「スキエンティア(戸田誠二著)」後半
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「スキエンティア(戸田誠二著)」後半

2021-01-17 19:00


    ・ドラッグ
     家庭に問題を抱えた女子高生。母親は親と折り合いが悪く、恋人と駆け落ち同然に家を出たらしい。だが彼女が小五、妹が六歳の時に父親は女をつくって帰らなくなり、家族を捨てる。
     母親は一人で頑張るが慣れない夜の仕事で人格が変わってしまい、彼女を高校に進学させたあたりで力尽きて育児放棄の状態に。自分は優しかった頃の母親も覚えているが、そういう時代を知らない妹を不憫にも思う。
     彼女が高三、妹が中一の今は母親は家でゴロゴロしているだけで、姉妹で助け合って生活している。高校を卒業したら妹を連れて家を出るつもりだが、いろいろと行き詰まり感がある。

     そんな時にあるドラッグの話を仲のいいクラスメートから聞く。家庭環境のつらい子を救うために開発されたもので、当初は合法だったが死者が出たため非合法化されたらしい。だがそれを最近ある人物が私財を投じて復活させ、無料で配っているという。ただしこれをもらうためには厳しい資格審査があるとのこと。

     死んだ子は「愛が見える」と言い残し、その後ある血液型に適合する人間だけが何百人に一人という確率で死ぬらしいとわかるが製造販売は中止されていた。

     クラスメートと一緒にそのドラッグを入手しに行った彼女は、何段階もの厳しい審査を潜り抜けて最終面接へ。面接官はこの薬を蘇らせたというサラリーマンだった。クラスメートは問題なくこのドラッグを貰うが、彼女は血液検査で飲んだら死ぬとわかり拒否される。

     だが彼女は絶対飲まない、でもお守りに持っていたいのでクスリをくれとがんばって、ある条件と引き換えようやくもらう。その時にサラリーマンは何故自分がこのクスリを蘇らせたかを話し、きみがこれを自殺に使ったらぼくも生きているわけにはいかない。だからどうしても飲みたくなったら僕を殺すつもりで飲め、という。これが第一の条件で、もう一つある。

     彼女は帰宅すると、今まで頭で思うだけで実際には言わなかった思いを母親にぶつける。変わってほしいと。妹にも笑顔を見せてやってほしいと。言わずにあきらめるなよ、言って駄目なら家を出るなりなんなり次の行動を起こせよというのがもう一つの条件だった。
     その結果母親がどう反応したかは描かれていない。

    ・ロボット
     悪性腫瘍が見つかってあと数年の命と診断された男性が、自宅療養の助けに、とようやく実用化されはじめたばかりの女性型介護ロボットを購入する(レンタルかもしれないけどそのへんははっきりわからない)。ロボットは人間の代わりはまだまだ勤まらないが簡単な会話は出来て、パートナーといったところ。
     彼は建築現場で働いていた鳶か鉄筋工みたいな職人だったようで、ナオと名付けた介護ロボットを連れ、彼が関わったビルを見せて歩くようになる。彼はこの時それぞれのビルで仕事をした時の失敗や仲間との語らいを思い出し、ナオに話す。やがて少しでも仕事をしたいと建設会社で事務の仕事をもらい働くようにもなる。
     彼はスキエンティアタワーの建設にも関わっていて、その時に会社の子に恋心を持ったが告白できなかったことなども話す。やがて彼は車椅子でなければ動けなくなり、人生最後の仕事にもケリをつける。ナオとのビル回りは最後から二番目の現場、病気が発覚したビルにたどり着いている。その時に病気と余命を告げられ、ニュースで見てナオの会社に相談に来たのだった。
     彼が事務として関わった、人生最後の仕事のビルが竣工する。彼はもう寝たきりで動けないが、ナオは彼の命令ではなく自分の意志でビルに出かけ、写真を撮って来て彼に見せる。生涯独身で仕事一筋だった彼は、人生最後の時をナオに手をとられて過ごす。

     ナオは彼が死ぬとてきぱきと連絡をして事後処理をし、彼の遺言に従って担当者と一緒に散骨をする。彼とナオとの会話が、彼女たち介護ロボットをより人間らしくするために役に立つだろう。

    ・覚醒機
     コックをやりながらミュージシャンを目指す青年。だが芽が出ないままもう三十になる。同じような立場で仲のいい男がいて、よく話をするのだがそろそろ潮時かも、みたいな感じがお互いにある。ある日その彼がある機械の被検体にならないか、と言ってくる。脳の働きを何十倍、何百倍にも活性化させて、すごい詞やメロディが作れるらしい。
     だが確実に副作用がある。脳が疲れて寿命が縮む。活動期間はせいぜい7、8年だという。だが確実に世の中に何かを残せる。彼は止めるが男はやるという。自分には音楽しかない。それで実績を残せれば命は惜しくないと。彼は親に捨てられたりして友人も彼だけ。親や彼女もいる彼とは音楽の重要さが違うのだ。やがて男とは連絡がつかなくなる。

     ある日、彼はテレビで大型新人だというミュージシャンを見る。雰囲気は全然違うがあの男だとわかる。男は次々にアルバムを発表し、時代の寵児になる。
     彼も負けまいと努力し、あるオーディションに出るが酷評されてプロをあきらめる。Sラリーマンになった彼は長く待たせていた大学の同級生の彼女と結婚し、穏やかな家庭を持って子供も産まれる。
     男は集大成みたいなツアーを始め、それがニュースになっている。妻は彼と一緒に男のライブも見ているはずだが同一人物と気付かない様子。そんなある日、男からあれ以来はじめてメールが来る。会いたいという。

     男は彼に、お前はすごいよ、プロをあきらめてちゃんとサラリーマンをやって、子供も育てて、俺は頭の中でしか理解できないけど実際に経験しているお前はすごいよ、と声をかけて激励し、プラチナチケットとなっている最終日のライブチケットを渡す。できれば見に来てくれ、と。

     彼は最終ライブを聞きに行き、男が売れたのは機械のせいだけじゃない、と確信する。

     男が逝ったあと、家族で食事に行った彼は娘にスキエンティアタワーの屋上に立つ女神について質問されて、科学と幸せについて語る。

     これで終了。どの作品の中にもどこかでスキエンティア・タワーが登場する。


     



     

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