「ロケットガール(野尻抱介著)」2巻 天使は結果オーライ 第二章
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「ロケットガール(野尻抱介著)」2巻 天使は結果オーライ 第二章

2020-10-23 19:00


    第二章 イチジクとツバメ
     ソロモン宇宙協会はローコストでの有人ロケット打ち上げが売り。そのためにはロケットの重量を軽減する必要があり、パイロットは小柄な少女ということになった。
     現在は複座式のカプセルを運用中。だが宇宙飛行士は二人しかいない。

     幹部たちは先日の高校への不時着の原因と対策について討議している。原因は既にはっきりしている。逆噴射の準備に入ろうと、スイッチの保護カバーを開いたところで金魚水槽にトラブルが発生して、そちらを処理しようと身体を動かした時に身体が触れてスイッチが入ったのだ。姉もそう証言しているしテレメトリの記録もそうなっている。これを操縦ミスと呼ぶべきか。もともと操縦と実験を狭いスペースで行うのに無理があり、パイロットが両方を見る以上今後も同様の事故は避けられないことになる。
     今後実験項目が増えたり複雑になったりすれば、スペースシャトルのようにミッションスペシャリストとかペイロードスペシャリストがいずれ必要になる。現在三人乗りオービターも開発中だ。だが三人乗りオービターも基本設計は同じでスペースは狭い。貨物ロッカーを座席に変えるだけ。この席に乗り込むには姉妹よりさらに小柄でないと入らない。

     昼休みに海岸に出た姉妹は、基地に戻るために保安部のハマーをまわしてもらう。これは飛行士の特権であり、他にもいろいろ大きな声で言えないことが黙認されている。よく言えば融通だし悪く言えば公私混同だったりするがここではバレなければいいという考え方が蔓延している。その帰りに正門にお客が来たようなのでついでに拾ってくれと連絡が入る。
     正門のそばに半死半生という感じで座り込んでいる人がいる。つば広の帽子で顔が見えない。顔を上げると、満点娘だった。彼女は姉妹を見て
     「来ちゃいました」
     と声をあげる。学校での不良扱いや金魚なんてどうなってもかまわないみたいな認識に切れてしまい、その場で学校を辞めて宇宙飛行士になると決めてこちらに来たのだという。大人しい感じなのにやる時はやるらしい。親も説得して一年だけならと許可をもぎ取ってきた様子。
    だが船酔いとタクシー酔いで半死半生状態。

     彼女を誘った姉は責任も感じて世話をする。さっそく所長のところに行き、適性審査を受けることに。だが彼女には姉妹に比べ、明らかに体力が不足している。自転車みたいなエルゴメーターでめまい。続く減圧チャンバーで頭痛。遠心機で気絶する。

     満点娘は4Gで気絶。これではジェットコースターにも乗れない。カプセルは8Gがかかる。姉は最初から9G、妹は17Gに耐えた。

     医学主任から耐G特性に問題あり、と報告を受け、主任管制官からは学力・理解力は申し分なし、現象の本質を見抜いて理解し、演繹する能力があると報告を受けた所長は判断に迷う。

     フランスが新たにアリアン・クーリエという衛星修理サービス会社を立ち上げたというニュースが入っており、既に5人のレオタード姿のナイスバディな美少女を宇宙飛行士として発表している。パクられた。
     本家の日本としてはいろんな意味で負けるわけにはいかないがいろんな意味で負けている。ルックスやスタイルはともかく、ふたりと5人の吾妻ひでおの漫画みたいな差は大きい。

     医学主任は命にかかわることだ、とOKを出さないが、主任管制官は感情的になりがちな姉と何をはじめるかわからない妹を補佐するなら満点娘のような性格がうってつけだと意見を述べる。協議の結果、単独踏破訓練をクリアしたら採用ということになる。

     だが姉妹の性格からしてこれを知れば絶対手助けしようとする。そうならないようひと工夫がいる。

     毎朝朝食を一緒に食べている姉妹が寮に満点娘を呼びに行くと、人の気配が無く荷物も消えている。寮母に聞くと日本に帰ったという。医学主任に聞きに行くと4Gに耐えられないのでは不合格に決まっている、誘ってくれた姉に合わす顔がないと黙って帰ったのでしょうという意見。姉は納得できずいろいろ食い下がるが本人がいなくなってしまたのではいかんともしがたい。

     その日の昼過ぎ、妹はジャングルに入ってある種のナッツをとっている。保安部の実弾射撃練習中ということでジャングルは立ち入り禁止だが、精霊の加護を受けている妹は気にしない。今年は妹の大好物のある種のナッツの当たり年なのだ。ぐずぐずしてるとリスに食われてしまう。妹はシャーマンの血筋なので催眠術も使えるようで、ガードマンに暗示をかけてゲートを開けさせてジャングルへ。
     実弾が飛んでくるからとあきらめる選択肢は妹には無い。ナッツ以外の果実もたっぷり集めてさあ帰ろうかと思ったところで人の気配。妹は気配をたどって満点娘を発見する。

     三日間サバイバル訓練を受け、それからジャングルに入って三日目の満点娘はもうボロボロ。食料も尽きていて体力も回復しない。食料を分けてやろうとし、近道を教えようとする妹に満点娘は助けてもらってはダメなんです、私を助けないで、と頼み込む。
     妹は仕方なく ツバメがいっぱい飛んでいる、とだけ言って歩み去る。

     満点娘はツバメのことを考えているうちに、ツバメが集まっているのは餌になる虫が群れているからで、羽音からこれは蜂だと見当をつける。この地域でこの時期に群れになる蜂というと・・・と考えて、イチジクに共生するイチジクコバチを思い出す。
     この蜂が羽化したばかりで群れている。ということは、熟したイチジクが近くにあるのだ。

     イチジクを食べた満点娘は飢えがおさまり、元気と体力を回復する。今日の夜中までに基地に帰ればよい。妹が歩いてきたのだから、間に合うはずだ。

     妹は部屋に戻り、姉と一緒にナッツやフルーツを食べてジャングルで満点娘に会ったことを伝える。医学主任に問いただそうと探すがどこにもいない。基地のゲートで医学主任と、主席管制官を見つける。全員黙っている。そろそろ日が暮れる。

     そこに妹が「まだ戻らない?」とやってくる。ばれていたか、とようやく会話がはじまる。
    主席管制官はちょっと姿を消して戻ってくると基地にサーチライトがつく。
     やがてチーフエンジニアと所長も現れる。この日は月が夜半にならないと出ない。サバイバルキットの懐中電灯の電池は二時間しか持たない。節約してももう切れている頃だ。

     だがジャングルの中に時折り光が見えるようになる。そして人影が現れる。松明を持った満点娘がふらふらしながらやってくる。三人目の宇宙飛行士が誕生する。

    ーーーーー

     テレビアニメでは第7話のラストで「来ちゃいました」第三の飛行士候補が、8話・9話で正式採用に至る。

     アニメでは三人乗りオービターは話題にならず、所長がチーフエンジニアに二人乗りオービーターの開発を指示。原作ではこのタイミングで既に姉妹は複座式オービターで宇宙に行っている。所長はパイロットが姉、地上支援が妹、ミッションスペシャリストが満点娘という布陣を考えている様子。
     アニメでは満点娘は金魚の水槽もわざわざ持ってきている。彼女は優等生と言われ続けて、自分でもそれに縛られているのが嫌で フリーダムな姉にあこがれたということも宇宙飛行士を志願した動機になっている模様。

     アニメでは三人で海に遊びに行ったり、元宇宙飛行士のタクシー運転手のおごりで中華料理を食べに行ったりするが 満点娘は原作以上に身体が弱いようで、疲れで倒れてしまったりする。

     第8話Bパートでは体力測定を行い、エルゴメーターや減圧チャンバーにはなんとか耐えるが遠心機では4Gで気絶。医学主任は姉妹と違ってしごき甲斐がないとちょっとガッカリ。

     学力・知力には十分優れ、逸材と判断されるが体力は激しく不足している彼女を宇宙飛行士に採用するか否か。所長と医学主任は何やら決めた様子。

     満点娘の訓練に付き合っているうちに、姉は宇宙飛行士を辞める気持ちはすっかり無くなっている。
     三人で宇宙に行こうね、と約束するのだが、翌朝満点娘は部屋にいない。というところで8話終わり。

     減圧チャンバー内で出された数学の問題の際に、自然対数の底をフナヒトハチフタハチ(鮒一鉢二鉢:2.71828・・・)と思い出している。

     第9話では姉妹に黙って姿を消した満点娘の事が気になって訓練に身が入らない姉。原作では荷物も全部無くなっているが、アニメでは海の魚を入れた水槽他荷物は残してある様子。所長に送ってくれと頼んだことになっている。

     それでもマイペースな妹が原作同様ナッツをとりにジャングルに入り、満点娘と出会う。手助けはしないでくださいという彼女に妹はツバメのことだけ教えて帰る。

     姉の方は満点娘を誘った自分に責任があるみたいに落ち込み、タクシー運転手になっている元宇宙飛行士に八つ当たりして中華料理屋で暴れたりしている。

     満点娘は原作同様、妹に教えられたツバメを見ているうちにイチジクがあることに思い至って元気を回復し単独踏破訓練を続ける。

     姉は妹に満点娘がひそかに単独踏破訓練を受けていたことを聞いてゲートへ。原作と順番は違うが医学主任、所長、主席管制官、チーフエンジニアもやってくる。

     夜中近くになってようやく満点娘がゲートに姿を見せる。フラフラになりながらゴール。満点娘は妹にツバメのことを教えてもらったので失格ではみたいに気にしているが、それでイチジクを連想できるのは君だけだと不問となる。

     というわけで満点娘(原作ではそう呼ばれているが、アニメではこのあだ名は出てこない)が三人目の宇宙飛行士となる。

     原作ではこのあたりでフランスのロケットガールも話題になるが、アニメでは出てこなかった。

     

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