「ホームズ贋作展覧会(各務三郎編)」3/3
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「ホームズ贋作展覧会(各務三郎編)」3/3

2020-11-23 19:00


    ・テルト最大の偉人(アンソニイ・バウチャー)
     作者はアメリカの探偵・SF作家で批評家としても評価された人。この作品はSFの方。

     地球(テルト:火星人の呼び方)を征服して人類を滅ぼした火星人が、地球人の歴史を研究して もしこの人物がもっと長生きだったら火星は地球に勝てなかったかもしれない、と分析した報告書。

     ただし火星人は地球の固有名詞を翻訳の際に省略して縮めてしまうようで、その流儀だとシャーロック・ホームズとシェイクスピアがどちらもシュルクとなるため二人を同一人物と誤解している様子。

    ・<引き立て役倶楽部>の不快な事件(W・ハイデンフェルト)
     作者は南アフリカの作家・ジャーナリストでチェスの南アフリカチャンピオンでもあったらしい。

     インドで世界名探偵会議なるものが開催されることとなり、超一流から二流まで名探偵と名のつくものは皆軍艦に乗って出かけてしまう。
     名探偵不在となったイギリスである密室殺人事件が起こり、<引き立て役倶楽部>なる団体がこの解決に乗り出すが彼らは名探偵である自分の相棒がこの場にいればたちどころに解決するだろうに、ということを言いながら自分の相棒が相手の相棒より優れているという自慢話に終始して事件は結局迷宮入りになる。

     数年後、倶楽部の運営委員の一人であったワトスンだけがある人物から渡された手紙によって真相を知る。
     あるイギリスにとって危険な人物が密入国し、当局は気付かなかったがこれをある犯罪者が確保して殺害する。犯罪者はこの死体を人知れず処分するのは芸術的でないと考え、またこの人物が英国内で死体として発見されるといろいろ不都合があることから、その両方を満たした解決策を考えた結果がこれだった。名探偵たちが不在で、事件には彼に言わせれば「大勢の低能ども」しかかかわらないことも僥倖だった。
     かくして<引き立て役倶楽部>は密室の謎を解くことだけにエネルギーを費やして、殺されたのが第二次世界大戦中ヨーロッパを支配しかけた男であることには気付かなかった。

     作中で言及される名探偵の顔ぶれは以下の通り。
    シャーロック・ホームズ
    スリム・キャラハン
    ヘンリー・メルヴィル卿
    オーギュスト・デュパン
    エルキュール・ポアロ
    ファイロ・ヴァンス
    ナイジェル・ストレンジウェイズ
    エラリー・クイーン
    ジョン・J・マローン弁護士
    ペリー・メイスン弁護士
    ソーンダイク博士
    フェル博士
    プリーストリー博士
    フレンチ警部
    アプリビー警部
    アノウ警視
    メグレ警視
    ブラウン神父
    ピーター・ウィムジー卿
    ネロ・ウルフ
    ミス・マープル
    ピーター・ウィムジイ卿
    アブナー伯父
    バルナバス・ヒルドリース

     一方<引き立て役倶楽部>のメンバー(と思われる)は以下の通り。
    名前の無い人物(デュパンの親友) <引き立て役倶楽部>会長。
    ジョン・H・ワトスン
    トバイアス・グレグスン
    パーカー主任警部
    ランドルフ判事
    ヘイスティングス大尉
    ニッキー・ポーター
    ムッシュー・リカルド
    イングラム

     ワトスンに手紙を渡した犯罪者は、モリーアーティ教授だった。

     登場する人名は検索してもわからないものけっこうある。よっぽどのマニアじゃないと全部はわからないだろう。私は半分もわからない。わかっても読んだことない。関連する事件なんかも作中では紹介されているけど。

    ・名探偵登場(マーク・トウェイン)
     作者はトム・ソーヤーとかで有名な人。

     1880年、バージニア州。26歳のジェーコブ・フラーは19歳の美人と結婚する。
    夫は貧乏で妻は金持ちの娘ということで、娘の父親はこの結婚に強く反対し、フラーを罵り続ける。これがフラーの心を変質させてしまい、愛して結婚したはずの妻を岳父を苦しめるために虐待するようになってしまう。フラーは身重の妻を公道で立ち木に縛り付け、犬をけしかけて裸にするという屈辱を与えて逃げてしまう。
     妻は実家に戻るが父親はこの出来事で憔悴して死んでしまう。妻は地所を売り払って姿を消す。
     1886年、ニューイングランド。村はずれにスティルマンという婦人がアーサーという五歳くらいの男の子と一緒に暮らしている。この子にはブラッドハウンドと呼ばれる超能力がある。暗闇でもものが見え、嗅覚に優れて人が隠したものを見つけたり、読んでいた本のページを当てたりできる。婦人はこの能力を持った息子に、自分を虐待し辱めることで父を間接的に死に追いやった元夫に復讐するように言い聞かせて育てる。
     16歳に成長したアーサーはデンバーにいるというフラーに復讐に旅立つ。婦人は決して殺してはいけない、死はやすらぎを与えるだけだからと、フラーを死んだ方がましと思うくらい追い立てるよう指示をする。

     フラーはデンバーでは評判がよく友人も多い地元の名士となっていたがアーサーは彼が元妻にした仕打ちを書いたビラをまいて、この犯罪を犯した男を探しています、見つけた人には賞金を払いますと宣伝する一方でフラーには名乗り出るよう通知を出す。
     町中がこの卑劣な男に怒りを表明するようになり、フラーは自分がそうだとばれないうちにと財産を処分して町を去る。表向きはメキシコに鉱山を買って経営に専念するみたいな。

     アーサーはデーヴィット・ウィルソンと名前を変えて逃げ回るフラーを追跡する。だが、この男がフラーではなくフラーの4つ年上のいとこだったことに気付いてしまう。人違いで無実の男を追いつめてしまったのだ。彼に誤解を謝罪してデンバーに連れ戻そうとするが、相手は姿を消してしまう。アーサーの能力でも行き先がわからない。

     1900年。アーサーはウィルソンを追って世界中を旅してきている。もう少しで接触できそうになったことも何度かあるのだが、まだ邂逅できていない。
     アーサーも追跡に疲れてカリフォルニアの鉱山キャンプに腰をおちつけてしばらく休養することにする。

     アーサーはここでサミー・ヒルヤーという20代半ばの青年と出会い、温厚で善良な彼と親交を深める。キャンプにはフリント・バックナーという嫌われ者がいるのだが、このフリントもヒルヤーにだけは口をきく。ヒルヤーはフリントが嫌われ者になった原因を知っており、だからこそ優しくしてやらないとと思っているらしい。フリントはヒルヤーの親類でもあるらしい。

     ここでマーク・トウェインが読者と交わした手紙が挿入される。私には関連がよくわからないけど、これまでの話はトウェインの創作だと言っているらしい。

     フリント・バックナーは200人ほどの鉱夫がいるできたばかりのキャンプの南の端に住み、北の端の鉱区に通う。フリントは16,7歳の従僕のような若者・フェトロック・ジョーンズを雇って身の回りのことをさせているが、奴隷同然の扱いである。若者は天涯孤独でフリントに拾われたらしい。キャンプの人間たちは若者に同情してフリントの小屋を出てはどうかとすすめるが若者は怖がってか応じない。パット・ライリーという男が俺のところにくれば守ってやると言っても応じない。
     実は若者はフリント・バックナーを殺す機会を狙っているのだった。自分が犯人と疑われず確実にフリントを殺せる方法を若者は模索しつづけている。

     フリントはつるはしでの採鉱では間に合わなくなり、発破を使い始める。若者に火薬の扱いを教えもせずにこの間抜け!と罵るが、若者はこの火薬ならこいつを殺せると思いつく。

     鉱夫たちの唯一のたまり場になっている玉突き場兼飲み屋みたいなところで、常連たち、鍛冶屋のジェーク・パーカー、鉱夫のピーター・ホーズ、ウェルズ・ファーゴとファーガソン、ハム・サンドイッチ、パット・ライリー、ピーターソンといった面々がこのキャンプでの三人の変わり者について噂している。
     フリント、フェトロック、そしてアーチー・スティルマンの名があがる。最初の二人は誰ともうちとけない変わり者でフリントは毎晩この店をぴったり12時に引き上げることで有名だが、アーチーはふしぎな力の持ち主として話題になっている。

     そこにこのキャンプにいる白人女性がやって来る。娘がいなくなった、アーチー・スティルマンに探してほしいと頼みに来たのだ。二階から降りてきたアーチーは、女性の家に行くとここに娘さんの足跡がありますね、と指差すが誰にも足跡など見えない。アーチーはカンテラを持って彼にしか見えない足跡を追い、娘を発見する。

     翌日、はたご屋も兼ねているこのたまり場に一人の外国人がやって来て、宿帳にこう記す。
    「シャーロック・ホームズ」
     
     キャンプのある谷中は大騒ぎになるが、フェトロック・ジョーンズは叔父さんが来ちゃったか、困ったなと困惑する。彼は今晩フリント・バックナーを殺すつもりなのだ。
     彼は自分からホームズの所に行って一緒に行動し、そのことによって疑いを晴らすことにする。自分のアリバイをホームズに証言させるつもりなのだ。

     その夜、フリントがいつものように夜中に引き上げるのを確認し、フェトロックはホームズを連れてホームズを崇拝する鉱夫たちと飲む。宴たけなわというときに爆発音。みんなが駆けつけるとフリント・バックナーの小屋が吹き飛んでおり、彼の死体が見つかる。
     ホームズは調査をはじめ、鉱夫たちはホームズがこの事件の真相を突き止めるに違いないと期待する。アーチーもホームズとは別に自分なりに調査している。

     ホームズは自分が発見した証拠品を並べて推理を披露し、サミー・ヒルヤーを犯人だと指名して警官に逮捕させる。アーチーはこれに対抗してヒルヤーは犯人ではない、と彼が集めてきた証拠を示し、彼の能力でフェトロック・ジョーンズが犯人だと指摘する。二人の対決となるがジョーンズが泣きながら自白したことで決着がつく。彼はホームズをアリバイ工作に利用したことも白状し、ホームズが見つけた証拠はどれも事件とは無関係だが、アーチーが見つけた証拠は全部本物だと話す。

     ジョーンズは監禁されて裁判を待つ身に。ヒルヤーはフリントの葬式を出してやり、アーチーはその手伝いをする。
     この時に通りかかったよそ者の老人が、かつて見失った自分がジェーコブ・フラーと間違えた相手だとアーチーはその能力で気付く。

     彼はデンバーの友人たちがビラに書かれたいとこの犯罪に憤慨し、この犯人を見つけ出させようとホームズを雇ったと知ると逃げ出し、世界中を放浪したのだった。それからはずっと自分を追っているに違いないホームズの影に怯えて暮らしてきたのだった。無実の男を追いまわしたホームズに憤ったキャンプの住人はホームズをリンチにかけようとする。保安官がこれを止める。フェトロック・ジョーンズが脱走し、ホームズはこれを追っていく。

     アーチーは老人が回復したら一緒にデンバーに行き、今からでも彼の名誉と友人たちとの付き合いを回復させようと思っている。やがて彼がデンバーに二人で旅立とうとしたとき、ヒルヤーがアーチーに囁く。フリントこそ本物のジェーコブ・フラーで老人のいとこだったのだと。

     この作品ではホームズはいいところがなくて、どちらかというとおちょくられるためだけに登場する。甥だという青年もよくわからない。マイクロフトの子供ということなんだろうか。それがなんでこの年齢でアメリカにいるのか。この甥は叔父が能力を発揮するのは前もって自分が立てた筋書き通りに証拠品を捏造して、誰かを雇ってその犯罪を実行させた時だけだなんて言っている。その線で書かれたホームズのパロディはたくさんあるんだけど、大作家のマーク・トウェインが何でわざわざこんなの書いたんだろう。

     最後にフリントを本当に殺したのはアーチーみたいな記述もあるけどどう解釈したものかよくわからない。

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