「菜の花畑のむこうとこちら(樹村みのり著)」
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「菜の花畑のむこうとこちら(樹村みのり著)」

2019-11-19 19:00





    ・著者の「菜の花畑シリーズ」みたいに呼ばれた連作集。まとまって収録されずにいろんな短編集に数編ずつ、みたいな感じだったのがようやく1冊に集合したみたいな。文庫本になる前にもシリーズを集めたブロンズ社の単行本がある。

    ・菜の花
     まあちゃん というあだ名の女性、本名正美さんが過去を振り返っている様子。最初は高校時代の歴史の先生について。そしてさらにさかのぼって小学生なのか学校に上がる前なのかわからないけどそんな感じの年頃に、彼女の家に下宿していた大学生のお姉さん、森さんの思い出。その人は家との約束で卒業すると北海道に帰り、一人娘なので見合いして結婚するのだという。まあちゃんは彼女が合わない人生を歩むようで悲しく思う。
     その後なのか、学校の入学試験で角のある馬だか鳥だかのの絵を見せられてどこがへんですか?と聞かれたのだがそんなことわからないはずがない、と考えすぎてどこもへんじゃない、と答えたら出来のわるい子のクラスに入れられる。
     その教室にはピアノがあったので夢中で弾いていた何人かは朝礼を忘れてしまう。
     担任の女の先生に朝礼中ピアノを弾いていたのは誰?と聞かれてまあちゃんほか数名は正直に手を上げるが、名乗り出ない人もいる。彼女は先生に何度も誰それちゃんもだよ、と訴えるが先生は耳を貸さない。でもそれから先生は名乗り出た子たちのいいところを時折り誉めてくれるようになる。まあちゃんは先生はちゃんと知っていたんだな、と思う。
     みたいなとりとめのない話。

    ・菜の花畑のこちら側 1
     「菜の花」のまあちゃんと森さんは残して、他の周囲のキャラクターを再設定したような。思うにこのまあちゃんと森さんはどちらも著者の分身なのかもしれない。

     まあちゃんは幼稚園の年長さん。お母さんと伯母ちゃんとけっこう大きめの家で同居中。近所に住むあき叔母ちゃんもまだ赤ちゃんのこうちゃんと毎日のように遊びに来る。説明は無いけどお父さんは不在の様子。お母さんはお茶とお花と書道の先生、伯母さんは著述業と職を持っている。
     2階の3部屋(うち一部屋は二人部屋)が余っているのでここを男子学生さんに貸しましょう、という話になるのだが、いろいろあって近所の女子大の寮を追い出された4人娘がお願いです、と頼み込んで来る。でもお母さんは男子学生に貸すつもり。伯母さんは彼女たちは急に住むところがなくなったんだから、行き先が決まるまで置いて上げましょう、ということになって、もうひと波乱あって彼女たちが正式な下宿人として落ち着くまでの話。
     4人娘は一番普通でていねいな話し方をするしっかり者のモトコさん、丸メガメにおかっぱ頭で男の子みたいに見える小柄な森ちゃん、長身長髪でちょっと色っぽいネコちゃん、コロコロっとして寝ぼすけのスガちゃん。

    ・菜の花畑のこちら側 2
     この話でまあちゃんの名字が山口さんとわかる。あき叔母さんがたけちゃんという男の子を連れて来る。叔母さんのご主人のお兄さん夫婦の子なのだが、夫妻が旅行の間預かってほしいと。引き受けたのはいいのだが、このたけちゃんはなかなかわんぱくで下宿の4人娘をいろいろ困らせる。菜の花畑をはさんでお向かいの水谷さんにも迷惑をかけてちょっと自分は嫌われ者だ、などとひねくれているところもあるのだが、モトコさんと伯母さんが中心になって彼の話を聞き励ましてやると、少しずつ素直になっていく。
     実はたけちゃんの両親はずっと別れる別れないでモメていて、その最終局面の話し合いのため息子をよそに預ける必要があったのだ。たけちゃんが自分を悪い子みたいに言うのもうすうす両親の不仲を感じ取って自分のせいだと思っている様子。叔母さんは一人っ子で両親共働きなのか昼間はいつも一人ぼっちで鍵っ子のたけちゃんに人が大勢いる家庭を知ってほしいと山口家に預けたとのこと。
     結局彼の両親は離婚は思いとどまり、彼を引き取りにやってくる。彼は後ろ髪を引かれるように去っていく。山口家では彼の前途を祝して酒宴となる。

    ・菜の花畑のこちら側 3
     正月休みにモトコさんとスガちゃんは帰省。故郷が遠い森ちゃんとネコちゃんは試験のあとに帰ることにして居残り組。ところがお母さんと伯母さんも用事ができて、数日まあちゃんと森ネコの三人で留守番をすることに。
     普段はまあちゃんは1階、下宿人は2階なのだが一緒に寝ましょうかということになってそれまでお話して、となるのだがまあちゃんはすぐに寝てしまう。すると女二人は寮の怪談話などはじめてしまい、そこに雨が降り出して不安になる。
     するとそこに男性が訪ねてくる。彼は浜口ツトムと名乗り、隣町に住むイトコでまあちゃんのお母さんが女だけでは心細いだろうから様子を見てやってほしい、と頼んでくれていたらしい。彼は以前はよくこの家に出入りしていたのだが、ここ二年ほどはごぶさただったという。
    まあちゃんは彼を全然認識していない様子。
     以前はこの家にたきちゃんという若いお手伝いさんがいたそうで、浜口さんは彼女は今どうしているかなあ、と話すのだがもちろん森ちゃんとネコちゃんは知らない。
     彼は2日間滞在してくれて心強かったのだが、お母さんが帰って来ると入れ替わるように姿を消してしまう。
     彼が持ってきた写真は残っていて、そこには彼とたきちゃんが並んで写っている。伯母さんがそれを見て、これは確かにつとむくんね、二年前に病気で亡くなった。と言うので森ネコはガクブル。
     たきちゃんは今はお嫁にいって二人の子供のお母さんだが、つとむくん、たきちゃんが好きだったのね、たきちゃんもまんざらではなかったのに、とお母さんと伯母さんは語り合う。
     たきちゃんは片耳が聞こえなかったのだが、つとむくんはそれを誤解して気持ちを伝えそびれたらしい。そんな話をしてまあちゃんが炬燵で眠った頃、除夜の鐘が鳴る。

    ・菜の花畑のむこうとこちら
     先の3作は三ヶ月連続で掲載されたのだがこの作品はその1年以上あとにポツンと描かれたらしい。そのためか登場人物紹介から仕切りなおしたようにはじまる。
     お母さんは春代、伯母さんは冬子とはじめて名前が出る。以前登場したお向かいの水谷さんも再登場して、彼のところには男子学生4人が下宿していることがわかる。賄婦兼お手伝いさんの岩子さんというちょっとおっかない女性がいて、彼女がこの家の家事を取り仕切っている。岩子さんと冬子さんは女学校時代からの友人というかライバルというか、反発するけど気になる相手、みたいな感じで付き合いが続いているらしい。
     自然の摂理として男子学生4名は女学生4名に接近を試みて、いろいろフライングとか勘違いとかすれ違いとかあった末に4人対4人でグループ交際しましょうか、みたいになる。

    ・菜の花は夜もすがら
     まあちゃんは同じ幼稚園の陽子ちゃんという子と仲良くなって、彼女のうちにおよばれする。そこで陽子ちゃんのお父さんと会う。
     まあちゃんの山口家には男性がいない。まあちゃんにはなんでお父さんがいないの?と聞くのだがお母さんははっきり答えないで伯母さんがいるでしょう、みたいな。
     お向かいの水谷さんは独身で、春代お母さんと若い頃から知り合いで一度アタックしたことがあるらしいのだが当時のお母さんは男の人コワイみたいな娘で受け入れず縁の無いまま傷心の水谷さんは外国へ。その頃になって春代さんは水谷さんの気持ちに気付く。やがて水谷さんはもう一度アタックだ!みたいに帰国するのだが、春代さんにはまあちゃんがいたのだった、と途中の肝心なところが抜けた説明を岩子さんが4人娘にしてくれる。
     両家の女4人と男4人はグループ交際を続けるうちに1対1のカップル4つに収束しつつある模様。だが春代さんと水谷さんは未だに互いの気持ちを確かめることなく進展しない。
     まあちゃんのうちにはなんでお父さんがいないの?という問いははぐらかされて理由はわからない。どうもまあちゃんは春代さんの実の娘ではなくて捨て子を引き取ったとかみたいなようにも思えるけど作品内で説明は無い。

    ・菜の花畑は満員御礼
     幼稚園の終業式の12月24日、まあちゃんはちょっと考え込んでいるようで元気がない。
    森ちゃんとスガちゃんが話しかけてもちょっといつもと違う。三人は外国人みたいな年配の男の人が待ち合わせ相手が来ないとかで道に迷っているのを見つけ、話しているうちに水谷さんの知り合いらしいとわかったので案内する。水谷氏は外出中だったが、岩子さんは忙しいので男子学生が相手をする。男性は水谷氏の若い頃も岩子さんの若い頃も知っている様子。水谷氏が帰宅するが学生に岩子さんのお客さんですと紹介される。酒が入って男性はふらふらと山口家へ。山口家では水谷さんの知人と思って迎え入れる。男性は山口家の事情にも詳しい。
     団欒するうちに、まあちゃんが死というものを話題にする。友だちに人間というものはいつか必ず死ぬんだよ、と言われたらしく、そのことがさびしくてずっとふさぎこんでいたらしい。みんなこれに答える言葉を見つけられないが、森ちゃんはまあちゃんをギュッと抱きしめる。男性は彼女にあなたはちゃんとまあちゃんに答えたね、みたいなことを言う。
     4人娘はまあちゃんを連れて女子大の寮で行われるクリスマスパーティーに。入れ替わるようにあきちゃんこと秋子さん一家が遊びに来ると、男性はこの一家の事情にも詳しい様子を見せる。
     水谷さんは男性と話したことがきっかけでちょっと勇気が出たのか、男子学生と岩子さんを山口家に遊びにいかせて、代わりに春代さんを家に呼び、プレゼントをする。春代さんもまんざらではないようで二人の距離は少し近付いた感じ。
     まあちゃんは女子寮の賑やかなパーティーに参加しているうちに元気が出て、そのまま眠ってしまう。
     謎の男性のことを、みんながお互いの知人や親戚と思い込んでいるのだが実は誰の知り合いでも無い様子。でも水谷さんはあの人にはるか昔にあった事があるような気がする、と春代さんに話す。
     まあちゃんは夢を見ている。空から降りてきたトナカイが、いつまで飲んでるんですか、みたいに男性を誘い出している夢を。

     以上で菜の花畑シリーズは終了。

     他に おとうとー弟ー という作品と、以前レビューした わたしの宇宙人、結婚したい女、ふたりが出会えば の4作品が収録されている。

     菜の花シリーズとしてはこのほかに「となりのまあちゃん」という4コマ漫画が8本あるけどこれには収録されておらず、「ふたりが出会えば」という単行本に「むこうとこちら」「夜もすがら」「満員御礼」と一緒に収録されている。

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