「黒の碑(ロバート・E・ハワード著)」3
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「黒の碑(ロバート・E・ハワード著)」3

2021-01-21 19:00


    ・老ガーフィールドの心臓
     語り手の青年は自宅で医師のブレイン先生を待っている。先生が来たらジム・ガーフィールドじいさんのところに一緒に行くつもりだ。ジムじいさんは自分が生まれていないはずの大昔の事をさもそこにいたかのように話すほら吹きで知られているが、怪我をしてもういけないらしいのだ。医師が手配したジョー・ブラクストンという人物が今は付き添っている。
     青年の祖父は自分がこのあたりに越してきたころに既にジムじいさんはいて、今と同じように年老いていたという。まだ若かった祖父と一緒にインディアンと戦ったこともあるらしい。ロカスト・クリーク上流の戦いでは胸を槍で刺されるという重傷も負ったという。だが戦っていたのとは別の部族のインディアンが現れて手当をしてくれたため一命をとりとめたと言う。そういえばジムじいさんが年を取らなくなったのはその後からかもしれないという。 
     そんな話をしているうちに先生が到着し、青年は二人で車でジムじいさんの家に向かう。先生はもうすぐ50歳だが、物心ついた時に知ったジムじいさんは既に50代に見えたという。

     じいさんの家に着くと、元気にわめきたてているが重傷で、医師の見立てでは朝まで持たないだろうという。だが老人はまだまだ死ぬわけにはいかんと心臓に触ってみろ、と胸をはだける。青年が触ると確かに心臓は力強く動いているというよりも力強過ぎる。まるで発電機でも入っているようだ。

     ジムじいさんは、わしの心臓は借り物なのだ、リパン・アパッチ族の首長のゴースト・マンが本来の持ち主なのだと説明する。老人は若い頃に彼を助けたことがあり、その礼にゴースト・マンは老人がコマンチ族の槍に胸を貫かれ、心臓を二つに割られた時に、彼が大切に保管していたこの心臓で蘇らせてくれたのだという。元々はゴースト・マンが信仰するある神のものだったらしい。
     老人が語るには、自分が死んだらこの心臓を返さねばならず、この心臓がある限り頭が死んでも肉体は生き続けるのだという。青年はある頼みごとをされる。医師もそれを聞いている。
     老人は医師の見立てと異なりそれから何日も生きる。

     ジャック・カービーという乱暴者がいて、青年の父親から牛を買いながら代金を踏み倒し、青年を侮辱した。青年はカッとなってカービーをぶちのめすがそのため裁判にかけられる。相手もタフで順調に回復しつつある。

     数日後ブレイン医師がやってきて、ジムじいさんの家に行こうと言う。だがこれは口実で、回復したカービーが青年を狙っているため避難させようということだった。裁判中でもあり、これ以上青年が暴力をふるうのはまずいという判断もある様子。
     ジムじいさんはもう起き上がって新聞を読んでいる。医師はこの間の話は本当何かと問いただすが老人は本当だと言う。だが自分も心臓が何者のものだったかなど詳しいことは知らないという。

     その時家の外から銃撃があり、頭を撃たれた老人が倒れる。カービーの仕業だ。青年が銃を撃ち返すと馬に乗って逃げるカービーの馬に当たり、カービーは落馬して首を折って死ぬ。家に戻るとジムじいさんは頭頂部を吹き飛ばされている。生きていられるはずはないのだが、心臓は力強く動いている。二人はジムじいさんの遺言を実行する。つまり、心臓を身体から取り出すのだ。そうしなければ身体はいつまでも死なず、魂はいつまでも身体から離れられないのだという。
    取り出したそれは硬質で鉄か石のような感触だが宝石のように輝き、拍動している。
     いつの間にか戸口にインディアンが立っている。彼が黙って手を差し出すので、青年はジム・ガーフィールドの心臓をその上に乗せる。男はすぐに去る。追って庭に出ると姿は見えず、梟に似た何かが月に向かって飛び去って行く。

    ・闇の種族
     「ダゴンの洞窟」と呼ばれる山奥の洞窟にアメリカ生まれのジョン・オブライエンという男がいる。彼はここでリチャード・ブレントというイギリス人を待ち伏せている。ブレントはオブライエンにとって恋敵。エレナ・ブランドという女性を手に入れるためにはあいつを殺すしかないと思い詰めたオブライエンはブレントが一人でこの洞窟に来ると聞いて、ついに相手を亡き者にしようと決心したのだ。そんなことが無ければブレントとは友人になれたかもしれないのだが。ここに来るのははじめてだが、妙に見覚えがある気がする。
     この洞窟はイギリスでも最も古い文明の遺跡だという噂もある。つまり人工的に掘られたという伝説があるのだ。それを裏付けるような石の階段などもある。だが倭人族の仕業とも言われ、階段のキザハシは彼の足には小さい。しかも摩耗して角が取れており、そこですべって転げ落ち、意識を失ってしまう。

     目覚めると彼は自分をゲール族のコナンと認識する。彼の一族はブリトン人に攻撃をかけている最中で、もともとは交易関係にあって顔見知りの連中だった。仲間はブリトン人を追い払えばそれ以上深追いしないのだが、コナンはどんどんブリトン人が逃げた森の中へ入っていく。何故かと言えばコナンの意中の女がブリトンにいるのだ。コナンは見え隠れするその女、タメラを追って行く。ようやく彼女を捕まえたかと思ったとたんに邪魔が入る。ブリトンのヴェルトリークスという男だ。タメラはこの男を愛しているのだ。
     コナンは筋骨隆々、ヴェルトリークスは痩躯敏捷。対照的だが拮抗する力を持つ二人は剣と斧で斬り結ぶ。ヴェルトリークスはタメラに森に逃げろと叫ぶのだが、彼女はそこにあった洞窟に入ってしまう。そこは駄目だ!と叫ぶヴェルトリークス。コナンに強烈な一撃を浴びせると、彼女を追って洞窟へ。コナンはこれを追うが、相手は暗闇から斧を振るい、コナンは相手から丸見えで不利。入口近くでの攻防が続くが、タメラが逃げ路を探してくる、とさらに洞窟の奥へ。そして彼女の悲鳴。
     ヴェルトリークスはコナンなどどうでもいい、とばかりに彼女の名を叫びつつ奥へ。コナンも後を追うが、これもタメラを案じてのことでヴェルトリークスを背中から襲う気など無い。
     追いながら洞窟の壁に画かれた奇妙な図柄に気付く。ここはゲール族にも知られている忌まわしき「魔の夜の末裔」の洞窟ではないか。地下道には広い部屋のような部分があって、さらに別の地下道に続いている。雄叫びと何かに斬りつける音、女の絶叫、蛇のようなシューシューという音などがその地下道の奥から聞こえてくる。そちらへ急ごうとしたコナンは段差を踏み外して転げ落ち、意識を失ったのだったとコナンの記憶が戻ってくる。血の匂いがする。

     コナンは暗闇から剣をふるってきた何者かを倒す。剣を持っているということは人間か。下方に明かりが見える。天井の高い部屋があり、部屋の真ん中には祭壇がある。その祭壇に燐のようなものが塗られて光っている。祭壇の後方には石柱がある。コナンはこれが黒の碑であると知っている。祭壇には二人の人間が縛られている。周囲には人間と似て非なる矮躯の原始人がいる。頭部は巨大で牙が見える。皮膚は鱗に覆われ、鍵爪の付いた手で道具を使う。暗視力があるらしい。見る間に数が増えて来る。ここは一人では切り抜けられないと判断したコナンは、飛び出してヴェルトリークスのいましめを切る。続いてタメラを自由にする。

     入ってきた穴には既に奴らが満ちて逃げられない。一か八か、この祭壇の部屋に口を開けている地下道がどこかに続いていることに賭けるしかない。だが賭けは裏目に出たようで、開けて光が差し込んではいるがそこまでは高くてとても届かない場所に出る。
     コナンは二人を守って前に出る。できるだけ多くを屠って死ぬまでだ。だがヴェルトリークスが後ろの壁の影に上に向かう階段を見つけたという。三人はこれを駆け上がり、下からくる敵を迎撃して屍の山を築く。コナンは一歩遅れて前の二人について行くが、道が二つに分かれている。ままよと一方を選ぶ。そしてついに地上に出る。そこは絶壁の上で下は急流だが、崖を越えてどこまでも逃げられる。反対側にも同じような洞窟の出口があり、そこから二人の人間・男女が出て来る。だが向こう側の道は崖を登れず行きどまりだ。戻るか、遥か崖下の急流に飛び降りるしかない。洞窟から奴らが出て来る。二人は抱き合い、笑みを交わして激流に消える。コナンは崖を越えてこの場を離れる・・・と、意識はジョン・オブライエンに戻っている。

     彼がコナンとして原始人と戦った洞窟こそ、このダゴンの洞窟だった。そして彼がコナンだったのと同様、エリナはタメラでブレントはヴェルトリークスだった。地形もだいぶ変わっているようだったが、洞窟をさまよったあげく以前と同じように陽の光の下に出る。
     少し離れたところにエリナとブラントがいて、エリナはずっと以前にもここに来たことがあるみたい、貴方もジョンも一緒だったの。でも別人だったの、みたいな話をしている。 
     二人はそこで愛の言葉を交わしているが、ジョン・オブライエンはもう平静である。お前らはあんな昔からそんなに強く愛し合っていたんだな、と穏やかな気持ちだ。
     そこにかつては人間の姿をしていたかもしれないような手足を持った蛇ともトカゲともつかない化け物が現れる。おそらく奴らの最後の生き残りだ。ブレントは素手だがエリナを守って戦おうとしている。はるか超古代に二人を死に至らしめてしまった罪を贖おうと、ジョンはブレントを殺すつもりで持ってきた拳銃で化け物を撃ち殺す。

    ※英雄コナンシリーズの原型のような話。ハワード作品で「コナン」という固有名詞が登場する最初の作品らしい。語り手であるコナン=ジョン・オブライエンはアメリカ南西部で子供時代を過ごしたアイルランド系アメリカ人とのことで、これは著者の経歴と重なるらしい。
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