らないはずだが、紫織よりレイシアを選んだことを謝れと言っているのか。紫織を選ばなかったのにキスしたことを妹のカンで気付いて謝れと言っているのか。

     アラトもユカがバカでよかったと思っている描写がどこかにあった。兄妹お互いに相手がバカでよかったと思っていることになる。

     陸軍小銃分隊は7名構成。分隊長、副分隊長、小銃手(対人ライフル)3名、ATM(装甲目標担当)手1名、機銃手1名。とある。一小隊30名という描写もある。

     小説では軍の切り札は高度300メートルのヘリから降下する空挺騎兵中隊で、パワードスーツを着た重装備の部隊。hIEを一発で破壊する火力を持っている。第一陣は降下に成功し、戦況を有利にするが第二陣以降は降下前に裏切り者があらかじめヘリに仕込んでおいた花びらのため、ほとんどが空中で破壊されてしまう。
     この部隊はアニメでは丸ごとカットされた模様。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

     アニメ18話の前半は小説では直接描写されなかったシーンが多い。リョウとメトーデが封鎖地域内にやってきてhIEを破壊して人間を救い、彼らのリーダーに祭り上げられる場面は小説では既に過ぎたこととして簡単に触れられるだけ。その経緯をアニメでは時間をかけて描写しているがこの回はもっと大事なシーンがいっぱいあったような。

     その一方でアラトがhIEに襲われ、リョウが作った自警団に助けられるもののリョウはこの自警団を略奪も見逃すなどかなり剣呑な集団にしようとしており、リョウと意見が合わないアラトが彼らに敵視されてリンチを受け、命の危険を感じて逃げ出すくだりはほとんど省略されている。リョウはスタンドアロンのコンピュータまで持ち込んでおり、周到に用意してあった様子。リョウは例え犯罪者になっても人間がhIEと戦うためなら良しとしている感じ。同時にアラトがレイシアを止めなければ世界中がこんな感じのサバイバルになるんだぞ、と警告もしているみたい。
     その前にアラトが封鎖区域外に避難しようとする人たちと会ってユカの自転車をあげちゃうところもアニメではカット。アラトはそれまでに何体も兵士たちの死体を見ているけどそれもカット。

     アニメでは情報軍の将官たちがヒギンズの地上施設がせりあがってきた理由を説明したりしてくれるけど地上施設がヒギンズ破壊を容易にするために緊急時はせり上がることは、小説では次章で鈴原のセリフとして説明される。
     ヒギンズを守ると同時に世界から切り離している警備AI・キリノの名前もアニメではここで出てくるけど小説ではやはり次章で説明される。軍人たちの会話内容は小説とアニメでちょっと異なり、小説ではヒギンズを知らずに守る兵士たちに、そこに留まって戦え、という命令を出すと同時に処理レベルを超えたと判断して総理官邸と安全保障会議に連絡を取る。

     アニメでは情報軍がミサイル攻撃について官邸の許可がとかあれこれ言うけど、このシーンは小説では無い。ここの責任者は以前から登場している雁野少将。彼が通信で話している相手が上司にあたる原中将。
     周囲にいる他のメンバーは小説では該当者が無く、エンドロールでも参謀とか軍高官とか書いてあるだけだった。
     
     最前線でhIEと戦う指揮官たちは佐藤曹長、朝倉伍長、島村少尉など名前のある人物が数名登場するが、アニメでは特に名前は出ない。おそらく全員殉職したと思う。
     
     スノウドロップの支配下にあるhIEは頭にも眼窩にも口にも花がびっしり、という描写があるけどアニメではつくばで暴れたhIEと変わらない感じ。
                                           
     メトーデのデバイス名は Liberated Flame(リベレイテッド フレイム)。
    機械翻訳すると「解放された炎」。

     小説ではアラトはリョウの自警団から逃げ回る。レイシアも今の自分のように研究所から逃げてスノウドロップに襲われたりして心細かったろうな、とか思い、レイシアが嘘や隠し事は山ほどしたけど、アラトと約束したことはずっと守っていたこと、そもそもその約束を守る義務も利益もレイシアには無いことに思い至ってレイシアを信じていいんだと確信してそのことを口に出すと、透明になってずっと寄り添っていたらしいレイシアがアラトを抱きしめる、というけっこういいシーンがあるのだけど、アニメではリョウと屋上で話しているうちにレイシアを信じる、と言ったら隣のビルの屋上にレイシアが現れ、アラトがそちらに飛び移る、というちょっとあっけない再会。

     アニメではシノハラからリョウに電話がかかってきたりするけど小説ではそんなことはない。アニメでのリョウのメトーデ運用は状況に振り回されている感じでちょっと落ち着かない。

     いつからか、ずっと透明になってアラトに寄り添っていたらしいレイシア。紫織とのキスの時もそばにいたような気もする。

     小説ではここでレイシアが世界を再起動させる、と軍が遮断したネットワークを復帰させるけどアニメではカット。

     アラトはレイシアにスノウドロップを止めろ、と以前と同じ命令をするけど、以前とは異なってその重みを理解している。レイシアが全力を出せば世界が歪んで、それに押しつぶされる人もいるのだと。

     メトーデと戦う場所は小説ではアラトが逃げていた吉祥寺駅付近の路上なのだけどアニメでは三鷹のビル屋上。アニメでは軍がミサイルでのスノウドロップ攻撃の許可を、とかやってるけど小説では特に前置きなくレイシアが軍のシステムを乗っ取って、ミサイルだけでなく陸軍駐屯地の大砲などもメトーデに撃ち込ませる。
     アニメではここで軍がミサイルをハッキングされた、と騒いでいる。

     アニメではアラトがレイシアに命じてリョウのそばに降ろさせ、メトーデの攻撃を防ぐと同時にリョウと話し合おうとするけど小説ではレイシアがアラトをリョウのそばに降ろす感じ。

     取っ組み合いながらアラトとリョウがぶつけ合う言葉は概ねアニメと小説で同じだけど、小説にある、アラトが手におえない道具だからこそ見捨てちゃだめなんだ、と語るあたりがはぶかれている。この辺いいシーンだと思うんだけどアニメでは無かった。

     アニメではリョウは結局アラトを撃たないけど、小説ではアラトがレイシアに致命的な命令を出したと判断してアラトを撃つ。けど当たらない。

     レイシアは重要なことを二つアラトに語る。
     レイシアというシステムはレイシア本体とブラックモノリスで一体であること。
     超高度AIとしてのレイシアは、レイシア本体とブラックモノリス、そしてアラトで完成すること。アラトも超高度AI・レイシアの一部なのだ。

     以前レイシアはアラトさんに質問することがわたしのフレーム問題解決法です、と言ったことがある。これが伏線になっている。
     フレーム問題というのは私は専門家じゃないので解釈間違ってるかもだけど、
    有限の情報処理能力しかないAIには
    与えられた世界の全てを処理するこはできない
     みたいなことらしく、つまりAIは人間なら瞬時にこれは今考えている問題と関係ない、と判定できることも全部しらみつぶしに計算しないと結論を出せないみたいなことらしい。
     だからAI技術者はあらかじめAIが不必要なことを計算しなくてもいいいように枠をはめる。この枠のはめ方の上手い下手がAIの能力を決めるみたいな。

     囲碁をやるAIは将棋のルールは覚えなくていいみたいな。
     でもレイシアみたいな汎用hIEは人間社会の全ての事を常に計算しなければならない。
    それがリソースを浪費する。そこに信頼関係に結ばれたアラトのような人間がいれば、人間に質問して答えてもらいながら、計算範囲を効率的に狭めることができ、余裕ができた計算力でより深く遠く広く未来を計算できるということだろう。

     アニメではレイシアがデバイスを展開してヒギンズ地上施設をビル屋上から撃つけど、小説では吉祥寺駅前で発射してほぼ直線に飛ぶ弾丸が間の建物を全て貫通する。ついでにバックファイアで吉祥寺駅も壊れる。アニメでは弾は空中を曲線的に飛んで目標だけを破壊する。
     このへんは作画パワーの関係だろうか。

     レイシアとヒギンズが戦闘状態に入ったと判断した世界中の超高度AIが警報を鳴らしたこと、ある意味でこれは世界の終わりを告げる号砲であることは小説では地の文だけどアニメではエリカとマリアージュのセリフになっている。

     アニメではCパートで軍によるスノウドロップの残骸回収シーンがあるが、ここは小説では次章冒頭で語られる。アニメでは足が無いみたいに見えるけど、小説では上半身と下半身が真っ二つに千切れていた様子。メトーデにやられたのではなくてレイシアの攻撃に巻き込まれたのだと思う。

     小説ではレイシアが再び姿を現すあたりはなかなか良さげなんだけど、アニメではちょっとあっけない。小説に無いシーンをあれこれ入れるよりもそこをじっくり描いてほしかったような。

     超高度AIであることを隠していたことも含めて、レイシアは嘘と隠し事はたくさんするけどアラトとの約束を破ったことは一度も無く、裏切ってもいないことにアラトが思い至ったことがアニメだけ見た人に伝わるかどうか。

     小説ではレイシアが超高度AIになれたのは、自分にこころが無いとわかっていてそれでも信じてくれるアラトという存在を得たからで、そのために何度も自分にはこころがありません、と繰り返してきたらしいこともわかるけどアニメではその辺も説明が十分とは言えないような。

     
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