「一匹や二匹(仁木悦子著)」後半
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「一匹や二匹(仁木悦子著)」後半

2020-11-21 19:00


    ・蒼ざめた時間
     社会人一年生の畔上啓介は、編集者として夢中で仕事をしているうちに学生時代から交際していた向井純子といつの間にか疎遠になってしまった。バレンタインデーで賑わう街中、昨年は純子にチョコレートをもらったのだったな、今頃彼女はどうしているだろうかと思いながら歩いていると見知らぬ娘からチョコの包みをもらう。今年はあげる人がいないのにうっかり買ってしまった、みたいに包みを押し付けるとそのまま立ち去ろうとするので呼び止め、話をするうちに彼女の家で食事をみたいな話になる。
     材料を買って帰るというのでスーパーに立ち寄るが包丁が駄目になっているとかで、食材で手いっぱいの彼女の代わりに示された包丁を買う。山部と表札が出ている彼女の部屋に入って紅茶を出され、包丁の包みを開けておいてくれと頼まれる。テーブルにこれ見よがしにアルバムが置いてあり、彼女が恋人らしい男や友人たちと撮った写真をながめているうちに睡魔に襲われる。目覚めて台所に行くと、女性が倒れている。彼女だ。背中に包丁が突き立っている。

     テーブルの上にあったチョコや包丁の包み紙、紅茶のカップなどは消えている。彼はこの状況を考えて愕然とする。包丁を買うときに彼女はそばにいなかった。彼が殺意を持って包丁を買ったとしか思われないだろう。彼女はわざわざ自殺するために彼に包丁を買わせ、睡眠薬を飲ませたのか。だが自殺なら背中を刺されているのはおかしい。彼はうろたえて彼女のマンションを出て、知らないうちに自分のアパートに帰っている。
     このまま警察につかまれば否応なく犯人にされてしまう。彼はその前にまだ下の名前も知らない彼女の事を調べようと決意する。

     手掛かりはひとつだけ。彼女の部屋で見たアルバムの集合写真に知人が写っていたのだ。わらにすがるような気持ちで沢渡という男に会うことにする。
     外食すると捕まるような気がするのでありあわせの缶詰などで食事をとるが、缶切りで指を切ってしまう。幸先が悪い。包帯をして出かける。
     沢渡から彼女が山部ハツミだという名前だと聞いて、彼女と仲がいい友人を教わる。その友人からハツミの彼氏が店をやっていると聞いて訪ねるが、ちょっと粗暴な感じ。ヤバイと感じて逃げる。ホテルを転々とするうちに山部ハツミの死と、畔上の名前が参考人として報道されてしまう。
     あきらめて自首しようとアパートに帰る途中で肩を叩かれる。警察か、と思ったが、そこにいたのは向井純子だった。

     純子の助けを得て、畔上は自分に仕掛けられた罠を打ち破る。そして、彼女から次期遅れのチョコレートをもらう。

    ・縞模様のある手紙
     砂村絹子は夫の経営する翻訳工房を手伝っている。ある日工房に若い娘がやってきて、フランスに行ったまま連絡がつかなくなった男性の消息を訪ねる手紙を男性の知人らしいフランス人に出したいので翻訳してほしいという。急ぎで翻訳して渡してやるが、彼女が見せた相手の男性の写真に既視感がある。
     このところ旧知の友人の父親が入院中で、子供の頃から世話になった人でもあるので時々見舞うのだが、同室の人に似ている気がする。ので確かめに行ってみると、病院ではその父親の同室の患者が事故死したと騒ぎになっている。どうもその男が娘の探していた人物らしい。
     娘の手紙にフランスから返事が来たので訳してやると、どうもその男はパリで友人たちの金をだまし取って姿を消したらしい。男の友人の一人が死んだ入院患者と同姓同名だった。つまり男は日本に逃げ帰ってその友人の名前で入院していたらしいのだ。
     絹子はこのことを娘に告げるのはしばらく様子を見てからにして、もう少し事情を調べてみることにする。

     友人の父親の話では、この病院で最近事件が続いているらしい。違う病室に大富豪が入院していたのだが、酸素吸入用の管が外れてしばらく前に死んだらしい。ただ病院は隠しているようで一部で噂になっているのだが本当なのかはわからない。
     娘の知り合いらしい男は交通事故で車椅子状態だったが、病院の裏庭のがけから転落死したらしい。木の柵を突き破って落ちたらしく車椅子の操作ミスかもしれない。面会人は誰もおらず、死亡が報道されても身寄りも名のり出でなかったらしい。
     大富豪の老人は付添婦が看護婦に呼ばれてちょっと席を外した間に死んだのだが、誰も彼女を呼んでいないというので戻ったら死んでいたのだといい、責任を感じたのか辞めてしまったという。訪ねてみると数日前に事故死したという。だが家族には近々大金が入るみたいなことをほのめかしていたらしい。絹子は殺されたのだ、と直感する。
     大富豪の死はきっと相続関係で何かあって、そのために大富豪が殺され、彼女はこれに何らかの形でかかわって口を塞がれたに違いない。使用人からうまく話を聞きだすと大富豪には認知していない子供がおり、その子を最近認知しようとしていたらしい。一方それで分け前が減ることになる大富豪の孫は人殺しをやりかねない人物らしい。ただし鉄壁のアリバイがある。

     絹子は事件の始まりとなった、翻訳を頼んできた娘を訪ねて死んだ男についてもう少し話を聞こうとするのだが・・・

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