「駿河城御前試合(平田弘史著 原作 南條範夫)」破れたり不殺剣
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「駿河城御前試合(平田弘史著 原作 南條範夫)」破れたり不殺剣

2019-11-10 19:00


    ・第二話 破れたり不殺剣
     城下で戸田流の剣術道場を構える星川生之助は不殺剣なるものの使い手で評判が高く、これに興味を示した忠長の招きを受けてその技を見せる。相手を斬る直前に刀を回して峰打ちするというもので、5人がかりで戦っても次々に真剣を持った相手を打ち据える評判にたがわぬ名人である。
     忠長はその場で星川を500石で召抱えようとするが星川はこれを固辞。忠長は配下の野田想之進に命じてこれを翻意させようとするが応じない。断り続けるだけでは、と星川は自分には仕官できないわけがあると語りはじめる。それが不殺剣誕生のきっかけでもあると。
     彼は肥前鍋島家に仕えていたのだが殿の寵童藤倉弥五が花見の席で無礼を仕掛けた上に斬りかかってきたものを身体に染み付いた戸田流の動きが流れるように相手を斬ってしまい、脱藩して討ち手となった親友二人も斬ることに。鍋島家は彼を召抱えぬように回状をまわすが、尾張藩主に縁あって仕えることとなった。彼は渋川道場で腕をふるい、同門の黒川軍之進とは互いの家を行き来する親しき友となり、彼の妹・三重とはいずれ夫婦にという約束もできた。
     だが腕が立ち過ぎる故に黒川軍之進と道場の師範代の座を争うこととなり、これがこじれて恋する人の兄や叔父を斬らざるを得ないという事件がその後も続き、尾張藩も恋人も捨てることに。なんとか人を斬らぬ剣はないか、と捜し求めて不殺剣を編み出したが、多くの人を斬った自分には仕官する資格はないというのが星川の主張だった。

     こうして駿河藩主からの誘いを断りぬいた星川だったが、彼が斬った黒川軍之進の縁者たちは一人の男を選んで仇討ちを申し込んでくる。これは受けぬわけにはいかず、それが御前試合に組み込まれてしまう。相手の男・小次郎はこの勝負に勝てば、星川が斬った男の妹で星川がいずれ嫁にするはずだった女性・三重に婿入りすることになっていた。だがその三重は星川・元の名は月岡雪之介を慕って自害していた。

     互いに引けぬ戦いとなるが星川は不殺を貫こうとする。だが小次郎も腕が立ち、いつものごとく相手を斬る寸前に峰を返すのでは間に合わぬと見た星川は最初から刀を反転させて戦いにのぞむ。一撃で決まった勝負は、その一瞬に星川の刀が常のごとく回転し、小次郎を斬っていた。星川は勝負には勝ったが、不殺剣は破れたのだった。

    ※この作品では「敗れたり」ではなく「破れたり」を採用している。
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