「キャプテン・フューチャー最初の事件(アレン・スティール著)」第二部
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「キャプテン・フューチャー最初の事件(アレン・スティール著)」第二部

2020-07-13 19:00
    https://ch.nicovideo.jp/metabou/blomaga/ar1916643
    の続き。



    ・二十年前
     サイモンはこれまで語らなかった話をカーティス・ニュートンに聞かせる。
     コルボはロジャーの研究の出資者だった。ロジャーはいわゆるアンドロイドの研究をしていたがこの呼び名を好まず、オットー(otho)と呼んでいた。定向進化的超人類有機体という用語の頭文字を並べるとそうなるらしい。
     コルボは既に百万長者だったがロジャーの研究を使って手っ取り早く億万長者になることを望んだ。だがロジャーはコルボの計画は倫理的に問題があるものを多く含むと反対し、医療など人類に大きく貢献するものから実用化しようとしていた。
     今回も二人の会談はすれ違った。この当時ロジャー夫妻はニューモントークというロングアイランド沖に造成された人工島のコンドミニアムビルに住んでいる。帰宅したロジャーは妻エレインに赤ん坊のカーティスの様子を聞く。息子は二週間前にアンニを形成するためのナノ物質を注射したばかり。幸い副作用もなく体内でネットワークが成長している様子。ロジャーにはこの適性が無く、妻がプレゼントしてくれた指輪で妻との通信を行っている。
     来客がある。ジャイロ椅子に座ったサイモン・ライトだ。同じ棟に住んでいるのでエレベーターで来れる。ロジャーの研究目的は病に冒されたサイモンの脳が避難できる人工の身体を開発すること。そのための人工ボディ開発がオットー計画である。だが出資者のコルボはこのボディを奴隷として売り出せば大儲けできるだろうと主張している。

     最初はコルボはリスクが高く実績の無い新事業にも大金を投じる良い出資者で、政府や大学よりも多額の援助を惜しまなかった。だが研究が進むにつれて貪欲で不道徳な人間であることが明らかになってきている。彼らはコルボの援助を受けたことを今では後悔しているがもうどうしようもない。ボディの開発は今一歩のところだが、大脳だけを生かすためのユニットはほぼ完成されている。サイモンの身体が持たなくなっても脳をユニットに移してボディの完成を待つことができる。サイモンはシカゴ大学でのロジャーの恩師である。

     今日ロジャーはコルボの新しい計画を聞いた。つまりオットーの兵士への応用だ。戦場近くに施設を作り、負傷兵をそこに送りこんでまっさらな身体にしたらすぐ戦場に戻す。
     そんな永遠に戦える兵士が出現したら何が起きるか。戦争は終わらず永遠に続くようになってしまう。その間コルボは大儲けを続けることになる。建前上は兵士の命を救うためだと言っているが実態が違うのは明らかだ。
     そして最近知ったのだが、コルボが出資した研究者の多くは行方不明になり、、特許はコルボのものになっている。コルボは暗黒街とつながりがあってテロ組織の「星界のメッセンジャー」の元メンバーとも交際している。つまりコルボの中ではロジャー夫妻もそろそろ行方不明になる頃合いなのだ。ロジャーは今日の話でこれを確信した。

     コルボはこれから火星に行くといっていた。実は火星に愛人がいるのだ。火星はこれから地球の反対側に行くので9か月間は帰りのロケットは出ない。実は愛人と子供を認知するかどうかでもめているらしい。結婚する意志は無く、かといって捨てるといろいろめんどうなことになるようで、穏便にすませようと最近は頭を痛めているらしい。

     ロジャーはその間に自分たちが死んだと偽装して、月に移住しようと計画する。既に月にある企業が建設して放棄した研究所があるのを調べてある。

     ロジャーは既に研究などしなくても十分食べていけるだけの特許収入を持っている。彼はさかのぼればアイザック・ニュートンに連なる名門の家系である。気晴らしの趣味として個人用の宇宙ヨットも所有している。もともとレース用の中古だが4人を乗せて遊覧飛行もできる。ロジャーは時々そうした休暇を過ごしていた。彼は慎重に準備をはじめる。

     半年後、宇宙エレベーターから宇宙ステーションに上がり、連絡艇を借りて宇宙ヨットの泊地に向かったロジャー、エレイン、カーティス、サイモンの4人はそれっきり失踪した。
     この時彼らは実験中の万能ドローンを連れていたという。
     月では持ち主だった企業が倒産して建設中に放棄されていた建物が匿名のオーナーによって5カ月前から建設再開されている。12台のグラッグロボットが人間の監督なしに建設を続けている。ロジャーの宇宙ヨットはこの建設現場近くで遭難する。実際には素早くハッチを通って地下に入ったのだ。直前にヨットが爆発したかのような細工もされている。磁気プラズマエンジンの爆発事故では、残骸も残らないことが多い。
     既に研究所は完成している。グラッグ社のロボットのうち監督をしていた個体が彼らを出迎える。
     到着早々にサイモンが倒れる。やはりここまでの旅は負担が大きかった様子。ロジャー夫妻はグラッグとは別に運び込んであったロボット外科医の助けを借りて、サイモンの脳をユニットに移すことに成功する。このユニットには聴覚や視覚を与えるセンサーも、会話するためのスピーカーも、手の代わりのマジックハンドも足の代わりのプロペラもついている。360度の視野を持ち、紫外線や赤外線も見れる。栄養液を循環させれば睡眠も食事も不要である。
     だがサイモンがこのボディの使い方に慣れるには時間が必要だった。

     その間に人工子宮の中ではサイモンの新しい身体が成長をはじめている。十分に成長したら、人間よりもはるかに優れた身体能力を持つこの身体にサイモンの脳を移すのだ。だが問題が生じた。ボディがアルビノで無毛であることと、脳が成長していることだ。オットーは空っぽの容器ではなく、自分の個性を持つと思われる。そしてその脳の成長は人間よりもずっと早い。これではサイモンの脳を移すために一人の人間を殺すことになってしまう。
     もとより彼らは永久に月にいるつもりはなく、サイモンの脳移植が成功した時点でこれを発表して医療技術として確立させ、コルボの思う通りにはさせないつもりだった。それができなくなったのだ。

     そこにグラッグから通信。グラッグはエレインによってAIをアップグレードされている。他の11台は工事終了とともに返却されたがこの1体だけは買い取ったのだ。
    宇宙船が近付いている。番号はコルボの会社のものだ。コルボは男女一人ずつのボディガードを連れ、三人とも銃を持っている。ロジャーは武器を持ってきていない。
     彼らはエアロックから侵入してくると夫妻に銃を向ける。あっと言う間に二人とも殺されてしまう。この時サイモン・ライトがグラッグに彼らを殺せ!と命令する。サイモンは地下室におり、グラッグへの命令は通信で行われる。コルボたちにはわからない。
     グラッグが二人のボディガードを殺す間にコルボは爆弾をしかけて脱出する。サイモンはグラッグに地下に避難するように命じる。
     研究所の地上部分は壊滅的に吹っ飛んでしまう。だが地下にいたサイモンとカーティスは生き残った。

     二日後にロジャー夫妻の身体をグラッグに埋葬させ、二週間後にはオットーが生体培養槽から出られるようになったので、サイモンの身体を埋葬させる。やがて惑星警察がやってきてボディガード二人の死骸を見つけるが、入植者が事故で死亡したのだろうと決めつけてたいして捜査は行われない。

     サイモンと知性を獲得したグラッグ、オットーは話し合い、カーティスを育てるのと同時に彼がある程度の判断力を身に着けるまで両親の死の真相を黙っていることを決める。
     そして今日、彼に問う。真相を知って君はどうしたいかと。彼はコルボを殺したいと答える。

    ーーー

     オリジナルではコルボは一応政治家でもあるけどどちらかというとギャングっぽくてロジャー夫妻を殺した直後にグラッグとオットーに殺される雑魚キャラっぽい扱い。ただし彼の息子のウル・クォルンは何度も登場してキャプテンフューチャーと死闘を繰り広げる宿敵となる。

     キャプテンフューチャーとは、同じ年ごろの友人を一人も持たず、身近に生身の人間が一人もいないという状態で孤独に育ったカーティス・ニュートンが心の中で作った一人遊び用のヒーローみたいな設定。彼は自分がキャプテン・フューチャーという英雄になったつもりで空想を楽しんだ。
     ある意味恥ずかしい記憶でもあり、そう呼ばれるのを好んでいないところもある様子。このへんはオリジナルにはない要素。

     母親はオリジナルでは回想シーンでしか登場せず、名前さえ書かれなかったりするがこの作品ではきちんと人格を感じられる書き方になっている。科学者としても優秀だった様子。

     コルボは悪人だが、こちらでは議員という表の顔を持っている。それを両親の仇とはいえ殺すとあれば、キャプテンフューチャーの方が人道的に苦しくなりそうだがそのへんどう処理するんだろう。
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