夜叉ヶ池(泉鏡花著/波津彬子著)
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夜叉ヶ池(泉鏡花著/波津彬子著)

2019-12-13 19:00




    ・知っているけどちゃんと読んだ事がない「夜叉ヶ池」を、原作と波津彬子さんのコミカライズを読み比べる感じで。

     原作は戯曲の形で書かれていて、いわゆる地の文は無い。ト書きがわずかにあるだけでほとんどが会話である。なので情景を思い浮かべるにはちょっと想像力がいる。

     三国嶽の麓に鐘楼があり、この鐘を日に三度、明六つ、暮六つ、丑満に鳴らさないと山奥の夜叉が池に棲む竜神が里を沈めてしまうという言い伝えがある。だが村人はもう誰もそんなこと信じていない。
     老人が一人守って50年鐘を撞いていたが、年齢もあって亡くなってしまう。伝説に興味があってたまたま訪ねて来ていた青年がとりあえず代役をつとめて村人に話すが誰も鐘を撞こうとしない。やむなく青年は残って老人の代わりに鐘を撞き続けて三年になる。青年と一緒に暮らす村の娘がいる。彼女は神主の血筋だが今は天涯孤独。村一番の美貌の持ち主である。

     青年はそのまま家に帰らないので家族は心配し、彼の友人が探しにやって来る。だが青年は鐘を撞かねば村が沈む、帰れないという。

     夜叉ヶ池には本当に竜神がいて名を白雪という。もともとは村の娘で日照りの際に生贄にされた恨みを村に持っている。今は遠く白山剣が峰千蛇ヶ池の若君と恋文を交わす仲だが、こちらから出向いてもあちらが来ても竜神が動けば水があふれ村は全滅する。
     彼女は昔彼女を封じた坊主との約束を守って恋しい人に会いに行くのを我慢している。鐘はその約束を思い出させるために撞かせているのだが、彼女のお付きの姥は人間が約束を破って鐘を撞くのを忘れるのもじきでしょう、と白雪に言い聞かせている。一方で白雪は鐘を撞く青年と村の娘のことは好ましく思い見守っている。時々カッとなって約束を忘れることはあるのだが鐘の音で我に返ったりもする。自分から約束を破るつもりはない。

     だがこの年日照りが続き、村人たちはまた娘を生贄にしようと語らって、鐘楼の娘が神主の血筋でもあり美人でもありいいだろう、と勝手に決めてしまう。ちょうど青年と友人が夜叉ヶ池を見に行って留守の間に娘はさらわれる。二人が取り戻しに行くが村人たちはこれを力づくで阻む。青年が負傷し、娘は私が死ねばこの人に手を出す必要も無くなるでしょう、と鎌で自決。青年はこの鎌で鐘を撞く撞木の縄を切り、鐘を撞けなくする。
     すると夜叉ヶ池から黒雲が湧き上がり水が押し寄せる。村人は青年に鐘を撞いてくれ、と頼み込むが青年は娘を追って自決。竜神の白雪はこれで解放された、と水に飲み込まれた村人たちを魚に変え、青年と娘だけは白雪と同じような存在にして鐘ヶ淵を夫婦の住まいとしてくれる。
     白雪は晴れて剣が峰へ。周囲を水に囲まれて鐘を失った鐘楼の上で、生き残った友人が合掌している。

     正直なところ原作を読むだけでは情景が思い浮かばないところが多々あるのだけど、波津さんのコミカライズを読むとそうだったのか、と思う。泉鏡花の話に波津さんの絵はとても相性がいい感じ。衣装にしても背景にしてもあつらえたようにぴったり。キャラクターデザインも合っていると思う。

     玉三郎さんが主演で夜叉ヶ池の映画があったけど、現在は諸事情あってDVDになっていないらしい。田端智子さんと武田真治さんの舞台版やオペラなんかもあるらしい。
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