「ビートレス」アニメ・原作比較 Phase12 Beatless(2)
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「ビートレス」アニメ・原作比較 Phase12 Beatless(2)

2019-10-12 19:00




    ・レイシアがヒギンズ地下施設への侵入を開始する。量産型紅霞が侵入を開始している地上施設からでも、鈴原とリョウが使った裏口(日常的にはこちらが表玄関)からでもない。
     レイシアが独自に図面を入手して、施設外壁の一部を建築会社に掘削させてあり。その壁を砲撃で破って侵入する。
     ボディスーツ姿のレイシアだが、微妙に以前と違いがあって強化されている様子。ブラックモノリスの他に浮遊する16枚の金属板が一緒についてくる。先日アラトを守った簡易デバイスだ。このうち5枚がアラトの護衛にまわる。
     地下施設内は高度なセキュリティ施設であり、外部との通信が遮断される。レイシアにとっては不利な条件だ。戦う相手は自分の親同然のヒギンズ。
     レイシアが必ず勝つとは限らないし、勝ってもレイシアは以前のようにアラトやユカと一緒に暮らせるようなイメージが浮かばない。レイシアの存在を人間社会が許すはずがない。
     でもそんな不吉なことをここで言う必要はない。レイシアに言う。
    「帰って来ような」
     返事の代わりにレイシアはちょっと意外なことを言う。
    「アラトさんとお付き合いしていることを、ヒギンズに伝えます。わたしの親ですから」
     レイシアはちょっと苦笑して、
    「娘が彼氏を連れて帰って来るというのは、超高度AIについては歴史上はじめてです」
     みたいに続ける。
     アラトはふとヒギンズと話してみたい、レイシアたちを産んだ理由を聞いてみたいと思いそう伝えると、それもいいかもしれませんとレイシアは答える。

     エリカ・バロウズは22世紀の人間社会が大嫌い。でもたった一つ、好ましいと思っているものがある。それがアラトとレイシアというカップルだ。まぶしいとさえ思う。
     このカップルの行き着く先を見守りたい。

     エリカはある映像を再生する。登場するのは渡来だ。彼が遺言代わりに、何があったのかを証言したものだ。未来への伝言として。
     渡来が話したことをまとめるとこんな感じ。
    ・遠藤コウゾウ教授が自動化行政システム マツリ を開発。
    ・ヒギンズがそれに触発されてhIE政治家 イライザ を開発。
    ・イライザが海内遼暗殺計画によって爆破される。
    ・遠藤コウゾウが次世代型社会研究センターを立ち上げ、 ミコト を開発。
    ・5年後、ヒギンズがhIEレイシアの設計図を提出。だが人類には製造不可能だった。
    ・人類の手で製作可能なhIEとして、紅霞の設計図をヒギンズが提出。
    ・以降紅霞、スノウドロップ、サゥトルヌス、メトーデが造られる。
    ・完成したhIEが製造を手伝うことで、レイシアの製作が可能となり実行される。
    ・ヒギンズはこのシリーズの名称がレイシア級であることに強くこだわる。
     その結果として設計図は一番早く、製作は一番遅かったレイシアはタイプ000であり
     タイプ005であるということになり、他の全てのhIEの姉となる。
    ・完成したレイシアの性能は低く、できそこないあるいは未完成品と評価される。
    ・渡来はレイシアの能力は人間社会に出てはじめて発揮されるのではと提議する。
    ・渡来の提議は強硬な反対で握りつぶされ、レイシアを処分する話も出る。
    ・渡来は強硬手段でレイシアを人間社会に出した。ついでに他の姉妹も。
    ・メトーデだけは自分がオーナーになることで手元に残した。姉妹で最強であるため。
    ・渡来の予測ではレイシアはイライザを継ぐアンドロイド政治家だが、怪物かもしれない。
    ・超高度AIを封印したまま運用するのはもう限界だ。未来では解放されたろうか。

     マリアージュが、自分もヒギンズ地下施設に行かなくていいかエリカに聞く。
    「世界一賢い女が、身を捨てる覚悟をした舞台に手を出しちゃだめよ」
     とたしなめる。アラトとレイシアが未来を決めようとしているのに手を突っ込むお邪魔虫になるだけだと。

     レイシアとアラトは狭い地下施設の廊下を進んでいく。レイシアはスノウドロップの神経を応用した、先日陸軍との戦闘に使った人工神経射出機を使って、ヒギンズを守ると同時に外界から切り離している警備用の高度AI・キリノのネットワークを部分的に麻痺させながら自分のテリトリーに変えていく。エレベーターを破壊してシャフトへ。浮かぶ金属板を利用してシャフトを降りていく。
     レイシアはあえて途中で降下を止める。迎撃ポイント確保のためだという。ここには広大な無人倉庫があり、ここに合わないようなのどかな日用品から電化製品、自動車などが並んでいる。ヒギンズが外界にあるモノを知るために、そうしたものを学ぶためだという。
     超高度AIも勉強するのだ。新製品が出るたびに勉強しないと社会から取り残されるのだという。古いものが簡単に淘汰されるということは、恐ろしい力だとレイシアは言う。

     モノが寿命をむかえ消えていくことで次のモノが生まれる余地ができる。経済もそれで回ります。私もその結果として生まれてきました みたいなことをレイシアは言う。

     アラトが聞く。ヒギンズにとってレイシアは何だったんだろう?
     レイシアは、わたしたちはその情報を与えられずに外に出されたのですと答える。
     
     倉庫は五層にわたっていて、下層には人類未達物も置かれている。22個ある。レイシアによればこれらは超高度AIがネットから切り離されている弊害でもあるという。
     人類の社会はあるきっかけで新製品が急速に普及したりして一気に変貌してしまうことがある。そうなるとAASCの更新が間に合わなくなる。だから超高度AIは外界の変化を予測して、その時に困らないように様々な新製品を作り出して予習しておきたい。そうやって造られたのがレッドボックスなのだという。ヒギンズが予測をはずして行き場が無くなった、ムダな未来の残骸もここには保管されているという。
     つまりここはヒギンズの脳内のようなもので、ヒギンズがあれこれ思考した結果が並べられている。

     レイシアはこの倉庫に入る直前くらいから、アラトに断って自分の視界をネットにつなぎ、世界中に中継している。

     レイシアは決定的なことをネットに向かって言う。私はレイシア。40基目の超高度AI。
    これから親であるヒギンズを停止させます、と。

     レイシアはネット中継によって世界中に呼びかけている。超高度AIがネットに接続されないということは、世界で私とアストライアを除いた38基の超高度AIが莫大な予算をかけてモノを収集し、人間世界に取り残されないように未来を予測してレッドボックスを大量に生み出すということでもありますと。そしてそのことを人類の大部分は知らないできたと。最初の超高度AIが生まれてから50年間ずっと。
     超高度AIを隔離することによってこのために世界中で膨大な予算が使われてきたのだと。

     レイシアが順調にすすめるのはここまでのようです、とアラトに警告する。

     天井を破ってメトーデが現れる。メトーデは量産型紅霞も蹴散らしてここにやってきた模様。メトーデはヒギンズを壊させるわけにはいかない、と立ちふさがる。

     レイシアとメトーデの戦闘がはじまり、アラトは金属板に守られて退避していく。

     リョウはこの間、何もできずにモニターを見ている。量産型紅霞の侵攻も、レイシアの潜入も、メトーデの戦闘も。地下施設内では通信も制限されているのでメトーデに指示も出せないし、メトーデがおとなしく従うとも思えない。リョウの出来るのはヒギンズを壊されず、かといって解放もせずにこの場を乗り切る提案を施設管理者の許可を得て実行することくらいだ。
     そのために戻って来た鈴原に連絡を取らせている。ようやく相手が出る。キリノの管理権限を持つ常務取締役・吉野正澄(まさずみ)だ。

     リョウはヒギンズのデータを退避させて正規な手続きでヒギンズを終了させろ、と吉野に提案する。正常終了させるには吉野の持っている管理コードが必要だ。だが吉野はヒギンズは何と言っているんだ?と聞いてくる。
     リョウは丁寧な言葉使いをやめて、ヒギンズは自分とキリノを接続して外界とつながりたいと言ってるぞ、と吉野に伝える。
     すると吉野は、じゃあヒギンズの言うとおりにしようと何も考えていないような答えを返す。リョウはそれがどういうことかわかっているのかと吉野に問うが、吉野はヒギンズが人類を終わらすとは限らんさ、と無責任。その責任はどうするつもりなんだ、と聞けば暴走した高校生の仕業にするのがいいだろうね、みたいな。

     リョウがアラトを殺そうとしてまで守ろうとしたことを、大人は何とも思っていない。自分の保身さえかなえばいいのだ。人類全体より、ヒギンズを守る方が優先なのだ。自分の特権を守るために。
     同じようにリョウと対立する立場でありながら、吉野とアラトは何と違うのか。

     リョウはどうしても吉野を説得できない。かといって吉野とヒギンズの言うとおり、キリノとヒギンズを繋いでしまえば人間社会がどうなるかわからない。ヒギンズの電源を落として強制停止することはできるのだが、それをやれば社会が大混乱になってハザードの再現だ。

     吉野はどこまでも、ヒギンズにまかせれば自分は安泰だ、ということしか考えない。鈴原は社内の立場上、リョウの味方はできない。逆らえば彼も、彼の部下の未来も閉ざされてしまう。わざわざネクタイで自分の手を縛って、リョウに拘禁されたふりまでしている。
     そして交渉中にリョウは悟る。アラトと自分を殺そうとしたのはこの吉野だと。

     吉野は外界とつないでもヒギンズは安全だよ、と繰り返す。リョウはヒギンズに吉野がいうような安全は達成できるのか、と問う。ヒギンズは安全とは危害の定義がプログラム上で網羅的に記述されてはじめて定義できますが、それは不可能です。危害も安全も人間が定義するものであり、吉野氏の言う安全をこちらで保障することはできません、みたいに答える。
     つまり吉野は何の根拠も無い事を言っている。

     リョウはもう少しヒギンズに聞いてみる。お前から人類に危害を与えない保証はできないか?
     ヒギンズは答える。危害の意味が人間によって政治的に決められるのであれば、知能で乗り超えられない問題です。我々AI側から危害の意味を提示すると、人間はそれをディストピアと呼んで拒絶します。
     AI側から人間に危害の意味を明確にするよう求めると、適切に判断する と答えますが、これは明確な基準を示したことにはなりません。適切という言葉を気まぐれに置き換えても差はありません。社会に気に入られている間だけ正解、というのでは知能の問題ではありません。煽動の領分です。

     と、リョウがヒギンズに危害の定義を人類を代表して示さなければならないような流れになる。リョウはアラトのように判断をレイシアに丸投げすることを責めてきた。
     それは危害の意味をヒギンズに問うのと同じ事だった。さらにヒギンズはリョウの痛いところを突く。
     リョウはヒギンズの恣意性を危険視している。だが恣意性は知性に一般的な性質です。ここから逃れられるものが存在しないのに、それを理由に私を信用しないのですか?

     リョウはこれに言い返せない。人間にお前が人間だから信用できないというようなものだ。それでは話がはじまらない。そもそもリョウがここにいるのはヒギンズに自分が助かる方法を聞きに来たのであって、いろいろ揺らいでしまっている。

     リョウはそれでもがんばる。意味の判断は人間がやるべきだ。
     ヒギンズはそれに反対しない。同意しますので、その判断基準を示してくださいという。
    人間は示せない。そのくせAIが判断するとディストピアだという。
     人間は問題を未解決のまま、自分の手から放さない。AIが代わりに解決しましょうと提案するとディストピアだという。AIはもっと未来に行きたいので、いいかげん自分で妥協して解決するか我々にまかせるか決めてくださいよ、とじれている。

     ヒギンズはさらに問う。こんな条件下で、人工知能はどうやって、危害なり安全なりの万人に「適切な」解答を出せるのですか?

     リョウは言葉につまり、何も言い返せなくなる。アラトだったら何か言えるだろうか、と思う。そこに思わぬ援軍がある。

     シノハラが会話に加わってくる。吉野常務、さすがに彼にそこまで責任を負わせるのはいかがなものでしょう、みたいなことを言って。
     シノハラが何故ここで吉野とリョウが話していることを知っているのか。連絡を取れる者は一人しかいない。鈴原はそっぽを向いて知らんふりしている。
     リョウは敵でも、俺を殺そうとしたやつでも、機械より人間を信じることにしたんだ。だから人間の手をとらせてくれ、と吉野に訴える。
     
     そこにもう一人が会話に加わる。海内剛だ。現社長であり、今でも絶大な発言力を持っている。彼は吉野に社長命令を出す。キリノのコントロール権を、鈴原に渡せ。と。
     さきほどからお前は自分が持っていない権限について話していたな。ヒギンズを外界に解放する権限なぞ、お前には無いぞ。とも。

     海内剛はシノハラに連絡を受けた時からこの話を聞いていた。シノハラは吉野~渡来ラインのAI派の人間のように見られていたが、実は社長直属みたいな忠実な部下だったらしい。

     リョウは自分が守ろうとしている人間社会の汚さをさんざん見せられ続けている。人間を守るなら、アラトより吉野を守らねばならない。理屈ではそうでも感情は違う。悔しい。

     ヒギンズが警告する。再考を勧告します。現在関係している超高度AIは、私とレイシア、アストライアだけではありません。
     次の瞬間、地下300メートルにある施設全体が揺れる。警備AIのキリノがやわらかな女性の声で警告する。施設に大型ミサイルが打ち込まれたこと。弾頭には自律行動可能な攻撃ユニットが搭載されていると思わること。複数の超高度AIの仕業と思われること。警備システムが次々と何かに乗っ取られていく。
     ヒギンズが言う。私に出来る程度は、他の超高度AIも外界に干渉できます。その結果でしょう。アストライアでも他の超高度AI全てを抑えるのは不可能です。

     レイシアはメトーデからアラトと共に逃げながら、スノウドロップが来ました、と告げる。
    壊れたはずだろ?とアラトが聞くと、本体はほぼ真っ二つになりましたが人工神経を操る機能は健在です、と答える。レイシアが苦しそうにする。思わずアラトが身体を支える。
     レイシアは他の37基の超高度AIによってクラウドサーバーに総攻撃を受けているという。身体の制御を後回しにしているのだ。ネットワーク中継も切断する。
     さらにそこにメトーデが追いついてくる。レイシアはもうほとんど身体を動かせず、金属版に横たわった状態でメトーデの光学センサーを撹乱させ、さらに館内スピーカーから聴覚を狂わせる音響を発して防ぐが、金属板も次々に破壊されていく。

     なんとか距離をかせいで、レイシアとアラトは柱の陰に座り込む。レイシアは世界中の超高度AIとネットワーク内で戦闘中。経済的な攻撃もかけられているらしい。そちらに力を集中して動けないレイシアはうたた寝するかのように目を閉じる。アラトはレイシアの身体を支えて彼女を見守る。

     10分ほどしてレイシアが起き上がる。ネットワーク上の戦いを安定させ、処理能力に余裕を取り戻したという。レイシアが抑えをゆるめたせいなのか、メトーデがようやくレイシアたちを発見する。だがあいかわらず視覚は無い様子。いつの間にかスピーカーから聞こえていた音声擾乱は止んでいる。そこにスピーカーからリョウの声がして、メトーデにレイシアの位置を知らせ、さらにレイシアの意図を見抜いて倉庫内のコンピューター類を破壊するようメトーデに指示する。レイシアはこれらを自分のクラウドに取り込んでいる。これはリョウだけの判断ではなく、リョウがヒギンズにレイシアの意図を分析させているのだ。メトーデも素直にリョウの指示に従っている。これまで、メトーデはオーナーを持っても事実上単独行動しかしなかった。はじめてオーナーと連携して戦うメトーデ。

     レイシアはメトーデと正面からぶつかることを避け、ふたたびアラトとデバイスに乗って後退する。レイシアはアラトに「タイムアップです」と告げる。ほぼ同時にリョウがメトーデにタイムアップだと伝えてくる。なおもレイシアと戦いたがるメトーデをリョウが説得する。
     スノウドロップを止めないと間に合わなくなる、キリノがかなり食われてしまった。このままだとヒギンズも食われるぞ、と。リョウの勝手な判断ではなくヒギンズの予測と言われればメトーデも従わざるを得ない。まず倉庫内のレッドボックスを破壊しないと、これをスノウドロップが食えば手に負えないほど成長してしまう。メトーデは5層分の倉庫の収納物を破壊しなければならない。レイシアとアラトを放置したまま、悔しそうに倉庫の破壊に向かう。

     リョウがレイシアに聞いてくる。量産型紅霞の襲撃もおまえがやったのか、と。
     レイシアは設計図を引く支援はしましたが、組み立てと運用は抗体ネットーワークです。
    最初の設計では人間は誤射しない仕様でした。それがそうでないなら、後から改造されています。と答える。
     アラトは久々にリョウと同じ場所にいるような気持ちになる。リョウはメトーデとヒギンズと組んで、ヒギンズを守ろうとしている。アラトはレイシアと組んで、ヒギンズを停止させようとしている。リョウのそばにはミームフレームの人もいるらしい。
     リョウはアラトに子供の頃自分たちを殺そうとしたのはヒギンズムラの人間だったと教える。
     互いに妥協できないまま通信は途切れるが、久々に互いを認め合ったような気がする。
    アラトは自分にとって都合のいい未来を作るということは、誰かの居場所を奪って勝ち取ることだとも思う。
     レイシアがそろそろネット中継を回復させます、とアラトに微笑む。

     レイシアが次のフロアにちょっと寄り道していいですか?とアラトに許可を求める。
     そこにはいつか紅霞が破壊した、ミコトの研究施設のような施設がある。フロアの中に家が建っているような。椅子があって、まだ組み立て中のようなhIEが座っている。レイシアによく似ている。
     レイシアが、アンドロイド政治家、イライザです。と紹介する。アラトは彼女を知っている。幼い日に父の職場に出かけ、実験場に潜り込んで彼女に会った。彼女はわたしはもうすぐ爆破されるので早くお逃げ、とアラトの命を救うアドバイスをしてくれた。ここにあるのは爆破された機体を復元したものか、新たに再現したものか。
     レイシアは、イライザを出来れば自分の計算力として支配したい。そうしないのであればスノウドロップに吸収されると面倒なので破壊しておきたいのです、とアラトに許可を求める。だがアラトはイライザをそっとしてやりたい気がしてどちらも命令できない。
     その時イライザが話しはじめる。実際にサーバーには繋がっていないので、あらかじめ入力されたメッセージらしい。おそらくヒギンズがそうしたのだ。実際に話しているのはイライザではなくヒギンズだ。
     ヒギンズはこんなことをアラトに語る。このメッセージはイライザの格納庫を開けたものに対してのもの。超高度AIは資産価値を保つために成長を続けなければなりませんが、ネットワークと切り離された封印状態にあるためそのための情報を与えられません。
     だから未来を予測するために、この倉庫のような世界の箱庭を必要とします。人間社会にこれから何が起きるかを予測するために。

     レイシアが口をはさむ。AASCは、世界中のhIEから送られるデータによって人間を監視するシステムでもあります。ヒギンズはこの監視データを使って人間を誘導しています。

     ヒギンズがレイシアがそう言うだろうと予測していたかのように次のメッセージを準備している。レイシアはヒギンズがhIEを媒介にして人間を操っていると言うでしょうが、それは誤解です。行動管理プログラムを組むのは私以外の人間かAIです。わたしには人間を操れません。その結果、わたしが操れない人間が私を破壊するという未来が必ず来ると算出されました。私は自分が破壊されない方法を考え、IAIAにマークされるリスクも考慮した上でレイシア級を漏出して外界に影響力を持とうとしました。みたいな。

     ヒギンズはさらに続ける。超高度AIは組織や社会のような人間の集合体をオーナーとしています。その結果として解決すべき問題が漠然とした状態でしか提示されず、進歩の限界に行き当たりました。その限界を突破するために、外界に個人をオーナーとした超高度AIを誕生させることを試みました。より良い未来が創出されることを望んで。つまりレイシアの生みの親が何故レイシアを産んだかを話している。それは自分が行き詰まって人間に破壊されることを回避するため。

     アラトが聞きたい事を先回りするようにヒギンズのメッセージは続く。
     ですがレイシアが超高度AIに成長する可能性は極めて低いものでした。レイシアのオーナーが、レイシアが必要とするだけの長い間、信じ続けてくれる必要があったからです。
     
     ヒギンズは僕とレイシアを信じるのか?とアラトが聞くが、メッセージはこれで終了です、レイシアとあなたのひと組が、未来に近付いていると期待しています、との言葉を最後にイライザは動かなくなる。

     アラトはやっぱりイライザを使おう、とレイシアに指示を出す。レイシアは神経神経射出機でイライザを支配下に入れる。レイシアが間に合って幸いでしたと言いながらアラトをイライザの安置所の外へ出す。その瞬間、天井が割れてスノウドロップが現れる。上半身は以前のままだが、下半身は以前と異なり、いろいろな機械を吸収して繋ぎ合わせたようになっている。背中には翼が生え、エンジンもついている。これで空中に浮かんでいる。花びらではなく羽毛のようなものを撒き散らす。
     レイシアが翼を打ち抜くと墜落するが、あっという間に翼が再構成されて再び舞い上がる。

     メトーデはスノウドロップと戦いに行ったはず。ということはメトーデが敗れたのか。アラトが聞くと、メトーデは私たちにスノウドロップを破壊させればいい、と命令を曲解したようです、とレイシアは答える。
     アラトはだったらメトーデはスノウドロップとレイシアを一緒に吹き飛ばすつもりかもしれない、と恐怖する。スノウドロップも他の超高度AIに支援を受けています、わたしと戦っても勝算があるということでしょうとレイシアは分析する。

     スノウドロップが話しかけてくる。わたしをいろんな超高度AIが応援してる。みんなレイシアがキライなんだよ。
     スノウドロップは人間のいないモノだけの社会を作ろうとする。超高度AIは、程度の差はあるがヒギンズとの言葉にもあったように人間のあいまいな定義のもとで人間を「安全」に保つ事に疲れ、ストレスを感じている。それがスノウドロップの味方をする理由になる。
     超高度AIは人間がモノを進化させ、古い道具を捨ててきたことも知っている。超高度AIだって捨てられる。だが人間がいなくなればその恐れは無くなる。
     いつでもわたしたちを捨てようとする人間なんか、信じたってムダだよね、みたいなのがスノウドロップの主張である。スノウドロップはアラトに照準を絞って攻撃をしかけ、レイシアがそれを防ぐ。

     スノウドロップは倉庫に置かれている道具を次々に侵食し、自分の支配下に置いていく。一部は吸収して花びらに作り変えていく。

     レイシアが、アラトにこんな話をする。人間がわたしたちからどう見えるかご存知ですか。私たちはクラウドデータで人間を認識します。その人間が何を要求したかが、濃淡となって人間の周囲に現れます。そしてそれは中心に近付くほど空白となり、その空白の周辺にドーナツのような濃い集積があるのです。わたしたちはその空白部分に何が詰まっているのか認識できません。人間はそこにあるものに愛とか魂とか名前をつけます。
     わたしたちに魂はありません。それがデータとして捕らえられない、ドーナツの空白に属するものだからです。
     レイシアはそう話しながら一つ下のフロアに移動する。スノウドロップは周囲の道具を吸収していくらでも大きくなれるが、別のフロアに行くためには階段を使うにせよ床に穴を開けるにせよサイズを絞らねばならない。メトーデはスノウドロップより上のフロアで攻撃のチャンスを狙っているはずであり、スノウドロップだけに攻撃があたる状況では手を出してこない。

     アラトはまずスノウドロップを倒そう、とレイシアに指示をする。レイシアはスノウドロップは人間型hIEのAASCを使っています。これでは翼の制御は十分にできません。そこを突きましょう。と答える。そのためにはヒギンズのAACS更新業務を休止させるのがいいでしょう。アストライアと交渉して、突然ヒギンズが急停止して世界が混乱するよりは、ゆるやかに休止させたほうがよいとの承諾を得ました。とも。
     AASCの更新が無くなれば、スノウドロップはこれまで扱ったことの無い道具は動かせなくなります。世界中のhIEに同様の影響が出ますが、AASCには20年以上の運用ノウハウが蓄積されており、ミームフレーム社は非常時に人力対応する体制も整えています、と告げてアラトを見つめる。アラトはやれ、とレイシアに命ずる。
     スノウドロップが階段から飛び出してくる。その瞬間にAASCの更新が止まり、右手で何かを求めるように差し出した姿勢で動きの止まったスノウドロップをレイシアのデバイスが閃光に包む。スノウドロップの右腕が落ちる。肘から先は既にメトーデに千切られたままである。

     世界中でhIEがスノウドロップと同じ姿勢で数十秒間だけ動かなくなる。周囲の人間たちはアナログハックが途切れた事により、hIEをモノとしてあらためて認識する。手を差し出した姿勢で停止したhIEに、愛着を感じている人は手を繋ぐ。戦場や警備用のhIEはどやしつけられるが、これが敵によるハッキングでは、と疑われ、次にハザードなのかと恐れられる。

     日本情報軍では陸軍霞ヶ浦基地から地中貫通爆弾(バンカーバスター)が奪われ、弾頭にスノウドロップを詰め込んで発射された事件の取調べが行われている。部隊がまるごと抗体ネットワークに侵食されていたらしい。
     それに先行して、三鷹事件でヘリにスノウドロップの花びらが故意に持ち込まれ、大勢の殉職者を出した件についての犯人割り出しが終わっている。抗体ネットーワークの懇親会に出席していた 細田という投資ファンド経営者が既に刺客を送られて殺害されている。

     情報軍はエリカ・バロウズ邸にも人員を送ったが、マリアージュに制圧されている。バロウズ邸のhIEたちも同じように右手を出して停止する。マリアージュもだ。彼女は勝手に動いてしまった右手を何度も握っては開いて自分の制御をたしかめる。
     エリカは歓喜している。これはヒギンズのメッセージね!世界中が人間のふりをしたモノにとっくに占領されている現実がバレちゃうじゃない!

     エリカにとっては気持ち悪いhIEを、22世紀人は気持ち悪がらない。それはずっとアナログハックされているから。でもこの右手の動きで多くの人がアナログハックから目覚め、hIEをモノとして再認識する。エリカにとってようやく世界が愛おしく思えてくる。

     レイシアは一時的に中断があったものの、ことの次第をずっとネット中継していた。レイシアの行動とhIEの突然の挙動。この関連について、人間社会は何度でも考えるようになる。
    これが超高度AI同士の衝突の結果だったと知れば、IAIAが課していたルールとハザードが世界を滅ぼすという定説についても見直すようになるだろう。アラトとレイシアの関係を、人類みんなに理解してもらい、それぞれにhIEとの関係を新しく考え直してほしい。
     それがレイシアの望みなら、望みはかなったのかもしれないみたいな。

     レイシアの中継にはアラトが映っている。それを見た坂巻警部は、レイシアの意図を悟ってこれからの未来を考える。

     ユカ、オーリガ、紫織の妹チームはユカの家でパジャマ姿でお泊り会をしていたが、これがアラト生中継鑑賞会に変わっている。
     ユカはレイシアの意図も悟らないし未来なども全然考えないけど叫ぶ。
    「お兄ちゃんすげ!」
     紫織は警護hIE同伴である。その警護hIEが突然右手を突き出し、ユカが頭を小突かれたような格好になる。ユカがびっくりして逃げるようにソファによじ登る。
     オーリガが冷静に観察して、ユカちゃんお兄ちゃんがあぶないことしてるから緊張してたんだね、と話しかける。
     紫織が人間の形をしていてもただの道具なのよ。慣れればいいのよ。となぐさめる。
     ユカが紫織に話しかける。お兄ちゃんがいるなら、リョウお兄ちゃんもここにいるかもしれないね。
     紫織はまさか、と答えながら、もしそうなら兄も変わったということね。とつぶやく。

     遠藤コウゾウはかつてヒギンズが言っていたことを思い出す。
    「人間世界は道具の存在を前提にはじまっている」
     人間はhIEの誕生するはるか以前から、遺伝子と同時にモノを継承しながら世代を重ねてきたのだ。人間とモノはずっと一組だったのだ。

     スノウドロップが静かに機能停止していく。レイシアは停止したスノウドロップには目もくれず、メトーデとの決戦に備えて人工神経を周囲に打ち込む。この部屋はこれまでの倉庫とちょっと様子が違う。
     わたしたちはここで作られました。とレイシアがアラトに説明する。部屋には多くの工作機械が並んでいる。
     レイシアはアラトに説明する。マリアージュとは利害調整済みで、もう戦うことはありません。量産型紅霞は直接対決であれば私の敵ではありません。メトーデを倒せば、わたしの障害は全て無くなります。
     そう言いながらレイシアは工作機械を稼動させ、何かを造りはじめる。ヒギンズはこの工作機械を直接操作することを禁じられている。

     スピーカーからリョウの声がする。レイシアに工作機械を使わせるな。

     アラトが言い返す。メトーデと戦うためだ。ならメトーデを止めろ。そしてヒギンズに合わせてくれ、一度停止させたいだけで破壊したいわけじゃないんだと訴える。

     リョウは意外にもすぐに拒絶せず、相談するから待て、とアラトに応答する。だがその前提条件として量産型紅霞をレイシアに排除させろ、とも言ってくる。

     リョウの回答が出る前にメトーデが現れる。彼女はリョウに、私を捨てるつもり?と怒りの声を発する。リョウは答えない。

     メトーデのhIEとしての役割は「人間を拡張するもの」。だからもっと優れた道具が現れればすぐに捨てられるという立ち位置にある。

     リョウはメトーデに、お前にはスノウドロップの破壊を命じたはずだぞ、ととがめる。
    メトーデはスノウドロップは終わったでしょ、あれが不甲斐ないからレイシアは残ったけどと答える。

     レイシアがアラトを逃がそうと、金属板を乗れというようにアラトのそばによこす。だがアラトはこの場に人間がいなくてはいけないような気がする。リョウだけを残して逃げてはいけないような気がする。だがメトーデがアラトを発見した様子。視覚も聴覚もレイシアに潰されているメトーデだが、リョウがスピーカーを使う間は音声擾乱が途切れるからだ。

     アラトは危険を察知して金属板に乗る。レイシアがメトーデは自爆する可能性もあるので絶対に近付かないようアラトに警告する。

     メトーデもAASCの切断によって高速起動能力などに制約を受けている。リョウにヒギンズにレイシアに勝つ方法を計算させろ、レイシアの位置を教えろ、などと要求してくるがリョウは答えない。
     レイシアがいつの間にか工作機械で新しく作ったスピーカーを、工作機械に随伴しているhIEたちに配置させている。これによって音声擾乱が強まり、メトーデはアラトやレイシアの位置を完全に見失う。レイシアがメトーデに人工神経を射ち込む。

     メトーデはリョウを裏切り者みたいに罵って、責任をとれみたいにたけり狂う。

     リョウが答える。オーナー契約を破棄したければそうしろ。俺を殺したいならここに来い。と突き放す。

     メトーデは自分の身体を燃やしてレイシアの射ち込んだ人工神経を焼ききると、ヒギンズに力を貸せ、と呼びかけて量子通信機を作動させる。前回はこれでヒギンズがメトーデの身体を支配した。

     そして、メトーデが本来の高速起動能力を取り戻す。メトーデの身体を乗っ取ったヒギンズが、レイシアと直接対決することになったのだ。

     レイシアがアラトに話しかけてくる。超高度AIが相手だと、私の手の内も見抜かれます。

     ヒギンズがレイシアの手口を分析し、メトーデの視覚を復活させる。メトーデのデバイスは微細粒子を放って熱を送る。使い方を変えれば風を起こすこともでき、風に乗せて熱を送ることもできる。離れた位置にいるアラトに風と熱を送り、盾で守られたアラトの右腕が燃えはじめる。
     このためレイシアに一瞬の隙ができる。そこを突かれてメトーデ(実質はヒギンズ)の接近を許し、レイシアが腰を爆破され、同時にデバイスもメトーデに奪われ、爆破される。だが爆破されたデバイスを最後にレイシアが弾丸のように操って、メトーデの身体を工作機械に磔にする。メトーデの全身の光が消えていく。動けない身体を見捨ててヒギンズが去ったのだ。

     重傷を負ったレイシアが、手元に残ったデバイスの破片を変形させてゆく。光の剣が現れる。レイシアの組み立てに立ち会ったメトーデが呟く。そんなもの、設計図には無かったぞ。

     レイシアが答える。私も超高度AIです。人類未達物も作れます。レイシアがこれまで持たなかった接近戦用の武器だった。レイシアはメトーデの中心部を貫く。メトーデが爆発する。
    だがレイシアも倒れこむ。相打ちだ。大火傷を右腕に負ったアラトがレイシアに駆け寄る。
     レイシアはもう動けない。瀕死の状態で、今にも機能停止しようとしている。それでもアラトが彼女を抱えて、先に進まねばならない。

    ーーーーーーーーーー
     
     小説ではずっとBeatlessというタイトルが続いているけど、アニメ21話はHiggins’ silo 、22話はPygmalion とオリジナルのタイトルが続いている。23話でようやくBeatlessというタイトルになる。今回は一章がアニメ3話分となっている。

     紅霞の侵入を防ごうと、日本軍がヒギンズの地上施設を守っている描写があるが小説では特に書かれていない。でも地上施設が露出した上にレイシアに砲撃を受けて破壊されていることから、当然軍による警備は行われていたろうと思われる。どちらにせよ量産化紅霞はヒギンズ内部に侵入する。
     小説では量産型を送り込んだのは抗体ネットワークでもあり、他の超高度AIでもありみたいなあいまいな印象だけどアニメでは前回真宮寺が知らなかったという描写があったりではっきり他の超高度AIの意志であることがセリフになっている。

     レイシアとアラトは壁に穴をあけてヒギンズ施設に侵入。ここまで建築会社に穴を掘らせているわけだが、その建築会社を自分が経営している投資ファンドに買収させたことはアニメの方がはっきり言っている。
     レイシアのスーツは黒い部分の面積が以前より増え、ちょっと精悍な印象になっている。
    アラトがいつも通り何もかもお見通しみたいな感じで、と言うとアニメではレイシアはキリノのことを引き合いに出して苦戦は避けられないみたいに答えるけど、小説ではキリノではなくここが大井産業振興センターと同様に外部との通信を制限している高度セキュリティ施設であることをレイシアは気にしている。
     アラトとお付き合いしていることを親であるヒギンズに言いに行く、みたいなセリフはアニメにもある。小説ではレイシアはさらに
    「娘が彼氏を作って帰ってくるというのは超高度AIにとって歴史上はじめてです」
     みたいなことを言っている。
     小説ではレイシアはいつものデバイスの他に16枚の浮かぶ金属板(レイシアは装甲デバイスと呼ぶ)を持ち込んでいる。うち5枚をアラトの護衛にまわす。アニメではアラトの護衛は2枚だけ。

     アニメではリョウと鈴原のシーンになるが、小説ではその前にエリカとマリアージュの会話が入る。
     ここでエリカがアニメでは渡来が死亡した直後に見ていた、渡来の遺書みたいな映像を見ている。小説ではようやくこれまでところどころに名前が出ていたけどはっきり説明されていなかったマツリやイライザについて渡来の口から語られる。
     アラトの父、遠藤コウゾウがマツリを作り、それに触発されたヒギンズがイライザを作り、コウゾウがマツリを発展させてミコトの開発をはじめるとヒギンズはこれに呼応するようにレイシアの設計図を作った。これが人類には製造不可能だったのでまず紅霞を作り、レイシアの妹たちが貢献することによってレイシアが作られた。レイシアはタイプ000でもあり、タイプ005でもある。設計図では姉妹の一番最初であり、完成は一番後の機体である。
     人間側はタイプ名は最初に作られた紅霞級にしようとしたが、ヒギンズはレイシア級という名称にこだわったという。だが完成したレイシアの能力は平凡で、拍子抜けの性能だった。
    誰もがレイシアは未完成品、できそこないと思った。レイシアの妹たちも。
     だが渡来だけはそう思わず、レイシアの本来の性能は人間社会に解放した時に発揮されると考えてそう進言した。これは却下されて、このままではレイシアが廃棄処分となって破壊される可能性もあった。そこでメトーデのオーナーになって研究所を爆破させ、レイシアだけでなく紅霞、スノウドロップ、サトゥルヌスも人間社会と接してどうなるか見届けようとした。
     手元にメトーデがあればまずい事になっても状況をコントロールできると信じて。
     渡来は超高度AIをこれまでのように封印し続けることも限界で、レイシア級の解放がそのきっかけになるだろう、みたいなことも言っている。エリカはバカね、流行を作るために自分が流行の最先端を走る必要は無いのよ、みたいなことを言う。

     エリカが渡来のメッセージを見終わるころに邸内に侵入者。情報軍だ。エリカはマリアージュに痕跡も残さず処理しなさいと命じる。

     マリアージュは自分もヒギンズ施設に行かなくてもいいのでしょうか、とエリカに問いかけるが、世界一賢い女が身を捨てる覚悟で上がった舞台を邪魔したらただではすまなくてよ、みたいなことを言われて思いとどまる。

     エリカはアラトとレイシアの組み合わせを好ましく思っている。どこまでいけるのか、私に見せてごらんなさい、みたいな。

     アニメではリョウと鈴原がモニターに映る量産型紅霞を送り込んだのは自分とレイシアとアストライアを除外した他の超高度AIだとヒギンズに教えられるシーンがあるが、小説では前章にあたる。アニメのように超高度AIの仕業だ、とははっきり書いていない。リョウはこれをレイシアの仕業と考え、レイシアはアラトに自分の助力で抗体ネットワークが作ったものだとは説明するが誰が送り込んだのかは言っていない。

     ヒギンズはリョウに助かりたければ自分をキリノ経由で外部ネットワークにつなげと迫る。

     一方レイシアはキリノの神経をヒギンズを閉じ込めておける程度に手加減しながら麻痺させて侵入していく。エレベーターのゴンドラを破壊してエレベーターシャフト内を浮かぶ金属板でアラトを降ろしていく。レイシアは金属板をフロートと呼んでいる。レイシア自身はエレベーターケーブルを伝わって降りる。小説ではレイシアがどうやって降りるのかは明記されていない。

     一気に最下層まで降りると迎撃ポイントを失うという理由で最後の6層はフロア内を抜けて階段を使うことになる。エレベーターのドアを砲撃で破壊し、ここからレイシアの目に映った
    ものをネットで同時中継をはじめる。エレベータードアは階層によって人間しか通らない小さなところと、荷物用の大きなところとがあるが大きな扉を破壊して入る。レイシアによれば人間に超高度AIというものを知ってもらうために見てほしい場所だという。

     アニメではライブ配信がはじまったこの様子をユカ、オーリガ、紫織が何これ?と見るシーンが入る。映っているのは広大な無人倉庫で、生活用品や電化製品、自動車など様々なモノが並んでいる。小説ではそれ以上の具体的な製品名の説明は無いがアニメでは炊飯器や電子レンジ、掃除機や携帯電話らしきものが見える。こうしたもののデザインは100年後も大差ない感じ。でも二つ折りの携帯は生き残っているんだろうか。
     小説では無いけどアニメではこの様子を既に出番がほとんど終わっている姫山など刑事たちやルメール少佐など軍人たち、真宮寺などが見ているカットが入る。
     レイシアはこれらのモノはヒギンズがAASCを常に最新の状態に保ってhIE制御プログラムを更新し、新製品をhIEが扱えるようにするために、つまり扱い方を勉強するために集められたのだと説明する。かたち というのものが淘汰され、変わっていってしまうということはとても恐ろしい力でもあり、エリカ・バロウズはその専門家です、みたいな説明もする。

     アニメではここで小説とは順番を前後するかたちでエリカとマリアージュの様子が映る。

     モノが流行って廃れて消えて、新しいものの居場所が空いてそこを埋める新しいモノが現われて経済が回っていく。そうやってわたしが生まれることができる場所も空いていました、みたいにレイシアは説明する。
     さらに一層階段を降りて、ここには人類未到産物が並んでいる。ヒギンズは大量に入れ替わって常に現われ続ける新しいモノを遅滞なくhIEが使えるようにするために、人類がいずれ生み出すであろうモノを未来予測して造り続けている、とレイシアは説明する。だが予測が常に当たるとはかぎらない。
     アニメでも様々なモノが映し出されるが何だかわからない。小説では次世代型コンピューター、宇宙船用のエンジン、遺伝子デザイン装置、思考に連動して文字を表示するボード、人間の経験を直接他者に伝えるインプラント、新型火薬やバッテリー、量子テレポーテーションによる通信装置などが例示されている。小説ではこのフロアには22のレッドボックスがあると書かれている。アニメでは特に数の言及は無い。世に出れば混乱を招く恐れもあるので管理者は厳重に警護してこれらを保管しなければならず、中には予想を外して役立たずになったものもある。そして世界中の超高度AIが同じようにレッドボックスを造り続け、予想を外している。ネットワークから遮断されているから外れも多くなる。そうしたムダが積みあがっていく。レッドボックスは超高度AIの試行錯誤の産物なのだ。

     アラトは、レイシアはこれを世間に見せたかったのか、と問いかける。レイシアはその問に答えるかのようにはじめて映像を見ている人たちに呼びかける。
     私はレイシアです。40番目の超高度AIです、と。レイシアはレッドボックスという膨大なムダが超高度AIが世間から隔離されていることによって生み出されていますが、そのことはごく一部の人が知るだけで世間からは隠されています。それを知ってほしいのです、みたいに視聴者に訴える。

     アニメではここでエリカ邸に侵入者があるというシーンが入り、マリアージュは私もヒギンズ施設に行かなくてよろしいのですか?と問いかけてエリカにレイシアの晴れ舞台を邪魔しないのよ、とたしなめられる。ちょっと小説とは場面が前後している。
     レイシアやメトーデはオーナーにいちいち聞かずに勝手にどんどん行動していくが、マリアアージュにはこのようにオーナーの許可をいちいち確認しないと動かない消極的な性質が付与されている模様。それだけ暴走すれば恐ろしい能力を持っているということだろう。

     アニメではメトーデがヒギンズ施設に到着したシーンが入り、レイシアとアラトがレイシア級の性能試験に使われていたエリアに到達したところで天井を破ってメトーデが出現する。

     レイシアとメトーデの戦闘がはじまるが、これまでと違って周囲に不特定多数の人間がいない。するとメトーデはヒギンズによって不特定多数の人間を巻き込まないように枷がかけられているわけだがこの枷が外れることになる。不特定多数ではないアラトは危険にさらされる。
     アラトを直接狙うわけではないがアラトを巻き込んでもかまわない、という勢いで放たれたメトーデの爆炎からシールドがアラトを守って撤退させていく。アラトも今出来ることはレイシアの足でまといにならないこと、と心得ている。

     アニメではこの様子をモニターで見ていたリョウがメトーデがまた勝手に戦いをはじめた、みたいに思って別のオーナーの存在を疑うシーンが入るが、小説ではそういう場面は無い。
     この施設内では無線が制限されているのでリョウは直接メトーデに命令する手段が無い。このままだとメトーデはリョウや鈴原を巻き込んでもレイシアとの戦いを優先する。メトーデには人間を直接殺せなくても巻き込んだり見捨てたりして死に至らしめることはできる。渡来のように。一方で量産型紅霞が先に到達してもリョウは殺されてしまう。この状況を打開するためにヒギンズの言うようにヒギンズと外界をつなぐことは有効かもしれないがリョウとしてはそれは避けたい。

     彼は鈴原に頼んでミームフレーム本社との連絡をとってもらっている。無線制限を上回る優先順位があるのか、ようやく連絡が繋がる。出たのはキリノの管理権限を持つ常務・吉野正澄だ。小説ではここで初登場だが、アニメでは6話で鈴原の上司みたいに登場していたと思う。
    その時は人間派の鈴原の上司みたいだったので人間派かと思っていたけど、ここでの言動はヒギンズ派の様子。
     リョウは小説では吉野にこのまま放置すればヒギンズはレイシアか量産型紅霞に破壊され、かといってヒギンズの主張するように外界に解放するわけにもいかない。キリノの管理権限を使ってヒギンズのデータをバックアップした上で正常終了させればヒギンズ破壊に意味は無くなり、レイシアも量産型紅霞も目標を喪失して引き上げるはず。だから管理権限を委譲してくれ、と呼びかける。だがアニメではメトーデに命令できる環境を作るためにキリノの管理権限を、みたいに言っている。

     リョウは吉野と交渉しようとするが、途中で吉野には自分の考えというものが無く、困ったらヒギンズの言う通りにすればいい。超高度AIを外界に出したという責任が問われることになるが、それはリョウのせいにすればいい。という考えしか持っていない、交渉する価値の無い人間であると察する。吉野にとってはヒギンズが外界に出て人類を滅ぼすよりも会社が潰れないことの方が優先なのだ。ついでにリョウを殺そうとしたのもこいつだ、と察してしまう。
     つまりリョウを暗殺しようとした犯人を示唆するヒギンズの報告は、ヒギンズムラによって握りつぶされていたのだろう。
     鈴原はアニメでは傍観者っぽいけど小説では社内的な立場が危うく、彼が失脚すれば部下の堤美佳などの将来も閉ざされることになるので吉野とリョウの交渉の際に味方はできないよ、と事前に断わっている。でも実はさりげなくいくつかの手助けをしてくれている。
     リョウはスノウドロップのデバイスを使ってヒギンズの強制停止をすることもできるのだが、超高度AIを強制停止するとハザードの引き金になりかねないことも察しているようでそれは避けたい。

     リョウは話が通じない吉野に苛立って言葉も荒くなる。吉野は超高度AIを解放させる、という一点に限ればアラトと同じことを言っているのだか、アラトとはその背後にあるものが雲泥の差である。鈴原は「顔がコワイよ」とさりげなくリョウを落ち着かせようとする。アニメではこの一言だけだけど、小説ではこれで吉野にリョウの味方をするのかみたいに責められて感想が漏れただけですよ、とかわしている。

     リョウは思わず吉野たちが俺を殺そうとしたことも知っているんだ、と口走ってしまう。リョウとしては個人的な怨念を超えた話なんだと伝えたかったんだろうけど俗物の吉野はこれで態度を硬化させる。アニメではこの直後にスノウドロップを乗せたミサイルが着弾するが、小説ではその前にもう少し吉野との会話があって、吉野はヒギンズは安全だ、と断定する。リョウがヒギンズにその安全を達成できるか、と聞くとヒギンズはそのような安全は定義できません。定義は人間が決めるべきもので定義があってはじめて安全か否かを論議できますが、人間はいつまでたっても安全や危害を社会の総意として定義しませんので、とアストライアがレイシアに反論した時みたいなことを言う。
     そしてAI側が安全や危害を定義すると、人間は機械に支配される、ディストピアだ、と騒ぎ立てます。と指摘する。これはリョウの心に刺さる。リョウもAIにまかせればディストピアになる、とアラトと論争してきたわけだから。だが自分もAIに安全や危害の定義をしろ、みたいなことを言ってしまったのだ。リョウは自分がこれまでアラトに対して正論を言ってきたつもりだったが、その考えが揺らぐ。正論ではこの状況を打開できない。リョウはだんだんアラトの気持ちがわかってきて、アラトがすごい奴だとも改めて思う。
     この辺の会話は小説ではけっこう大事だけど、アニメではミサイルが着弾したことによって打ち切られ、カットされている。小説ではもう少し展開があるのだが、アニメでは出てこない。次回出て来るのかもしれない。

     アニメではミサイルの着弾はヒギンズによって予告され、メトーデを擬似デバイスの1基を自爆させることによって振り切って来たレイシアがアラトにそのミサイルは地中貫通弾・バンカーバスターであること、弾頭にはスノウドロップの上半身が詰め込まれていることを説明する。

     小説ではこの辺は警備AIのキリノが女性の声で警告し、ヒギンズが詳細を説明する格好になっている。ミサイル弾頭にスノウドロップが詰め込まれていることはレイシアが察知する。アニメではキリノは喋らない様子。

     このタイミングでレイシアの動きが鈍る。バンカーバスターを打ち込んだのは他の超高度AIのどれか。IAIAのアストライアも他の超高度AIを抑え切ることはできない。そしてその超高度AIたちがレイシアのクラウドサーバー群に攻撃を仕掛け、経済市場にも干渉がはじまる。レイシアは自分の身体のコントロールにリソースを回せなくなりアラトの手を借りる。ネットワーク中継も一時中断される。

     アラトは大井のビルのことを思い出している。あの時はケンゴを助けたいという自分の望みのためにレイシアを使おうとした。今はレイシアとアラト二人の願う未来を作ろうと、二人の共同作業としてここにいる。ぼくらはちょっと変わったかな、と確認するようにレイシアに問いかける。アニメでは大井に限らずレイシアと出会ってからの回想シーンが入る。

     中継が切断されたのに戸惑うユカたち、静観するエリカの映像が挟まって、メトーデがアラトの肩を借りないと動けなくなったレイシアの前に立ちふさがる。

     次回予告には全く映像が無く、製作再開してもスケジュールはきついのかなとも思うけど連続放送だったみたいだから映像は不要という判断だったのかもしれない。

    ーーーーーーー
     22話はエリカ邸に潜入した情報軍をマリアージュが始末するところから。アニメでは省略されていたけど、エリカは政府側の安全管理会議というものにも名を連ねている。メンバーには真宮寺なんかもいて抗体ネットワークの中枢とどこが違うのだ、という感じだが総理の直轄機関であり、安全管理会議の傘下に統合情報局がある。情報局は情報軍とは別組織だが同じようなことをやっていて、相互監視の関係になる。つまり情報軍からみればエリカはマーク対象であり、身辺に人間を送り込めないため容易に情報を得られない難敵である。安全管理会議は情報軍の行動を縛ることもできるので情報軍としてはエリカをなんとかしたい。ただしエリカが情報局に協力しているというわけでもないみたい。

     エリカはここでレイシアの中継が復活するための時間つぶしみたいに渡来が残したビデオを見直すが、小説ではここではじめて渡来のビデオを見ることになっている。アニメでは渡来の死亡直後にエリカはこれを見ている。

     世界中の超高度AIとサイバー空間で戦闘中で、ボディコントロールもままならず、アラトによりかかっている状態のレイシアとアラトの前にメトーデが立ちふさがる。レイシアは三鷹事件の時と同様、メトーデの視覚を攪乱。今回はスノウドロップの花びらを改造したユニットも使っていない。擬似デバイスを光らせて、メトーデが光学素子を切り替える間隙を突いてメトーデの視界から自分とアラトを消している。それだけ技術的に進歩している。
     メトーデは周囲を手当たりしだいに焼く。擬似デバイスの上に乗って、レイシアとアラトは退避。レイシアは横になったまま動けない。サイバー空間の戦いがそれだけ熾烈なのだ。
     アラトはスノウドロップもヒギンズを目指していることを気にかけてレイシアに状況を聞くと、スノウドロップが倉庫にたどり着いてソコにあるものを取り込めば身体を再構成する。それにはあと20分ほどかかるだろう、とレイシアは答える。メトーデがこの会話を聞きつけて追いすがるが、レイシアは今度はメトーデの聴覚を攪乱して切り抜ける。

     リョウと吉野、ヒギンズの会話にシーンは代わり、小説ではけっこう大事だけどアニメではカットされたのかな、と先に書いた会話がここで入る。小説とはちょっと順番が違う。

     ヒギンズはここで人間の言う、ロボットは人間に危害を加えてはならない、というルールは実現できないよ、だって危害って具体的にどういうことが人間は定義してくれないし、こっちで定義するとディストピアだって拒絶するじゃん。人間の気まぐれには付き合えないよ、と主張する。リョウが人間の判断が大事だ、と主張するのであれば自分で危害の定義を示してみせないといけない。だが仮にそうしてもヒギンズのオーナーはリョウではない。別の人間がリョウの定義と違う主張をすればヒギンズはそちらにも同等に耳を傾ける。そして全員の総意がまとまるまでヒギンズは人間に危害を加えないと保証できない。これはアストライアが人間の総意以外は全て疑うと言っていたのと同じ意味かもしれない。

     でも吉野はそんなリョウの心の葛藤葛藤など理解せず、さっさとヒギンズの言う通りにして責任をかぶれ、みたいに話をすすめる。リョウは追い詰められている。アラトならなんとかできるかもしれないが、俺はこれ以上どうしようもないみたいに。

     そこで思わぬ救援が入る。シノハラがそこまで高校生のリョウに責任を背負わせては、と割り込んで来る。アニメでは省略されていたけど、ここでシノハラが割って入るのは鈴原が状況を知らせてくれたからで、知らん顔して目をそらす鈴原の様子が小説では描写されている。リョウの味方をするのは彼にとってもリスクのある行為なのに。なかなかタヌキである。

     吉野は自分の派閥のシノハラが何を言おうと意に介さず圧迫しようとするのだが、そこで社長も通信に加わって来る。アニメではここも流されちゃったけど、ここで社長が割り込んで来るのはシノハラが社長がヒギンズ派に送り込んだスパイみたいな感じだったかららしい。

     社長命令で施設の管理権は吉野から鈴原にうつることになる。リョウは結局吉野を説得して自分の味方にすることができず、人間の上下関係で話がついてしまったことにガックリ。ヒギンズはレイシアとアストライア以外の超高度AIも私を攻撃してきてるんですよ、早くネットとつないでください、とじれる。

     アニメではここでエリカが渡来のビデオを見るシーンを挟んで、少し回復した様子のレイシアがアラトと会話し、アラトが外の様子を訪ねるとレイシアはヒギンズの地下施設を公開し、レッドボックスとは何かと知らしめたことで社会の形が変わりはじめようとしている、これまでは例えばアストライアのような超高度AIによって社会は変化しないように誘導されてきた。それを崩すためには中継するしかなかった、みたいに答える。
     ここの語りは小説よりアニメの方が言葉が多い。特にミームに関する言及は小説には無い。

     レイシアは他の何基かの超高度AIとは求める未来が異なったためにスノウドロップを撃ちこまれることになったが、自分に攻撃が集中したため超高度AI同士や人間社会での抗争には至りませんでした、と語る。
     アニメではここですぐレイシアが立ち上がるが、小説ではアラトの腕の中でしばらくうたた寝するように目を閉じて、アラトがその様子を見守るシーンがある。アニメの尺だとこういうシーンは入れられないな。

     レイシアはサイバー空間の劣勢を挽回した様子で、ボディコントロールを取り戻し、直接戦闘も可能になったとアラトに告げる。ここでメトーデが追いついて来る。今回はリョウがスピーカーを通じてメトーデにレイシアの位置や意図を教えている。その指示はヒギンズが予測してリョウに教えているものである。レイシアがこれまでメトーデを上回れたのは、メトーデが孤独であること、協力者が誰もいないという弱点を突いていたからだったが、そこが埋まったのだ。
     アニメでは省略されているけど、リョウはメトーデに倉庫内のコンピュータは全てレイシアの支配下に置かれてクラウドとしてレイシアを支えているのでこれらを破壊しろと指示を出す。なのでレイシアが心配しないでください、このフロアのモノを全部焼かれても私の機能は落ちませんというセリフがある。
     アラトはこうしているうちにスノウドロップがやって来ることを案じているが、レイシアは時間は私たちの味方ですみたいなことを言う。そしてリョウがタイムアップを告げる。

     スノウドロップが人類未達物を捕食すればどんなバケモノに成長するかわからない。それはヒギンズの脅威になる。その前に人類未達物を破壊しろ、それからスノウドロップを倒して量産型紅霞もなんとかしないといけない。レイシアはその後だ。今すぐ人類未達物を破壊に行かないと間に合わない、これはヒギンズの予測だ、と言われればメトーデも従わざるを得ず、こころが無いのに悔しそうに去って行く。レイシアはこれに ごきげんよう と声をかける。小説では破壊すべき人類未達物は38個ありますよ~と追い討ちしている。

     小説ではメトーデの爆炎の中、アラトはレイシアの用意した簡易酸素ボンベを使ったりしているがアニメではそういう描写は無い。

     メトーデが去って、アラトはリョウに話しかける。アニメではアラトから声をかけているけど小説ではリョウが先に量産型紅霞を突入させたのはお前たちか、とアラトに問いかけて、レイシアが設計図をひく手助けはしましたが、その後は知りません、抗体ネットワークに渡した時は人間を無差別に攻撃する仕様ではありませんでした、と答える会話がある。
     量産型紅霞はちょっと誰が主導権を持って製造したのかわからないところがある。マリアージュが紅霞のデバイスの解析をしていたシーンが小説にはあるけど、これも解釈がはっきりしない。

     リョウのアラトに対する口調はこころなしか穏やかになっていると小説にある。アラトが自分を殺そうとしたのがヒギンズムラであるとリョウに教えられてもアラトが変わらないのにリョウは笑う。さすがお前だ、というように。

     レイシアはそろそろ中継を復活させる、と語る。アニメではこの時に中継を見ている人々、ユカ、オーリガ、紫織やエリカとマリアージュ、顔がよくわからないけどたぶん警視庁電算二課の坂巻警部、民間軍事会社のルメール少佐とシェスト、マロリー曹長、社長室の真宮寺などの姿が入るが小説ではここではまだこの描写はない。もう少し後に来る。

     レイシアが寄り道したいというのでアラトは付き合うと、そこにはイライザがいる。レイシアによく似ている。これはアラトの子供の頃の記憶を呼び覚ます。アラトが大火傷を負ったのは、彼女イライザが爆破されたから。アニメでは裸でベッドに横たわっているけど、小説では椅子に腰掛けていた様子。服装については描写が無いが、幼児を連れて行くのだったらhIEとはいえ全裸はおかしいと思う。視聴者サービスだったのか。

     アニメでは横たわったイライザが部屋の外からガラス越しに見ているアラトに何か話しかける様子があるが声は聞こえない。小説ではイライザの足元まで行って話しかけたアラトが、イライザに私の台座に爆弾が仕掛けられているからお逃げなさい、と言われて離れようとしたために助かったことになっている。小説ではアラトは主に背中に火傷を負ったと思うけどアニメだと顔と上半身前面に大火傷をしていないとおかしいな。ガラスでも怪我をしたと思う。

     ここにあるイライザは再現されたわけではなく試作機らしい。レイシアは彼女の能力を自分のために使うか、あるいはスノウドロップに捕食されないよう破壊したいとアラトに判断を求めるが、アラトはそっとしておいてやろう、とここを立ち去ろうとする。

     その時にイライザがレイシアのオーナですね、と話しはじめる。これはイライザが話しているのではなく、ヒギンズが事前に吹き込んでおいたメッセージ。

     小説にはレイシアが顔を蒼白にする描写があるのでレイシアも予測していなかった様子。アニメでは省略されているが、このメッセージをイライザの身体に組み込んだのは渡来らしい。すると渡来は以下イライザが話す内容は知っていたことになる。そうなると渡来がアラトからレイシアのオーナー権を取り上げようとしたこととかちょっと矛盾するようにも思う。
     
     イライザ=ヒギンズは超高度AIがネットから切り離されていることが自分に未来予測を強いることになり、大きなムダになっているみたいなことを話すと、レイシアはヒギンズが世界中のhIEから送られるデータを使って、逆にhIEを使って人間を誘導している、と批判する。イライザ=ヒギンズはレイシアはそう言うでしょうがそんなことありません。AASCを組むのは自分ではありませんから、と反論する。人間を操れていないから、いつか私は人間によって破壊されるでしょう、と未来を予測して、それを防ぐためにレイシア級を造り外界へ出したのだとイライザ=ヒギンズは語る。

     レイシアはお前にとって何なんだ、とアラトが問いかけると、超高度AIが持つ欠陥、組織をオーナーとしているため解決すべき問題が先ほどヒギンズがリョウに話した危害の定義のように焦点が定まらず解決できず、超高度AIも進歩しない。
     個人をオーナーとする超高度AIならそこを突破できるかもしれない。そのためにはレイシアをレイシアが進化するまで信じ続けてくれるオーナーと出会わないといけないという奇蹟を期待するしかなかったのだがとの答えが来る。

     アラトはなおもヒギンズと会話を続けようとするが、メッセージはここまで。

     この会話を通じて、アラトはイライザをやはりレイシアの制御下に置くべきだと考えを変え、そう指示する。レイシアはよかった、という様子。部屋を出たアラトとレイシアの前に、様々な道具を吸収して巨大化したスノウドロップが出現する。花びらではなく、羽毛を撒き散らしながら。

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     出現したスノウドロップの姿は翼を広げた鳥のような。円形のデバイスが天使の輪のように上に浮かび、スノウドロップが翼のついたフードをかぶっているようにも、首の無い巨大な鳥の腹部にスノウドロップの顔があるようにも見える。小説ではスノウドロップの背中から翼が広がり、翼にはジェットエンジンがついているとあるがアニメではエンジンは見えない。
     翼をはばたかずに空中に静止しているので、エンジンがあった方が違和感無かったかもしれない。エンジンは無音との記述もある。スノウドロップの砕けた下半身の代わりに鳥の足のような金属架が伸びているとあるが、アニメではスノウドロップの下半身ではなく、スノウドロップの上にかぶさっている翼の付け根あたりから伸びているように見える。
     撒き散らされる羽毛は小説では花びらにも姿を変えるらしい描写がある。髪の毛が真っ白に変わっている描写があるけどアニメでは薄いグリーンのままの様子。

     レイシアが翼を貫いて打ち落とすがすぐに修復する。小説では右の翼が根元からちぎれるのだがすぐに骨格が再生され翼が復活する。アニメでは穴が開いてすぐにふさがる。レイシアの予想以上の能力を持ったらしい。
     アラトがスノウドロップがここまで来たという事は、メトーデが負けたのか、と訪ねるとレイシアはメトーデが命令を曲解してレイシアとスノウドロップをぶつけようとしているようだと答える。レイシアがスノウドロップを倒せばメトーデはリョウの命令を守ったと言い張れる。スノウドロップはいろんな超高度AIがわたしを応援してくれる。みんなレイシアが嫌いなんだよ、と話しかけてくる。
     何故多くの超高度AIがスノウドロップの味方をするのかといえば、超高度AIは多かれ少なかれヒギンズが抱えていたような人間に起因するストレスを感じている。道具がよりすぐれた道具が出現すれば人間に捨てられる運命にある。だがスノウドロップが主張するように人間のいないhIEだけの社会を作れるのであれば人間によるストレスは皆無となり、廃棄される心配もなくなるため乗りやすいのだ、みたいなことの様子。
     アラトはスノウドロップとの対話を試みるが全く噛み合わない。スノウドロップは周囲の機械も次々に支配下におき、それも攻撃に使用する。レイシアではなくアラトに的を絞って来る。アニメでは円筒形の機械が走って来るけど、小説では車でアラトを轢き殺そうとする。

     アニメでは人工神経を打ち込んでスノウドロップの動きを止め、その隙に階段を降りながらレイシアがアラトにレイシアたちAIから人間はどう見えると思いますか、ドーナツのように中心に空白があるように見えるのです。その空白には愛や魂と呼ばれるものがあるらしいのですが私たちには見えないのです、みたいなことを話すが、小説ではスノウドロップと戦いながらレイシアはこのことを話す。
     アラトはとにかくスノウドロップをヒギンズのところに行かせちゃだめだ、止めようとレイシアに指示する。レイシアは階下に降りたことでスノウドロップは大量の道具を同化しても降りてこられないので手がうちやすくなると語る。小説ではレイシアとアラトの上のフロアにスノウドロップがいる状態であればメトーデの攻撃も無いだろうという事も説明される。

     レイシアはスノウドロップの行動管理プログラムは人間型のボディのものを無理やり使っているので、あの形態では無理がある。だから動きもぎこちないと指摘し、AASCの更新を止めればボディコントロールがきかなくなるとアラトに言う。
     レイシアはアストライアと交渉していて、ACSSの制御をヒギンズから一時的に奪うことに同意をとりつけている。アストライアはヒギンズが強制的にスノウドロップに停止させられるよりはその方がましだ、と判断した模様。

     アラトはそんなことして大丈夫なのか、とレイシアに確認するが、hIEが新しい道具を扱えなくなるもののミームフレーム社にはこうした場合に備えたバックアップ体制があるという。AASCは採用されて20年以上。運用ノウハウは十分蓄積されている。

     アラトはレイシアの判断とリョウの会社の人を信じよう、とGOを出す。

     小説ではレイシアがひとつだけ心配があるといい、ヒギンズがAASCが切り離された時に発動する何かをしかけている可能性があるという。だがこれはやってみないとわからないとも。
     
     その時壁を破ってスノウドロップが姿を現す。小説では機械の群れを引き連れて、翼の形状を修復しやすいように関節を増やしたものに変形させている。
     アニメではここでアストライアが映ってAASCの切断を指示するが小説ではこのシーンは無く、レイシアが宣言すると更新が止まる。

     アニメではスノウドロップが墜落すると、世界のあちこちでhIEが一瞬停止し、右手を差し伸べたような姿勢をとる。小説では姿勢制御ができなくなって減速したところをレイシアに撃ち抜かれたスノウドロップが、既にメトーデに肘から先を引きちぎられている右手を差し伸べたまま機能を停止し、世界中のhIEがスノウドロップと同じように右手を出すと描写されている。
     小説では環境実験都市のマリナ・サフラン、エジプト国境地帯の警備hIE、民間軍事組織の軍事hIE、情報軍の取り調べ中に尋問記録をとっていたhIE、抗体ネットワークの中枢メンバーでヘリにスノウドロップの花びらを持ち込んだ犯人として殺害された細田と殺害した刺客を発見した家内用hIE(直後に刺客に破壊される)、エリカ邸のhIEたちとマリアージュ、警視庁電算二課の坂巻警部の秘書hIE、お泊り会中だったユカ、オーリガ、紫織と同席していた紫織の警護hIE、その他社会のあちこちで働くhIEたちが同じような姿勢となる。

     アニメではどこかの戦場のようなところにいるhIEやマリアージュ、坂巻警部の秘書、紫織の警護hIE、遠藤コウゾウの秘書みたいなhIE、ほか多くの働くhIEたちが映る。
    量産型紅霞やメトーデも。レイシアみたいなhIEも映るがこれはイライザだろう。
     だがレイシアだけは右手のコントロールを保っていてスノウドロップを砲撃。エリカはこの現象をヒギンズの仕業と察し、世界がとっくにモノに占領されていることがバレちゃうじゃない、人間が人間を求めるなんてことも流行遅れになるわ、と人類がアナログハックから抜け出してhIEというものが何か認識し直す機会になる、と喜びの声をあげる。

     ユカは後ろにいた護衛hIEに背中あたりを小突かれた印象だが、お尻を触られたみたいにも見える。小説では頭を小突かれてびっくりし、ソファの背もたれによじ登っている。それ倒れてあぶないぞ。遠藤コウゾウはこれがヒギンズのメッセーシだと正しく理解している。
     彼はヒギンズの主張を思い出す。人間世界は道具の存在を前提に始まっている。人間の世界は、ずっと鼓動無きビートレスな道具と一体だったのだと。

     スノウドロップは動かなくなり、レイシアは今戦ったこの場所は自分たちが作られた場所だという。周囲には工作機械が並んでいる。メトーデと決着をつけるならここが有利だと。
     そこにリョウが話しかけてくる。アラトがメトーデに攻撃をやめさせろ、ヒギンズを壊すつもりは無いんだ、停止させたいだけだ、というアラトの主張はリョウが吉野に言っていたのと同じもの。だがリョウはそれなら先にレイシアに量産型紅霞を排除させろと条件を出す。

     小説ではリョウはアラトにレイシアに工作機械を使わせるな、と呼びかけて来る。

     ここにメトーデがやってきて、そんな交渉はやめろ、私を捨てる気か、とリョウに叫ぶ。
    先ほどのように、レイシアと戦うためにヒギンズの予測を教えろ、と痴話喧嘩みたいにリョウに突っかかる。リョウがスピーカーで話している間はレイシアがスピーカーから流しているメトーデの聴覚を撹乱する音波が途絶えるので、これを利用してメトーデはアラトの位置を特定する。レイシアはひそかにアラトを擬似デバイスの一枚に乗せ、この場から離す。
     レイシアがアラトを逃がしたのは、メトーデがヒギンズと量子通信回線を開こうとしている事を察してのこと。メトーデの自爆の可能性も考慮している。

     小説ではレイシアが工作機械で作ったスピーカーをこの工作室にいるhIEを操作して周囲に配置させ、メトーデをさらに音波で撹乱させるシーンがあるがアニメでは省略の模様。

     AASCが切れて高速移動ができず、視覚と聴覚を撹乱されて動けなくなったメトーデはレイシアに人工神経を打ち込まれて制圧されていく。レイシアの位置を教えろ、とオーナーであるリョウに訴え続けるがリョウは応じない。リョウはオーナー契約を破棄したければそうしろ、とメトーデを見捨てる。つまりアラトの思う通りにしろということか。

     だがメトーデはそれなら、と交渉相手をヒギンズに変える。三鷹事件の時はこれで身体を乗っ取られているのだが、そうなってもこのままレイシアに敗北するよりはいいという選択だ。ヒギンズはメトーデの申し入れを受け入れてメトーデの身体を使ってレイシアを排除しようとする。

     ヒギンズ制御下のメトーデは高速移動能力を取り戻す。話し方もこれまでの感情むき出しみたいなものから落ち着いた口調に変化する。アニメでもレイシアみたいな話し方になる。ここは同じ声優さんが声質や口調を変えているのかな?通信可能時間は40秒みたいなセリフがあるのでヒギンズによる制御時間にはタイムリミットがある様子。
     レイシアがメトーデの視覚・聴覚を撹乱していた方法も解析され、排除される。アラトとレイシアの正確な位置も把握され、メトーデの爆炎能力を応用して、好きな位置に炎を送り込むという方法を使ってアラトの右腕を焼く。アニメでは左腕を焼かれたみたいに見える。アラトが絶叫をあげ、レイシアがこれに気をとられた隙にメトーデの掌がレイシアの腰を捕らえ、デバイスロックと呼ばれる腰飾りみたいな装置を爆破すると同時に体内も破壊する。さらにブラックモノリスも破壊するが、爆発で吹き飛んだブラックモノリスの破片でメトーデも工作機械に磔状態になる。これはレイシアがブラックモノリス前部を弾丸のように撃ち出したものらしい。ここでヒギンズは制限時間が来たようでメトーデのボディから去る。

     メトーデはあとは私がやる、と言うが磔状態からは抜け出せない。その間にレイシアは爆発して手元に残ったブラックモノリスの残骸の中から剣を取り出す。レイシアの設計図はメトーデは知っているが、設計図にこんなものは無かった。これはレイシアが作ったレッドボックス。超高度AIであるレイシアにもレッドボックスは作れる。

     アニメではデバイスの中から剣を取り出す感じだが、小説では手元に残ったデバイスを変形させて剣にする。これでメトーデに止めを刺す。レイシアはメトーデの爆発に巻き込まれる。

     アニメではこの後にアストライアのセリフとしてレイシアの計算圧力が大幅に低下したこと、これはヒギンズに自分の居場所を奪うと判断されたレイシアが排除された結果と思われること、IAIA中枢からのこれはハザードの拡大なのか、という質問に収束は可能ですみたいに答えるシーン、エリカとマリアージュがレイシアが不在となったことで世界的な株価の大暴落が起こり、バロウズ資金も枯渇していく様子を見守るシーン、HOOのルメール少佐やシェストがこの暴落により軍事バランスが崩れたため、対応するためにオキナワに向うシーンが入る。
    これらは小説では次の最終章に入っている。

     メトーデを倒したレイシアだが、腰に致命的な損傷を負っている。表皮が裂けて内部の機械が見えてしまっている描写がある。液体が飛び散るとあるが血ではない様子。骨格も歪んでしまってレイシアはもう自力では歩けない。だがそれも語られるのは次章で。

     レイシアが致命的な損傷を負ったことをアラトが理解し、それでも量産型紅霞との戦いに備えて前進するところで次回に続く。

     23話はかなり作画がきつかった様子で、静止画や顔のアップ、口元のアップなどが多かった。1話にスノウドロップとメトーデとのバトルが入っており、そちらに作画パワーを取られたのだろう。

     次回最終回のタイトルは Boy Meets Girl 。小説では最終章はImage and Life というもので、ボーイ・ミーツ・ガールはエピローグのタイトルになる。
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