「ロケットガール(野尻抱介著)」2巻 天使は結果オーライ 第三章 ACT5~8
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「ロケットガール(野尻抱介著)」2巻 天使は結果オーライ 第三章 ACT5~8

2020-10-30 19:00




    ・ロケットガールたちは午前5時に起床し、食事と健康診断を済ませ、宇宙に飛ぶ二人は浣腸もして宇宙服を装着。満点娘は実家に電話する。だが両親は不在で弟としか話せない。発進が急すぎて、今回はマスコミがまだ島に到着しておらず記者会見も無い。
     今回はLS-6ブースターで打ち上げ。新開発なのかもしれない。5回目の宇宙飛行になる姉は、初飛行の満点娘にアドバイスをしつつ、チェックリストを読み上げていく。内部もしくは外部から響く音が何かも姉は知っている。シュミレーターでは再現されないそれらの音の発生源を説明して、満点娘を落ち着かせる。
     やがてメインブースターに点火。離昇する。シャトルの十分の一の重量しかないロケットは急激に加速してマックスQを通過。固体ブースター切り離し。Gがどんどん上昇し、8Gに達する。満点娘はやっぱり気絶しているが、姉はさりげなく通信系統を切り替えて地上にはわからにないように彼女を起こす。生体モニターを監視している医学主任には隠せないが。
     満点娘は自分の眼で見る宇宙に感動し、元気に第一声を地上に送る。現在の軌道はシャトルよりも百キロ以上低い。小さな円から大きな円に移るためには二回、最適のタイミングで最適な強さの噴射を行わなければならない。この噴射は姉が手動で行う。彼女自身はバルブ操作によるエンジンコントロールを、水道屋さんの仕事みたいと思っている。
     既に小型パラボラアンテナが開いてNASAの衛星通信網とデータリンク。シャトルと話すのは、軌道変更を成功させてからだ。

     シャトルからマンゴスティンが目視できるようになると、NASAの飛行士はジェミニにそっくりだとつぶやくが、船長はみかけは似ているがあの形態で再使用可能だ。耐熱タイルは海面に飛び込んでも平気というシロモノで最新テクノロジーの塊だと注意を喚起する。
     そこに姉からも英語で連絡が入る。アトランティスを肉眼で確認したという連絡だ。約1キロの距離で相対的に停止。ランデブーモードが終了してドッキングモードに移動する。ドッキングは手動操作だ。シャトルがRMA(遠隔操作アーム)を伸ばす。マンゴスティンも小型のRMAを持っているのでこれでシャトルのRMAをつかむ。ロープで係留すればドッキングしたことになる。操船は姉が、RMA操作は満点娘が行う。姉の操船は絶妙で、シャトル側が何もしなくても最適の位置につける。そして満点娘のRMA操作もバッチリ。小さい分動作は機敏で反応も早い。RMAを動かせば反動でオービターの位置も動くが、それで回転することのないよう反動は重心で受ける。二人は休む間もなくバックパックを背負って船外へ。もう出てきたぞ、とNASA側が驚く。スキンタイト宇宙服は予備呼吸を必要としないし減圧処理もいらない。ロープワークも見事であっという間に係留終了。日本のアニメのプラグスーツを連想したのか、NASAの一人がまるでエヴァだ、とつぶやくともう一人がエヴァ・ガードナー?と応じる。

     二人はNASAの飛行士に自己紹介し、部品の回収作業に移行。NASA側からも飛行士が一人出て来るが、彼は日本の二人があまりにも小さいのに改めて驚く。日本側は彼(の宇宙服)があまりにもでかくてゴツイのに驚く。
     満点娘は何度か部品への接近を試みるが、シュミレーターには無かった突起部があったりしてあと50センチが届かない。どのようなコースを通ってもバックパックが引っかかる。そこでバックパックを外して、ヘルメットの中の空気だけでいわば素潜りのように接近しようというのだ。NASA飛行士はバックパックを外したら死んでしまうと驚くが、姉はクイック・ディスコネクターという逆流防止弁みたいなものがあるのでエアは漏れないと説明。普段の訓練では真空中でのバックパック交換も当たり前にやっている。ヘルメットの中の空気は1分も持たないが、満点娘は酸素分圧を上げて飽和呼吸すれば三分は持つという。二人は互いに自分がやると言い合うが、結局満点娘が命綱を姉に預けて現地に向かう。バックパックを外すと無線も使えない。複雑なトラスに人魚のように満点娘は潜り込んでゆく。待つことしばし。手渡されたバルブをNASAの飛行士に渡し、満点娘を引き出す。ミッションはあっさり成功する。

     NASAの飛行士たちは彼らが5日間かけてできなかった任務を5分でこなした彼女たちに敬意を表し、本来の予定には無かったが地上に許可を取ってシャトル内に招待する。ヘルメットを脱いで顔を合わせる。シャトル側は50代の船長(米軍のテストパイロット出身だが口髭をたくわえて英国紳士に見える)、パイロットのルイス(空軍出身で37歳。石坂浩二に似た眉と描写されている。アニメオタクらしい)、ミッションスペシャリストは金髪のハンサム(31歳で航空機メーカーから転職)、船外活動をしていたクルーカットの大男。
     姉はちょっと権威に反抗するところがあって大男と軽く衝突するが、出会いは大切だよ、私は貴方と出会って宇宙飛行士になった、と言う満点娘にちょっと態度を和らげる。

     オルフェウス計画責任者の博士から是非礼が言いたいと通信が入る。満点娘が応答する。博士はこれであきらめていた冥王星の近接写真が見れる、あと12年がまんすればと述べる。

     今回は急なミッションだったので地上の回収チームの準備が間に合っていない。二人は24時間ほどシャトル内で待機することになる。その間新しい部品を大男とミッションスペシャリストがオルフェウスに取り付けている様子を眺めることになるが、姉はその手際の悪さに苛立ってしまう。これは宇宙服の問題で、飛行士が悪いわけではないのだがスキンタイト宇宙服ならすぐに終わるのにと思ってしまう。手伝うなんて言えばプライドを逆なですることにもなってしまう。彼らのような忍耐力や筋力は自分には無いな、とも思う。NASAの宇宙服は手袋をグーやパーの形にするだけでもすごい握力が必要になるらしい。これでドライバーを使ってビスを外したり取り付けたりは重労働だ。

     そんな感じで5時間が経過。作業完了直後に何かが発生したようで、切迫した声にミドルデッキからアッパーデッキに上がる。オルフェウスが消えている。エンジンが何らかの原因で点火してしまったのだ。3分ほどで自動停止したらしいがまだ安全タグというのがついたままの状態で、遠隔操作はできないという。
     戻ってきた大男は険しい表情をしている。宇宙服を脱ぐのを手伝うと姉が申し出るが、大男は女に手伝わせたくないと拒否。姉は汗も尿も臭いも私は平気だよ、と言葉を継ぐと大男は身体をささえていてくれと姉に頼む。大男は一瞬噴射をかぶったが怪我は無い様子。だが疲れ切っている。

     姉は安全タグって何?と聞く。電気系統をカットするためのもので、これがついているとエンジンの遠隔操作はできないとのこと。それなのに3分間も暴走してしまった。本来ありえない。満点娘は自分がどこかを壊してしまったんだ、と自責の念にかられるが、姉はそんなことでエンジンは壊れないよ!と落ち着かせる。地上からの分析結果を待つ。

     オルフェウスは楕円軌道に乗っていてすぐにどうこうと言うことは無いが、このままでは冥王星に旅立てない。エンジン暴走は燃焼テストの時に時間を惜しんだ係員が正規な手順を守らずにジャンパ線をつないでテストを行い、そのジャンパ線を外し忘れたという信じられない怠慢とミスを犯したことがわかる。

     原因がそうとわかればオルフェウスにランデブーして、安全タグとジャンパ線を取り除けばいいいだけだ。だがシャトルもマンゴスティンもたどり着けない高高度の楕円軌道にオルフェウスは乗っている。
     NASAの飛行士たちはもうできることは無くなったと言う。だが満点娘が提案する。シャトルにマンゴスティンを積み、加速してからマンゴスティンを発進させればたどりつけると。 
     満点娘は博士と直接話して、博士がこのためにどれだけの努力と犠牲と忍耐を重ねてきたかを感じている。自分ができることを全部やらずに博士を落胆させたくない。シャトルの船長はヒューストンとソロモンに、満点娘のアイデアの実現可能性を検討してほしい、と依頼する。

    ーーーーーーー

     アニメでは第11話がこの部分に対応。突貫工事でマンゴスティンは発射され、発射から2時間半でアトランティスに接近。途中で満点娘は気絶するがすぐ目覚め、宇宙から見る地球に感激する。
     ドッキング作業の様子は映像で見ると一目瞭然でわかりやすい。ドッキングしたかと思うとかろやかに動いてすぐにオルフェウスに向かおうとするガールズに、NASA飛行士はさすがにエヴァとは言わず天使のようだとつぶやく。NASA側の人種構成や年代には原作とは違いがある様子。

     一番姉とぶつかることになるNASAの船外作業員の大男も割と小柄な印象で描かれている。彼は厳しい訓練に耐え、船外作業員にはひと一倍の体力と忍耐力が必要であることに誇りを持っているのでそれを女子高生にキャピキャピやられると非常に面白くない。彼女たちを宇宙飛行士とは名ばかりのマスコットと思ってもいる様子。
     アニメではそのへんが露骨に出て原作以上に姉と口論になるが、満点娘は彼の大変さも悟っていて、さりげなく間に入ってフォローする。
     バックパックを原作同様に外して隙間に潜りこみ、部品を無事回収。原作のように予定外とは語られないが二人はシャトル内に入り、歓迎パーティが開かれる。船外作業員も一瞬だけ顔を出す。姉は無愛想な、と怒るが満点娘は彼はそれだけのために苦労して顔を出したのだ、彼なりに礼を尽くしたのだと諭す。原作ではこのことは姉が自ら悟る。

     責任者の博士はすぐに通信を入れてガールズに感謝。冥王星到着は原作では12年後だがアニメでは9年後になるという。

     NASAの宇宙飛行士の発案で記念品を交換する。NASAのようにステッカーの準備など無いので、ソロモン宇宙協会のロゴが入ったボールペンを渡す。
     原作のような説明は無いが、ガールズはシャトルにしばらく留まって、NASA飛行士二人のオルフェウスの部品取り付け作業を眺めている。終わったぞ!という声の直後、オルフェウスが飛び立ってしまう。
     この間大幅に省略があって、オルフェウスがジャンパ線のために誤動作して楕円軌道に乗り、安全タグが抜かれていないので遠隔操作ができないことがすぐに説明される。NASA側はもうできることは無いという結論に達している。
     博士がいかに落胆するかと考えた満点娘は原作同様、マンゴスティンをシャトルに乗せて、十分加速してから打ち出すことを提案する。ここは映像でどういうことを行うのか説明されて非常にわかりやすい。映像化するには苦労したように思う。

     シャトル船長は危険すぎると反対するが、ガールズ二人の情熱に押しきられる形で同意する。NASAとソロモンの地上チームが検討に動き出す。姉と折り合いの悪い船外作業員は、彼女たちは単なるマスコットなどではなく本物の宇宙飛行士なのだ、と認識を改めた様子だがそのことを口に出せないでいる。

     次回で最終回となる。
     
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