「封印作品の憂鬱(安藤健二著)」
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「封印作品の憂鬱(安藤健二著)」

2019-12-06 19:00




    ・著者は非常に粘り強くいわゆる封印作品の取材を続けているようで、こうしたことをスキャンダル的に興味本位で扱っている媒体も少なからずあって、内容も他の人が書いた本やネットで見た情報の孫引きを寄せ集めただけみたいなものも散見する中で、自分自身でじっくり当時の資料を調べ、関係者と会ってきちんと取材した上で、何か悪役を仕立てて責めるでもなく、必要以上に封印作品を擁護するでもなく冷静な文章で調べ上げた経緯を紹介している。

     この本では三つの作品を封印作品を紹介。

     日本テレビ版ドラえもん。
     ウルトラと六兄弟対怪獣軍団
     涼宮ハルヒの憂鬱(みずのまこと版コミカライズ)

     これらの作品の封印理由として、当時ネットなどに本当っぽく語られていたものをひとつひとつ検証して、より本当らしい結論を導いていく。取材したというのが嘘だろう、と疑えばキリが無いけど、信頼できるような説得力を感じる文章になっている。

    ・まず最初の日本テレビ版ドラえもん。これはオンエア当時ちょっと見ていた。
     ぼ く の ドラえもんが ま ち を 歩けば みんな みんな 振り返るうよ・・・

     みたいな主題歌だったと思う。
     30分枠で15分の話が2本の構成だったような気がするけどこの本ではそうは書いてないので私の記憶ちがいかもしれない。

     ドラえもんの声が男性で、わりと太い声だった。本によれば富田耕生さんだったらしい。視聴率は悪かったらしく26話で終了。声優さんは途中でテコ入れのため野沢雅子さんに代わったらしいが、代わった後の方が視聴率は落ちたとも。

     話の内容については特に記憶が無いのだけど、さほど夢中になった覚えもないのでつまらなかったから打ち切りになったんだろう、みたいに思っていたけど本によれば内容はかなり意欲的で面白かったという。

     今再放送もDVDなどの発売も無いのは、当時は三つの理由のせいだと言われていたらしい。
    ①フィルムが残っていない。
    ②映像著作権の行方がわからない(製作会社は解散している)
    ③原作者の藤子・F・不二夫氏の意向

     著者はこれらを丹念に解きほぐして関係者への取材を重ね、一応の理由は突き止める。
    だがそれ以上に、この日本テレビ版ドラえもんを作った会社には謎がつきまとうとのこと。
    直接の打ち切りの原因は低視聴率ではなくこの会社の社長が放送中に失踪したことをきっかけに会社が空中分解したためのようで、製作中も納品の遅れが絶えなかったという。また下請け会社への給料の支払いも安く遅れがちで、結局支払われなかった例も多いとのこと。何故そんな会社が受け持つことになったのかはある政治家の存在が関係しているらしい。
     社長はその後ある事件で逮捕され、執筆時点では消息不明だという。

     打ち切りに至るまでにも原作者の藤子氏や漫画の権利を持っていた小学館に対しても不義理を重ね、放送開始前にもろくな挨拶も打合せもなく、オープニングには原作者の名前も無かったという。藤子氏は当時オバQのヒットはあったもののそれに続くヒット作がなかなか出ず、もし復活が無く消えていたら著作権を奪われていたかもしれないみたいな。

     もちろん製作スタッフや作品には罪の無い話であるが、藤子さんの心には傷を残したらしい。

     この社長が関わった作品には権利関係が不明確なせいか、フィルムが残っていないのか、DVDにならない作品が多いという。「戦え!オスパー」「冒険少年シャダー」「シートン動物記」「夕焼け番長」「モンシェリCoCo」・・・

    ・次にウルトラ兄弟対怪獣軍団。これも見たことがある。どこでかは忘れたけどたぶんレンタルビデオ。日本とタイの合作で、後に日本とタイでウルトラマンの権利をめぐる争いになった作品として知ってはいた。だが合作という事そのものがいろいろとそう言い切れない事情がある様子。日本とタイの製作物に対する考え方の違いや、きちんと契約書を交わさなかったと思われること、ワンマン社長本人しか知らないことがたくさんあったと思われることなどが遠因となっている様子。

     この本ではこの裁判の経緯と、それと表裏一体を成すようにこの作品が昔は円谷プロの公式資料にも掲載されてビデオなども発売されていたのに次第に絶版となって公式資料からもある時期を境に姿を消し、封印作品となっていく経緯を関係者への取材を通して整理している。

     現在はウルトラマンの新作に過去作の怪獣やウルトラマンも問題なく登場している様子だが、裁判のことについてはどうもよくわからない。ウィキペディアの記事などもほとんどこの本の内容を引き写している様子なので詳しく知りたい人はこれを読むのがいいかもしれない。
     
    ・最後に涼宮ハルヒのコミカライズが公式記録から抹消され、別の漫画家によって上書きされたような状態になっている話題について。

     これもあまりすっきりしないけど、そんなに期待していなかった作品が製作を請負ったアニメ会社のがんばりで大人気作に化けた故の出来事だったみたいな。なんかけもフレ騒動とすごく似通ったものを感じてしまう。

     ということでこの本はたいへんな労作でした。著者はニコニコ動画に在籍したこともあったみたいだけど、現在は別の会社で働いているとのこと。ちょっと毛色の違う仕事をされているような印象。
    https://twitter.com/ando_kenji

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