「占星師アフサンの遠見鏡(ロバート・J・ソウヤー著)」
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「占星師アフサンの遠見鏡(ロバート・J・ソウヤー著)」

2019-10-02 19:00


    ・ジュラシック・パークなどのヒットで恐竜ブームだったころに翻訳の話があったそうで、表紙にはティラノサウルスが望遠鏡を持っている姿が描かれているということで訳者は真面目な本とは思わなかったらしい。日本語版の表紙もそんな感じ。


     なんだけど中身は意外に真面目。なぜか恐竜が知性を持った世界で、知性がある恐竜はティラノサウスルみたいな(作中ではキングダリオと呼ばれている)1種類だけ。他の恐竜は彼らの狩る獲物のような存在。
     恐竜たちは文明を築いていて、家や船や道具も作るし書物も読む。なぜか衣服は着ない様子。
     彼らの住む世界は地球ではなく、一つだけの大陸と海で構成されているが、恐竜たちの科学は中世ヨーロッパのいわゆる天動説のレベル。
     肉食恐竜である彼らが文明を持てた理由の一つに宗教があって、信仰が彼らの闘争本能を抑え、縄張りの範囲内に他者が入ることを可能としている。
     だがその宗教がそれ以上の科学の発展を抑えることにもなってしまっている。

     主人公アフサンは少年といっていいくらいの占星師見習いで、彼は星占いみたいなことをする職業集団の新人なのだがとても真面目で注意深い性格。師の教えであっても論理的に矛盾するところは追及せずにはおれない。彼は星を観測するうちに宗教指導者たちの教えの矛盾に気付き、自分たちのいる世界は平らではなく球形であると気付き、船で世界一周もすることになってこれを事実と確信する。
     だがこれはこの世界の支配者たちの権威を侵すことになる。皇帝も宗教的な予言者の子孫であり、これを認めれば皇帝の権威も失墜する。さらに悪いことにこの世界で肉食恐竜同士が争ったり共食いしたりしないのは、宗教の権威でそういうことをすると地獄に落ちるみたいな教えが浸透しているから。権威が崩れれば弱肉強食の世界に戻って文明もついえてしまう。
     それどころか、ある科学的観測の結果この世界はこのままだと滅亡することまで主人公は気付いてしまう。彼は危機を訴えてみんなを救おうとするのだが、宗教指導者たちは彼を迫害し、インチキ宗教裁判にかけて抹殺しようとする。つまり主人公の恐竜の若者は、この世界でのガリレオ=ガリレイなのだ。

     地上からの観測のみでいかに星の運動に気付くか、みたいなことがきちんと描写されていて、ちょっと知的興奮を感じさせる児童書みたいな印象もあるんだけど、主人公が年上の雌と出会って最初の行為をするあたりは児童書には似つかわしくないくらいねっとり描写されていたりして、想定読者層はどのへなんだろうともちょっと思う。
     主人公の運命も本物のガリレオ以上に過酷であり、児童に読ませるにはちょっときついかも。

     三部作らしいのだけど、日本ではこの一作目しか訳されなかったらしい。
    原題は FarーSeer でseer は予言者とか先見者とか、直訳すると遠い予言者と出る。
    日本語に訳されなかった二作目は「Fossil Hunter(直訳で化石ハンター)」で同じ恐竜世界のダーウィンみたいな話らしいこの人物(恐竜だけど)は一作目の主人公の息子らしい。三作目は「Foreigner」で直訳だと外国人だけどSFでは他の星から来た知的生命体みたいな意味でもよく使われる。
     英語版のウィキペディアを機械翻訳すると、どんな話かはなんとなくわかる。

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