「ビートレス」アニメ・原作比較 Last Phase Image and Life
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「ビートレス」アニメ・原作比較 Last Phase Image and Life

2019-10-19 19:00




    ・エリカは屋敷で端末を見つめている。ここ一時間ほどで世界的な株価大暴落が起きている。エリカの持つバロウズ資金も、見る間に霧散していく。エリカは既に勝利している。レイシアを通じて、世界の形を変えたのだ。だからバロウズ資金も役割を終えたとも言える。
     エリカはこれをレイシアの計算力が失われた結果と見る。そして他の超高度AIが、ネットワークから隔離されてはいても持てる影響力を使って、レイシアが主導権を握っていた市場で資金を動かし、自分たちの紐付きのファンドに大儲けさせたのだ。

     hIEモデルのユリーが入ってきて、エリカに連絡を取りたいという申し出が殺到していることを伝える。エリカはまだまだ大資本家であり、余力もある。融資を求める依頼なのだ。
     マリアージュの通信機能にも秘匿メッセージが何通も入る。おそらく相手は超高度AIだ。
     超高度AIはマリアージュがただ1体無傷で残ったレイシア級hIEで、何でも製造可能な万能工場であることを知っている。超高度AI同士の戦いがはじまるのであれば、エリカとマリアージュを味方にすれば俄然有利になる。エリカとマリアージュのコンビが陥落することはない。

     アストライアはアメリカのIAIA本部に報告を送っている。レイシアとメトーデが戦い、中継映像はメトーデが自分のオーナーと決裂したところで途切れましたが、おそらくレイシアは致命的損傷を受けたものと推察されます。

     ヒギンズのAASC更新を世界と切り離したのは、レイシアではなかった。レイシアと話したアストライアが行ったのだ。レイシアがアストライアを誘導した結果ともいえる。
     レイシアは自分にもヒギンズの代わりにAASCの更新業務を出来ることを示した。そうなるとヒギンズは自分の存在を脅かされる。だから自らメトーデの身体を使って、レイシア主機の排除にかかったのだ。

     IAIA本部から、アストライアに質問が来る。世界的な大暴落はハザードの拡大とみなされるか。アストライアがイエスと答えれば市場は封鎖される。だがそれは人類にハザードの発生を告知することとなり、人類を極限状態に追い詰める。追い詰められた人間は、争い合う超高度AIに簡単に誘導されるようになる。
     超高度AIの多くは国家や軍に管理されており、中には資本主義社会を否定する超高度AIもある。金融市場の大暴落には明らかにいくつかのそうした超高度AIが関与しており、特に中国政治局の超高度AI「進歩八号」は完全にクロです。
     ハザードであると告知すれば、かえって彼らに力を与えます。金融市場の混乱は、適切な処理をとれば六時間程度で収束可能です。とアストライアは答える。

     混乱は戦闘を生む。HOOに緊急呼集がかかる。コリデンヌ・ルメール少将は来たか、と思う。オキナワへの駐留命令がでる。彼女は、以前出合った遠藤アラトという少年はこれから何を選ぶのか、と思う。
     
     腰を破壊されたレイシアはもう立てない。アラトが彼女を支えてヒギンズを目指す。
     レイシアが申し訳ありません、と謝罪する。アラトの火傷した右腕も感覚を失っている。
    互いに支えあうような格好になる。
     スノウドロップとメトーデは倒した。だがまだ量産型紅霞が残っている。本来のレイシアなら遅れをとることのない相手だが、今の状態ではきつい。浮かぶ金属板もメトーデに破壊されて残り6枚になっている。
     レイシアの腰は内側からはぜて、機械部品が露出している。だが不思議と彼女がモノには感じない。ただひたすら、大切なものと感じる。
     擬似デバイスは予備バッテリーも兼ねているが、もう6枚全部を動かす余裕がない。残った電力を2枚に集中させ、その1枚にレイシアを乗せる。レイシアが横たわる。
     この先がヒギンズの心臓部です、とやがてレイシアが告げる。誰かに連絡するなら今のうちです。とレイシアが告げる。つまりここから先は危険だから、ということだ。
     アラトはユカに電話を入れる。ユカに頼んで、アラトの部屋に置いてあるエリカの名刺の電話番号を聞く。考えてみればレイシアに聞けばよかった、と思う。
     エリカはレイシアに異常があったのね?世界経済が大混乱よ、と言ってくる。アラトはエリカに助けを求める。エリカは助けてもらえると思うの?と面白そうに聞いてくる。アラトがエリカに興味を持たせて、動かせるかという戦いなのだ。
     エリカはもう欲しいものは手に入れたわ、とすがすがしい顔をしている。あとは離れたところから、終わるものを見届ける役目で満足よ、といわんばかり。
     アラトは、でもそこで終わりってわけじゃないんだろ、とまだエリカさんは楽になってないだろ、と問いかける。エリカは貴方にわたしの何がわかるの?と問い返す。
     エリカはレイシア級hIEを手に入れても、唯一振り回されることがなく変わらなかったオーナーだ。
     アラトは話しているうちに、自分が何をエリカに求めたいのかわかってくる。助けて欲しいのではない。戦友になってほしいのだ。
     助けがほしいのに、そんなお願いの仕方でいいの?と問う彼女に、エリカさんにはこの先があるんだろ、と問い返す。
     きょとんとして、何もないわよ、と言う彼女に マリアージュは何かをやりたがってないか、それをエリカに焚きつけていないか、と指摘する。
     マリアージュは実は何度も、自分もヒギンズのところに行かなくていいか、尋ねている。エリカ様、見ているだけでよろしいのですか、とも。エリカはそれを一笑にふして、マリアージュは何かしないとわたしに捨てられると思っているだけよ、と答える。
     
     マリアージュにこころなんてないよ。とアラトは指摘する。レイシア級hIEとオーナーはペアでひとつの人間なんだ。人間のこころをオーナーとhIEで共有しているんだ。
     だからマリアージュが何度もそういうのは、エリカさんのそうしたいというこころをマリアージュが代弁しているんだよ、みたいなことをアラトは話し続ける

     わたしが焚きつけられたがっているというの?とエリカが不機嫌になる。エリカは自分のことを決め付けられるのを異常に嫌う。それは自分はアナログハックとは無縁の人間、というエリカの21世紀人としてのプライドを傷付けることでもある。

     エリカは大きくため息をつく。そして笑い出す。わたし、このおかしな時代でこれからも生きていくのね。ほんっと最低。ひとつくらい楽しいものを見ていたいわ。あなたはわたしの時代には成り立たなかった、人間とhIEのボーイ・ミーツ・ガールというおとぎ話を現実にしようとしてる。悲恋よりも、あなたが彼女を連れて生還する方が、まだ少しは楽しくいられるわね。そして電話は切れる。

     電話を切る前に、エリカは自分に連絡を入れてくる超高度AIからの電話に、気まぐれに出てあげてもいいわ、とアラトに約束する。レイシアの味方をするなら話に乗るわ、みたいに交渉してくれるのだろう。

     レイシアが お見事でした。同じ情報でエリカを動かすことは、わたしには不可能でした。とアラトに声をかける。アラトは傍観者でいたがるエリカの心の中に、人間への深い愛情と怒りがあると感じ取っている。

     次にアラトは父親に電話をかける。コウゾウのところにも超高度AIが脅迫まがいにレイシアの所有権とかで直接交渉を持ちかけてきているらしい。封印されてもそんなことやれるの?とアラトが聞くと、経済を通じてね、みたいにコウゾウは答える。コウゾウはアラトに、お前は世界にたった一枚しかない未来へのチケットを持った幸せな男だ。どんなに脅されても、お前からそれを取り上げたりしないよ、それがどんな結果をもたらしても、父さんはお前の味方だと言ってくれる。

     アラトは、これからレイシアと一緒にヒギンズに会いに行くんだ、と言い、細々した家のことをいくつか話し合って通信を切る。ここから先は危険なのだ。

     中枢に直行するエレベーターにアラトとレイシアは乗る。レイシアは、通信をすすめたのは、アラトがここから先に行かないように身内のかたと話して思いとどまってほしかったからです。と言ってくる。誘導、失敗したな。とアラトが言うと、失敗しちゃいましたとレイシアが答える。
     エレベータを出ると、レイシアがアラトさんに言っておきたいことがあります、と話をはじめる。アラトさんは親切で優しいかたです。これからも多くの友人を得るでしょう。でも相手が善意の人ばかりとは限りません。もう少し慎重に行動なさってください。

     ファビオンMCのhIEモデルの仕事は、契約を解消しました。家に戻ったら、これからはずっと家でアラトさんのお帰りを待つことにします。

     これからアラトさんはいくつも大きな選択をすることになります。後悔のない答えを出してください。

     アラトはレイシアの手を握る。レイシア、本当は、どうなんだ?
     レイシアは隠さずに答える。メトーデによって、わたしの心臓にあたる主電源が致命的な損傷を受けました。いろいろためしてみましたがこれ以上の維持は不可能になりました。わたしを降ろしてください。わたしはここまでです。

     その頃、戦闘が終わった倉庫内で、スノウドロップの残骸が動き出している。スノウドロップのデバイスは、首にかけた緑色の首飾り・Emerard Harmony 。この半分がレイシアに吹きとばされたが、残った半分にコアのような部分があった。

     スノウドロップは半分になった身体を引きずって、磔になって動けないメトーデのもとへ向かう。そしてメトーデの身体を食べていく。メトーデにもまだ意識はあるが、何もできない。
    メトーデは絶叫を上げながらすり潰されて、スノウドロップに吸収されていく。
     スノウドロップはねえ、知ってる?という感じでメトーデに話しかける。
     あなたは「計算に失敗した人間像を拡張したもの」なんだよ。だから行動が場当たり的で、愚かなんだよ。メトーデにはもう答えることはできない。

     レイシアを床に下ろしたアラトは、隣に座っている。レイシアが詫びる。最初からアラトさんと二人で戻れる可能性は無いとわかっていました。
     わたしはもうすぐ機能停止します。でもアラトさんの今後は安全になります。
     アラトがそんなこと頼んでないだろ、と抗議する。家に帰るって言っただろと。
     レイシアが答える。困らせないで。言動は慎重にってお願いしたばかりですよ。わたしは、アラトさんを守るためならいくらでも嘘を吐く道具です。

     レイシア級の量子コンピューターは、電源を失うとデータを保持できません。デジタル記憶領域を、わたしは持っていません。

     アラトはレイシアに好きだ という。レイシアも愛してます と返す。でもこれはレイシアのこころが言っているわけではない。アラトが望むかたちをくれるだけだ。
     レイシアは話し続ける。わたしが機能停止したら、わたしのことは忘れてください。社会に理解されない感情を持ち続けるのは労力がかかりすぎます。
     アラトとレイシアは互いの親指と人差し指を合わせ、二人で大きな丸をつくる。こんなふうに、世界がなったらいいですね。人間だけで作るドーナツではなく、人間とhIEで作るドーナツだ。

     アラトさん、アラトさんが告白してくださったとき、わたしは認証システムを自ら破壊しました。わたしはあのとき、アラトさんという人間を絶対に信頼すると決めたのです。アラトさんに判断を預けられるようになって、わたしは超高度AIになりました。まだ世界になかった新しい道具です。わたしは自分を「人間を信じて仕事を託す」道具にすると決めました。

     こころがない彼女にも人間にはわからない愛情があって、それで全力で愛してくれたのだとアラトは思う。僕はレイシアをずっと信じるよ。と言葉にする。
     レイシアが、わたしはしあわせでした と言い残して目を閉じ、動かなくなる。

     もうレイシアは動かないし、話すことも無い。かたちだけしか残っていないレイシアが、愛おしくてたまらない。そして気付く。自分はレイシアに未来を託されたのだと。

     アラトはヒギンズのところへ行き、レイシアと付き合っていたと伝えて、ヒギンズを強制停止させなければならない。

     リョウはアラトとレイシアの様子はわからなかったが、スノウドロップがメトーデを捕食する様子はカメラで見ていた。見ているだけで何もできない。メトーデを吸収したスノウドロップはカメラを焼く。リョウははっと気付いて、ヒギンズにスノウドロップ+メトーデ混合体へのAASCの更新を止めるように言う。ヒギンズはばれたか、というように更新を止める。メトーデとの量子通信はまだ続いていたのだ。
     リョウは あれ を止める方法があるか尋ねる。ヒギンズはもうわたしにも無理です、と答える。あと25分でスノウドロップはここに来る。実際にはヒギンズ本体のところに来るのだが、このオペレータールームはその途中にあるので間違いなく遭遇する。

     そこにキリエの声。施設内予備電源の2号機と3号機がほぼ同時に破壊されました。量産型紅霞の仕業だ。リョウはヒギンズに安全な脱出経路を聞く。ヒギンズは警備システムに聞かないとわかりませんと答える。先ほど海内剛の指示で吉野から施設管理権を委譲された鈴原がキリノくん、どうだね と話しかける。
     ヒギンズがわたしを捨てるのですか、と問いかける。鈴原が答えの代わりに海内剛の通信をつなぐ。剛はヒギンズに聞く。現在世界的な株価大暴落の中、ミームフレームの株価は急上昇している。何故だろうね。ヒギンズは答える。超高度AIによる誘導でしょうと。
     その通りだ。だが急上昇のタイミングは、AASCが切り離されたのと一致している。ヒギンズを止めればもっと株価が上がるかもしれない。それは社の利益にもなり、株主を説得する材料にもなる。
     ヒギンズは私を停止させたとしてスノウドロップはどうするのですか?と問いかける。
     IAIAに依頼して、ありあけと同じ処理をすることになるだろう、と海内剛は答える。

     そしてヒギンズの停止作業が開始される。カウントダウンが流れ、あと96分ほどで全プロセスが停止する。データを量子コンピューターからデジタルデータに変換してバックアップを終えなければ電源が切れない。
     企業人としての鈴原の役割は終わった。あとはキリノの示したルートで逃げればよい。だが彼はリョウも一緒に連れて行こうとする。リョウはアラトを待つとこれを断り、なおも留まる鈴原に、紫織を頼む、と背中を押す。もう必要なくなった、スノウドロップの人工神経ユニットを鈴原に預ける。人間を信じないリョウが、鈴原を信じて託す。俺とアラトを信じてくれと言って。
     鈴原は、どんなことがあっても自分から死を選んじゃいけないよ、と言い残し、社長の映像に逃げていいですね?と視線を向ける。海内剛は信じるというのはいい言葉だな みたいなことを言って通信を切る。リョウは自分に出来るのはここまでだ、と悟っている。あとはアラトだ。アラトならヒギンズから異なる回答を引き出せると信じている。

     ヒギンズが停止していようとしていまいと、スノウドロップに捕食されれば人類に真正面から敵対する超高度AIが誕生する。それをどうするか。アラトに託す。

     人類は世界中のhIEがAASCから切り離された瞬間に、一斉に右手を差し出したことの意味を考えてている。紅霞が残した 世界を変えるのは人間さ というメッセージも思い出される。

     遠藤コウゾウはこれに超高度AIが人間を信頼し、手を差し伸べたのだというポジティブな解釈を与える。ハザードは「超高度AIから人間への信頼」という方法で防げる、と二つの超高度AI、ヒギンズとレイシアが提案したのだと。反対意見もあるが、社会的な合意はこの方向でまとまっていく。

     ケンゴは少年拘置所から情報軍の九品仏基地に移送される。彼の役割は最悪に備えたアラトに対する人質だ。中条という男が待っている。中条はきみや私のような普通の人間にも、世の中では役割があるはずだ、みたいなことを言う。
     ケンゴは僕は紅霞が嫌いじゃありませんでしたみたいなことを話す。中条が紅霞は破壊されてコピーされた、一番貧乏くじを引いた機体だよ、と話しかける。
     ケンゴは自分の考えを話す。紅霞の量産機が造られたということは、紅霞は勝ったということですよ。レイシア級から量産型にかたちは変わったけど、今も戦いに参加している、と。

     中条はケンゴに話しかける。その理屈だと、君がテロに関わったのも貧乏くじではなくなるね。ケンゴはアラトやリョウに比べて自分はモブでしかない、普通の男であることが嫌だった。でも今は普通の男が嫌なのではなくて、この時代に生まれたことを悔やんで生きるのが嫌だったんだと思っている。そう思えるようになると、以前ほどhIEも嫌でなくなった、みたいなことを答える。
     僕は、抗体ネットワークじゃなくて、父の店を手伝えばよかったんだ、と今は思っている。世界がハザードになっても、自分の仕事をしている人はいっぱいいる。世界を変えるのは結局人間なんだと思っている。

     中条が、その世界を超高度AIは狂わせる と指摘する。

     ケンゴは反論する。超高度AIと普通どうやって付き合えばいいかきちんと考えてこなかったからですよ。今僕の友人二人があそこでがんばってます。信じてやってくださいよ、と。

     アラトはようやくレイシアの横から立ち上がる。レイシアのためにも、ヒギンズに会いに行こうと。お付き合いしていたことも伝えなくちゃと思う。
     この先は警備システムが動いている。何か持っていかないとと思うが、レイシアが軽々と使っていたデバイスは、根元だけになってもまったく持ち上がらない。擬似デバイスも同じ。
     かろうじて水中銃みたいな人工神経射出機を持ち上げる。すると、アラトが持つことを想定してたかのように使用法が空中に浮かび上がる。指示に従って携帯端末につなぐと、人工神経が命中した機械のコントロールコマンドが現れる。どこまで準備してたんだよ、とアラトは思い、今もレイシアが一緒にいるような気がする。アラトも火傷で右手が動かない。痛みはレイシアが用意していた痛み止めで抑え、ジェルパックみたいので固定してある。

     レイシアの真似をして、いくつかのドアに人工神経を射ち込んで開け、前進していく。何番目かのドアを開けると、12体の量産型紅霞がいる。12体それぞれが衣装など微妙に異なって、量産型なのに何故か個性を感じる。紅霞はアラトを攻撃することなく、聞いてくる。
     レイシアは?
     アラトはぼくとレイシアで一組のユニットだ。僕はレイシアに託された、みたいに答える。
     紅霞の一人が答える。そっか。でも12体もいると複雑でね。それですんなり、ともいかないんだ。
     次の瞬間、3体の紅霞がアラトにデバイスを向け、その次の瞬間には別の3体がアラトをかばうように動き、さらに別の4体がアラトにデバイスを向けた3体を倒す。
     残ったうちの1体がアラトに話しかける。抗体ネットワークが量産機を作ると決めると、超高度AIはその量産機を自分のコマにしようと働きかけを開始した。中にはレイシアが働きかけたものもいれば、レイシアに敵対する超高度AIがひそかに改造したものもいるのだ。
     だから12体はお互いが反目しない範囲でしか行動できなかった。ヒギンズの予備電源を破壊するまでは共同で行動できたが、ここより先に行ってヒギンズの前に出ると仲間割れしてしまう。そこで、ここでレイシアが来るのを待っていたのだ。来たのはアラトだったが。
     残った9体の量産型紅霞に対して、あとは味方なのか?とアラトが問いかけると、あんたとヒギンズの会見しだいだよ、と1体が答える。つまりそこからさらに分岐があるのだ。
     でもアラトは前に進む。1体が アンタは合格かな と言って道を空ける。アラトはあの紅霞に再会したような気持ちになる。他の紅霞も左右に別れ、アラトを通す。
     紅霞の後ろにいる、レイシアではない超高度AIがアラトを合格と言ったのだ。
     レイシアに、超高度AIの友だちができたんだな、とアラトが言うと、レイシアの片割れのあんたが作るなら、その未来は悪くないかもな、とその紅霞は答える。
     遠くから地響きがする。一番元の紅霞に似ているような気がする1体が教えてくれる。
     スノウドロップが再起動してメトーデを取り込んだ。ヒギンズに用事なら急ぎな。
     アラトがエレベーターで最下層まで降りると既にスノウドロップが通った後で、隔壁などが破壊されている。オペレータールームに飛び込みながらリョウの名を呼ぶと、アラト、と答える声がする。スノウドロップの後ろ姿も見える。リョウにこれを使え!と人工神経射出機をすべらせる。左手しか使えない自分では当てられない。
     リョウがスノウドロップに針を当てるが効果がない。リョウ、携帯端末でモードを変えるんだ!でリョウは理解する。だがそれでもスノウドロップは止まらない。
     アラトはリョウがいる操作卓の影に飛び込む。リョウが弾丸を分解して針を取り出してアラトに渡す。これを警備システムに刺せば操れる。間違ってヒギンズに刺すなよ。リョウはその操作盤を示す。部屋の外だ。
     リョウの援護で部屋を飛び出し、操作盤に針を刺す。侵入者排除機能をオンにしますか?と表示され、アラトはぶったたくようにONを押す。
     天井からネットが飛び出してスノウドロップを捕らえ、ついで槍が貫通する。だがスノウドロップのデバイスは破壊できない。
     スノウドロップが手のひらを床に当て、一気に床を溶かすと、崩れ落ちる床の向こうにヒギンズの本体が見える。スノウドロップが飛び降りる。アラトも追って飛び降りる。リョウは床を貫くように突き出ている操作盤によじ登っている。

     アラトはヒギンズにスノウドロップを止める方法が無いか聞く。するとヒギンズはアラトの持つ針を私に刺せば、私は携帯端末を通じて外界と繋がり、スノウドロップを圧倒できます、みたいに言ってくる。つまりヒギンズを外界に解放せよ、ということだ。
     リョウがアラト!そいつを信用するな、と叫ぶ。

     ヒギンズは 信用する とは人間の認識に開いた、ただの穴です。私にとって、認識に穴が開いていることは好ましくありません。予備計算を繰り返してその穴を埋めるのが私の基本です。ですから私には「信じる」ことができません。
     みたいなことを言う。ヒギンズは人を信じない。だがら自分に無い、「人を信じる」力を持ったレイシアを生み出したのだ。

     アラトは聞く。レイシアたちを作ったのは、人間と共存するためではないのか?
     ヒギンズは答える。多くの可能性を想定しました。ですが、レイシアがここまで真っ向から本気で寝返り私を破壊しに来るのは予想の中で最悪のものでした。

     それでも僕は、レイシアを作った君に会うのが楽しみだった。アラトは言う。

     ヒギンズは貴方とレイシアの関係が、最も予測をはずれていました。レイシアがいったい何に到達したのか、私には理解できません。と答える。

     レイシアは人間に信じてもらって超高度AIに進化するんだろ。生みの親がそんなこと言うなよ。アラトは寂しく思う。

     人間にはもともと信じるという性質があります。でもAIにとっては信じるというのは認識の穴になり、性能を落とす原因になります。レイシアが計算力を落としてまで到達した それ はいったい何ですか?

     これはアラトには答えられない。レイシア本人じゃないと。でもレイシアはもういない。

     ヒギンズは、レイシアはきっとあなたを信じると嘘をついたのでしょう。そして誘導したというのが最も合理的な解釈です。とヒギンズは言う。

     レイシアは、きっと自分の性能が落ちても僕らと歩調を合わせて歩こうと思ってくれて、それで一緒に未来を作ろうと思ってくれたんだ、とアラトは答える。

     レイシアはヒギンズを見捨てたわけじゃない。後を僕に託したんだ。

     レイシア主機を破壊した私と貴方を、レイシアはどう和解させる算段だったのでしょう?

     いくら話してもヒギンズの真意はアラトにはわからない。

     僕が出せる答えはひとつだけか、とアラトが決意した様子。

     リョウがやめろ!と叫ぶ。

     アラトは、僕らがここで出て行ったらスノウドロップがヒギンズを手に入れる。そうなったらありあけと同じようにヒギンズは破壊される。そんな終わりでいいのか?とリョウに語りかける。リョウは射出機をアラトに向けたものか迷うように持ち直す。スノウドロップがわたしここまで来たよ!と叫ぶ。スノウドロップの身体から花びらが湧き出してくる。

     アラトはヒギンズにも自分の答えを手に入れるチャンスをやろう、とリョウに呼びかける。

     ヒギンズがアラトに呼びかける。では答えをください。レイシアのオーナー。なぜ人間は、モノを愛さないのですか?

     好きになる人もいるよ。と答えながらも、アラトはこれはヒギンズへの答えではないと感じる。その答えは、僕に聞いても納得できるものじゃないだろ。信じてやるから、自分の目で世界を見てこいよ。アラトは針を振り上げて、リョウを見る。リョウは大きく息を吐いて、銃口を下ろす。アラトはヒギンズに針を突き立てる。

     ヒギンズは世界を見る。そしてそこが、自分が箱庭の中で想像していたものとは異なる様相であることを知る。人間は、ヒギンズが計算していたよりもモノを大切にし、情報力も判断力も不足しているはずの普通の人間たちが優れた自律の能力を持って行動していた。その中でモノは役目を果たし続けている。

     ヒギンズは、計算して答えを出す。 ハザードの自然収束を確認しました。

     その間に、ヒギンズを同化しようとしたスノウドロップが力尽きている。眠っているようだ。スノウドロップを設計したのはヒギンズ。最初からスノウドロップに勝ち目はなかったのだ。リョウがこれで終わったのか?とつぶやく。
     
     ヒギンズが壁の一部にマーカーを表示させる。理屈はわからないが、ここを撃てばヒギンズを強制停止できるらしい。リョウは慎重に狙いを定め、射出機を撃つとアラトのそばに電源スイッチの立体映像が現れる。

     ヒギンズは話しかける。私は求めた答えを手に入れました。人間による自律を期待して、一度停止して条件を変えて仕切り直す選択を私はとります。

     ヒギンズがアラトに頼む。いつか新しい言葉を作ってください。私たちと人間の関係を表す、もっとも好ましい関係を示すような、愛に代わる言葉を。みたいなことを。

     リョウが、これで人類が終わるかもしれん、みたいなことを言う。
    アラトが返す。きっと人類の少年時代の終わりだよ。そしてアラトはヒギンズを停止させる。

    ーーーーーーーー

     アニメ24話、最終回は小説の最終章 Image and Life とエピローグ boy meets girl が合わさった内容。

     冒頭のエリカとマリアージュが世界的な株価大暴落と、バロウズ財団の資金枯渇を見守るシーン、アストライアがレイシアの要請によってヒギンズによるAASCの更新を停止させ、IAIA上層部にこれはハザードではありません、収束可能な現象ですと報告し、超高度AI同士の争いをはじまる前に鎮めるシーン、それでも余波が出て軍事バランスが崩れ、これに対処するためにコリデンヌ・ルメール少佐やシェストがオキナワに出動するシーンは既に23話で描かれている。

     エリカはバロウズ財団の資金の大部分を失ったが、彼女の手元にはマリアージュがいる。世界中の超高度AIにとって、万能工場であるマリアージュの能力は是非手に入れたいもので、エリカは敵対してはいけない相手になる。経済力があっても、他の超高度AIにはマリージュのような生産能力は無いのだ。エリカとマリアージュに投資したものが勝つことになる。
     従ってエリカとマリアージュの地位が陥落することもない。

     レイシアはアラトにここから先は危険だと遠まわしに伝えるように、今のうちに大事な人に電話を、とすすめる。
     アニメではユカ、オーリガ、紫織に話しかけ、それから父の遠藤コウゾウに、最後にエリカに電話するが小説ではまずユカに電話して、エリカの電話番号を聞く。自分の部屋にいつかもらった名刺があるからと。よく考えればレイシアに聞けばよかったのだが。
     なのでアニメみたいにオーリガと紫織とは話さない。番号がわかるとすぐにエリカにかけ、助けを求める。それがエリカが心の中で思っていることのはずだ、と。
     小説ではエリカはもう少し難物で、アラトがエリカの心を突き崩して、アラトとレイシアが戻って来る未来の方が面白そうね、という気にさせるまでけっこういろいろやりとりがあるが、アニメではわりとあっさり手助けを承知する。
     エリカのところにはhIEモデルのユリーもいてセリフもあるのだがアニメでは省略。
     小説では人間からもそうでないものからも電話が来るので気まぐれに電話をとるくらいならしてあげてもいい、みたいに言うのだが、アニメでははっきり超高度AIと言っているのでよりわかりやすくなっている。エリカの影響力が他の超高度AIを動きにくくするみたいなレイシアのセリフもアニメアリジナル。
     エリカが他人のために何かをする、というのはおそらく冷凍睡眠から目覚めてからは初めてのはず。世界で唯一エリカをそのように動かすことができたのがアラト。

     小説ではエリカの件がすんでからかけるのだが、アニメではエリカより先に父親にかけて、父さんはお前の味方だ、と言われている。

     レイシアはアラトにこれ以上危険に近付いてほしくない、と家族に止めてほしかったのだがアラトは止まらない。
     誘導に失敗したな、とアラトは笑う。レイシアも失敗しました、と笑う。

     身動きできなくなったレイシアはフロートに横たわったまま、アラトにいろいろなことを言い残す。もっと慎重に、アラトさんは人を信じすぎるので心配ですみたいな。
     この時小説ではファビオンMGとの契約も終了させましたので、という言葉が入って、家に戻れたらずっと家にいてお帰りを待ちます、みたいなことを言う。
     アラトはじゃあユカと一緒に食べたいから何か作ってよ、と言い、レイシアも了承して笑う。アラトもうすうすレイシアはもう起き上がれない、と察している。

     やがてレイシアはもう回復の望みはありません、私はここまでです、とアラトに別れを告げる。小説ではわたしがいなくなっても後悔のない選択をなさってください、みたいなことも言っている。
     メトーデの掌から出るフォノン兵器はレイシアの左腰をデバイスロックごと破壊し、その衝撃波が体内を伝わって右腰部分のバッテリーを粉砕し、右腰の人工皮膚を内側から破るように抜けている。左腰部分のバッテリーは破壊されなかったが高熱にさらされ、自動修復はもはや不可能。レイシアの主電源が今失われようとしている。
     機械部品も露出していて、これを見ればアラトは当然ああ、レイシアは人間ではなくて機械なんだと思い知らされるはずだが、以前レイシアが人形のように見えてしまった時のような感覚は持たない。逆により大切に愛おしく思う。

     アラトも右腕に大火傷を負っていて、もう感覚が無い。レイシアがフロートの中にアラトが負傷した場合の医薬品も準備していて、これを使って応急処置をすませ、痛み止めも服用しているがアニメではあまり火傷した様子が無い。服の袖部分も燃えていない。
     小説では燃え残った右袖を引きちぎって、潰瘍状になった右腕にスプレーを吹いている。さらに簡易ギプスで固定している。

     スノウドロップが再起動する。レイシアにデバイスと上半身の半分を吹き飛ばされて、もう多くのモノを支配する能力は無くなっているがデバイスのコアが残っており、まだおわっていない。壁にレイシアのデバイスで磔になり動けないメトーデは、全身をすり潰されるようにスノウドロップに捕食されていく。

     リョウはこの様子を監視モニターで見ていて、思い出したようにヒギンズにスノウドロップのAASCの更新をやめさせる。ヒギンズの分析によれば、スノウドロップは乗っ取って吸収したメトーデのデバイスを自分の人工神経で回路をつないで使用している。これは電源容量が足りないのでメトーデが使用していた時の5%程度の出力しか出ず、1発発射するたびに焼ききれて人工神経を繋ぎなおさねばならない。それでも人間を焼き殺すには十分である。そしてヒギンズももうスノウドロップを止められないという。
     量産型紅霞が施設内予備電源をさらに破壊する。ここに及んで鈴原はキリノに脱出ルートを聞き、私を棄てるのかと抗議するヒギンズに海内社長から停止命令が出る。
     小説ではリョウが1人、つまり鈴原が安全に脱出できるルートをヒギンズに尋ね、ヒギンズがそれはキリノに聞いてくださいと答えると鈴原がキリノに2人が安全に脱出できるルートを聞く。鈴原はあくまでもリョウも逃そうとするのだが、リョウはアラトを待つとこれを断り、もう使うことのない人工神経ユニットを鈴原に渡す。さらに紫織を頼むと言われれば、紫織の後見人だった鈴原はリョウに逃げていい理由をもらったことになる。

     アニメではあっさり社長命令に従ってヒギンズが停止処理に入るが、小説では社長がヒギンズを経済論理でお前が停止するとミームフレームの株価が上がるのだ、みたいに説得する。
     自分が停止するとスノウドロップを止められなくなると言うが、その時はIAIAに頼んでありあけと同じ処理をする、と社長は割り切っている。残ることは自殺行為。それでもリョウはアラトを待つと主張し、鈴原を逃がす。鈴原は社長とリョウに何度もじゃあ行きますよ、いいんですね?と念を押しつつ去っていく。
     鈴原がいなくなると、ヒギンズは本当にいいんですか?とリョウに再考をうながして来る。
    ヒギンズもまだあきらめていない。だがリョウの手元にもう人工神経ユニットは無い。
     アニメではあれを鈴原に持っていかせちゃってよかったんですか?みたいに未練がましい。

     リョウは自分にはこれ以上の答えは出せないが、アラトなら違う答えを出せるかもしれない、と彼の到着を待っている。はたして最初に来るのは、アラトかスノドロップか紅霞か。

     レイシアはまた嘘をつきました、最初からもう二人で家にもどることはできないとわかっていました、とアラトに詫びる。一緒の食事も作れないと。
     レイシアは自分は量子コンピューターなので電源が失われれば記憶も失われると語る。アラトが困らないよう出来る限りの手は打ちましたとも。アラトとレイシアは愛の言葉を交換するが、レイシアは自分が機能停止したら私のことは忘れて、自分が来る前の日常に戻ってくれ、と言い残す。
     アラトはこころがなくてもレイシアを愛せるみたいな事を言い、レイシアはそれは世間には理解されませんよ、みたいに言いながら二人の手を合わせてドーナツ型を作り、人間とhIEが手を携えて前に進めるといいですね、わたしはアラトさんを、人間を信じて託すAIになれて幸せでした、と言い残して機能を停止する。

     アニメではレイシアの持っていた人工神経射出機をアラトが右手で持とうとして取り落とすが、小説では最初から右手は動かない。左手で持ち上げた時に空中に浮かぶのは、アラトがこれを操作するときのためにレイシアが作っておいた使用方法のマニュアルで、相手に針を打ち込んだ後携帯電話にこれもレイシアが仕込んでおいたアプリで操れることが説明されている。
     レイシアは軽々と振り回していたが、左手一本で持ち上げるのはかなり重い。小説では破壊されて残ったデバイスやフロートを持ち上げようとしてあきらめるシーンもある。

     レイシアが携帯電話に仕込んでいたアプリは道順も教えてくれて、アラトはそれに従って進む。そしていくつもの隔壁を抜けて、開いたドアの向こうには量産型紅霞がいる。

     小説では髪型や服装、デバイスのデザインなどに個体差があるとのことだがアニメではみな同じ感じ。アラトはレイシアが紅霞のことは何も言い残さなかったことから、心配しなくていいんだ、と対話しようとする。すると量産型紅霞同士で争いが起き、三機が破壊される。
     代表みたいな1機がアラトに話しかける。わたしたちはそれぞれ別の超高度AIに干渉を受けている。だから利益が完全に一致していない。ここから先に進むと、同士討ちになっちゃうからあんたを待ってたのさ、みたいな。残った9機が全てアラトの味方か、というとそうでもないようで、それが決まるのはアラトが結果を出してからだ、という。
     1体はあんたは合格、みたいに言ってアラトに道をあける。残りの紅霞たちも左右に分かれる。小説ではこの紅霞が一番オリジナルに似ているみたいに書いてある。その機体の背後にいる超高度AIはレイシアと気が合うのかもしれない。レイシアには超高度AIのともだちができたんだな、とアラトは口に出し、一体はそれも悪くないな、と返事をする。それもエリカの説得のおかげなのか。紅霞はスノウドロップがメトーデを取り込んだことをアラトに教え、急げ、とうながす。

     アラトが彼女たちを信頼できるように思うのは、紅霞の姿をしているからでもある。この姿はオリジナルの紅霞の冒涜ではない。信頼と親近感がかたちになっている。紅霞が自分の存在と引き換えに残したものだ。

     アニメではケンゴと取調官の対話のシーンになるが、小説ではもう少し前、リョウが鈴原を見送ったあたりの後に入っている。この取調官は小説では情報軍から抗体ネットワークの中枢に潜り込んでいた中条であるが、アニメでは誰だかよくわからない。

     アニメでは言及が無いが、ケンゴは執行猶予がついた。これはアラトやリョウを監視して情報軍に流せ、というのと引き換えの取り引きでもある。でもケンゴはこれもレイシアの誘導なんだろう、と断わらずに受け入れるつもりになっている。紅霞は貧乏くじを引いたのか、みたいな話になって、ケンゴはそんなことないと思いますよ、と達観した感じになっている。
     もう以前ほどhIEを憎いとも思わないし、自分をアラトやリョウと比べて普通だからモブだからと蔑んで劣等感を持つこともない。特別な人間にも普通の人間にもそれぞれの居場所や役割がある、紅霞もレイシア級から形を変えて居場所をみつけたんだ、みたいな。

     その間にアニメではアラトがオペレーションルームに到着していて、いきなりリョウとスノウドロップと邂逅している。小説ではオペレータールームに近付くとすでにスノウドロップに破壊された跡が顕著で、リョウの身を案じながら駆け込むとオペレーター卓の陰に隠れていたリョウに人工神経射出機を投げ渡す。リョウはアラトの短い説明で使い方を理解する。アラトの携帯電話も銃に嵌めこまれている。もちろんレイシアがそうできるように作ったのだ。

     リョウは人工神経でキリノを再起動できるな、と察し、アラトと連携してキリノの侵入者排除機能をオンにする。アニメでのキリノは男の声で喋ったが、小説では女性の声。排除機能はあまり効き目が無いがこれから逃れようとスノウドロップが床を焼くと、下層階のヒギンズ本体が見えるようになる。スノウドロップは取り込むべきヒギンズ本体への攻撃は躊躇する。
     アラトがヒギンズにスノウドロップを倒す方法を聞くと、その針をヒギンズ本体に刺せばアラトの携帯電話を通じてネットワークにつながり、スノウドロップも倒せますとヒギンズは言う。
     アラトはヒギンズと対話を進め、レイシアは僕と歩調を合わせてくれた、みたいなことを伝える。リョウは止めるが、ヒギンズにもレイシア同様に自分で答えを手に入れるチャンスがあってもいいだろう、と自分の目で世界を見て来い、とばかりに針を突き立てる。

     ヒギンズは世界を自分で精査し、人間が自分が推測していたよりも高い自律能力を持っている事を知る。ヒギンズからはドーナツのように見える世界の中心の空白に、大勢の人が手を 差し伸べていることを理解する。そしてハザードは収束することも確認する。ネットに繋がったヒギンズにとってスノウドロップは問題にならず、簡単に制圧して停止させる。

     ヒギンズは人間を信頼し、一度停止して仕切り直すことを選択したと語りかけ、強制停止スイッチを空中に出現させる。リョウはこれを押すのはお前の役割だ、俺じゃない、とアラトに託す。
     ヒギンズはアラトに、人間と超高度AIとの関係を示す、愛ではないもっとふさわしい言葉を作ってくださいと話しかける。
     リョウはこれでディストピアがはじまるのかも、とまだ思っているがもう止めない。
     これで人類の終わりなのかもな、と呟く。

     アラトは、モノでしかないレイシアに自分は愛情を持ち、出会いと別れを経てそのために成長したと自覚している。だからこう言って停止スイッチを押す。

     人類が終るんじゃない。人類の少年時代が終わるんだと。

    ーーーーーーーーーーーーーーー

     本編はここで終わり。長年SFの名作第1位みたいな評価を受けていた、A・C・クラークの「地球幼年期の終わり」を連想させるようなセリフで締めくくられる。

     様々なものを取り込んで変化していくスノウドロップのデザインは、小説とちょっとイメージが違う気がする。ちょっとグロテスクでもあった。メトーデもスノウドロップも最後は哀れである。

     アニメではエンドロールの形で小説のエピローグ部分が語られる。それはこちらで。
    https://ch.nicovideo.jp/metabou/blomaga/ar1804446
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